精霊が切り札の世界で、俺だけ孤独に成り上がる 作:モナカパウマン
「部長が退部する?」
数日が過ぎ────俺は日常へと帰ってきていた。
店長を倒したあと、仲間たちが復活したのを確認すると、俺はその場を離脱した。
精霊局がやってきて根掘り葉掘り聞かれると、アルタイアのことがバレるからな。
一応、舞夏さんとキングさんに誤魔化しておいてくれとメールは送ったが……
まぁ別段、精霊局が再び聞き込みに来たということはなかった。
そんなわけでしばらくぶりに部活動に来たのだが。
「そう、ワイが代わりに部長を務めることになったわ」
そう言って、部室でふんぞり返る赤羽くん。
部員たちも運動場へ出るのを辞め、部室のテーブルでファイトをしていた。
前やっていたドロー素振りとはまったく異なっており────体制が変わったことがよく分かる。
「しかし……そりゃまたなんで」
「精霊を失った上に、人望も実力もなかったからやろ、元部長は」
「だからって退部させられたんですか?」
「いや、自主退部や。面子が潰れたとかなんとかゆーてな」
「そうですか……」
元部長のデッキ捌きはなかなか目が見張るものがあったんだけどな。
それとも、あの戦術も精霊から伝えられる指示に従っていただけなのだろうか。
「しかし、先日は災難やったな。闇ファイター」
「ええ……俺は途中で帰ったんですけどね」
「彼女置いて帰ったん?」
「ですから彼女じゃないですって」
…………などと言いつつ、そういえば姫宮さんとは今後どうやって会うべきか。
いつも会っていたフリークスは────店長がああなった以上、もう開店することはないだろう。
連絡先も知らないし、本当に付き合っているとかそんなのではないので、実家を聞くのもアレだったし……まぁ、困ることはないんだけど、ちょっと寂しいかもしれないな。
「それで提案なんやけど、部長が抜けた分の団体戦にでえへんか?」
「団体戦、ねぇ……」
正直乗り気ではなかった。
個人戦は純粋なレート戦。一年間を通した全国レート上位8人が年末に集まり、トーナメントを行うというものだ。一方、団体戦は登録したチームメンバーのレート値をシード値として扱う。
シード値をアンティとして、他校と戦い────関西・関東のそれぞれ上位8校がやはり年末に集まるのだ。その名も御前試合。関東・関西の内、勝った学校の多いほうが勝利というものだ。
ゆえに団体戦には優勝という概念はないのだが、MVPという概念がある。それはあくまで運営が気に入ったファイターを表彰するものでしかなく、次のアイドルを決めるようなものだった。
要は個人戦に比べて、見世物としての側面が強いのだ。
しかしあくまで実力のみの個人戦と比べ、その恩恵は著しく大きい。
いわばトップ・オブ・スターのような扱いを受け、メディアに引っ張りだこ。
その報酬は数十億にも至ると言われているほどだ。
赤羽くんはそれを目指しているわけだが、狭き門だと思う。
なにより彼は運営が好むようなファイトはあまりしないからね。
「まぁ……考えておきましょう。あくまで助っ人とでも思っていてください」
「かまへんかまへん。まだ部を整えている段階やし、そもそも団体戦が活発化するのは夏やしな」
夏休みの間に多くの学校と試合を組むのが定番らしい。
夏休みをそれこそ返上する覚悟になるとかなんとか。過酷な戦いだ……。
「それじゃあ俺はそろそろ帰りますよ。新しいホームショップを探さないといけないので……」
「部長おらへんようになったからアルケミーでええんちゃうん? フリークス潰れたん?」
「おそらくは……」
それを確認しにいくのも憂鬱だったが、流石に今日は見に行くか。
この数日、登下校以外はほとんど家でぼーっとしていたし。
「お疲れみたいやし、かまわんけどね。週明けからはガンガン部活に貢献してもらうで!」
「もちろんですとも」
そう言って、俺は帰宅することにした。
今日は動き回る予定だったので、自転車に乗ってきたのだ。
校門の横にある自転車置き場から回収して、ヘルメットを被り、出発だ!!
────さて、結論から言うとやはりフリークスは潰れていた。
シャッターが閉まり、開く素振りは欠片もない。
俺はそれを残念に思いながらも、新しいホームショップを探すことにした。
ええっと、ここから近いのは…………っと。
ブレイブリュー? あんまり聞いたことないが、行ってみるか。
もしかしたらフリークスに集まっていた仲間たちも集まっているかもしれないし。
「見つけたぞ……」
再び自転車に乗って向かおうとしたら見知った顔が現れた。
角張った体つきに、我が校の制服────部長である。
いったい、俺になんの用なんだ?
こっちが恨むことはあっても、恨まれる筋合いなんてないはずだが。
「おや、部長────いえ、元部長ではありませんか。なにか用ですか?」
「何を他人事のように────おまえを殴ったから、あの吉田とかいう奴に絡まれて、わしが精霊を失うハメになったんじゃろうが!!」
「ええ…………」
それって俺のせいなのかな。
俺のせいじゃないような気がする。完全に自業自得だろうが。
しかも同情できないたぐいの。
「よしんば私のせいだとして、どうしたんです? 私は貴方の精霊なんて持ってませんよ」
「そんなことはこの際どうでもええ。しかしおまえの持つ精霊が必要なんじゃ!!」
そう言って、ドライバーを右腕に装着する元部長。
体からはつい最近見た闇のオーラが吹き出し始めた。
「なるほど、闇に飲まれましたか」
俺は自転車から降り、同じようにドライバーを右腕に装着する。
つまるところ店長のようにアルタイアを求めてきたのだろう。
しかし、奴をくれてやるわけにはいかない。俺の野望のためにも。
『さっそく刺客が来たようだな』
アルタイアが背後霊のように飛び出してくる。
今回はおまえのデッキを使う気なんてないのだが……。
『私を使え、私を』
「嫌です」
『なぜだ』
オール・フォー・ワンはコンボデッキ。正直言って安定性がよくない。
カウンターでも食らったら一気に負ける可能性があるからな。
そんな事、言わなくても通じるだろう。念話できるんだから。
「ククク、見せたるわい!! 新たに手に入れた闇の力を!!」
「いいですね、同情できない自業自得は大好きですよ!! いざ──────」
「「ファイト!!」」
俺はこれからも戦っていく。
この、精霊が切り札の世界で。
ご愛読ありがとうございました!!!!
いや普通に続きますけど。
第一部完的なアレです
評価とか、お気に入り登録とかしてくれても……ええんやで?