精霊が切り札の世界で、俺だけ孤独に成り上がる 作:モナカパウマン
「流石に閉店まで暇だろうし、スターターデッキでも買いなよ」
プレイスペースのベンチに座って、ボケーッとしている氷雨さん。
それに対して、姫宮さんが財布から万札を2枚ほど抜き出して渡した。
ずいぶん太っ腹なことだと思ったが……。
「あ、お金は後でアンタの上司に請求するから」
……まぁそうだろうな。それでこそ姫宮さんである。
「マジ? あんがとよ!! ヤツには倍額で請求しときな!!」
氷雨さんは気にした様子もなく、万札を受け取り、カウンターへとやってきた。
千草さんは既にカウンター奥へと引っ込み、モニタールームでなんだかカチカチやっている。
もちろんカウンターの対応は俺がするしかない。
「どうも、スターターセットですね。何になさいます?」
「あ? 複数あんのかよ」
カウンターにそのデカイ乳を乗せて聞いてくる氷雨さん。
なんで皆カウンターに乳を乗せるんだよ。重いのか?
「今なら、攻撃の王道か、守護の王道が熱いですね」
「熱いってーと……なんだよ」
「クソ強ェ~~ってことです」
「どっちがクソ強ェんだ?」
氷雨さんが前倒しになって聞いてくる。
その豊満なお胸がむぎゅりとカウンターに挟まれ、押しつぶされた。
どっちが強いと言われてもな……。
とりあえず現物でも見てもらうか。ええっとサンプルサンプル……。
俺はカウンターの棚から試遊用のスターターセットを取り出す。
別に今日買わなくても、これで遊ばせればいいだけの話だけど。
まぁ、そこは姫宮さんが金を出すって言ってるから割愛。
稼げる時に稼がないとカードショップなんてすぐ潰れちまうからな。
「とりあえず2種類渡しておきますから、試遊して好きな方を買えばよろしいかと」
「よっしゃあ!! それじゃあ早速ヤろうぜ!!」
「今何しているように見えます?」
「暇」
「喧嘩売ってます?」
どう見ても店番をしているに決まっているだろうが……!!
そんなに忙しくないとはいえ、こいつ……ヘラヘラ笑ってやがる……!!
かまってもらいたいガキってこうして悪態つくよな。やだやだ。
「氷雨ちゃん、アタシが相手したげるよ」
姫宮さんがプレイスペースに座って、ぽんぽんとベンチを叩く。
こっちに来いと招いているのだ。
「え~~でも姫宮、マジでつまんないデッキ使うし……」
「そろそろ弁えないと、またしょんべん漏らさせてあげるって言ってるの」
「ひぃっ!?」
ああ……タルタロス相手にして漏らした2人の内の1人ってこいつなのか。
根性あるというか、それほど負けたくなかったのか……
氷雨さんもトラウマだったのか、カウンター越しに俺の腕を掴んできた。
腕に抱きつくな。胸に腕を挟むな。うわっ、柔らかっ……!!
体制的になんかカウンターの向こう側から一本釣りみたいな感じになってるけど……!!
「しょうがないスね。客が来たらあーしが対応するんでかまってあげるスよ」
「甘やかしたらダメですよ、こういう女は……!!」
「猫が釣れたような体制になりながら何言ってんスか」
たしかに半分以上、カウンターに身を乗り出されている状況だが……
このまま引っ張ると、ワンピースの中身が向こうから見えそうだ。
既に小学生ぐらいのガキどもがもじもじしながらこちらをガン見している。
態度は最悪だが、氷雨さんのビジュアルはまだ幼い青少年の性癖を歪ますのに充分すぎるのだ。
「わかりましたから離してください。俺が相手しますよ」
「助かるぜ。姫宮本当に性格悪いんだよな……よく付き合ってられるな、オメェ……」
「姫宮さんは好き嫌いで態度はっきり変えますからね」
付き合っている、というのが友達付き合い全般なのか恋愛関係なのかを示しているのかはあえて聞かなかった。俺と付き合っていることにして、職場の知り合いに報告してたら怖すぎるから。
「アイツのどこがいいんだよ、アイツの。抱き心地ならウチの方が良さそうだぜ?」
「氷雨ちゃん、殴るよ?」
「笑顔でそういう事言わないでぇ……」
にこーっと微笑みながらそう言う姫宮さん。
すっかり怯えたのか、氷雨さんはカウンターを乗り越えて奥に隠れてきた。
跨ぐ拍子に少しワンピース部分が怪しかったのか「履いてた?」「履いてないんじゃね?」「俺は黒だと思うよ」などとガキどもが騒いでいる。流石に履いていてほしい。
くいくい、と姫宮さんが手招きしている。あ? 俺呼ばれてんの?
真向かいに座れとハンドサインで伝えてくるので言うとおりにすることに。
「女に抱き心地なんて関係ないよね?」
「もちろんです。ファイトの腕が一番ですよ」
「思ってないことを呟くたびに、氷雨ちゃんの乳を思いっきり抓るからね」
「流石に可哀想すぎるでしょ……!!」
「もちろん乳首を抓るからね」
「やめてあげてくださいよ!! 抱き心地なんて相手への好感度で変わるでしょ!!」
「たしかに……」
ふぅむ……と頷いて席を立ったかと思えば、カウンター奥から氷雨さんを連れ出してきた。
そのまま俺の向かいに氷雨さんを座らせると、姫宮さんは俺の隣に座った。
太ももの内側を撫でないでほしい。
「じゃあスターターセットが2箱あるから、氷雨ちゃんは好きなの使いなよ」
「な、何もなしだよな? 勝っても負けても……」
「あ、いつもどおり賭ける?」
「普段、どういう扱いしてるんですか?」
「えへへへ」
姫宮さんが笑うと、氷雨さんがびくりとしている。
あの勝ち気な氷雨さんがここまで殊勝になっている辺り、相当な「わからせ」を受けているようだ。さっき言ってた抓りぐらいなら普段からしているのかもしれない。けしからん……
「ちなみに普段何を賭けてるんですか?」
「例えばさっき言ったやつとか?」
「結局抓ってるんですか!?」
「氷雨ちゃん感度いいんだから」
「感度ォ!?」
「あははははははは!!」
姫宮さんが俺のリアクションを聞いてケタケタと高笑いする。
氷雨さんは顔を真赤にしてその恥辱に耐えていた。彼女には珍しく一切抵抗しない。
同僚の乳首を開発するんじゃないよ、まったく。
「冗談、冗談、アタシもスターターセット使うよ。楽しくやろうよ」
「まったく……」
そんなわけで姫宮さんと氷雨さんのファイト。
お互い無改造のスターターセットだから、ファイト展開が緩いのなんの。しかし攻撃側の
「くひひっ!! ウチが勝ったらテメェのそのうっすい乳でも揉みしだいてやるかね!!」
「へー、ふ~~~ん、イキるじゃん。じゃあアタシが勝ったら?」
「ケツでも乳でも好きにさせてやるよォ!!」
あ、
「あ……あ!!」
「なんでも好きにしていいって言ったよね?」
「そ、そこまで言ってなっ……ひゃあああああああああああん!? や、やめっちょっ、そこ弱くてっ……んああああああああああ!!」
…………ごくり。
結局くすぐっただけで終わったので、こけおどしも良いところだった。
公共の面前だから自嘲してくれたのかな。助かる。
周りのガキどもはくすぐりで乱れる氷雨さんの姿を見て、完全に性癖が終わってそうだけど。
そりゃあこんなデカチチが身を捩って悶えてたらそうなる。
「ふぅ、じゃあ次、伊綱がやりなよ」
「はぁ……はぁ……待ってたぜ……!! 今日はテメェとヤリにきたんだからな……!!」
「じゃあ俺もスターターセットで行きますけど……」
「あ、待って。ウチ、今度は防御のほう使う!! こっちのほうが強いだろ、ゼッテー!!」
と言って、姫宮さんが渡してきたデッキを強奪し、自分の使っていたデッキを差し出してきた。
まぁ、なんでもいいけどね……。
「で、何をアンティにするんだ?」
ニヤリ、と笑う氷雨さん。懲りてないのかこの子。
それともそういう性癖なの?
「じゃあどっちの立場が上か、ハッキリさせましょうか」
「ヘヘッ、いいだろう……ウチが勝ったら思う存分犬扱いしてやるッ!!」
その数分後、無様な負け犬が俺の眼前に生まれた。
バフメインで強力な火力で攻撃する軽量クリーチャーが売り。
調子乗っていると、痛い目見ることもしばしば。
光魔
速攻魔法をサーチする効果が高く、コストの補填も効きやすい。
基本的に相手の攻撃をいなしつつ、重量クリーチャーで止めを刺すのが勝ち筋。
なかなかに難しい。