精霊が切り札の世界で、俺だけ孤独に成り上がる 作:エクシーズ次元
「へぇ、こんなカードに封印されちゃうのね……」
「闇のファイターを返り討ちにするとは……流石は伊綱だな」
「運が良かっただけですよ」
翌日、行きつけのカードゲームショップ”フリークス”にて、闇ファイターを倒したことを店長やキングさんに相談していた。こういうときって誰に相談するのが正しいんだろうな。精霊局? まぁ、この二人に相談してからでも遅くはない。
「しかしそうは言っても俺達も門外漢だからなぁ……」
キングさんが腕を組みながら、席に持たれる。
”フリークス”にはファイトスペースとして席が複数あるのだ。
もっとも、この広さではドライバーを使ったファイトはできないので、もっぱら外の公園を利用させてもらっているのだが。
「あ、そうだ! 姫宮ちゃんに相談してみたら?」
店長がカウンターの奥でニコニコしながらそう言う。
もっとも……。
「私、連絡先知らないんですよねぇ……」
「あら意外。けっこう仲良かったんじゃないの?」
「ははは、奴は携帯持ってないと言っていたからな!」
ドライバーを携帯として使うことも出来るのだが、あえてSIMカードを抜くことで電話としての機能を排除することもある。それでも十分ファイトは出来るし、未成年に携帯を渡すことに抵抗がある、というご家庭も今どきでもあるためだ。
姫宮はそういう家のご令嬢だった。
「まぁ、週1~2回は来るでしょうし、急ぎの用事でもないので待ちましょうか」
「でもコイツの仲間が報復とかに来るかもよ?」
「その時はその時ですよ」
…………などと話していると、チリンチリンとショップの出入り口が開いた事を知らせる鈴の音が響いた。ふと、見ていると先日準優勝に終わった舞夏さんである。
このお店にハマったのか。
「やぁやぁ!! 今日も皆集まってるね!!」
「これはこれは舞夏さん。リベンジにでも来ましたか?」
「いや、兄さんの就職先が決まってね。通勤路的に負担がないから、僕が休みの日なら毎朝でも送ってくれるって言うからさ」
時間を確認すると、今は十時。割と時間にルーズな就職先のようだ。
「もちろん歓迎よ、舞夏ちゃん! ファイトスペースは好きに使ってね! 公園も基本的に許可取ってあるからフリースペースなら好きに使っていいわよ!」
店長がニコニコしながらそう言う。
現実で毎日のように公園の許可なんて取れるわけがないのだが、アニメ風世界の七不思議の一つ、カードファイトに異様に甘い周辺住民がココにも適応されているのだ。
「わぁい! じゃあ早速リベンジマッチでも……」
「おい」
……といったところで、舞夏さんを軽く押しのけて男性が出てきた。
舞夏と同じ黒髪赤インナーだが、舞夏さんより赤の部分が少ない。
しかしより髪型が弾けている印象だ。
「ファイトしろよ」
「に、兄さん!? ダメだ、早すぎる!!」
舞夏さんがその男性を抑えるものの、一切引く気はないようで、腕にドライバーをセットしている。どうやら俺に喧嘩を売ってきているようだ。
「ほう、舞夏さんのお兄さんですか? もしかして私とファイトしたい……と?」
「ああ」
「でしたら公園に行きましょう。ここではご迷惑になるのでね」
「いいだろう」
そう言って、店を出て公園へと向かう舞夏兄。
それをオロオロとうろつきながら見守る舞夏さん。
「えと、やめていいからね? すぐわかると思うし、兄さんの実力……」
「ほぅ? 私がやめたくなるほどの圧倒的な実力者なんですか?」
これは面白くなってきた。舞夏さんは「いやその……なんていうか……」などと言っていたが、俺はウキウキしながら彼の後を追った。
公園はいつも通りフリースペースが空いている。
いや実際には四分割されており、2スペースではすでにファイトが行われているのだが、それをうざったらしく思う利用者はおらず、むしろ目を輝かせてファイトを見守るチビッコばかりだ。俺達はその1スペースを占拠し、ファイトを始めることにした。
「先攻はお譲りしますよ。今日は貴方がチャレンジャーですからね」
「わかった。それでは…………」
「「ファイト!!」」
そう叫んだあと、舞夏兄はドローした。
このゲームは先攻ドローするか、手札を一回だけそれぞれ交換できるのだ。
ちなみに後攻は無条件。基本的に先攻有利ゆえのルールだな。
「俺は閃撃龍スターライトドラゴンを召喚するぜ!!」
「なに!? コスト4のクリーチャーを1ターン目に!?」
…………勢いよく舞夏兄がカードをボードに叩きつけたが、反応しない。
もしかしてコンボを発動し忘れたのか、と思ったがどうにも違うらしく本人も首を傾げている。舞夏さんを見ると、ほらやっぱりとでも言いたげに頭を抱えていた。
「…………なぜ召喚できない?」
「コストが足りないからでは?」
「コスト?」
「1ターン始めに1コストたまります。ドライバーに表示されてるでしょう?」
「ああ」
舞夏兄がドライバーの画面を確認する。電子端末って便利だよな。前世だとわざわざサイコロ二つ用意して出目を表に向けてカウンターとして管理してたもん。
「閃撃龍スターライトドラゴンのコストは4。4ターン目じゃないと召喚できません」
「なんとかできないのか」
「出来るカードもあるんですけどね」
「引いていいか」
…………なるほど、どうやら彼は素人のようだ。
それもルールもわかってないレベルの。
俺はそれ以上のファイトは判断し、ドライバーを腕から外そうとした。
「ハァ、わかりました。一旦止めましょう。レクチャーなら卓でやったほうがいい」
「ご、ごめんねぇ……」
「おい」
舞夏さんがペコペコと謝っている所に、舞夏兄が口を出してきた。
いったいなんだろうか。
「逃げるのか?」
その顔は自信満々だった。
「あ゛?」
ちょちょ切れた俺はその3ターン後には大人気なく決着をつけてしまった。
もちろん俺の勝ちである。そりゃあターンエンドも知らず、途中からほぼ舞夏さんが背後霊のように指示していた相手に負けるわけがないんだが……。
ひとまず”フリークス”に戻り、席を借りる。
ついてくるのは表情を一切変えない舞夏兄と、申し訳無さそうにしている舞夏さん。
「…………デッキを見せてくれませんか。対戦した感じ、かなりまとまりのなさを感じました」
というか舞夏さんが背後にたっても、何もプレイしてなかったし。明らかに起きてただろ、手札事故。
「いいだろう。勝者の権利だ」
スリーブにも入っていない素のカード。
いくら頑丈な素材の上、SSRのカードは精霊によって保護されているとはいえ、めちゃくちゃだ。あまり頓着しない俺ですら、二枚重ねてるっていうのに。
「なにこれぇ」
さらにその内容を見て驚いた。全部キラキラだ。
その全てに精霊がついたSSRカード。呪文はなし。
こんなの回るわけがない。
呪文はともかくとして、基本的に低コストで扱いやすい展開用カードには精霊はつかないからだ。
つまり全てが高コスト重量級クリーチャー……!
「とりあえず剥いたパックで光っているカードを全部入れた」
「こんなので勝てるわけないじゃないですか……」
「そうなのか?」
いや精霊が無数に集まっているのは驚嘆の一言なんだけど。
なに? パックの封入率でも操作してんの? この人。
「だから早いって言っただろ、兄さん!!」
隣に座っている舞夏さんがテーブルを叩く。
まぁ、そもそも基礎ルールも分かってないようじゃなぁ。
仕方ない、俺が教えてやるか。
『殊勝だな』
胸ポケットでだんまりだったアルタイアが久しぶりに話してくる。
闇のファイトで疲れていたんだろうか。かなり力を使ったようだしな。
(もちろんです。競技人口は増えたほうが楽しいですから)
それはカードゲームのみならず、あらゆる娯楽の鉄則である。
それに妹と同じように精霊に愛されているようだし。
教えればすぐ上達するだろう。
『どこまでも自分のためというわけか』
(それ以外に何かあります?)
『…………ふんっ』
そう鼻を鳴らして、黙ってしまった。なんなんだ。
昨日倒した闇のファイターの仲間が襲ってくるかもしれないから、しばらくは手放せそうにないんだよな、こいつも。なるべくなら仲良くしたいが無理そうか。
…………ともあれ。
「ちなみにどのカードをメインに使いたいんですか?」
「やはりこれだな”閃撃龍スターライトドラゴン”。一番しっくり来る」
ふむ……”閃撃龍スターライトドラゴン”か。
自分フィールドへの破壊効果を防ぐ能力があり、場持ちが良いカードだ。
コイツを軸にするならば、中~長期戦を目標にするべきだろう。
であれば俺と同じくミッドレンジのデッキが良さそうだな。
「でしたらこの”守護の王道”スターターセットを買いましょう。SSRは入ってませんが、改造すればけっこう強いですし、”閃撃龍スターライトドラゴン”と相性もいいです」
「なるほど、では1セット買うか」
「3セットです」
「1セットしか使わないが……」
「3セットです」
こういうデッキはなぜか買わないと本領を発揮しない。
別ゲーじゃあ1セットでも大丈夫らしいけど。まったく、怠慢だね。
ともあれ俺はカウンターに赴くと、スターターセットを彼に渡して質問をした。
「ああ、えと……お名前は何でしょう? 私は伊綱士郎と申します」
「
そうして、俺達は握手を交わした。
しかし風貌といい名前といい、精霊に愛される体質といい。
やたらとこう……。
カードゲームアニメの主人公っぽい人だな!!
姫宮杏 ……精霊局とも縁があるファイター。携帯を持っていない。
週1~2回は来るらしい。
佐条遊季 ……舞夏の兄。まだ初心者だが多くの精霊に愛されている。
通勤路の関係で、しょっちゅう来れるらしい。