犬の国〜das Land der Hunde〜 作:常夏鳳梨
どうも、常夏鳳梨です。
いやぁ、つい筆が乗ってしまったもので──IF系に近い作品を書き上げてしまいましたw
本作の世界観としては、第二次世界大戦後に一部のコボルト達によって革命が起こった末に、コボルトの国が爆誕した末に物理的に南北が分断されたオルクセン連邦が舞台です。
星歴九四七年。
オルクセン連邦北部のメルトメア州とブラウヴァルト州にて、コボルト達による決起運動こと、フンデ革命から約二年が経過した。
今現在もなお、メルトメアとブラウヴァルトはフンデ共和国の領土として扱われており、共和国側は万が一のことを警戒して7日、北と南を隔てる境界線の辺りに物理的に壁を作っていた。
その壁は、オルクセン側からは野犬が放り込まれている檻だと揶揄されているのに対し、フンデ側からは独立の証として扱われていた。
それもあってか、両国の対立はますます深まっていったのは言うまでもない。
そもそもの始まりは、第二次星欧大戦が終結した直後のことであった。
オルクセンは王国から連邦へと変わってもなお、中立という立場を維持していた。
そのこともあってか、大戦には参加しなかったものの──アスカニアからの攻撃を度々受けていたこともあってか、何故参戦しない!!と憤る者も少なくは無かった。
その中でも特にコボルト達の関心は高かったようで、若いコボルト達の多くは大戦が終結するまでの間、オルクセンへの不満をデモという形で表していた。
しかしながら、そのことにオルクセン側も黙ってはいなかったようで──結果として言えば、この二つの勢力の間で度々武力衝突が発生しては、軍部によって制圧されるということが繰り返されていた。
だが、それは非常にオルクセンとしては不味い一手だったようで、そのことによってコボルト達はますます不満を露わにしていった。
やがて、それが戦時中に少しずつ蓄積されたことに伴い、突如として南北を隔てる壁が建設される形にて、コボルト達はフンデ共和国の樹立を宣言。
当然ながら、そのことに対してオルクセン側は反発したものの──グスタフ王が築いたキャメロットという支援国が居るオルクセンとは違い、フンデ共和国はグロワールからの支援を受けていたため、自然と星欧大陸を中心にした対立構造が出来ていた。
「ねぇ、この店には"流行りの口紅"はあるかしら?」
「──あぁ、あるぜ」
そのためか、ここ数年のフンデ共和国とオルクセン連邦の間では武器を使わない戦争が、情報戦が水面下で繰り広げられていた。
それは後年の一三日間危機と呼ばれる出来事に似ていたが、魔種族の国同士の対立ということもあってなのか、この対立は全てフンデの壁と称される政治的危機の一つとして、後年ではその名付けられる形で片づけられていった。
そのようなこともあってか、フンデ共和国内の首都であるラピアカプツェでは、彼女のように諜報活動に勤しむコボルトも少なくはなかった。
何しろ、コボルト達が中心になって独立したこの国において、オルクセン側の存在であるオークやドワーフ、それからエルフに大鷲に巨狼は意図的に排他されたこともあってか、この国では女コボルトがその役割を担うようになっていた。
これは第一〜二次星欧大戦にて、各国が諜報活動をしていた名残りをフンデ共和国軍が取り入れた結果とも言えるのだが、いわゆる女は愛嬌的な考えもあってか、彼女のように情報収集を中心に活躍する諜報員も多く居たのである。
そして、この日もまた彼女は諜報活動に勤しんでおり
「ほらよ。とっとと行きやがれ」
「もぅ、相変わらず感じが悪いわね」
そう呟きつつ、彼女は自らが受け取った口紅を懐に隠すのと同時にその場を後にして行った。
それから数分後のラピアカプツェの路地裏にて、女コボルトは自身が受け取った口紅を解体したかと思えば、そこに刻まれていた情報を口パクする形にて、声を出さずに読み上げていた。
この頃のフンデ共和国では、機密情報を刻んだ口紅を諜報員である女コボルトに渡し、それを渡された諜報員は別の形でその情報を渡した後、口紅として消費する──ということを行なっていた。
口紅を用いたフンデ共和国の手法は、後に低地オルク語で口紅を意味する名が、リッペンシュティフト・メールと名付けられることになるのだが、それはまだ遠い話である。
「ふぅん、ラピアカプツェ市の職員がオルクセンへの亡命の準備──ねぇ」
口紅の芯に書かれた情報を読んだからか、そう呟く女コボルト。
その数秒後、彼女は路地裏の中を進んでいき──自らの家へと、諜報員としての拠点へと向かっていた。
そして、空の色合いが暗くなり始めた頃に拠点に到着した彼女は、花柄のワンピースや栗色のカツラを脱ぐと、ネグリジェに着替えるとペンを手に何かを紙に書き始めていた。
コボルトという種族は、古くから魔術と呼ばれる通信技術を使える存在として知られていた。
だが、それ以上の魔術通信に関する技術をエルフが用いていたため、彼らはその対抗策として、とある方法を用いた通信を生み出した。
それは、柑橘類の汁を使った特殊なインクを使った炙り出しに近い形での手法で、今現在のフンデ共和国の諜報活動における常套手段であった。
「ふぅ──」
そのため、秘密機関用の書類を特殊インクで書き上げた彼女は、電灯の明かりが付いている市街地を見つつ、思わずこう思っていた。
オルクセンが理想主義者かつ日和見な正義が抱くのなら、私達には私達なりの正義があるのよ──と。
そう思いつつ、彼女は眠りに着き──それから数時間後となる時計の針が六時を指す頃に目覚めた後、女コボルトは女らしい格好から一変して秘密警察の制服へと着替えると、そのままカフェへと向かった。
そこでいつも座る席に座った彼女だったが、その後ろに一人の男コボルトが座ると女コボルトは一言
「──どうせ、いつものやつを頼むのでしょう?」
と言った後、男コボルトはフッと笑うとそのまま彼女の書いた書類を受け取った。
そして、彼は仕事が早くて何よりと声をかけた後、その場を後にしたのだが──それと同時に彼女の下に一杯のコーヒーが届いたため、女コボルトは労いのつもりかしら?と思っていた。
しかし、その思いを無碍にするわけなしはいかないと思ったようで、彼女はそのままコーヒーを飲み始めていた。
これは二度に渡る大戦の後に南北に分かれた魔種族の国にて巻き起こった戦いと、その情報を扱う者達の物語である。
オルクセン王国史のIFモノって良いよね。
何というか、妄想が捗るよね。
てなわけで!!スパイモノをイメージしつつ書いてみました!!
ちなみに、柑橘類の果汁を使った炙り出しの手法は実在します。
あと、女コボルトさんの名前はローゼ・ブルーメです。