犬の国〜das Land der Hunde〜   作:常夏鳳梨

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副題:一方その頃、猪の国では

どうも、常夏鳳梨です。
今回は本作の主人公こと、ローゼ・ブルーメさんの属する組織に関するお話です。

ちなみに、若いコボルトを中心に独立したフンデ共和国ではあるものの、そこには某桃色夫人は関わってはいないらしく──?


犬の国からのなぞなぞ

コボルトの間で古くから伝わる昔話の中に、こんな話が語り継がれていた。

 

昔々──まだコボルトの国が存在した時代に、一匹のコボルトが居た。

そのコボルトはゲーリと呼ばれ、優れた魔術通信を用いて同族の仲間達の心を纏め、オークを筆頭にした他種族の侵攻を退けた彼は、いつしかコボルトの英雄として崇められるようになっていた。

 

フンデ共和国内に存在する組織こと、特務機関ゲーリはそんな英雄の名前から取った存在ではあるものの、その正体は情報統制を率先して行う秘密警察で、それを知ったオルクセン連邦の現政権幹部はこう語った。

これでは英雄と言うよりかは、暴君ではないか──と。

 

それに加え、星歴九四七年一二月時点のフンデ共和国では、無線や諜報面における技術においては発展しつつあった。

その中でも、特に活用されていたのは古コボル語でなぞなぞを意味する名が与えられた機械──レツェルであった。

 

このレツェルと呼ばれる機械は、いわゆる暗号の解読に特化したキャメロット製の暗号機をベースに、センチュリースターで開発されたコンピュータ等の技術を組み合わせたことにより、フンデ共和国側での暗号解読は効率化していったのである。

 

それに伴い、フンデ共和国に潜伏している海外の諜報員の摘発率が高くなったため、彼らの大半は自然とそのレツェルの情報を求めるようになったのだった。

 

「というわけで──君に、暗号機レツェルに関する情報を集めてほしい」

 

それはオルクセン側も同じだったようで、目の前に居るブルドッグ種のコボルト族の牡に対し、そのような命令を下していた。

そのコボルト族の牡──フランク・グリーニッケはレツェルという言葉を聞いた瞬間、思わず唾を飲み込んでいた。

 

レツェルの情報を集めろということは、十中八九この国に潜伏しているかもしれないフンデ側の諜報員を摘発と、オルクセン側で次世代の暗号機開発を進めることを意味していたため、彼がそんな反応になるのは無理もなかった。

 

「お前も知っての通り、レツェルは元々我が国のドワーフ達が開発した代物だった。しかし──」

「レツェルは、一部のコボルト達がフンデ共和国を建国するのと同時に諜報員によって強奪され、今は彼らの道具として使用されている──」

 

フランクが上司の言葉にそう言った瞬間、当の上司はその言葉に対してコクリと頷いていた。

 

彼の言うように──元々、レツェルは第二次星欧大戦時にドワーフ族を中心にして作られた暗号機であった。

 

しかし、その大戦が終結したのと同時にレツェルが完成し、搬送するその瞬間にコボルト達による革命が発生。

そのゴタゴタでレツェルはフンデ共和国へと渡り、今もなおオルクセンへと変換されることはなく、それどころか自分達のモノと主張するのように今もなお使われていることから、オルクセン側は水面下ではあるがレツェルの奪還作戦を試みようとしていた。

 

「しかし、現段階ではレツェルがどこにあるのかは分からないはずでは?」

 

フランクがそんな疑問を口から漏らした時──彼の上司はフッと笑うと、彼に向けたとある書類を渡していた。

それは、メルトメア州でフンデ側の諜報員の活動が異様に活発化しており、その諜報活動が何かしらのことをカモフラージュするための行為ではないか?ということが書かれた報告書であった。

 

それを見た彼は視線を報告書から上司の方を移すが、その上司は彼に向けてこう言った。

 

「フランク──奴らがグロワールどころかロヴェルナから戦闘機を買って、こっちを煽ってるのはお前も知ってるだろう?」

「はい、何でしたら偵察飛行をしていたキャメロットの偵察機を撃墜したとも聞いています」

 

背筋を伸ばした上でフランクがそう報告すると、流石だなと言わんばかりの反応になる上司。

 

彼の言うように、二度目の大戦や独立から二年が経過した頃のフンデ共和国は、悪い意味で目立つようになっていた。

 

まず、フンデ共和国の領空だと知らずに侵入した偵察機に対し、ロヴェルナ製の最新鋭の戦闘機で撃墜し、生き残ったパイロットが今もなお捕虜として扱われていること。

撃墜されたその偵察機は、キャメロットからフンデ共和国を偵察するために派遣された機体らしく、キャメロット側はパイロット解放のための交渉人を探していること。

 

そして──この一件を機に、フンデ共和国側の支援国としてロヴェルナも浮上したことも判明したからか、星欧社会がピリつき始めていたのは言うまでもないことであった。

 

「フンデ共和国の独立は、我々や君のようなコボルトにとっては想定外の出来事だった。特にファーレンス夫人は激しく怒っていてな──風評被害がどうのこうので上層部にクレームを入れていたらしい」

「まぁ、確かにファーレンス夫人は商人とはいえ──そこまでのことに関しては援助云々をしないコボルトですからね」

 

ファーレンス夫人の怒りは最もだと思いつつ、上司の話に耳を傾けるフランク。

 

フンデ共和国が独立して以降、コボルトはフンデに属する方とオルクセンに属する方に分かれていた。

そのためか、多くのコボルト達が暮らすフンデ共和国の独立や行為に対し、風評被害などで苦々しく思っているコボルト達も多く居たようで、諜報員として今現在依頼を受けているフランクもまた、そのうちの一人であった。

 

何故、フンデ共和国はそんなことをするのだろうか?

そう思いつつ、一通り会話を終えた後──フランクが部屋を後にしようとしていた時、オークの上司は彼に対してこう言った。

 

「あぁ、そうだ──一つ言い忘れていたが、フンデ側の諜報員の中には女もそれなりの数が居る。だからこそ、良い女が居たとしても気を許すな。良いな?」

「──了解しました」

 

こうして、フランクは諜報員としてフンデ共和国に向かうため、諸々の準備を進めていくのだった。




と言うわけで、もう一人の主人公ことフランク・グリーニッケの登場回でした!!
W主人公って良いよね!!超良いよね──!!

あと、キャメロット側の偵察機が撃墜された事件はU-2撃墜事件が元ネタです。
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