廃棄世界の村娘ちゃん 作:廃棄世界のつむぎん
村長さん曰く、この世界は終わっているらしい。この世界に未来はないけど、代わりに滅びも訪れない。ってよく言っている。
私には難しい話だ。私に分かるのは、定期的にこの世界に色んなものが流れ着くっていうこと。
私の役割は村までそれを案内すること。
今、私はとてつもなく難しい判断を強いられている。
「はて……。どっちが悪い人でしょうか?」
村の外を散歩中、流れ着いた人間達を見つけたのはいいんだけど。問題なのはその人達が戦っているということ。
「やめてよ! 私とエラが戦う理由なんてない!」
「もうおしまいなんだよ! みんな、みんな殺された! きっとアリスだって殺される! あんな残酷に殺されるくらいなら、私と一緒に死んで!!」
私と同年代の女の子達が斬り合っている。
一人は金髪の女の子。剣と盾を持っている。大剣の攻撃を上手く躱したり、いなしたり、受け流していたりする。
もう一人は銀髪の女の子。大剣を持っていて、ひらひらのドレスが魅力的だ。
「どっちも悪そうには見えないんですよね。かといって、終わる様子もありませんし」
村の外は危険が一杯だ。流れ着いた人を迅速に保護しなくては取り返しのつかないことになってしまう。
このままではあの斬り合いが終わる様子はない。見たところ顔見知りのようだし、身内同士の喧嘩という奴だろうか。
「うんうん。喧嘩するほど仲がいいっていいますしね。じゃあ止めますか」
二人が斬りかかろうと剣を振り上げて、おろそうとした刹那、私は二人の剣の刃を掴んで静止する。
「そこまで。喧嘩を止めるのは気が引けましたが、見過ごすことはできないので無礼をお許しください」
「え!? 私の剣をす、素手で!?」
「動かない……! 誰だか知らないけど邪魔しないで!! 貴方には関係のないことでしょう!?」
大剣の方に力がかかる。中々いい力をしているなと思った。油断したら手が切れてしまいそうだ。
逆に片手剣の方はあっさりと力が抜ける。どうやら金髪の女の子は聞き分けがいいみたいだ。
「やめてエラ。無関係な人に剣を向けるべきじゃない。私を殺したいなら、剣を下ろして」
「おかしなことを言うねアリス。剣を下ろしたら、貴女を斬れないじゃない。邪魔するならこの子もろとも」
「ふむふむ。何やら事情がありそうですけど、私も貴女達を村に連れていかないと。あ」
私の声と共に、二人が私と同じ方向を見る。なにかが空から降ってきて、私達の前に落ちてきた。大量の土煙を上げながら、大きな魔物が現れる。
それを見た金髪の女の子が声を上げた。
「じ、人狼!? それも巨人種!? 下がっていて二人とも。私が逃げる時間を稼ぐから!」
と言いながら、彼女は片手剣と盾を構えて私達の前に出る。その様子を見ていた銀髪の女の子は短いため息の後、大剣を降ろして、彼女の隣に立つ。
「無謀なところは相変わらずね。二人なら倒せるかもしれないでしょ。あんたを殺すのは私なんだから」
「エラ……。うん。やろう二人で」
二人はそれぞれ武器を構える。
ふむ、どうやらこの人達は流れ着いた人たちの中でも戦える方らしい。
けれど、この人達じゃあの魔物は倒せない。
魔物が足に力を込めると音を置き去りにするような速さで私達に肉薄する。二人は全く反応できておらず、二人の無防備な身体に爪が振り下ろされる。
と言ったところで私がその爪を腕を掴むことで静止した。
「おっとっとと。随分とやんちゃな狼さんですね。危うく怪我をしそうになりました」
「え……? な、何が起きたのかしら?」
「ど、どういうこと? なんであなたが?」
二人はどうやら信じられないといった表情をしている。私は片手で狼さんの腕を握りつぶしながら応える。
「私の……私達の役割なんですよ。村に危害を与えようとするものは、何であれ排除しなくちゃいけないんです。これをサボると村長さんが怒っちゃいますからね」
無防備なお腹に蹴りをぶち込む。その勢いで片腕が引きちぎれて、狼さんは大きく吹き飛んだ。
「Aランク以上の魔物をただの女の子が? わ、私悪い夢でも見ているのかしら」
「いや、そんなことよりも……! 危険だよ! 女の子が魔物と戦うなんて!」
「はて? 不思議なことを言うんですね。貴女も女の子に見えますけど」
「ちが……いやそうなんだけど! 私は勇者で、エラは剣聖なの! だから魔物と戦っても平気で」
勇者、剣聖。聞いたことがある。この世界の外側では戦える人は一部だけらしい。その中でも剣聖とか勇者はとても強いのだとか。
「ふむふむなるほど。でも困りました。村長からは保護すべき人間に戦わせるなんてあってはならぬと言われてまして」
「ちょ! 後ろ後ろ! 来てる来てるから!!」
私は引きちぎった腕を振り回して、背後にいる狼さんへそれをぶつける。狼さんは粉々にはじけ飛んで、綺麗さっぱり消えた。
その光景を見ていた二人は大きな口を開けて驚いている。こんな反応されるのも久しぶりだ。
「アリス。私はやっぱり悪い夢を見ているようだわ」
「エラ。多分私も同じかも。急にこんなところに来て、何が起きているのかさっぱり」
「おおっ! 二人ともお揃いの表情ですね! 仲直りできたようで何よりです!」
喧嘩の後は仲直り。これは村の人からさんざん言われたことだ。どうやらこの子達も仲直りできたようで安心安心。
「仲直りしたわけじゃ。まあいいわ。エラよ。た、助けてくれたことは感謝するわ」
「私はアリス。ねえ、ここはどこで、貴女は一体何者なの?」
この世界には色んなものが流れ着く。
人、魔物、古今東西ありとあらゆるモノ。時として街が流れ着くことも。
ただし、この世界は終わっている。荒廃し、破壊され、人々から忘れ去られている。
だから私達、村人は流れ着いた人に聞かれたら、こう答えるのだ。
「私の名前はリリィ。ここは人々から、忘れ去られ、棄てられた場所。
漂流者様、貴方の物語、貴方の旅路をお聞かせください。
ようこそ廃滅棄却世界——廃棄世界へ!」