廃棄世界の村娘ちゃん 作:廃棄世界のつむぎん
私の名前はアリス。勇者をやっている。
いや、今はやっていたかな。私には頼りになる仲間がたくさんいた。けれど、みんな死んだ。生き残ったのは最初の仲間のエラだけ。
私達は魔王に敗北した。なすすべなく蹂躙された。私は魔王の側近を一人打ち倒すことができたけど、その代償にみんなを失ってしまい、最後の聖剣も折れてしまった。
絶望に打ちひしがれたけど、止まる理由にはならない。私は世界を救う勇者。
だからこの廃棄世界までやってきた。仲間の大賢者が言っていたんだ。
この世界には全てに忘れ去られて、全てに捨てられた場所が存在している。過去、現在、未来、ありとあらゆる時間が混在し、決して立ち入ってはいけないと言われている場所。
そこならば聖剣すら流れ着くかもしれない。
私はそのかすかな希望に縋って、禁術を使い、この世界にやってきた。
***
「なるほど。聖剣を求めてきたのですね。そういうのは見たことないのですが……。もしかしたら知ってる人が村にいるかもしれません!」
廃棄世界にはいろんなものが流れ着くため、それを拾って村で保管することもある。
武器や魔法書、伝説の秘薬などなど。ただ拾ったところで使う人がいないから大体は倉庫で眠っている。
私には何が何だか分からないから大体放置だ。
「しかし魔王ですか。外は物騒ですね」
「いやいや、ここもかなり物騒というか」
「さっきから魔物の鳴き声ばかり聞こえるじゃない!! どういうこと!?」
エラさんが言う通り、遠くから魔物の鳴き声が聞こえる。流れ着くものの中で圧倒的に多いのは魔物だ。
魔物は流れ着いてから放浪して、近くにいた魔物と争う。なのでよく鳴き声が聞こえる。遠くから聞こえる分には平和なんだけど、外では違うのだろうか?
「安心してください。あの様子じゃ、村に辿り着く前に死んじゃいますから」
「し、死ぬってどういうこと……!?」
「文字通りですよ。他の魔物に殺されるか、あるいは奈落に落ちて消えるかのどちらかです」
「奈落……? どういうことなの? リリィちゃん」
外には奈落がないのだろうか? あって当たり前のものだと思っているんだけど違う……?
「奈落は奈落ですよ。この廃棄世界はそもそも大地がないんです。ほら、上を見てください」
「上……? え、なにあれ」
「だ、大地が浮いている!?」
外の世界には大地があって、大地は一番下にあるらしい。
けれどここでは別だ。大地はどこにでも存在する。逆に大地がないところに落ちれば戻ってこれなくなってしまう。
「さて、着きましたよ! ここが私達の村です!」
「おお、意外となんていうか」
「普通……ね」
私達の村はそれなりに大きい。人も百人以上は住んでいる。
この村は元は廃村で、誰もいなかった。村長が見つけて人が住めるようにし、綺麗に整えていった結果、村として機能するようになった。
普段は平和でそれぞれがそれぞれの生活を送っている。
「先ずは村長さんに挨拶をしましょう! 空いている家もくれるはずです!」
「ちょ、私達はここに暮らすつもりとかないけど。いいの? 家なんか」
「そうよ。野宿なんて慣れているし、別に今更どうってことは」
そういえばアリスちゃん達は聖剣を探しにここにきた人達だ。この廃棄世界に目的があってきた稀有な人だ。
永住するつもりはないのだろう。だから断っていると思う。
「大丈夫ですよ。家は余っていますし、それに」
「微弱ながら稀有な魔力が二つ。勇者と剣聖。懐かしくも珍しい来客だ」
噂をすれば何とやら。村長さんが向こうからやってきた。相変わらず声は低いし、初見の人から怖がられるような見た目だけど、今日は機嫌が良さそうだ。
「こ、この人が村長……?」
「ぎ、ギルドマスターとか、騎士団長の間違いじゃないの!? ふ、雰囲気がおかしいわよ!」
「村長さんは昔からこんな感じですし。最初は怖いですが、少しすれば慣れますよ」
「左様。こちらに敵対の意思はない。汝らの瞳に光を見た。ならば歓迎すれど、拒絶する理由はない」
アリスさんもエラさんも少し警戒している様子だ。うーん、怖い人だけど悪い人ではないのだけど。
「ちょうどよかった。アリスさん、村長さんに聞いてみたらどうですか?」
このままお互いに溝があっても仕方ない。こちら側に敵意がないとこの二人に示してあげよう。
「あ、あのっ! 聖剣ってあ、ありましゅか!? か、噛んだ……」
「聖剣……。そうか聖剣。くくく、ハハハハハハッッッ!!!」
村長さんが珍しく上機嫌! あんな上機嫌な村長さんは久しぶりに見た!
あ、でもすごい高笑いだから、お二人は少し引いているかも……。
「少女よ。その背にあるのが聖剣の残骸か?」
「……っ! 分かるんですね。これが聖剣です」
アリスさんが背負っていた鞘を前に出す。その中には真っ二つに折れた剣があった。綺麗に真っ二つになっている。
「そうか、そうか。この聖剣は役目を果たしたということか。ククク、面白いものを見せてもらった」
「は、はあ……。それで聖剣ってあるんですか?」
「この村を出たところ。飛竜の死骸で埋め尽くされた谷底に眠っておる。リリィに案内させよう」
「あの谷ですね! 久しぶりに行くので悩まないか心配ですが、大丈夫でしょう!」
飛竜の谷底とみんな呼んでいる場所。あそこは楽しい場所だ。色んなものが流れ着くし、遊び相手にも困らない。最近は行けていなかったから、今から行くのが楽しみだ。
「しかし、お主らどうやってここまで流れ着いた? この世界には来ようと思って来れる場所ではない」
「仲間が調べていたんです。もしもがあった時の保険として」
アリスさんは深刻そうな面持ちでそう語る。
確かにこの世界には来ようと思って来れる場所ではない。
「禁術でここまでの道を無理矢理作りました。聖剣に込められた魔力も使い果たしました。だから、聖剣を手に入れなければ私達は戻ることができません」
「なるほど。リリィ、お前が拾ってきたんだ。最後まで協力してあげるといい。村のことは心配せずとも我々がどうにかしよう」
「分かりました! ということなのでしばらくの間は協力しますよ。よろしくお願いしますね」
私はニコリと微笑みながら、二人へそう言う。
「言っておくけど、私はまだ諦めたわけじゃないから。私が聖剣探索に付き合うと思ったら大間違いよ。勝手にやりなさい」
「エラちゃんってば! ご、ごめんね。エラちゃんも悪気はないから」
「分かっていますよ。さて! 二人に貸す家まで案内しますね!」
私はそう言って二人を村にある家まで案内するのであった。