【完結済み】SF世界に転生したら人類どころか人外で人類史の空白だった件~人間じゃないけど超優秀な配下を従えてます~   作:黴男

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132-シルターエルト星系挟撃戦~Ve’z・オルダモン・クロペル~

そして、一週間後。

連合軍はシルターエルト星系に集結した。

Ve’zの守護下にあるとはいえ、これまで通りであればVe’zは単独行動を好み、こうした些事には介入してこないだろうと、エルドリヒは考えたのである。

だが、それは誤りである。

 

『司令官、ワープ反応を検知! 総数、百六十万!』

「.....来たか」

 

TRINITY.司令官ディートリアは、その報告に顔を上げた。

同時に、キロマイア、オーベルン、ジスティカ、ヘルティエットの面々も、敵の接近を知る。

それは、オルダモン側のハタカニ星系と、クロペル側のイジカ星系からの挟撃である。

 

『皆、此度の戦いは、祖霊に勇猛さを示す戦いです。卑怯にも徒党を組み、クロンペリャの地を踏み荒らそうとした者どもに、制裁を!』

『クロンペリャの輝きよ永遠たれ!』

 

クロペル共和国軍、八十万。

内二十万はドミネーターノクティラノスである。

ミサイル戦艦で固め、巡航ミサイルによる勝負でケリを付ける戦法を取る。

 

『アタシらの愛する祖国を穢そうとした奴らだ! 主席の名のもとに、粛清する!』

『カーダモア主席万歳!!』

 

今回進軍するのはSOVではあるが、彼らの所属はカーダモア主席である。

イワノフの後を継ぐはずだったダグトレが指名した、次期主席。

彼の名を掲げるオルダモン艦隊は、得意の高機動戦を活かしたパワーレーザー砲とスマートミサイルによる艦隊八十万を展開していた。

その内四十万がラエリス=クイスティラスではあるものの、武装はそう変わらない。

 

『挟撃されたか......だが、ワープで離脱すれば.....』

『これより、Ve’z公式生配信を開始する!』

 

TRINITY.指揮官が命じようとしたその時、艦橋中のサブモニターに、見慣れぬ顔が映った。

だが、キロマイア皇国側の通信が騒がしくなった。

 

『こ.....この女は、確かVe’zの支配者.....!』

『卑怯にも六十万の連合軍で、我がVe’zの庇護下にあるオルダモン連邦とクロペル共和国を襲撃し、領土を奪い取ろうとした者達を処刑する配信だ。目を背けるのは各々の自由だが、現実を知れ』

 

それは、オルダモン連邦、クロペル共和国を含めた全ての国家で配信されていた。

携帯端末が強制的に乗っ取られ、庶民から海賊までがそれを見ていた。

 

「やられた......!」

 

TRINITY.指揮官は歯噛みする。

ここから蹂躙されれば、求心力などあってないようなもの。

TRINITY.の立場は地に墜ちる。

だが、逃げる事も出来ない。

逃げれば、逃亡の汚名を着せられる。

このような滅茶苦茶な手段で、情報を発信されれば大義名分などどうにもならない。

 

『...........どうされるのか?』

「戦うほかあるまい。戦力を二分する、通常通りオーベルンとヘルティエットはオルダモン連邦と、キロマイアとジスティカはクロペル共和国と戦え。我々は五千ずつで支援する!」

『『『『了解!』』』』

 

各々の感情は今、一致していた。

文字通り彼らを、国民が見ているのだ。

負けるわけにはいかない、恥を晒すわけにはいかないのである。

 

『全艦回頭、ターゲット開始!』

 

連合軍の艦隊が二つに分かれ、一斉に接近を始める。

 

『ドミネーターノクティラノス、攻撃開始。ラエリス艦隊はオルダモン連邦艦隊にアンカーせよ』

 

Ve’zの艦隊も動き出す。

ドミネーターノクティラノスがベネディクトを展開し、ラエリス艦隊が同数のオルダモン艦艇の背後にぴったりと追随する。

 

『全艦隊、攻撃態勢に入れ。『アクトラの構え』を展開せよ』

『分隊アルファ~ズールは散開せよ。分隊長はそれぞれ旗艦の指令に沿って動け』

 

クロペル共和国軍は誘いの構えを取り、堂々とドミネーターノクティラノスを盾にする形で展開を始めた。

オルダモン連邦軍はスクアッドに分かれ、ラエリスと共に布陣した。

 

「ジアン殿」

『攻撃を開始せよ』

「ディオナ様」

『蹂躙しな』

『エリアス様』

『踏み潰せ』

 

そして、連合軍が攻撃するより先に、クロペル共和国軍が一斉にミサイルを発射した。

それに合わせる形で、ドミネーターノクティラノスがベネディクトを一斉射し、ジスティカ王国艦隊の前衛に甚大な被害を与える。

そこに遅れて到達したミサイルが襲い掛かり、沈んでいなかった戦艦群にとどめを刺す。

爆炎の中からTRINITY.戦艦が現れ、砲口をドミネーターノクティラノスに向けた。

 

『貴様らさえいなければァッ!!』

 

TRINITY.艦の一斉射撃。

しかし、ドミネーターノクティラノスのシールドはそれを真正面から弾いた。

逸れた光線が、背後の虚空に消えていく。

 

『バカな!?』

『制裁を実行する』

 

ドミネーターノクティラノスの艦首に、エネルギーが集っていく。

TRINITY.艦の主砲と同程度の時間で、超兵器「ナイトレイ」が放たれ、TRINITY.戦艦は為す術も無く、余りにも呆気なく轟沈した。

最大射程の長いナイトレイは、戦艦を吹き飛ばした後背後にいたキロマイア艦隊を薙ぎ払った。

 

『.........あの、主力の首は.....』

『問題ありません。計算の上で発砲しました』

 

ジアンの心配そうな声に、ドミネーターノクティラノスは冷たい声で答えた。

 

 

 

その頃、戦場の反対側では。

オルダモン艦隊とラエリス艦隊が共闘していた。

分隊に分けられた艦隊が、無数の龍のような動きでオーベルン・ヘルティエット・TRINITY.艦隊の間をすり抜け、パワーレーザーで薙ぎ払い、ミサイルでとどめを刺していた。

 

『何をしているのですか? 敵を止めなさい!』

『司祭様! こいつら....とんでもない連携です、とても我々では.....!』

『司祭様、離反者が!』

 

オーベルン神聖連合は神の名の元に集う国家ではあるが、数々の宗教を併呑してきた影響で指揮系統を崩され始めていた。

生まれた時から祖国に従う歯車として教育され、上官に絶対の信頼を寄せているオルダモン兵とは、明らかに練度の差で負けていた。

おまけに、まだ教化の終わっていない異教徒に離反され、陣形そのものが崩れ始めている。

そこに、群体から離散したラエリス艦隊が襲い掛かり、数隻を体当たりで貫いて沈め、また群れに戻っていく。

 

『祖国の為に!』

『オルダモン万歳!』

 

そして、ラエリス艦隊と全く同じ動きで、交差し合う2つの群体から数隻が離脱し、付近のヘルティエット艦隊にミサイルを放ち、パワーレーザーで撃沈させて群体に戻っていく。

 

『何をやっている! ヘルティエット王国騎士の誇りを見せよ!』

『お言葉ですが司令官! 勝てぬ戦でどう心が躍りましょうか! 死地に追いやっておきながらふんぞり返る王に誰が従いましょうか! 忠誠は死で以て償うものではありませんぞ!』

 

名もなき騎士のその言葉は、ディレクターのケルビスの手で全国放送された。

そして、同時刻――――ヘルティエット王国のあちこちで、武装蜂起が発生。

弱かった政権の足元が、突き崩されたのだ。

 

「王よ。どうなされますか?」

「し.....知りません! どうにかなさい!」

 

ハニカ王は取り乱し、そう叫んだ。

そして、それが――――王国騎士団長である男の、最後の慈悲を振り払った結果でもあった。

 

「王よ、これだけは避けたかったのですが――――どうか、お納めください」

「がはあっ!? あ、貴方は......!」

 

王国騎士団長は、その剣で女王の心臓を突き刺した。

こうして、指揮系統が完全に崩壊したヘルティエット王国は、徐々に追い詰められていくのだった――――

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