【完結済み】SF世界に転生したら人類どころか人外で人類史の空白だった件~人間じゃないけど超優秀な配下を従えてます~   作:黴男

46 / 52
046-滅亡惑星デート

数日後。

僕はエリスと一緒に、『宝物殿』内部の惑星デートを敢行していた。

事前に降りて拠点を作っておいたので、安心してテレポートできる。

彼女は今日は、ちょっと暑いこの惑星に合わせてワンピーススタイルだ。

....僕は関係ないが。

 

「どうだ?」

「凄いところね.....」

 

昔はそこそこの文明が発達していたらしい星で、海の面積が多かったので「青」を意味するVe’zの言葉の名前が付けられていたものの、今は滅んでしまったようで誰もいない。

自然消滅のような形で人が消えたようで、かつての都市は植物に侵食されて荒廃している。

こんなバックストーリーがありながら、特に有害そうな生物も植物もなかったので、エリスを呼んだ。

 

「オルトスのような国だったらしい。当時の記録媒体は全部風化してたが、記念碑が残っていた」

 

Ve’zの超技術は数千年の劣化をものともしないが、通常の技術体系では数千年も経てばこうなってしまう。

この星にあった国の名前は、少なくとも「カークス」「イドラ」「コー」の三種類を確認している。

全部民主主義だったらしい。

人間が統治する以上、何らかの破綻があったのだろう。

 

「どうして私を呼んだの?」

「丁度いいから、ここでピクニックでもしないか?」

 

僕は一緒に持ってきたコンテナを指差す。

自走式で、僕たちに合わせて付いて来るはずだ。

 

「変な趣味ね....いいけど、私も好きよ。こういうの、なんて言うんだったかしら....」

 

ちなみに僕らが今いるのは、半壊したオペラハウスだ。

センサーには何も映らないが、暗闇に何かが蠢いているようで少し不気味だ。

 

「表通りに出よう」

「ええ」

 

僕は触手で瓦礫を退け、エリスが通れる道を作る。

だが、エリスはそんな事をしなくても、瓦礫の上を跳びながら移動していた。

 

「何をしている?」

「床に落ちたら死んじゃうっていう、戯れよ」

「面白そうだ」

 

小学生の頃は、そういうのが好きだった時もある。

僕も彼女に合わせて、瓦礫の上に立つ。

だが、瓦礫が砕けて床に転がる羽目になった。

総重量の事を忘れていた。

 

「下手ね」

「慣れないことはするものじゃないな」

 

僕は立ち上がる。

その時、ある違和感に気付いた。

僕は恥ずかしい姿をさらして、それを笑われたのに、何故か怒りが湧いてこない。

どういうことだ....?

 

「それにしても、笑う事はないだろう」

「ごめんなさい、エリアスって何でもできると思ってたから、驚いたのよ」

 

僕たちはそんなやり取りをしながら、表通りまで出る。

あちこちに放置された車輛から、経った年月が察せられるものがある。

 

「タイヤで車を? 随分非効率なのね」

「昔は、どこもそうだったんだろう?」

「.....オルトスじゃ、だいぶ古代よ? ああでも、一部の惑星ではまだ主流ね....」

 

僕は地面に落ちている携帯端末を拾う。

一昔前の地球みたいに、折り畳み式だ。

スマートフォンのような革新的なものは生まれなかったらしい。

 

「どうして死体が無いのかしら?」

「とっくに風化したんだろう」

 

白骨化した人間が、完全に風化して消え去るほどの年月が経ったのだろう。

実際この表通りも、植物がアスファルトを破って生えているせいで歩きづらい。

 

「食事をする場所を探さないとな」

「そうね.....ちょっと虫が多いわ」

 

コンクリートジャングルだったようだが、今は別の意味でジャングルだ。

平均気温が27℃、平均湿度が62%だから、本当にジャングルだ。

 

「.....エリス、上で食べないか?」

 

僕は無事そうに見えるビルを見つけ、指差す。

エリスは頷くと、僕に続く。

崩落したビルの中を歩き、なぜ崩落しないのかを知る。

 

「そうか、木の根が...」

「凄いのね、樹木って」

 

木の枝が張り巡らされ、風化したコンクリートを補強しているのだ。

僕らは一気に屋上まで駆け上がる。

 

「わぁ......」

「....凄いな」

 

風が吹き抜ける。

植物に覆われた都市が一望できる、いい場所であった。

 

「遠くまで続いてるのね」

「ああ、この星全体がこんな様子だ」

 

人口が膨れ上がった後にすべて埋め立てられたのか、視界の中には海すらない。

水没した地域はあるが、水は湖サイズで存在しない星だ。

 

「さて、食事は何か....って、ケルビス印か...」

 

ケルビスは最近、Ve’zの内部で「ケルビス印」というブランドを作り、加工品を売るようになった。

といっても、僕かエリスしか買わないが。

いや、ポラノルが戯れに食べていたのを思い出した。

 

「お茶と....サンドイッチのようだな」

「私、この....何の野菜かしら、これ好きよ」

「僕も、このサンドイッチは好きだ」

 

ケルビスの不慣れな様子の手作り感が、母親の作ってくれた料理を思い起こさせる。

あまり料理の得意な人間ではなかったからな。

僕らは暫し食事を楽しみ、そして帰還した。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。