【完結済み】SF世界に転生したら人類どころか人外で人類史の空白だった件~人間じゃないけど超優秀な配下を従えてます~   作:黴男

7 / 20
007-奇妙な出会い

「はぁ...?」

 

今はちょっとタイミングが悪かったなあと思って見ていたのだが、急に謎の光が謎の構造物を破壊した。

そして、五分も掛からずに全部塵になってしまった。

あの光線はどうやら「アルカンシエル」と呼ばれる兵器らしい。

つまり、やったのはVe’zの戦力という事だ。

何故だ......?

 

『ご覧ください、宝石の埃は我々が掃除いたしました』

「.........そ、そうか」

 

やらかしたかもしれない。

いや、やった。

僕がやったんだ。

失言だった。

 

「......よくやった。次からは、戦力を動かすときは通知を入れてほしい。...もしくは、出す戦力の規模を僕に決めさせてくれ」

『了承いたしました、エリアス様』

 

何人死んだ?

戦闘ログを調べても、見当たらない。

ようやく僕は理解した。

カサンドラ達は、結局AIなのだと。

人間が何百人死に絶えようが、主の命令でないことは記録しない。

人の命を大事にしようなどと、人間主観の考え方はしないのだ。

 

「......もっと、気を付けないと」

 

僕はVe’zの主だ。

急に押し付けられた役割だけど、世界のバランスからかけ離れているこの勢力を、何とか引っ張って行かないと。

そして、帰れたら帰ろう。

弟の顔を見て、両親に謝って。

それから色々考えればいい。

 

 

 

 

 

 

数時間後。

星の数を数えるのにも飽きた僕は、都市の外周を歩いていた。

 

「.........」

 

この都市では、娯楽は少ない。

Ve’z人は生命の高みである「完全なる満足」に到達した種族なので、あらゆる欲求を超越した結果、色々欠けているのだ。

…要約すると、研究くらいしか趣味がなさそうな民族ということだ。

 

「そうだ」

 

僕はその辺のベンチに腰を下ろし、目を閉じる。

唯一暇をつぶせそうなものを思い出したのだ。

 

『神経接続:思考中』

『遺伝情報:承認』

『接続開始:不安定性0.001%』

 

目を閉じると、僕の身体は都市コンピューター内部にある広大な電脳空間に飛んでいた。

ここは、知識の宝庫だ。

過去から現在にわたって、Ve’zが収集してきた書籍のデータが全てここにある。

勿論、その中身はここに来なくとも全て知識としていつでも引き出せる。

でも、この目で見なければ知識の意味はないだろう。

 

「.........」

 

僕が「絵のついた本が読みたいな」と思うと、本棚のいくつかから本が消え、漫画本によく似た本が詰まった本棚が目の前に現れる。

ただ、実際は眺めるだけに終わる。

星が違えばセオリーも違うので、地球人的な感覚で愉しめる本は少ない。

 

「......」

 

成程、と思う。

こんな何もない場所では感情や欲求を捨てなければ、気が狂ってしまうだろう。

事実、僕が使っているこの身体はエリアス、つまり女性のものだが、既にその身体機能は失われて久しい。

食欲・睡眠欲・性欲、その全てが”抑制”されているわけではなく”存在”していないのだ。

 

「......」

 

気づけば、僕は日の差し込む一室にいた。

電脳空間では何でも再現できるからだろう。

僕はそれを、手で振り払って消す。

結局こんなもの、何の慰めにもならない。

 

「さて、そろそろ........!?」

 

その時。

本体の方に何かが起きて、神経接続が強制的に遮断される。

 

「ぐ........」

 

目を開けると、目の前に何かがあった。

高く跳んで、反重力スラスターで空から俯瞰する。

 

「これは.........船か?」

 

酷く損傷している。

落ちてきたらしい、それに、Ve’zの知識にはないものだ。

そもそも、三重のシールドを突破してここに来た以上、考えられるのはVe’zの技術をはるかに超えたワープ技術か、それとも......

 

「ワームホール、か」

 

自然発生のワームホールの発生だけは、Ve’zでも妨害できない。

でも、たまたまここに飛んでくる事なんか起こるのか?

 

『エリアス様、その場をお離れください』

「問題ない」

 

僕は触手を使って、船に近寄る。

ハッチを両手で掴んで剥がす。

 

「っ」

 

直後、身体に衝撃が走る。

ふと身体情報を参照すると、胸に綺麗に銃創が走っていた。

 

「やってくれる」

 

内部に入り込み、攻撃者に掴みかかる。

 

「くぅ....ッ!」

「女だと!?」

 

視界に入った攻撃者の正体は女性だった。

とりあえず、触手で縛って外に放り出した。

何か叫んでいるので、ライブラリから言語を解析する。

2年前が最終更新だが、オルトス王国で共通して使われる言語のようだ。

 

「な、なんで死なないの!」

「悪いが、心臓がないのでな」

 

ちゃんと胸を狙っていた。

ほぼズレのない、高精度の射撃だ。

銃を見る限り、アシストもほぼない状態で放ったことになる。

残念ながら、Ve’z人は心臓で血液を循環させてるわけではないので、心臓を撃っても死なない。

慌てて治療したが、何かあるといけないのであとで別のクローンに意識を転送しておこう。

 

「あ、あなた、人間じゃないのね!?」

「よくお分かりで」

 

僕の胸から、橙色の血が流れているのを見て、人間じゃなさそうだと分かったようだ。

 

『エリアス様! ......お怪我を! その生命体を抹殺します!』

「待て」

 

僕は命令一つでその場にいる戦闘ドローン全体を無力化する。

 

「僕はエリアス。君はどこから来た?」

「....化け物に語る言葉はないわ!」

「そうか」

 

僕は彼女を抱きかかえ、メディカルベイ(医務室)にワープする。

突然周囲の景色が切り替わり、彼女は驚いているようだ。

 

「ぐっ」

「寝ていろ」

 

適当なメディカルポッドに放り込んで、起動する。

彼女はしばらく抵抗していたが、ただの人間だったようで、メディカルポッドの睡眠導入剤に抗えずすぐに眠りだした。

さぁ、あの船を解析してみよう。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。