タロスに騎乗、発進した後に私達は即座にUSJに進路を向けて全速力で飛んでいた。
エースに飛行能力はなく、実際には跳躍力が大きく増すだけなのだが、それでも格納庫からUSJまでならば、一回の跳躍とブースター全開を合わせればどうにかなる。
『キロ。現在USJ内では多数の生体反応が検知されています。その内の半分以上は雄英に登録されていない反応を出しています』
「恐らくは、それが今回侵入してきたと思われる
『各生徒達は無事のようですが、教員と思わしき生体反応が若干弱くなってきています』
「マジですか…!」
相澤さん…13号さん…!
あの二人をやるとか、一体どんな相手が攻め込んできたって言うんですか…!
「と言うか、現在のUSJは確か全体的にジャミングが掛けられている筈では? よく分かりましたね?」
『私のレーダーは特別製ですので。米軍の特殊部隊級のジャミング兵器ならばいざ知らず、この程度のジャミングならば私にとっては無いのと同じです』
「それはご立派…」
流石は『天災科学者』の最高傑作。
私と『同類』なだけはありますね。
「ならば、オールマイトの状況は分かりますか?」
『イエス。現在、オールマイトと思わしき個体は、何らかの相手と交戦中の模様』
「何らかの相手? 分からないんですか?」
『不明です。オールマイトの交戦相手からは一切の生体反応が確認できません』
「はぁ?」
生体反応が無いって…そんなの有り得ないでしょ…。
「まさか、オールマイトはゾンビと戦っているとでも言う気ですか?」
『世の中には多種多様な個性が存在しております。生体反応が検知できない個性…それこそ『
「生ける屍…ねぇ…」
確かに、そう言われたら何も言えないけど…でも…。
「…過去には『吸血鬼』の個性を持つ人もいたけど、それと似たような個性…?」
『可能性としては有り得るかと』
それはヤバいかもな…。
あの手の個性は発現した瞬間に脳内のリミッターが強制解除されて、他を圧倒するような身体能力を得られる。
過去の怪我によって大幅に弱体化している今のオールマイトでは分が悪いかもしれない…。
「…タロス。状況は私達の予想よりもヤバいのかもしれません。速度を上げてください」
『了解。キロ、USJの正面扉が破壊されているようですが、どうしますか? そこから飛び込みますか? それとも…』
「恐らくはオールマイトが入る際に破壊したのでしょう。構いません。こちらも正面から突撃しなさい。遠回りをしている暇はありません」
『正面入り口前には生徒達がいるようですが』
「私達が行けば嫌でも横にズレるでしょう。彼らだって、高速で突っ込んでくるタロスに轢かれたいとは思わないでしょうし。でも、念には念を入れて忠告ぐらいはしておきますか。タロス、外部マイクをオンに」
『了解。外部マイクをオンにします』
よし、これで…あ、USJが目の前に迫って来た。
言うならば今しかないな。よし。
「そこにいる貴方達!!! 死にたくなかったら急いでどきなさぁぁぁぁぁい!!!!」
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
『そこにいる貴方達!!! 死にたくなかったら急いでどきなさぁぁぁぁぁい!!!!』
突如として入り口の奥から聞こえてきた謎の声。
それを聞いて最初こそ『何事だ』と全員が驚き戸惑っていたが、すぐにその言葉の意味を 目で理解することになる。
「な…なんだあれ!?」
「う…嘘だろぉ!?」
「そ…外から…外から…!」
「「「巨大ロボットが突っ込んできたあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!???」」」
言われた通り、急いで横たわっている13号を抱えて横にズレるA組生徒達。
その中の一人である『麗日お茶子』は、今の声にどこか聞き覚えがあった。
(あれ? 今の声って…もしかして…?)
だが、そんな呑気なことを考えている暇など状況は与えてくれず、すぐに彼らがいた場所に巨大ロボット…タロスが入口そのものを粉砕しながら中へと入って来た。
「な…なんじゃこりゃあぁぁっ!?」
「雄英には、こんな物まであるのか…!?」
生徒達が戦々恐々している中、倒れている13号が視線だけをタロスに向けてきた。
「こ…この機体は…タロス…! なら…中に乗っているのは…」
彼女の視線に気が付いたのか、タロスの方も13号の方を見た。
『13号先生…これまた派手にやられましたね。大丈夫ですか?』
「大丈夫…と言いたいですが、流石に少しヤバいですね…。でも、今はそれよりも…!」
『分かっています。申し訳ありません、13号先生。速やかに状況を終了させて貴方の応急処置に移ります』
「お願いします…。貴女が来てくれたのならば心強い…頼みましたよ…『ライダー』…」
『…了解です』
タロスの視線が13号から、噴水のあるセントラル広場の方に向く。
そこでは、既にオールマイトが脳みそ丸出し状態の薄気味悪い未知の
『アレがそうか…。タロス』
『了解。ターゲット確認。広場まで跳躍します』
背部のエールストライカーに火が宿り、それを見た生徒達が更に遠くまで避難をする。
それを確認したタロス、及び操縦者であるライダーは一気に飛び上がり、その間に謎の脳みそ敵に向けて標準を合わせる。
それを見ていた敵連中の中核と思われる黒い靄の男と全身に手を付けている男が、その迫力に思わず後ずさっていた。
「お…おいおい…なんだよありゃあ…! オールマイト以外にもあんなのがいるだなんて聞いてないぞ…! どういうことだ黒霧…!?」
「わ…分かりません…! あのロボットは一体…!?」
彼らが驚愕している間にタロスが脳みそ敵に向けてビームライフルを構え、そして…。
『オールマイト!! そこから後退を!!』
「その声は…鋼野くんか! 了解だ!!」
オールマイトは凄まじいバックステップをして、生徒達に抱えられている相澤の所まで戻ると、その瞬間に脳みそ敵の胴体を一筋のビームが貫いた。
「う…嘘だろぉッ!? ビームライフルかよぉっ!?」
「あんなロボット…見たことが無いわ。あれは一体…?」
「い…今の声って…あれは…まさか…!?」
一人だけ、タロスの操縦者に心当たりがあるようで、機体よりも中の方に驚きを隠せないでいた。
脳みそ敵がビームライフルの威力にたたらを踏み、その直後にUSJ全体に凄まじい地響きを鳴らしながら着地した。
『お待たせしました、オールマイト。ライダー…只今到着しました』
「待っていたよ! そうか…それが、君のヒーローとしての姿…そして、君のサイドキックなんだね」
『その通りです。タロス。ご挨拶を』
『了解』
タロスのカメラアイが点滅し、その顔がオールマイトの方に向く。
『初めまして、オールマイト。私はヒーロー『ライダー』の支援用AIにしてサイドキックとして登録されているタロスと申します。以後お見知りおきを』
「こちらこそ初めまして! タロス君! 今まで色んなサイドキックを見てきたけれど、こんなにも巨大なサイドキックには初めて会ったよ!」
機械相手にも決して怯まず、それどころか普通に挨拶を返すオールマイト。
こんな所も、彼がナンバー1である所以なのかもしれない。
『相澤さん、ご無事ですか? 随分と酷くやられましたね…』
「うぅ…騎呂か…。フッ…タロスに乗ってるってことは…お前の本領発揮…だな…」
『それ程でも。それよりも…』
「あぁ…悪いが…ここは頼む…」
生徒達に抱えられながら、相澤は視線だけずっとタロスの方に向けていた。
そんな様子を見た彼らは、思わず質問をした。
「あの…先生。あのロボット…いや、中に乗ってる人と知り合いなんですか?」
「あぁ…知ってる。前に何回か…ヒーローとして一緒に仕事をしたことがある…」
「え? それじゃあ、あの人? もヒーローなのかしら?」
「そうだ…」
「マジかよ…」
確かに世の中には多種多様なヒーロー達がいるが、まさかロボットに乗ったヒーローがいるとは流石に想像もしていなかった。
幾ら何でも前代未聞すぎる。
「『ライダー』と『タロス』…あの二人が揃った時…その実力は全盛期のオールマイトにも匹敵する…」
「ぜ…全盛期のオールマイトに…!?」
『平和の象徴』として、全ての悪の抑止力となっていた全盛期の頃のオールマイト。
それと同格の存在が現代に存在していると言う驚愕の事実をサラッと言ってのけた。
勿論、生徒達はその言葉に大きく目を開けて驚いている。
そんな彼らの背後では、タロスとオールマイトが並んで立って敵たちを無言で威嚇し続けていた。
『オールマイト。あの脳みそが剥き出しになっている敵からは生体反応が検知できませんでした』
「なんだって!? ということは…」
『はい。あれは生きてはいません。動いているだけです。事実、あいつからは自分の意思のようなものを一切感じられない』
「言われてみれば確かに…。では、奴は一体…」
『それは、奴を捕まえた後に考えればよろしいかと。それよりも、生きていないと言うことは痛覚も無いと言うこと。私のビームライフルの一撃も、その衝撃で態勢こそ崩しましたが、痛がっている様子は微塵も無い』
「そのようだね。なら、こっちも一切遠慮は無用と言うことだ!」
『オールマイト。私が援護をしながら、同時に他の敵への牽制もして接近できないようにします』
「出来るのかい?」
『可能です。この程度の危機…あの空での絶体絶命の絶望的状況に比べれば、なんてことないです』
「…そうだったね。君は…あの誰もが全てを諦めていた状況でも、たった一人だけ最後まで生きるのを…皆を救うのを諦めなかった。そんな君だからこそ、私は何の躊躇いも遠慮も無く背中を預けられる!」
オールマイトが全身から闘気を溢れ出しながら拳を構え、タロスがビームライフルの銃口を前方の敵たちに向ける。
「では改めて…いくぞ! タロスくん、そして…ライダー!!」
『『了解』』
「お前ら…!」
先程までの焦燥感が完全に消え、精神的な余裕さえ生まれたオールマイトに加え、謎の巨大人型ロボットの出現に激しいイラつきを覚えた手だらけの敵の男は、思わず首元をガリガリと掻き毟り、血管を浮かび上がらせながら怒りの感情を剥き出しにしていた。