食堂で食事をしていたら、なんかいきなり警報が鳴り響いた件。
一体何が起きて…。
「ん?」
窓の外を覗き見てみると、そこにはどこから忍び込んできたのか、大勢のマスゴミ共が校内に押し寄せていた。
「ったく…どいつもこいつも…」
本当に…ああいう連中は見ているだけで不愉快になってくる。
と言うか、一体どうやって入って来た?
ここには『雄英バリアー』がある筈なのに…。
(仕方がない…)
私は右手でうどんを食べ続け、左手でスマホを操作して『ある人物』にメールを送った。
勿論、スマホはテーブルの下に隠してバレないようにする。
『セキュリティ3が突破されました。生徒の皆さんは速やかに屋外へと避難してください』
セキュリティ3…ね。
久々に聞いたな…これ。
(私は生徒じゃないから無視しても大丈夫ですね)
日本語って難しいですよねー。
言葉は正確に言わないと。
「セ…セキュリティ3っ!?」
「な…なにそれ!?」
「せ…先輩! 何かご存じですか!?」
「要は『校舎内に部外者が侵入してきました』って言ってるんですよ」
「「「えぇっ!?」」」
警報によって一気に食堂内は大パニック状態に。
誰も彼もが入り口目掛けて押し寄せて、見事なまでの渋滞になった。
(はぁ…情けない。まさか、暫く見ない間に、ここまで雄英の生徒のレベルが低くなっているとは思わなかった。相澤さんが去年の一年を全員除籍にした気持ちが分かった気がする)
なんて情けなく、そして恥ずかしい光景なのだろう。
誰も彼もが我先にと出入り口に押し寄せ、誰も他人の事なんて考えていない。
これが今の雄英の姿なのか…。
「先輩! 僕たちも急いで…」
「やめなさい。あの中に突っ込んでいく気ですか? 下手したら大怪我じゃ済みませんよ?」
「し…しかし…」
「こんな時だからこそ、冷静に状況を把握して行動をしなくてはいけないのでは?」
「た…確かに、その通りですけど…」
この子達も完全の場の空気に飲まれてる。
でも、焦躁に駆られて動こうとしないのは好感が持てる。
「と言うかですね、本気でヒーローを志しているのならば『この程度』の事で狼狽えるなど論外中の論外ですよ」
「「「え?」」」
あー…駄目だ。
また私の悪い癖が出る…。
「現場で実際に遭遇する
私に促されて周りを観察していく三人。
それに合わせて私も視線を向けると、そこにはポツポツとではあるが逃げずに別の行動をしている生徒達が存在していた。
「ある者は避難誘導をし、ある者は仲間と連携して状況の把握に努める。あれこそが、この場で本来するべき行動です。『速やかに避難』とは言いましたが、それは決して『他人を押しのけて避難しろ』と言う意味じゃありません。こんな時だからこそ、冷静に物事に対処しなくてはいけない。出入り口付近でごった返している子達は、私的には完全にヒーローを目指す者として失格であり最低の行動だと思います。この雄英高校はヒーローを養成する学校。ここにいる時点で『子供だから』なんて言い訳は通用しないんですよ。もし、そんな言葉を一言でも発してしまったが最後、その人物はヒーロー失格として即座に除籍処分確定でしょうね。そんな情けなく根性も無い人間をお情けで置いておくほど、この学校は甘くはない。本気で、命懸けでヒーローを目指している人間は他にも山ほどいるんです。その人たちの為に席を譲ってあげた方が、寧ろ世の為人の為になるんじゃないかって思いますよ。っていうかですね、『押さない』『駆けない』『喋らない』の『お・か・し』の三原則すら守れない時点でお察しでしょう」
やってしまった…。
また、長々とお説教をしてしまった…。
因みに、話ながらもちゃんとうどんは食べてました。
後はスープをずずず~…っとな。
「ぷはぁ~…ごちそうさまでした。で、貴方達はどうするんですか? あそこに突っ込んで馬鹿丸出しで避難しますか? それとも、今の自分に出来ることを探して行動しますか?」
「「「行動します!!!」」」
「よろしい」
どうやら、この子達はまだ手遅れじゃないみたいだ。
少しだけ安心した。
「流石は先輩…感服しました! 確かに仰る通り! このような時こそ、我々の真価が試される! ヒーローが我先に逃げるなど愚の骨頂!! 危うく俺は、兄さんに恥ずべき男になるところだった…!」
「うぅぅ~…やっぱり雄英の上級生はカッコいいなぁ~…! 私も頑張らないと!」
「そうだね、麗日さん! 僕も目が覚めた気持ちです! ありがとうございまいました!」
「はいはい。お礼は良いですから、とっとと他の先輩たちの手伝いをするなり、避難誘導をするなりしてください」
こんな時でも感謝の気持ちを忘れないとは…律義と言うか、なんと言うか…。
「それじゃ、私はこれで」
「どこに行くんですか?」
「決まってます。私も『私にしか出来ない事』をしに行くんですよ」
「「「おぉ~!」」」
ったく…折角、久々にランチラッシュの食事を食べられて、今日の不幸分が帳消しになりそうだったのに…!
私のいい気分を害したことを後悔させてやる…!
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
食堂を出て廊下を歩きながら、私はウチの『ボス』に電話を掛けた。
「もしもし? 会長ですか?」
『騎呂ね。メールは見させて貰ったわ。なにやら変なことになってるみたいね』
「全くです。で、どうしますか?」
『そんなことを聞いてくるってことは、何かをする気ね?』
「当然です。今の私…すっごく虫の居所が悪いんで。朝っぱらか散々な目に遭った挙句、大切な母校にマスゴミ共が侵入してくるとか、こんなん誰だって普通に堪忍袋の緒が切れるでしょ」
『確かにそうね。安心なさい。そう言うと思って、既に連絡をして公安の部隊と警察を動かしているから。すぐにそっちに着くはずよ。現場に到着し次第、すぐに貴方の…ヒーロー『ライダー』の指揮下に入るように命令してあるから』
「ありがとうございます。今日だけは思いっきり職権乱用させて貰います」
『えぇ。遠慮なくやってしまいなさい。責任は私が全て持つわ。私もマスゴミ連中は大嫌いだからね。好きにやりなさい』
「了解。騎乗ヒーロー『ライダー』…好きにします」
さて…ボスからの許可も貰った。
見てろよ…他人の迷惑も考えない、クソったれなマスゴミどもめ…!
お前たちに社会的引導を渡してやる…!
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・・・・
・・・
・・
・
現場に到着すると、大勢のマスゴミ連中相手を相澤さんとマイクさんが必死に食い止めていた。
「なぁ相澤! これもう完全に不法侵入だろ! ぶっ飛ばされても文句とか言えねぇよな!?」
「気持ちは分かるが落ち着けマイク。あることないこと書かれるだけだぞ。ここは大人しく…」
私の先輩たちにまで迷惑を掛けやがって…もー…無理。
マジでキレました。マジギレです。
「相澤さん。マイクさん」
「え!? 騎呂ちゃん!? なんでここに!?」
「お前は下がってろ。巻き込まれるぞ」
「もう遅いですよ。それに、今の私は…」
いつも掛けてる仕事用の伊達眼鏡を外してポケットにしまう。
ふぅ…超久し振りのヒーローモードだ。
「事務員じゃなくて、公安所属のヒーローとしてここにいるんで」
「「なんだって?」」
あ、珍しく二人でハモった。
やっぱ仲いいんだな。
なんてことを考えてたら、校門の方からドタドタと大勢の警察と公安の部隊がやって来て、私の前に整列した。
「ライダーさん! 公安実働部隊と警察部隊…只今到着しました!」
「ありがとうございます。では…こほん」
公安の部隊長さんから拡声器を受け取って、最大ボリュームでぶちまける。
あ、ちゃんと悟って相澤さんとマイクさんは耳を塞いでるよ。
『総員!!! この場にいる者達全員を『不法侵入罪』にて緊急逮捕せよ!!! 目の前の欲に溺れて社会のルールすら碌に守れない連中など、もはや社会人に非ず!!! 騎乗ヒーロー『ライダー』の名に於いて、この者達全員を凶悪
「「「「「了解!!!!!」」」」」
「「「「「な…なんだってぇぇぇぇぇぇっ!!??」」」」」
私からの命令が下されると、公安&警察の部隊が一斉にマスゴミ連中に向かって飛び掛かる。
戦闘訓練なんか全くしていない連中なんて、彼らにとっては雑魚も同然。
あっと言う間に次々とマスゴミ連中が捕まっていく。
「ふ…ふざけるな! 一体何の権限があって、こんなことを!」
「ヒーロー公安委員会会長様と警視総監様の権限ですが何か? あと、そっちこそ一体何の権限があって生徒達を怯えさせてるんですか? さっきも言ったように、お前たちがやっていることは完全に
ま、実際には私の完全な八つ当たりなんですけどね。
でも、実際に犯罪は犯罪なのでちゃんと法の名の元に裁きを受けては貰うけど。
「ライダーさん。実は、ここに来る途中で雄英の校門の防犯シャッターが破壊された痕跡が…」
『罪状追加!!! 器物損壊罪!!!』
「「「「そっちは冤罪だぁぁぁぁぁっ!!!」」」」
あーあー! なんかマスゴミ共が言ってるけど、私には聞こえませーん!!
他人に迷惑を掛けることしか能が無いマスゴミ共に情け容赦なんてするわけないでしょうが!!!
刑務所の中で自分の職業選択を死ぬほど悔いてろ!!!
「因みに、個性で抵抗とかしたら即座に『公務執行妨害罪』も追加しますからね」
なーんか個性使って反撃を試みようとしてた馬鹿がいたから一応の忠告。
すると、面白いように全員が捕まっていった。
うーん…スッキリした。
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・・・
・・
・
「ライダーさん! 全員の逮捕、無事に完了しました!」
「ご苦労様でした。では、収容所への移送をお願いします」
「了解しました!」
逮捕されたマスゴミ共は全員が意気消沈して搬送車に乗せられ、次々と発進していく。
ふん…いい気味。
「す…すげぇ…俺達があれだけ苦労した奴らを…あっと言う間に…」
「これが騎呂の…公安での姿か…」
やっと静かになった…。
これでもう大丈夫だろう。
一安心、一安心。
「相澤先生。マイク先生。大丈夫でしたか?」
「あ…あぁ…俺らは大丈夫だけど…」
「容赦の欠片も無かったな。だが、よくやってくれた。立場上、俺達じゃ出来ることにも限界があるからな」
「そればかりは仕方ないですよ」
想像以上に教師という職業は制約が多い。
思うように動けないことも一度や二度じゃないだろう。
そこにヒーローとしての立場も加われば猶更だ。
「かなり強引だったとは思うが…正直、凄く溜飲は下がったよ。よくやってくれた。素直に感謝するぞ…ライダー」
「どういたしまして。公安としての権限をフルに使ったお陰ですよ。じゃなきゃ、こんな無茶なんて出来ませんから」
「だろうな。だが、今回はそのお陰で助けられた」
「全くだぜ! いやぁ~…部隊を指揮するヒーローとしての騎呂ちゃんの姿…最高にカッコよかったぜ!! もしここにミッドナイトさんがいたら絶対に悶絶してただろうな」
「それだけはマジで勘弁してください」
悶絶したミッドナイトさんとか絶対に勝てないから。
確実にベッドに連れ込まれて朝チュンコースまっしぐらだから。
流石の私も、自分の貞操を捧げる相手ぐらいは選びたい。
「さてと…これで事件は一件落着…とはいかないでしょうね…」
「だな。ただのマスコミ連中にこんな無茶が出来るとは思えん。ましてや、あの雄英バリアーを破壊することなぞ…」
「今回の事件…確実にバックに誰かいるだろ…」
これを『嵐の前の静けさ』と捉えるべきなのか、それとも単なる日常の一事件と捉えるべきなのか。
今の私には全く分からなかった。