なーんかマスゴミ共を大量逮捕したりとかしたけど、今日も今日とて楽しいお仕事~。
ここで♪マークがついてないのが大事。
何事も無い平和な通勤時間…何て言ってるとフラグが立ちそうでなんか怖いけど、事件なんてきっと起きないと信じて私は足を動かします。
「…ま、分かってたんですけどね」
私の視線の先には、なんか人質を取ってるみたいな大柄の
で、その近くには傷ついて倒れている、これまた見覚えのある男女のヒーローが。
(うわー…完全に道が塞がれてるんですけどー…)
早く、どうにかしてくれないかなー…。
流石に遅刻はしたくないんだよなー。
「あのー…まだ掛かりそうな感じですか?」
「この状況が分からないn…って、騎呂ちゃん!?」
「ライダーか…! どうして、ここに…」
「いや、普通に通勤してるだけなんですが。そんな意味深に言われても困ります」
この二人は…Mt.レディと…シンリンカムイだったっけ。
数える程度しか会って無い筈なんだけど、向こうは私の事をちゃんと覚えてたのか…。
「私達に加勢して…は…ちょっと難しいかな…」
「生身の状態で私に何が出来るとお思いで?」
「だよね…」
私の個性が真価を発揮するためには『道具』が必須となる。
素の状態の私は、そこで人質になっている家族よりも身体能力が低い。
ぶっちゃけ、今の状況で私に出来ることは何一つとしてない。
「でもまぁ…大丈夫だとは思いますよ?」
「「え?」」
「この道は雄英高校へと続く通学路。そして、この時間帯…。恐らく、『あの人』が文字通り飛んで来るんじゃないんですかね?」
「「あの人?」」
「そ。あの人」
と言っても、別に『あの人』って名前の人物じゃないですよ?
実は過去に『あの人』って名前の
しかも、見た目が非常に酷似している『その人』『どの人』『この人』『あっちの人』『こっちの人』なんてアホ極まりない名前の奴まで現れて、さぁ大変。
最終的には全員揃って豚箱送りにしましたけどね。
「あ。どうやら来たっぽいですよ。最強の助っ人さんが」
「最強の助っ人って…」
「まさか…」
その『まさか』ですよ。
ほら来た。
「もう大丈夫だ…ファミリー!」
なんか、物凄い勢いで敵をぶっ飛ばして、ついでに人質もバッチリ救出。
うーん…見事な手際。
「何故なら私が…通勤がてらに来た!!」
通勤がてらって…。
ほんと…この人もこの人で自分を酷使してるなぁ…。
私が言えた義理じゃないけど、もう少し自分の事を労わっては?
「おはようございます。オールマイト」
「おぉ! 鋼野くんか! おはよう! どうして、ここに?」
「それはこっちの台詞ですよ。私は普通に通勤してただけです。でも、お陰で無事に雄英に行けそうです」
「それは何より! そうだ! 校長先生から話を聞いたよ! 私目当てに雄英高校に押し寄せた連中を一人残らず捕まえたんだってね! なんだか、私の尻拭いをさせたみたいで申し訳ないね!」
「別に気にしなくてもいいですよ。アナタは何も悪くはない。悪いのは、目の前のスクープ目当てに自分自身をコントロール出来なかった者達なんですから」
「うーん…やっぱり、君を事務員にさせておくのは惜しい気がするなぁ…。鋼野君ならば、本格的にプロとして活躍しても全然大丈夫だと思うんだが…」
「私が嫌なんですよ。他のヒーロー達みたいに目立つのが」
「そうか…本人が嫌がっているのならば、私としては無理強いは出来な…」
なんて話していると、またどこからか『ひき逃げよー』的な悲鳴が聞こえてきた。
「む! またもや誰かの悲鳴が! すまない鋼野くん! 私は行かなくては!」
「行くのは良いですけど、遅刻しないように気を付けてくださいね」
「勿論だとも! それでは…」
オールマイトが膝を曲げて体勢を低くすると…。
「また後で学校で――――――――――――!!!」
すんごい勢いで空の向こうへと消えていった。
相変わらず人間辞めてるなぁ…。
「手伝ってくれるのは嬉しいけど…」
「我々が廃業してしまう…」
「その辺は気にしたら負けですよ」
流石にちょっと可哀想になってきた。
なので、何も出来なかったせめてもの詫びとして、私の権限で少し公安の部隊を動かして犯人の確保を手伝わせた。
この場に居合わせた警察官たちだけじゃ不安だったし。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
午前中は特に何事もなく仕事をすることが出来た。
この間の騒ぎが嘘のよう。
やっぱり、あの嫌な予感は私の杞憂だったのかな。
「…で、どうして午後一番で私は
目の前には常に笑っている、ネズミの姿をした校長先生が。
私が学生だった頃から校長してるんだよな…この人。いや、このネズミさん。
「いやいや! 別に君が何かをしたってわけじゃないさ! ただ、先日の騒動の鎮圧に最大限の貢献をしてくれた君に正式にお礼をしようと思ってね!」
「あー…あの件の事ですか。これはオールマイトにも言いましたけど、別に気にしなくてもいいですよ。あの一件に関して言えば、雄英側には何の落ち度もない。悪いのは完全にマスコミ側です。だからこそ、あの連中は全員揃って有罪判決を受けたのですから」
今頃は、どこぞの刑務所で海よりも深く反省をしてる頃だろう。
五体満足でいられれば…ですけど。
出所するよりも前に精神の方が参っちゃうかもしれない。
私には全く関係が無い話ですが。
「それでもさ! 一応、先に公安委員会の方にもお礼を言ったんだけど、君の直属の上司…会長さんは『あの事件を解決したのは鋼野騎呂なので、礼を言うのならば彼女にお願いします』って言われてね! 勿論、後で君にもちゃんと礼をするつもりでいたけど、まずは君が所属している組織に…と思ったんだ。けど、それは無用だったようだ。今の公安会長は随分と義理深い人物のようだね」
「まぁ…昔が酷すぎたんですよ。だからこそ『あんな事』があったわけで」
「実質的な『内部クーデター』を『あんな事』で済ませるなんて、顔に似合わず君も中々に大物みたいだね! 流石は、雄英高校卒業者で唯一無二の『普通科出身のプロヒーロー』だ」
「なりたくてなったわけじゃないんですけどね」
私がヒーローになったのも、殆ど流れだった。
それでも、想像以上に簡単にプロとしての資格を取れたのは…。
(私にも…ヒーローとしての素質があった…ってことなのかな…)
世界中でヒーローになりたいって思ってる人たちには悪いけど、私はこんな素質なんて欲しくはなかった。
私にとっての『ヒーローとしての素質』とは、平穏な日常からの乖離を意味する。
目指している人生の目標とは最もかけ離れているから嫌いだ。
世の中の情勢は、私にそんな愚痴を言うことも許してはくれないんだけど。
「しかし、君がヒーローになったことで命が救われた人々がいるのもまた事実なのさ。あの『成田の奇跡』然り。『レディナガン』の一件然り」
「ナガン先輩の一件まで持ち出すんですか…」
「当然さ。君がいてくれたから、彼女は犯罪者にならずに済んだ。今でもヒーローであり続けられている。鋼野くん…君がギリギリのタイミングで彼女の蛮行を止めてくれたから」
「たまたま…タイミングが良かっただけですよ。単なる偶然の産物。それだけの話です」
「君も頑なだね。そんな所は相澤君にそっくりだ」
「私と…相澤先生が?」
いやいや…全然似てないでしょ。
そもそも性別から全く違うし。
私は、あんなにも黒尽くめじゃない。
「そう言えば、その相澤先生はどこに? なにやら雄英のバスが走っていくのが見えましたけど」
「1年A組の午後の授業は『救助訓練』さ」
「ってことは、向かった先は『USJ』か…」
懐かしいな~…って言っても、在学中は殆ど入ったことないんだけど。
救助訓練自体は公安に入ってから散々やらされた。
とっても厳しい教官殿にすっごく可愛がられました。
私は事務員希望だって何度も言ったのに…。
「今年に入ってから、君にはお世話になりっぱなしなのさ。いやはや面目ない」
「皆さんはよくやってますよ。ただちょっと…全体的な生徒の意識は私がいた頃よりは低くなっているような気がしましたが」
「それに関しては否定できないのさ。我々、教師陣の悩みどころでもあるんだけどね…」
「時代の流れ…なんですかねぇ…」
確かに私は普通科だったけど、それでもヒーロー科の皆の凄さは肌でヒシヒシと感じていた。
この人たちは本気でヒーローを目指してるんだ。
その為なら、どんな辛い訓練も試練も絶対に乗り越えて見せるって言う意地があるんだ。
こんな言い方はあまりしたくはないが、今の雄英の生徒で『本気』でヒーローを目指している者達は果たして何人いるんだろう。
(でも…全員が全員、ダメって訳じゃないみたいですけど)
あの時、食堂で出会った三人。
その他にも積極的に避難以外の行動をしていた子達。
私がいた頃のヒーロー科なら、全員があの子達と全く同じ行動をしてたと思う。
自分は二の次、まずは誰かを助けることを考える。
そんな考えの人達ばかりだったから。
「『ヒーロー』って言葉の意味と重さ…それを真の意味で理解している子は…何人いるのかな…」
出されたお茶を啜りながら、思わずそう呟いてしまう。
その時だった。
校長室の内線が急に掛かってきた。
当然、校長先生はそれを取るわけで。
「もしもし? え? オールマイトがやっと来た? はぁ…今はどこに? 仮眠室で休んでる? それホント?」
案の定、遅刻したのか…あの人は。
しかも、仮眠室で休んでるって…どれだけ無茶やらかしたんですか。
「仕方がない…流石に何もしないわけないはいかないよね。校長として。分かったよ。今から仮眠室に向かう。そこで話をしよう」
あーあ…これは完全にお説教コース確定だな。
新人教師が遅刻をしてしまったんだ。
例えナンバー1ヒーローとはいえ、それは全く関係ない。
ヒーロー活動をするのは良いが、それは決して遅刻をしていい理由にはなり得ない。
「ついでだ。鋼野くんも来てくれるかい?」
「え? なんで私も?」
「君からもオールマイトに言ってあげて欲しいのさ。私よりも鋭い一言が言えるだろう?」
「ナンバー1ヒーローに対して、良いんですかね…それ」
「別に構わないさ! 社会人としては君の方が先輩なんだからね!」
「校長的にはヒーローは社会人じゃないんですね…」
まぁ…ある種の慈善事業みたいな側面があるのは否めないけど…。
一応、中には事務所持ちのヒーローもいるのに…。
こんな私がオールマイトの説教ね…。
私も随分と偉くなったもんだ。
出来れば、もっと平和的な方法で偉くなりたかったけどね。