たすけて!異世界掲示板   作:猫蜜缶

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第一章∶終凍絶竜と黒鉄
遂にクリア!のはずなのに…


「終わった……」

 

 

 午前5時。

 空は既に明るくなり始めているような時間帯。

 

 俺は暗い部屋の中で一人、自らの無力感と全てが終わったことに対する虚無感に襲われ、ただ天井を見つめていた。

 

 俺は今、一つのゲームを終わらせた。

 

『天声のユーマリア』

 

 つい先日発売したばかりのギャルゲーだ。

 ただし、ただのギャルゲーではない。

 

 発売直後、ネットの掲示板は阿鼻叫喚の地獄と化した、鬱ギャルゲーRPGである。

 

 鬱要素の分かりやすい点で言えば、敵に攫われたサブヒロインの一人を助け出したかと思えば異形化、発狂する主人公がなんとか打ち倒すも、トドメを刺す瞬間に正気に戻り死亡する、なんて展開がある。

 

 ちなみに全ルート共通イベントだ。

 避けるためにはそのヒロインの好感度をマックスまで上げる必要があるのだが、結局最終的に皆どうにもならなくなって終わるので、正直大差ない。

 

 とにかく。

 俺はそんなゲームを終わらせて、今凄まじい無力感に襲われている。

 

 一体、俺は何のために生まれたのか。

 何故、俺は誰も救えないのか。

 

 たかがゲーム、されどゲーム。

 感情移入してしまってはこうなって当然だろう。

 

 なんなら発売規制掛かるんじゃなかろうか。

 

 

「……しかしまぁ、凄まじいゲーム会社があったもんだな。トランヴァル、だっけ? 制裁会社」

 

 

 なんとか気持ちを落ち着かせた俺は、傍らに置いたゲームのパッケージを手に取る。

 ヒロインたちと主人公の描かれたパッケージに、裏面は華やかなゲーム場面。

 

 表紙詐欺もいいとこだ。

 

 

「ううん、やっぱ聞いたことねぇな」

 

 

 いいや、一旦ゲーム会社については置いておこう。

 わかったところでなにかするわけでもないしな。

 

 それよりも、この今の感情を何処かに吐き出し共有したい。

 誰でもいい、どんなやつでもいい。

 このやるせなさを吐き出したい。

 

 俺はゲームを終わらせブラウザを開くと、慣れた手つきで掲示板を開く。

 

 そして俺の感想を吐き出すべく、早速書き出した。

 

 

 

《『天声のユーマリア』を終わらせたので語りたい》

 

 1:天より来たれ主

 やっと終わった

 まーじでえぐいって

 なんだアレ

 

 2:天より来たれ名無し

 お

 被害者増えおったな

 何処まで終わらせたんだ? 

 

 3:天より来たれ主

 全部

 CG100%解放したし

 全ED見たぞ

 

 4:天より来たれ名無し

 つーことは

 アレ見たんだな

 

 5:天より来たれ主

 アレ見ましたわ

 

 6:天より来たれ名無し

 アレってなに? 

 CG解放率78%の俺に教えてくれ

 

 7:天より来たれ名無し

 78ってことは何人かのEDは見てるっぽいな

 

 8:天より来たれ名無し

 CG90%まで行くと色々見れるようになる

 ってことだけ教えてあげよう

 

 9∶天より来たれ名無し

 アレは酷かった

 

 10∶天より来たれ主

 もうしばらくギャルゲーはいいわ

 やる度にこのゲーム思い出しそうになる

 

 11:天より来たれ名無し

 イッチは正しい

 マジで他のギャルゲー出来なくなる

 

 12:天より来たれ名無し

 ワイなんか虚無りすぎて仕事出れないわ

 

 13:天より来たれ名無し

 お前は元から無職やろ

 

 14:天より来たれ名無し

 黙れ

 

 15∶天より来たれ名無し

 喧嘩すんなってお前ら

 フェルシアEDでも思い出して笑えよ

 

 16:天より来たれ名無し

 みんな笑顔のハッピーエンド

(天使いの力により強制満面笑顔

 なお思想強制変換から全員平等化の果てに

 主人公とヒロイン無理心中)

 

 17:天より来たれ主

 全く笑えねぇ…

 

 18∶天より来たれ名無し

 あのあと世界どうなったんだろね

 

 19:天より来たれ名無し

 一節ではじっくりゆっくり終末に向かって行ったらしい

 

 20:天より来たれ主

 どのみち終わりかぁ

 

 21∶天より来たれ名無し

 エンドの酷さで言えばマーシャエンドも大概だろ

 

 22∶天より来たれ名無し

 わんわんエンドね

 

 23∶天より来たれ名無し

 かわいい

 

 24∶天より来たれ名無し

 かわいい

 

 25∶天より来たれ名無し

 かわいい

 

 26∶天より来たれ名無し

 内容が全く可愛くないんですがそれは…

 

 27∶わんわん(湾曲された現実と湾曲した世界で気狂いになって生きていく)

 

 28 ∶天より来たれ主

 マジで誰だよ

 最初にわんわんとか名付けたやつ

 

 29∶天より来たれ名無し

 そーいう意味ではアリスティラとかマシじゃね

 

 30 ∶天より来たれ主

 推しです

 

 31∶天より来たれ名無し

 聞いてねぇよ

 

 32∶天より来たれ名無し

 イッチは凍結死がお望みか? 

 

 33∶天より来たれ主

 いやじゃいやじゃ

 死にとうない

 

 34∶天より来たれ名無し

 凍結死で気になったんだが

 サノレアちゃんとアリスティラちゃん

 ブッつけたらどうなるよ

 

 35∶天より来たれ名無し

 確かにちょい気になるな

 

 36∶天より来たれ名無し

 ggrks

 サノレアvsアリスティラ

 で調べたら考察サイト出てくる

 

 37∶天より来たれ名無し

 幾ら何でも太陽級エネルギーvs竜じゃ分が悪いか

 

 38∶天より来たれ名無し

 分とかの問題か? 

 

 39∶天より来たれ名無し

 戦力的に言えば

 やっぱ最強は我らがメインヒロイン

 ユーライアでしょう

 

 40∶天より来たれ主

 天声の担い手EDも大概だったな

 

 41∶天より来たれ名無し

 終末兵器DXMには流石に笑わざるを得なかった

 

 42∶天より来たれ名無し

 終わったあとは? 

 

 43∶天より来たれ名無し

 笑いながら泣いてた

 

 44∶天より来たれ名無し

 だろうな

 

 

 

 

 そんなエンディングの感想がひたすら流れていく。

 あのどうしようもないエンディングの数々。

 

 絶望と希望への見せかけ。

 俺自身への無力感とか諸々。

 

 とにかく最悪だったのひと言に尽きる。

 

 色々な感想が流れ行く中、話はCG達成率へと移る。

 とは言え、感想を話し合う場ということもあってか、ほとんどの人間が100%を達成しているのは当然だった。

 

 が、一人の言葉により流れが変わる。

 

 

 

 

 421:天より来たれ名無し

 そういやお前ら知ってるか? 

 CG達成率って実は120%が最大だぞ

 

 4 22:天より来たれ名無し

 何言ってんだ? 

 100%が最大でどうにもできないだろ

 

 423:天より来たれ名無し

 ほれ

【fullcg.pho】

 

 424:天より来たれ名無し

 ファッ!? 

 マジでCG120%やんけ…

 

 425:天より来たれ主

 どうせコラだろ

 

 426:天より来たれ名無し

 と思うじゃん

 実はやり方があっt

 

 427:天より来たれ名無し

 ん? 

 

 428:天より来たれ名無し

 急にどうした

 

 429:天より来たれ名無し

 どうした426

 死んだか? 

 

 430:天■り■■れ名■し

 URL∶■■■■■■■■

 

 431:天より来たれ名無し

 ん? 

 なんだこのURL

 

 432:天より来たれ主

 荒らしか? 

 

 433:天より来たれ名無し

 誰か開いてみてくれ

 

 434:天より来たれ名無し

 開けたが真っ白な画面しかないぞ

 

 435∶天より来たれ名無し

 同じく

 真っ白だわ

 

 436:天より来たれ主

 俺も開いてみるわ

 

 

 

 突如現れた謎のURL。

 俺はその奇妙さに誘われるがまま、そのURLをクリックしてページを移行する。

 

 だが他の人が言うように、やはり真っ白な画面がそこに存在していた。

 数秒間、その画面を凝視してみる。

 すると脳裏に浮かぶは凄惨な光景の数々。

 

 ダメだダメだ、もう徹底的にあの作品が脳にこびりついてしまっている。

 

 PC見るだけで泣きそう。

 

 ……泣きそうになるのは置いといて。

 画面はやはり一片たりとも変わる気配はない。

 

 上画面に目を向ければURLがhttpsで止まってのが奇妙なくらいで、特段それらに詳しくない俺は何かしら隠す方法でもあるのだろう、と考える。

 

 

「いたずら、だな」

 

 

 結論としてはいたずらだろう、ということにして掲示板に戻ろうとマウスを動かした。

 その瞬間。

 

 

「なッ──!?」

 

 

 突如、画面にノイズが走ったかと思ったと同時に、ニュッと白く長い腕が画面の中心から伸びきてマウスを動かしていた俺の腕を掴む。

 と、同時にその腕を中心として画面が紫に染まっていく。

 

 

「な、なん、なんだこれ!!!? いや、てか、なんだ!? 誰!?」

 

 

 混乱のあまりに支離滅裂な言葉を叫びながら、俺は腕を振りほどこうとするも、到底人とは思えない力に引っ張られ、画面の中へと引きずり込まれていく。

 

 

「こ、これどうなって……!!? いやそれよりもヤバイってこれ!!! 誰か!! 誰か!? お助けえええええ!!!!」

 

 

 そうして俺は非常に情けない叫び声と共に、画面の中へと引きずり込まれるのだった。

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