異世界に凡人が転生で神様 作:ぶれぶれ
小説を書くって難しいね。
◆◇◇◇
「アイザック殿!」
夕方、村長達との相談から戻ったアイザックさんとともに夕食の準備をしていると、すごい剣幕でリッド君のお父さんが駆け込んできた。
あまりに尋常じゃない雰囲気、とても嫌な予感がする。
「息子を……!リッドを見かけませんでしたか!?」
どうやらリッド君が午後に家を出たきり、夕方になっても帰ってこないらしい。
ここに来る途中の宿屋(エミリーちゃん宅)や店にも顔を出したが皆姿を見ていないとのことだそうだ。
そして残念ながら自分達もリッド君はみていない。
「落ち着け、ほかに心当たりはないのか?」
「いや……何も……、妻も心当たりが……」
リッドのお父さんが息も絶え絶えながら答える。
少しでも落ち着いてもらおうとコップに水を用意するが、まだ動転しているのか口をつける気配がない。
……繰り返しで申し訳ないけど嫌な予感がする。
アイザックさんも探しに行こうかというその時。
「あなた!リッドが!!」
リッドのお母さんが家に飛び込んできたことで嫌な予感が確信に変わった。
「……森か」
リッドのお母さん曰く、森の調査から戻った冒険者が入れ違いで森に入っていく子供を見たという。
やや焦げ茶色の短髪の少年……状況的にリッド君の可能性が高いだろう。
冒険者の人曰く、呼び止める間もなく急いだ様子で森の方へ走っていったらしい……なにやら両腕に荷物を抱えた状態で。
「……まさかあの子!」
「あぁ……もしかしたら祭壇に向かったのかもしれない」
例の謝罪行脚の後、リッド君の様子がおかしかったらしい。
あれはカイルじゃない……、俺がカイルを……といった感じで、何も言わずに出かけたり、部屋へこもるようになったりしたそうだ。
それが何で森の祭壇へ?と正直思ったが、なにやらリッド君のご両親は確信めいたものがあるらしく、アイザックさんも頷いてリッド君のお父さんとともに家を出ていった。
そう、置いてけぼりである。展開に。
残ったリッド君のお母さんが自分の両肩に手を置いて「大丈夫よ、きっと……」とか言ってきたけど何も大丈夫ではない。
きちんと情報を共有してほしい。
そんな自分の思いが伝わるということはなく、もうお休みなさいと部屋へ強制連行されるのであった。
……解せぬ。
◆◆◇◇
強制的に自分の部屋へ追いやられた自分は、自室のベッドにごろんと横になる。
恐らく、森に入ったと思われるリッド君を探すため、アイザックさんらが森へ捜索に入るのだろう。
もうすぐ直に夜になる。
暗い森の中、森には魔獣もおり普段よりも危険ではあるが、アイザックさんなら大丈夫だろう。無駄に強いし。
もちろん自分は家で待機だ。
10歳の少年が夜の森に入るのは自殺行為であるし、そもそも森でやらかして今に至るのだ。
バレたらアイザックさんに処されるだろう。
なんとなく眠れる気がせず、ボーっと考える。
結局自分がカイル少年になったと思われるあの日、彼らは何しに森に入ったのだろうか。
願い事を叶える祭壇……普通に考えれば何かをお願いに行ったのは間違いない。
ただ結局それが何かはいくら考えても分からない。
自分はカイル少年ではないのだから。
(……!……。)
「ん?」
何か聞こえたような……?
ふと、部屋を見渡すと机の上がぼんやりと光っている。
(……て!……い!)
子どもの声?
なにやら頭に直接響くようなそれは段々大きくなってくる。
そして光もなんか明るさを増しているような気がする……こわ。
(……けて!…が…!)
光の原因を見ると、それは崖から落ちたカイル少年と一緒に落ちていたお守りだった。
色とりどりの紐と木片を使って星のような形に型取って作られたお守り。
子供が作ったにしてはすごくよくできているなと感心したほどだ。
それがぼんやりと光っている…ただ嫌な気配の光ではない。
なんかそういった直感がこっちに来てからやたら冴えるなとか思いながら、お守りを手にする。
(た…けて…。おねがい…。)
頭の中に少年の声が響く。
段々はっきりとするそれは、どことなく聞き覚えのある声だ。
(おねがい!リッド君を助けて!)
◆◆◆◇
(アイザック視点)
ここ最近の変化をふまえて警戒しながらであったが、森の入り口から祭壇までは大した問題も起こらず辿り着くことができた。
ただリッドは見つけられなかった。
道中も、祭壇にも、以前孫が落ちた崖下にも。
(……まさか道を外れて彷徨っているのか?)
よほど急いだのだろう。
森の入り口や祭壇に至る道中には、リッドの物と思われる木剣やおもちゃなどが落ちていた。
それに祭壇に向かって子どもの小さな足跡もいくつか見つかった。
リッドが、いや少なからず子どもが森に入った可能性はかなり高いだろう。
ただ同行をお願いした村人や冒険者、そして自分自身も異様な雰囲気を感じ取っていた。
「おい……森の大樹が……」
「こんな、こんなのは俺が来た時にはなかったはずだ……!」
自分も含め、捜索に入った一同が言葉を失っている。
祭壇の後ろ、まるで祭壇を見守るようにそびえ立っていた森の御神木とされる大樹。
それが四方に裂け、無残な姿となっていたからだ。
「まるで内側から裂けるように割れておる……どう見る?」
同行した村人に目を向けると首を横に振っている。
当たり前だ。
こんなことは今までなかったであろうことは間違いないのだから。
「……あの、何か変じゃないですか?」
ここですと言う同行してくれた冒険者の指すところをみる。
裂け折れた大樹の一部。
幹の中心から外側に向けてまるで齧られたような跡が残っていた。
何か……、とても恐ろしい何かがこの森で起こっている。
お互い顔を見合わせる。
口にしなくとも分かる。自分も含め、みなが同じ予感を抱いていると。
◆◆◆◆
自分は今、村を歩いている
家に残ってくれたリッドのお母さんには悪いがバレないようにこっそりと家をでた。
家にいるとあまりにも頭の中でわめくもんだからポーズだけでも外に出た次第だ、どうか大目に見てほしい。
(お願い神様!リッド君を助けてよ!)
いやいやいや、誰が神様だ。
自分がもし神様だったのならこんな訳の分からん状況になっていない。
自分は、えーっとあれだ!
きっと、しがない飲食店の敏腕ホールスタッフだ!……多分。
恐らく自分の脳に直接話しかけているこの声はカイル少年だろう。
持った瞬間から手から離れなくなったお守りが、彼がしゃべるたびにピカピカと点滅して眩しい。
そしてそんな彼の言葉から逃げるように自分は今、村を練り歩いている。
(絶対神様だよ!だってボクが崖から落ちちゃった時、ケガしないように助けてくれたもん!)
助けてないのだが!?
それにキミ、自分みたいな異物が身体に入っている時点でどうみても助かってないし。
仮に助けに行ったとして10歳の子どもではどうすることもできないと思うよ?
(そんなぁ……リッド君……)
頭の中にくすんくすんと子供の泣き声が響く。
何の精神攻撃だ。
頭の中で泣くのをやめろ。
マジでこの状況を作ったやつがいるなら責任をとってほしい。
そんなこんなで逃げるように歩き続け、気付いたらいつの間にか森の前に立っていた。
……呪いか?
ただ、カイル少年たちが入ったという森の入口とは違う場所だ。
(……森の向こうにリッド君がいるような気がする)
やめろ!
そして自分の直感もリッド君がこの先にいるとささやいている。
あと、なんかやたら大きい生き物の気配も。
(……神様)
はぁー……。
大きくため息をつく。
カイル少年(暫定)からリッド君を助けてほしいという思いが嫌になるほど伝わってくる。
……行きますよ、行けばいいんでしょ?
別に切った張ったをする必要はないのだ。
でっかいやつに見つからずにリッド君を連れ帰る、それだけだ。
第二の人生に早くも諦観を抱きつつ、自分は鬱蒼とした森の中に入るのであった。
今、身体返すから自分で行ってくれないかなぁ……だめ?