レプリカ紛争が勃発した背景にミレニアム騎士団を筆頭に人間主義が吸血鬼殲滅を理由に様々な文化的活動を規制していたため民衆のフラストレーションが積もっていたというものがある。
フラストレーションは吸血鬼たちに向けられ、王都内の廃絶運動はますます高まった。
すべての原因はアンティーカ騎士団の突如の変化とそれを批判する「ディスティールの英雄譚」であり、それを書いたエノラ・スワンは執筆物の主張とは裏腹に、近頃民衆に隠れて吸血鬼たちのために活動をしているという噂まで流れていた。
だからだろう。エノラ・スワンが殺された事件が発生したときは「当たり前だ」という意見が通説であり、それによりディスティールとリーラの決闘が行われたという事実は民衆には安堵と弛緩の雰囲気が流れた。
これでようやく3年前と同じ生活ができる。吸血鬼廃絶を理由に多大に行われた税金と規制が終わり、長きにわたる吸血鬼との確執も終わる――と、誰しもが考えていた。
民衆もミレニアム騎士団も知らない。
この紛争が王都内に潜伏していた融和派の吸血鬼たちの裏工作によって仕組まれていることを。
おあつらえのように建てられたコクーン盲学校が血鬼たちのために造られた場所であることを。
アンティーカ騎士団を名乗る偽物によって王都を掌握する目的で行われていることを。
ただ本物のアンティーカ騎士団だけが、その謀略を知っていた。
*
王歴1416年10月15日
調理用スチリウムがぱちんと熾される。生石灰と水の発熱反応で約七十度の蒸気を発生することでものを温める道具であるが、最近は子供のいたずらや戦いにも使われるようになって規制の流れがあるとどこかで聞いた。
あつ、とディスティールが温めた黒パンを取り出して食べた。蒸気でややべっちゃりしていたが野外で火も使わずに温かいものを食べれるのは利点だ。
王都のすぐ近くの森。太陽はそろそろ沈み、夜の気配が近づく。吸血鬼除けのお香は持ってきてはいたが、リーラが吸血鬼なのでさすがに焚くことはしない。
「現状は良くないな」
王都で情報を集めたイーリス、コクーン盲学校に潜入したフィロ、ミレニアム騎士団に忍び込んだクロシェの報告はディスティールの深いため息を呼び起こした。
「ミレニアム騎士団――吸血鬼廃絶を謳う人間主義に私とクロシェの偽物がひと月前から大きく動いている。リーラとフィロの偽物は融和派のコクーン盲学校の実質的リーダーに。そしてこの猿芝居を考えた黒幕は暗殺、か」
ディスティールの言葉にイーリスの表情がどんどん険しくなる。
一歩、出遅れたのだ。正面切った派手な演出とスワッシュバックラーを活用した視覚演出は王都内の全員を騙すのには十分な脚本だったらしい。
「……すみません、私が騎士団ではなく事態解決を優先していれば――!」
「済んだことを責めても仕方がない。それに……イーリスが感じ取れないほどに徹底的に吸血鬼の存在を隠すほどの研究機関と……君の母親の技術力。イーリスだけでどうにかなったとは思えない」
「……はい」
そう、最大の懸念点はイーリスの母親が恐らくこの計画に一枚噛んでいることだった。
だってあまりに都合がよすぎている。イーリスの義手も、精巧なタイプライターも、騎士団にそっくりな偽物も。
この仮説はあり得ないと思いつつも、集まる情報と状況証拠はイーリスの母親の関与が疑われるものばかりで何の否定にもならなかった。
あの夜、きっと母は無関係だと思い込んで飛び出していなければ――!
ただ娘に母親の罪を看破せよというほど他の団員は良心が欠如していなかったし、何よりもこの3年間のことがあったからイーリスの母を誰も疑いたくなかったのである。
「……幸いにも、民は今の状況を完全に把握できていない。だから『元アンティーカ騎士団の内ケバ』程度の認識で済んでいる。だから過小評価されて混乱や大きな衝突も発生してないし、盲学校が吸血鬼の集まりだって気づいている者は殆どいない。……今は、だが」
「迷光騎士団が全く別の国政で二日前に王都を発っているけど……結果的に王子をさっさと退避させられたのは良かったかもね。他の王族や貴族も逃げる準備を進めてるみたい」
ディスティールとクロシェの言葉はどちらかと言えばイーリスを落ち着かせる意図のほうが大きかった。意外と問題は大きくなっていないのだから、自分を責めるのは良くないと。
「……そろそろ夜になる。みんな、警戒を厳にな」
*
王歴1416年10月17日
騎兵用の槍は歩兵が持つものではない。馬に乗って突撃するための丈夫さと突破力を重視した円錐形の槍は一対一の戦いではむしろ不利になる武器だ。
なら、叩けばいい。
まるで棍棒のように相手に叩きつける。紫の皮鎧はあっけなく吹き飛んだ。
《……っ!》
無論それが致命傷になっていないことも、相手の次の行動のきっかけになったのも分かっていた。彼女は吹き飛んだ先にあった建物の壁を見事に蹴って、まるで蜂のように空中を跳んで曲刀を向けて突っ込んでくる。盾で弾いたらまるで猫のように見事に着地した。
《リーラァッ!》
気合と共に大槍で何度も突いたがすべて躱され地面に突き刺さるばかり。当たらないことに苛立ってそのまま横凪ぎに繋げたが彼女はすでに民家の屋根に。
《くっ――》
《人が集まって来たね。面倒なことになりそうだから、そろそろ逃げますねー》
《待て!》
しかし私のすぐ足元に調理用スチリウムが投げられた。熱い水蒸気がもろに顔面を襲って一気に視界不良に陥る。
《くそ――》
かぶりを振る。――振って見せる。まるで英雄が悪役を討ち漏らしたかのように、悔しがる。
真昼間で人通りの多い中で起きた人間主義のディスティールと吸血鬼融和派のリーラの戦いは多くの野次馬たちの注目を浴びていた。
「ディスティールさまだ……」
「アンティーカ騎士団の未練を本当に捨てて、吸血鬼廃絶を志すようになったんだな……!」
そんな声が聞こえる最中、私は腕を軽く上に挙げると黄色い歓声。
《みんな、応援ありがとう――》
きっと彼らは知らない。
私が本物のディスティールではなく彼女の逸話を基にした小説「ディスティールの英雄譚」の中での彼女を再現しただけのレプリカ品であり、自分たちは王都の政権を掌握して人間と吸血鬼の共生を果たすための三文芝居を行っているだけだということを。
*
私が生まれたのは、1年以上は前の日だったらしい。記憶と記録を分割しないのであればの話だが。
なぜその少女が強盗に襲われた時に自身の親ではなくディスティールの名を呼んだのかは分からない。ディスティールの英雄譚の人形劇の公演が行われて数日後だったのが原因なのか、それとも少女が本物のディスティールに一度だけ出会ったことがあったからなのか、博士も死霊術師も錬金術師も時計職人も一斉に頭を捻ったが誰もしっくりくる仮説を出せず「奇跡ってなんて都合の良いサムシングなんだ」と言うあまりにも強引すぎる結論で済ませていたはずだ。
ともかく、自認の把握も済ませないまま私は高い城壁をひとっ跳びで超えて私は少女を守るように立ちはだかって、名乗りを上げた――らしい。
その時のアイドールはあくまで「実在人物の偽物を生み出す」ことを目標に起動すらも出来ずに研究チームは悩んでいた。記録装置も実装されていない時期だからあの時の私に記録する機能は無い。
私が生まれた後、あの裏道でどうなったかは分からない。ただ研究チームが満足するだけの情報を生み出せたようだ。
きちんと自我というものを自認出来たのはそれから一週間後のことだった。
すぐに私の「自認」に対してのテストが行われた。そして私の体内に収められた書物がきちんと機能しているかのテストが行われた。
――私はディスティール。かつて共に戦った仲間であり、そして騎士団に潜んでいた吸血鬼であるリーラを討った冷酷な騎士。
――私はアイドール。憑依型の舞台俳優がその登場人物の性格に沿ったアドリブを利かすように、その物語の登場人物を完璧にトレースする自律型の絡繰り人形。
端的な回答は研究チームを喜ばせた。
博士は私に現在の状況を教えた。
吸血鬼廃絶を謳うミレニアム騎士団がアンティーカ騎士団を失脚させるために、「ディスティールの英雄譚」を自分たちにとって都合よく改変して世間に広めた事。
アンティーカ騎士団が亡命した今、共生を果たすことは出来ない。だから融和派に与する吸血鬼と研究者たちが協力して曲がりなりにも英雄である騎士団の偽物を作り出し、替え玉による政権奪取を目論んでいること。
無茶苦茶な作戦だったが、吸血鬼のために精製された人工血液や戦いで腕を失った者のための義手の研究――それにアイドールという偽物を作り出した結果。正気はとうに失われていたが、本気であることは伝わった。
しかし問題は山積みであった。あまりにも人手が足りない。懸念材料が多すぎる。
人手を増やすために盲学校を隠れ蓑に融和派の吸血鬼を集め、アイドールや人工血液などの技術継承のために錬金術師と死霊術師がそれぞれに下部組織を立ち上げ、政権を握りやすくするために仇敵であるミレニアム騎士団に私たちの売り込みがなされた。
いわく、「救国の英雄の偽物を『目が覚めた』として扱って祀り上げればミレニアム騎士団が王国を支配することも可能だと」。この提案はエノラ・スワンが自らの本心を隠してミレニアム騎士団に都合の良い作品を提供しているから、案外すんなりと通った。
しかし最大の問題点は依然と残ったまま。アイドールは流行した作品の登場人物を再現する技術であり、容姿や声のモデルとなった本物のコピーではない。
つまりは「吸血鬼への憎悪を消せないディスティール」が共生を果たすための作戦に参加しなければならないことだった。
*
何者かによって博士が殺され、それにより紛争が始まる。偽物のディスティールとリーラが殺しあって、決着がついたほうが強引に政権を掌握し共生を叶える。
アイドール計画と銘打たれた、そんな猿芝居から抜けて吸血鬼を殲滅する選択をしようとクロシェの偽物「献身」に相談したのは博士が殺された日のことだった。
《ディスティールが言ったことだから、きっと正しいんだよね》
そう答えて快諾した表情も声も回答も「ディスティールの英雄譚」の中のクロシェそのものだ。
《でもどうするの? 誘惑も背信も強欲も、きっとそんなものを認めない》
《……あの時、吸血鬼がやったのと同じようにしよう。密告文書をばらまくんだ。「コクーン盲学校には吸血鬼がいる」と》
事実だ。
アイドールの研究拠点であった盲学校には融和派の吸血鬼が集結していたし、研究チームにも技術継承チームの放課後マギアにも吸血鬼がいたから私は常に怒りを抑えながら彼女たちと接していた。
《――だけどそれだけじゃ足りない。何か吸血鬼廃絶を根拠に盲学校を襲撃する大きな理由が必要だ。……クロシェ、何か思いつくか?》
《……全く。うちは考えるのは苦手だよ》
献身の発言は一種の責任放棄の言葉だったがいつもの言葉だった。
仕方がない。いつでも盲学校に攻め込められるように大量にビラを用意して撒くことにしよう。
*
王歴1416年10月19日
大量にばら撒かれたビラの効果はじわじわと民衆の不安を煽っていた。
目が見えない者のために造られた施設が吸血鬼の根城になっていたというショック。そしてあの盲学校に頻繁に出入りしていた博士は本当に悪で暗殺されても仕方かなかったんだという納得。
かつての吸血鬼たちが採った作戦の有効性は、皮肉にも吸血鬼をもっとも憎む英雄によって再証明された。
「――よって明日16時より被疑がかかっている盲学校に対して襲撃を掛ける!」
ミレニアム騎士団の訓練場に集まったおおよそ50を超える騎士たちの前で団長は高らかに叫んだ。
三年前、かつての団長を引きずり下ろしクーデターでハルバードを振るった男はその功績を認められ騎士団長にまで成り上がっていた。彼は目の前にいるのがディスティールに似せた人形であるということは知らされていたが博士のふざけた共生計画までは知らされていない。
ビラは自分と献身の2人だけで夜通し作ったため企みは誰にもバレていない。そのことを確認して憤怒は自身の狙い通りになったことを喜ぶ。
「君たちも知っての通り、遠征中の迷光騎士団は本日未明吸血鬼の襲撃で行方不明であると王都内で伝わっている。……嘆かわしい情報に民も冷静さを見失っている。故に! 我らが民の支えとなるため、王都に潜む吸血鬼と言う膿を掻き出さなくてはならんのだ!」
この騎士団長は馬鹿で乗せられやすい。そして自身の信念のためなら平気で扇動をする。三年前の本物のアンティーカ騎士団に襲撃を掛けるためにただのフィクションを利用したように、王子の不幸さえも利用して私の流したデマにまんまと踊ってらせてくれるらしい。
長々とした作戦説明が終わり自室に戻った憤怒は先に戻っていたらしい姿の献身に少し驚いたが喜びを以って彼女に向かって感謝の言葉を告げた。
《クロシェ……! ありがとう、君の協力のおかげでついに私は王都に忍び込んだ滅ぼすことができる――!》
「う、うん」
《……? どうした》
「ううん、何でもないよ!」
そういうクロシェはいつもの、記憶の中の本物そっくりだ。違和感は感じるが――まぁ良い。
《私たちは偽物の共生を作り出すアイドール計画によって生まれた偽物のアンティーカ騎士団………だとしても、本物が受けた過去は偽物じゃないし、私の吸血鬼に対する憎悪は間違いじゃない。明日――それを証明するんだ!》
「――そうだね。ディスティールの言う通り、人間に仇をなす吸血鬼はみんな倒さないと」
クロシェの言葉はいつも通り私を肯定してくれる。
《あぁ……明日が楽しみだ》
自覚はしている。本物が過去に吸血鬼にされたことをしていることを偽物の私が真似をしているのだと。しかし私は本物のディスティールではないのだ。英雄ではない。
私を英雄だと思い込んだあの少女は今の私をどう思うだろうか。そんな疑問は明日への展望にすぐに掻き消えるはずだ。
*
王歴1416年10月20日
「……そう来たか」
昼下がりのコクーン盲学校。吸血鬼たちの報告で窓の外を見ると周囲には甲冑を纏った騎士たち。ミレニアム騎士団の錦の御旗が掲げられている。
「一体どこから漏れた……?」
元ミレニアム騎士団団長はその光景に思考を回そうとしたがすぐに意味のない行動だと考えて切った。あのビラの出所が分からない以上、無駄な思考だ。
計画にはコクーン盲学校が吸血鬼を擁するという情報は伏せるはずだった。もちろん漏れること自体は想定していたし、漏らす人物に心当たりが無いわけではないが。
それに幸いにも盲学校は元々騎士団の城を補修して作られたもの。それにアイドール計画を果たすために籠城程度は想定していた。
「今何時?」
「もうすぐ16時になります」
「……籠城戦だな。出入口全部塞いでくれ。状況次第では夜に白兵戦を仕掛けることも考慮するべきかもだが――そうすれば吸血鬼の立場が悪くなるか」
所属する学生のすべてが吸血鬼で、研究に参加していた人間やその他種族の殆どはアイドール計画に沿って盲学校からすでに脱出していた。
アイドール計画の全容を知っている者はここには自分しかいない。今話している吸血鬼も、計画の目的は知っていてもアイドールが何なのかまでは知らない。
天候が憎らしいほど良いため、吸血鬼たちは目が眩んで2時間ほどは表に出て戦えない。ついひと月前まで盲目だった元団長一人が出たところで時間稼ぎにもならない戦力差だ。
「一応確認しておくけど、放課後マギアとメロウメロウのみんなは既にここにはいないんだよな?」
「……あなたを除けば」
「なら――良いか」
少なくともあの7人――何人か、生きているかどうかも含めて頭数に入れていいのか分からない者もいるが――がいればアイドールの整備と人工血液の精製ができる。
重要研究資料は既にほとんど燃やした。残っているのは自分とアイドールと言う明確な証人とエノラ・スワンの関与が記載されたアイドール計画の書類。それらにすべての責任を押し付けて、計画の目的には悟られないようにしないと――。
「みんなに、出しゃばるなと伝えてくれ。最悪の時はあたしと博士に責任を押し付けて、人間を殺さなければ吸血鬼のみんなは殺されないはずだと」
「………分かりました」
なぜ殺されないと言い切れるのだろうか、と吸血鬼の視線は言っていたが素直に下がってくれた。
ミレニアム騎士団にはディスティールとクロシェの偽物である憤怒と献身がいる。彼女たちが計画に素直に従うのならば――自分の死はきっと計画完遂の生贄になるだけだろう。
(……計画に従ってくれればの話だけど)
あの2人が素直に計画に従うとは思えない。情報を漏らした最大の懸念が彼女たちだった。
だから将来的に裏切る可能性の高い2人が知られないように、裏で様々な根回しは済ませたが。どこまで上手くいくかは――
「……頼む」
この祈りが届くのかは分からなかったが、彼女も祈るほかなかった。
*
ばしゅ、ばしゅ。
油壷が投げ込まれたのちに火矢が放たれた。継ぎはぎの城壁が燃えている。
《リーラ……!》
《分かってる》
裏路地の物陰に隠れていたフィロとリーラの偽物「誘惑」「背信」は状況を把握した。
本来の計画には「コクーン盲学校の襲撃」のイベントは予定していない。と言う事はミレニアム騎士団の憤怒と献身がアドリブを利かせたということだ。
(……これでどんな利点が生まれるかなんて分かんないけど)
そう思いながら背信は竜の仮面を被る。
……なぜ自分の本物は吸血鬼なのに竜人の偽装をしているという回りくどい設計になったのかは知らない。開発者たちは「アイドールの技術検証のため」とかと言っていたが、なぜオリジナルとは一切関係ない爬虫類に似た亜人族を参考にしたのだろう?
でも義手の技術を参考に製作された巨大な尻尾は第二の武器となり得るため気に入っていた。
背信は誘惑をお姫様抱っこすると近くの建物の屋根に飛び移り、街の上空を駆ける。弓をつがえて炎の矢を放とうとしていた兵士を後ろから蹴り飛ばした。
「お、お前はリーラ――」
《うるさい》
誘惑を抱えている状態だったからそのまま尻尾の先端で相手を突いた。弓を叩き折られ、地面に落ちた兵士が捨て台詞を言って逃げ出すのを一瞥する。
《その――置いて行っても、良いんだよ……?》
《嫌だ》
自分は偽物で、リーラが一人で王都を逃げ出した物語がフィクションだというのは知っている。だけどその時の感情は本物であると背信は思っていた。
自分とリーラが共に共生のために戦う。これは「背信の騎士たち」でも「本物のアンティーカ騎士団」も成し得なかった行為だ。
たとえ自分たちが偽物であったとしても、共生を諦めたくない――!
《行くよ。本物のアンティーカ騎士団が諦めたことを、私たちがやるんだ》
自分たちの誓いを叶えるように隣の建物の窓を蹴破って入る。おそらく控えていたのであろう兵士の慌てる姿を見ながら背信は誘惑を下ろした。
《戦おう。一緒に》
《――うん》
剣を抜く。たとえ自分たちが偽物であったとしても、この心は本物だ。
*
竜の姿をしたリーラが盲学校を襲撃している騎士たちの前に現れた、という報告に憤怒は笑みがこぼれた。
憤怒率いる第三部隊は対吸血鬼に特化した騎馬隊である。攻城戦を目的としていないため待機を命じられていたが憤怒はそれが不満だった。
しかしこうして吸血鬼とみられる存在が現れたのだからもう我慢することは無い。
《第三部隊――吸血鬼は街の中にいる。殲滅せよ!》
憤怒の号令に隊員たちが叫ぶ。ここにいる者たちは全員が吸血鬼に対して何かしらの恨みを捨てられず、憎悪に支配された人間だ。吸血鬼を1匹でも殺せればそれで良いという思いが彼らを支配している。
《我に、続けっ!》
憤怒の叫びと共に騎馬が王都の主要街道を走る。向かうは不倶戴天の敵にして元親友――!
吸血鬼を討つということに支配され、自らが狂気に呑まれているという不幸に溺れていた憤怒は忘れていた。
すべての人間が吸血鬼を憎んでいる訳ではないことを。そして自分が偽物であること。
騎馬隊が走る主要道路、先頭を走る憤怒の馬の前に何かが投げ込まれた。それは地面に激突すると大きな爆発音を響かせ、憤怒や後続の馬たちを驚かせた。
《……っ⁉》
「な――あ、くそ――落ち着け!」
「この――あ、あ、あぁ……!」
驚いた馬たちが暴れ、逃げ出し、第三部隊の統率が取れなくなる。何人かの騎士が落馬し馬を押さえつける中、憤怒は自身の馬の手綱を引いて腹を蹴ることで強引に押さえつけた。
《クロシェ、そっちは大丈夫か⁉》
《うん……! なんとか》
クロシェも何とか馬を制御したが、騎乗を続けるのは難しいだろう。憤怒も素直に地面に降り槍を構える。
(さっきのは――いや、あれは)
よぎったのはアイドール計画と並行して研究チームが開発していた一つの兵器。
暖を取るための「スチリウム」や、あくまで屋外で食料を温める「調理用スチリウム」とは明らかに兵器としての運用を前提として開発された「炸裂スチリウム」。水蒸気の力を有効に活用とした、エノラ・スワンの開発品。
鉄や生石灰の発熱反応を利用して高圧瓶に封じ込めた気化エタノールを爆発させるその兵器は、安全に製作・運用するためには複数種の亜人との混合チーム5人以上を30分拘束してようやく1つ精製可能というもので、簡単に手に入れられるものじゃない。そもそも不安定な液体燃料を活用しなければならないほど切羽詰まっている組織は少ない。
《まさか――
確かに背信なら――アイドールならば持っていてもおかしくはない。それに憤怒がアイドール計画を放棄し共生の道を選ばないという結論を下そうが下さまいが、憤怒も背信も決着をつけなければならないのだ。
しかし地面に静かに着地したのは紫の皮鎧を被ったあの偽物ではなく
《――ディスティール》
3年前、ミレニアム騎士団によって王都を追われた本物のディスティールがかつてのアンティーカ騎士団の制服を身にまとってそこに立っていた。
*
王歴1416年10月19日
時間は夕暮れ、森の中に潜んでいたアンティーカ騎士団の面々はその報告に表情を険しくする。
「――それは本当か」
「うん……!」
クロシェが頷いた。
アンティーカ騎士団の諜報は簡単な論理だった。「相手が自分たちの偽物を使うのならば、自分たちが偽物のフリをすればいい」。
自身の偽物「献身」に似せた変装をしたクロシェが持ち帰った情報は重大だった。
「迷光騎士団および王子が安否不明、翌日の昼下がりにコクーン盲学校の襲撃、私とクロシェの偽物が計画に反して吸血鬼殲滅を本気で果たそうとしている、か」
アンティーカ騎士団も王都内に大量にばら撒かれていた盲学校が吸血鬼を匿っているという旨のビラは確認していた。似たようなことをされたからその有効性は骨身に沁みているし、その内容が事実なのはイーリスから得た状況証拠で否定できない。
憤怒達の行動も、冷静に考えてみれば分かる話だった。
吸血鬼殲滅を本気でやろうとしていた過去の自分が、騎士団の城が――自分の家が吸血鬼が隠れる場所になっていたら、どんな手を使ってでも滅ぼしにかかっていただろう。
「……しかし、私は少し勘違いしていたようだ。あのアイドールとかいうモノを機械であり人形であり……感情がないし思考しないと考えていたが、どうやら彼女たちにも意思があるらしい」
少なくとも、計画書の内容は事実のはずだ。憤怒がこのような行動を採るというのは予感があっても内容には記されていなかった。
あの時――イーリスが自分に反抗してまで計画を妨げるという選択を提示してくれなければ、一体どうなっていたか。
「そろそろ――私たちも表立って動こう。王都で殲滅を掲げるディスティールが、民衆の都合の良い妄想を糧に動く偽物であることを示さなければ」
「でも……あれは――『ディスティールの英雄譚』のディスティールはもう一人の、言ってしまえばリーラを受け入れなかったあなたよ? もう一人のあなたを、どうやって倒すの?」
クロシェの質問はどちらかと言うと確認の作業に近く、ディスティールの続く回答は決まり切っていた。
「倒すんじゃない。説得する――いや、見せつけるんだ。私たちには言葉があって、私には偽物が捨てた騎士道があるとね」
そう言って彼女は木箱を開けた。あの日、背信が置いて逃げた木箱は2桁のダイヤル錠で封されており14回の挑戦で開錠できた。
「リーラの偽物――背信と言ったか。彼女の隠された意思に気づけないほど、我々も鈍感ではない」
*
「英雄ディスティール――お前は間違っている」
目の前に自分が立っていた。
あの日、自らの騎士道を捨てずに吸血鬼の親友を受け入れたディスティールが、捨てた騎士道の代わりに鈍色の甲冑を纏って吸血鬼殺しに躍起になっている偽物である私をねめつけていた。
「ディスティールさまが――2人……⁉」
「ドッペルゲンガー……いや、後ろにはクロシェさまもいるぞ」
「まさか襲撃されて亡命したはずのアンティーカ騎士団の元メンバーが急に戻って互いに争い始めたのは――!」
《――チッ》
後ろの騎士たちがうるさい。それに何人かが自分が偽物だと気づき始めている。
《……なるほど、私の偽物とは》
自分の言葉は後ろの騎士たちのために言ったものだが、自分でも空虚すぎて嫌になる出来だった。それを誤魔化すように更に言葉を続ける。
《ドッペルゲンガーか、それとも徹底的に私に似せたか――》
「どちらでも構わないだろう。私が偽物だろうが、貴様が本物のディスティールなのかなどどうでもいい」
憤怒の言い訳に似た演説をディスティールは強引にねじ伏せた。
今の一言で確信させられた。目の前の女は――本物のディスティールだ。
後ろの騎士たちが本物の威圧感を浴びて動けなくなっている。馬は先ほどの炸裂スチリウムで錯乱し、騎士は戦意を喪失した。
後ろの雑兵などどうでもいいと言わんばかりにディスティールは憤怒に向かって駆け出す。
回避を選ばなかったのは致命的なミスであり、盾が間に合ったのは奇跡だった。
爆発音とともに憤怒は強い衝撃によって後ろに吹き飛ばされる。辛うじて堪え、すぐに体勢を整えることができたが地面には憤怒の足によって生まれた大きな溝が穿たれた。
ディスティールの手に握られた大槌に憤怒は見覚えがあった。
《ウォーターハンマー……⁉》
炸裂スチリウムの爆発による推進力によって大きな衝撃を発生させることを目的とした対吸血鬼用の非殺傷兵器。――もっとも吸血鬼が心臓に銀剣を刺さないと死ななないから、という意の「非殺傷」であり人間用の非殺傷兵器ではない。
憤怒も何度かテストに付き合わされたが、「吸血鬼鎮圧用なのに重すぎて人間が扱えない」という結論になってお蔵入りになったはずだ。
しかしディスティールは軽々と扱っているのはどういうことだ? それ以前に――
《なぜお前がソレを――⁉》
炸裂スチリウムも、ウォーターハンマーも先ほどまで亡命をしていたはずのディスティールが手に入れられるものではない。それをなぜ……?
「御託は良い」
槌頭を下にし、足でスチリウムの殻を排莢しながらディスティールは告げた。こちらの質問など受け付けないと言わんばかりの態度である。
ずりずり、ずりずり。石畳の上で槌頭を引きずりながらディスティールがゆっくりとこちらに向かってくる。
「もし――お前がディスティールだと名乗るのなら。あの日――リーラを受け入れなかった私であるのならば……お前を止めてみせる!」
こちらに向かって駆け出したディスティールを、憤怒は真っ向から受け止めるほかの選択肢はなかった。
*
無論、2人のディスティールの戦いを献身が止めないわけがない。
《第三部隊、各位――ディスティールを名乗る不埒者をはいじょ――》
瞬間彼女らの前に火炎瓶が投げ込まれた。二度にわたる爆発音を眼前に広がる炎に馬たちは突撃の意思を失っている。
それ以前に
「させないよ。私」
《……》
大きな道路のど真ん中。自分たちと2人のディスティールの戦いの間には本物のクロシェが立ちふさがる。
進めない。
女体1人でこの道路を封鎖などできるはずもないのに、彼女が纏う闘気が道をふさいで押し通れない。
「クロシェさま――説明してください。これは、どういうことなのですか……!」
後ろにいる腰抜けどもの嫌疑の視線がうざったい。自分たちが偽物であるのは事実だが、理想の「吸血鬼殺しの英雄、ディスティールとクロシェ」を求めていたのはお前たちだろう……⁉
《……うちはこの人の相手をする。みんなは別ルートから現場に急行して。お馬さん、どちらにせよ二人のディスティールの戦いを怖がって近づけないだろうし》
「ですが……!」
《行って!》
なおも追いすがる騎士の言葉を強引にねじ伏せた。騎士たちは不承と言った様子だったが、献身の道理を理解したのか馬を反転させてこの場から逃げ出した。
無関係な者たちが去ったのを見届けてクロシェが献身に向かって剣の切っ先を向けた。廉価な鉄の剣は銀の剣を入手できなかったのが理由ではないはずだ。
鉄は銀よりも廉価だが硬い。吸血鬼相手でないなら十分だ。工房製の武器や道具をクロシェが持っていないのは、単純に攻撃力と継戦能力を重視してのことだろう。
「……うちはディスティールと違って偽物本物かはしっかりつけてもらうよ。――あなたがうちの偽物として製造されたアイドール?」
《……一体どこでそんな情報を。アイドールの情報も、ウォーターハンマーも炸裂スチリウムも亡命をしていたはずのあなた達に手に入れられるものじゃ………》
「リーラの偽物の――背信? だよ。……いや、正確には計画の賛同者の一部かな」
あり得ない。背信どころかあの博士も時計職人もそのほか研究者たちもアンティーカ騎士団をとうに見限っていたはずだ。自分も今先ほどまで彼女たちを実際に見てかなり驚いたのだ。
なのになぜ背信や一部の賛同者はアンティーカ騎士団の居場所まで調べ上げた? もしそれを知っているのならば、なぜ――
《……どこまでうちらの作戦を知っているのかは知らないけど――》
腰の手斧を構える。銀の火めっきであるものの、献身が吸血鬼にとどめを刺せる武装を持っていないのはディスティールのサポート役に徹するという意味である。
《ディスティール――憤怒の邪魔はさせない。たとえあの子も私も偽物だとしても、私はあの子のおねえちゃんだから――あの子の正しさの邪魔はさせない》
吸血鬼のことなんて、実際どうでもよかった。自分はあの子の正しさを示す。
もしあなたが本物のクロシェだというならば、私の言葉を分かってくれるでしょう?
「……まぁ確かに、うちも似たようなことは言ったし、あの子の純粋さは正しいけども」
クロシェは剣を下ろしながらまるで自嘲するかのように首をすくめた。自嘲したかったから、と言うよりも単に剣が重くて体勢を変えただけに見えるが隙はどこにも見られない。
「でもね――」
――ディスティールの為にも、吸血鬼を倒す! それが、うちの騎士道!
「
《……あなた――本当に私?》
目の前の彼女の言葉を全く理解できない。
自分の姿に似た、自分とは全く違う生物に向かって構える。理解できないもの、相容れないものは排除しなければならないのだから――。
《消えてもらう。あの子の正しさを邪魔しないために》
「そっかぁ……」
ただ目の前の彼女の表情は、自責の念に埋まっていて無性に腹が立った。
*
ディスティールの強さは尾ひれがつくほどに有名だった。吸血鬼2人がかりでも返り討ちにする騎士、王都どころか国中どこを探しても彼女と匹敵できる生物はいない、リーラにとって最大の壁は彼女だった……
そういった噂話が実際の強さとなるアイドールとしては大歓迎だったが、信じてはいなかった。
「はぁ――っ!」
どこが「尾ひれの付いた噂話」だ!
へしゃげて使用不能になった盾はとうに捨てたが、憤怒には全身を纏う甲冑と金属骨格で作られたこの体は吸血鬼の攻撃でも痛手にならない。
しかし防御に使っていた左腕は手甲どころか内部の骨格から歪みはじめ、動かすたびに異音が聞こえる。耐久性を重視した騎槍はぼこぼこに変形していた。
それでも
《邪魔だ!》
槍を振り下ろす。水撃槌の柄で受け止められたが、そのまま自身の重さをかけてディスティールを制圧せんと力を掛けた。
「――さすがに、重いな……!」
じり、と彼女が歯を食いしばって苦悶の表情を見せた。そのままの勢いのまま憤怒は自身のオリジナルに向かって叫ぶ。
《お前が――お前がリーラを受け入れなければ、私は生まれずに済んだ! アンティーカ騎士団は、滅ぼされずに済んだ! お前が、過去に吸血鬼にされたことを忘れさえしなければ――!》
「違う――」
《何が違う! 吸血鬼はお前のお父さんとお母さんを殺し、故郷を滅ぼした……なのになぜ平然と吸血鬼との共生を願う⁉》
憤怒は「ディスティールの英雄譚」によって生まれた。だからディスティールの両親が、故郷がどのように殺され燃やされたのかを知っている。彼女の憎悪を、怒りを――吸血鬼に向けるべきはずの憤怒を誰よりも理解している。
だからこそ、理解できない。本物の
《吸血鬼と共に生きるなど――お前は家族の墓前で言えるのか⁉》
それは紛れない憤怒の本心だった。たとえ物語の中、創作の中であっても親友だと思っていたものに裏切られ、吸血鬼を鏖殺したもう1人のディスティールの怒りだった。
「なら、お前は自分の親友を殺したことを父と母の前で嬉々として報告できるのか!」
《!》
ディスティールが水撃槌を急に手放した。彼女を抑えるために全体重をかけていた憤怒は急に支えが無くなったことにより体勢を崩したが、その髪をディスティールが掴んで引っ張り上げる。
「吸血鬼を皆殺しにし、自分の意思に反するものを殺し、親友を怒りのまま串刺しにして、恩人の慟哭に背を向けて、寛大さを捨てて、過去の悲劇を言い訳にして駄々っ子のように振る舞って――今のお前の顔を、一体誰に見せられる⁉」
顔への殴打は左腕で受けた。しかし次いで飛んできた蹴りは受け止めきれず、大きくたたらを踏んだ。
そして何よりもディスティールの怒りが、もう1人の自分が示す騎士道と仲間への信頼が――とても眩しい。
拾い上げられた水撃槌によって憤怒の手から騎槍が弾き飛ばされる。撃鉄は起こされていなかったため絶大な威力は食らわなかったが、攻撃手段を失ってしまった。
「お前が本当に私なら、あの時クロシェに誓った言葉は! みんなを救うために騎士になるって言葉は嘘だったのか!」
《ち、ちが》
違うはずだ。なのに、
(押されてる……!)
本物の理想論が、すでに捨てきった甘い感情が憤怒の激情に水を差す。
本物が振りかざした水撃槌をどうにかして回避する。爆発によって石畳が大きく割れた。
真っ向から受け止めることなんて出来ない。受け止めてしまったら、これまで作り上げた自分の信念が崩れてしまう。
「逃げるな!」
ばらら、と瓦礫を散らしながら踏み込み、振り上げられた水撃槌の柄を必死に掴んで強引に止めた。動きを封じた、と思った瞬間すぐに武器を手離したディスティールの掌底が甲冑越しにもかかわらず憤怒の腹を突き、思考と情緒が揺すられる。
《がッ――》
「寛大さを捨てた結果が
次いで放たれた彼女のハイキックが、憤怒の顎を直撃した。
*
倒れた自身の偽物にディスティールは手を差し伸べなかった。
荒く息をつく。水撃槌の重さと反動で、肩と背中が悲鳴を上げて体力は碌に残っていない。
それでも彼女は、打ち負かしたもう一人の自分の前で膝をついたりはしなかった。
《ディスティール!》
献身がディスティールから庇うように憤怒の前に立ちふさがった。ちらと横を見てクロシェが生きていることを確認する。彼女と打ち合っているのを強引に突破したのだろう。それにクロシェも追撃を行わなかっただけだ。
《……なら、どうすればいいんだ》
ぼろぼろで動けない憤怒がディスティールに向かって問いかけた。うつむいて顔が見れないが、先ほどの蹴りで首回りが壊れたのだろうか。それとも誰かに叱られたり怒られたりしている時、相手の顔が見れなくなる自分の癖をトレースしたのだろうか。
(どう、か……)
自分が説教できる立場にはない。今ある安寧を選ぼうとして1番の後輩に打ち負かされてようやく今の道を選べたのだ。
ただ――1つ、言えることがあるのならば。
「………過去を受け入れろ。間違いも正解も受け入れるんだ」
《………》
水撃槌を拾い、肩に担ぐ。右腕が外れそうだったが泣き言は言わない。
憤怒はもう立ち上がれないらしい。人間でいうところの気絶なのか戦意喪失なのか破損なのかは分からないが、後ろから攻撃はしないだろうと思って背中を向けた。
「ディスティール、大丈夫……⁉」
「何とかな……。でも状況はまだ良くない。コクーンのほうがまだ済んでいない。行こう」
戦いの音はまだ消えていない。太陽はすでに夕方の気配を隠さない場所まで来ている。すべてが後戻りできない状況になる前に行動しなければ。
2人は自身の偽物の様子を少しだけ見ると道を走り始めた。
《………》
彼女たちはただ自分ではなく自身の過去を思い出すかのような表情で空を見ていた。
(一応この作品、イーリス主人公で書いてたはずなんだけどなぁ……)
(あと1話当たりの文字数2万文字で書いていたはずなんだけどなぁ……)