騎士道のレプリカ   作:勉強サボ浪

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第5話「VS 私じゃない私」(下)

 なんだあれは、との言葉に隣にいた憤怒は正直に答えてくれた。

 

《――「サージ」。あなたに渡されたウォーターハンマーと同じ設計思想の武器だ。相違点は……そうだな、銀の刃が付いていて吸血鬼を叩き切ることに特化したというところか》

「……技能の無い素人には良さそうな武器だな」

《あぁ。普通の何の仕掛けもない銀剣でも刺突であれば吸血鬼は殺せる。熟練者には不要だと作った後で気づいたらしい》

 

 ただ素人が振り回す分には丁度いいだろう。斬撃ではなかなか致命的な攻撃は与えられないが、爆発の威力を加算すれば吸血鬼相手にも致命傷を負わせられるかもしれない。

 確かにこの武器が量産されれば他国の陥落だって簡単にできるだろうし、国内の吸血鬼を殲滅することができるだろう。

 

《しかし――強欲は戦闘用に作られていないはずだ。なぜサージを……? あれは封印指定を食らったはずでは……》

 

 ぶつぶつと呟いた憤怒の言葉にディスティールは(こいつ案外何も知らないし、何も知らされていないんだな……)という憐憫の視線を向けてしまった。おそらく彼女は裏切るものだと考えて意図的に情報を知らされなかったのだろう。コクーン盲学校への襲撃をしたという事実が彼女を擁護できない。

 しかし――ウォーターハンマー(水撃作用)に対してサージ(渦波)……。武器にペットネームを付けるなんて、母はやらないとイーリスは言っていたが……。

 

「――エノラ・スワン博士だったか。アンティーカ騎士団を陥れるために物語を使って民衆を扇動し、その物語を再利用してお前たちアイドールを製作、吸血鬼との間違った共生を叶えるためのアイドール計画を実行した。そうだな?」

《………あぁ。その解釈で間違いない》

「じゃあ……なぜ賛同者の一部がイーリスに計画書を渡し、背信は私たちに武器を与えた? 博士の思想が変わったのか、それとも計画のメンバーが一枚岩じゃなかったのか……」

《……私に言われてもな》

 

 憤怒は不貞腐れたように言った。計画を壊そうとした張本人で、彼女たちが一枚岩でないことの証明をした人物だ。博士の意思に迎合出来ないから、擁護をする気はないのだろう。

 だからディスティールも好き勝手にこちらもしゃべることにした。

 

「――博士は何のために行動をしていた? 吸血鬼との共生を掲げていたアンティーカ騎士団を失墜させたにもかかわらず、吸血鬼であるイーリスの母親と協力して義手や人工血液を開発して吸血鬼用の武器の乱用を防ぐために封印……。博士はどっちの味方なんだ?」

《私にも分かるわけがない――! あれは……とにかく、分からない人だった》

 

 憤怒がディスティールの偽物であるということを考えると、彼女の様子はどこかおかしかった。

 ディスティールの説得には感情論が入り込むことも多いが、基本的には事実や過去を基礎としての発言が多い。しかし憤怒の発言は事実が入り込む余地は無く、むしろ事実を隠しているような……。

 

「……何か隠したいのならば、それでもいいさ。だが、いつか私たちを信じられたら教えてくれないか」

《……分かった》

 

*

 

 

 使い終わった炸裂スチリウムの空薬莢を投げ捨て、新品を装填する。これで残り二本。

 

《――っ》

 

 油断なく構えながら、強欲は荒い呼吸を一息で整えた。

 魔法と機械で出来た体が空気を欲する。呼吸が必要ない贋作のアイドールが、だ。

 

(体力が――保たない)

 

 本来戦闘向けじゃないこの体で半人半吸血鬼のイーリスを消耗させられたのは、こちらが防御を捨てて大剣を使って相手の余裕を無くしていたからだ。

 

「ねぇ――話を聞いてくれる?」

《……聞くわけないでしょ》

 

 状況を下方修正。相手を防戦一方にすることは出来たが、相手を消耗させることは出来ていない。

 まぁ良い。あっちはそろそろこっちの手品に慣れ始めたはずだ。その上で体力がまだあるのなら、むしろこちらにとって都合がいい。

 3歩。1歩目で大剣を横に構え、2歩目で加速し、3歩目で横薙ぎ。がん、と鞘によって防御され、弾かれた。返すように振り下ろされた刀は柄頭で受け止める。

 

《――らぁ!》

「っ⁉」

 

 しかしその勢いのまま大剣を地面に突き刺し、それを支えにした横蹴りが見事に彼女の腹部に直撃した。軽量化はされたが、それでもまだ重い質量によりイーリスの呼吸が乱れ、一気にその表情に余裕がなくなる。

 今しかない。

 そのままの勢いのまま大剣を大上段にかぶって振り下ろす。鞘によって防御はされたが、そのままの勢いを打ち消すように引き金を引き爆発の勢いで相手の鞘を大きく上に弾いた。

 

「しまっ――」

 

 イーリスが苦悶と驚きの声を上げた。その右手にまだ刀が握られていることを確認しつつ、強欲は大剣を中央に構えて腕を引き、そのまま突き出す――

 

《これで! 終わりだぁ――っ!》

 

*

 

 この決闘を見届けている誰もが、イーリスの義手と一体化した鞘が上に大きく弾かれた時に決闘の決着がついたと誰もが考えた。

 

《なんで――?》

 

 だから客席に走ったざわめきと混乱を代表するかのように溢した強欲の声がしんと響いた。

 しかし客席のそれと、強欲のそれは音は同じだが意味は違う。

 

《何で――私の攻撃に反撃しなかったの?》

「その言葉、ほとんどをアンタに返すよ。――どうして、私の心臓を突かずに直前で動きを止めたの?」

 

 広場の中央に立つ2人。強欲はイーリスに向かって突きを放ち、その切っ先は彼女の胸少し手前で止まっていた。

 そのままの体勢のままの二人を見てざわめきが広くなる。あれはどういうことだ、アイドールはなぜそのままイーリスを突き殺さない、じゃあイーリスのほうはなぜ反撃をしない――

 

「全部、分かってたよ」

 

 イーリスの声が優しく、この場に相応しくないほどに、強欲を受け入れるように優しく声を掛けてその剣の切っ先を掴んだ。すでに刀は鞘の中に収められていた。

 

《――っ》

 

 切っ先を掴まれたことで強欲は剣を下ろせない。そのまま突けば相手の心臓を抉れるというのに、むしろ引こうとするがイーリスの手から血が流れてその動作を止めてしまう。

 本物をを傷つけることを、偽物は狙っていない。

 

「ずっと予感はしていた。どうしてアイドール計画が都合よく私にリークされたのか、どうして背信は都合よく私たちと戦って武器を落としていったのか、どうして都合よく首謀者が死んで、都合よく人間と吸血鬼の共生をめぐる紛争が起きたのか」

《そんなの――! ただの偶然……》

「偶然なら……人工血液も義手も――こんなに私たちアンティーカ騎士団にとって都合の良い技術が生まれるわけがない。そしてこの決闘――あなたを倒せばアンティーカ騎士団は返り咲くという話。そして最後のこれ」

《――》

 

 ぽた、ぽた。血がしたたり落ちる。誰も動かない。客席でさえも小さなざわめきが聞こえる程度で、気にする程度ではないのはイーリスの指摘を全員が理解するのに数瞬必要だったからだ。

 

「あなた達が生み出した、実行していたアイドール計画は『偽物のアンティーカ騎士団で本物のアンティーカ騎士団が認めるわけがない共生を果たす』ことじゃない」

 

 その瞳が、強欲を逃さないまま彼女は一つの結論を言った。

 

「偽の騎士団と醜悪な共生――それらを餌に私たちが王都にやって来てあなた達を討つ。そうさせることでアンティーカ騎士団の地位を復活させることが目的なんでしょ」

 

 客席がどよめく。わめく。

 つまり一連の行動はすべて――

 

「あなた達、アイドールはアンティーカ騎士団をもう一度英雄にするためだけに生まれてこの騒動を起こした」

 

*

 

 まっすぐ射貫くイーリスの視線から逃れるように強欲は大剣を振って無理やり彼女の手を解いた。

 

《……ちょっと自意識過剰なんじゃない?》

 

 強欲は無理やり露悪めいた笑みを浮かべる。

 イーリスの主張は、予想は全部当たっている。でもそれを隠さなければ。でないとこの計画がすべて無意味になる。

 だから隠さなければ。

 

《そんなことをして、一体どんなメリットが私たち――それに吸血鬼や研究者に得があるの? アンティーカ騎士団じゃないと、王都で吸血鬼が人間と共生を果たせないとか本気で言うわけ?》

 

 挑発的な笑みで、相手を小ばかにするように左手を軽く振る。

 そうだ、私たちはこの計画では悪役なのだ。国民の理想を煽った架空の物語から産まれた、架空の人物でアンティーカ騎士団に討たれるためだけの存在。

 アンティーカ騎士団が本物の共生を果たすために使い捨てられる、擁護ができないヴィラン。国民の憎悪を受けて断頭台へ送られる藁人形。

 だから思いっきり演技する。存在しないはずの本心を隠して、内に秘めた企みや真実を隠して――

 

「いいや、これは――共生の錦の御旗を掲げられるのは王都の中では私たちしかいない。吸血鬼でありながらも王都のために襲撃者と戦ってきたリーラさん。吸血鬼に故郷を滅ぼされても自分の仲間である吸血鬼を受け入れたディスティールさん。そして――吸血鬼の母と人間の父を持つ私じゃないと」

《――⁉》

 

 その事実は秘密にするべきものだった。

 イーリスの突然のカミングアウトに強欲の眼は見開かれる。観覧者もイーリスの言葉の意味を理解してざわめきがさらに強くなる。

 ――吸血鬼と人間のハーフ⁉

 ――汚らわしい……どうしてそんなものがこの王都に……

 ――人間と亜人の間で子が出来るのか……⁉

 視界の端で腕を拘束されていたリーラが立ち上がった。つまりはこの事実はこんな民衆の耳目がある場所で公開する予定ではなかったということだ。

 観覧する者がイーリスの意図を探る声が聞こえる中、強欲は叫ぶ。

 

《あなた――それをこんなところで言うって、どういう意味か本当に分かっているの⁉ 吸血鬼だって認められていないのに、あなた(ハーフ)が認められるわけないでしょ……⁉》

「吸血鬼と人間の両方の技術によって生まれたあなた達アイドールを受け入れるためには、両方の意見を取り入れられる第三者が必要でしょ?」

《……》

 

 強引な理論だったが、そして彼女はその場しのぎのでまかせのつもりだろうが、イーリスの言葉は間違っていない。

 蒸気の力を利用する技術は吸血鬼がいないと使用できず、人工血液は家畜の血液を使うため人間の協力が不可欠。加えてアイドールに使用されている肌はハーフであるイーリスの左腕の肌を培養して製造している。

 どちらにも中立な立ち位置ではないが、一番中立に近い立ち位置に座れるのがアンティーカ騎士団しかいない。……正確にはもう1つ適任はあるのだが、王子の生まれを一般に出すわけにはいかないためこの選択は選べない。

 ただ……アイドールと言う技術があるからそのような駆け引きができるのであって、それがあっても騎士団は綱渡りの行動を強いられることになる。

 

《………正気?》

 

 思わず漏れ出た言葉にイーリスは「もちろん正気です」と当然のように回答した。

 

「あなた達は偽のアンティーカ騎士団として生まれ、私たちのために使いつぶされるためにアイドール計画によって製造された。――私はあなたを受け入れたい。吸血鬼を受け入れると宣言した私たちが偽物を認めないなんて、あり得ない」

《――あなたが受け入れようとも、民は受け入れない。リーラやあなたでさえも受け入れられない民が、アンティーカ騎士団の偽物なんて――》

「私は――あなたの心について訊いている! 他のことなんて今はあなたの心に訊いている」

 

 下手をすれば国民に対する侮辱として受け取られかねない言葉に客席から非難の声が飛んだ。

 人格否定、人種差別、未知の物への恐怖、技術に対する不信感――。客席から飛んでくる罵倒は様々な言葉と表現を以って広場にいた2人を押しつぶそうとする。

 しかしそんな声を無視し、まるでこの場には自分(イーリス)と自分の複製品(強欲)しかいないようにイーリスは叫んだ。

 

「あなたは――アンタは、私の偽物なんかじゃない。私が、自分が偽物であるからと言う理由程度で生きることを諦めたりはしない。――答えろ。アンタは一体、何者だ⁉」

 

*

 

 イーリスが私の肩を掴んだ。木組みと金属の骨格を人工肌と騎士団の制服風の衣装で偽装し極力目の前のイーリスに似せた私の肢体は本物とは全く異なる。

 見た目を極力似せて、ハーフの肌を剥いで開発した人工肌と、彼女の切り落とされた左腕と、数々のオリジナル由来の物品を利用して製作されたのにも関わらず、他のアイドールと違って自分はいつまで経っても自身が「イーリス」である自覚は発生しなかった。

 しかしこうやって視線を交わして、真正面から本物と向き合えば分かる。自分はあくまで贋作であり、本物とは別の個体であると嫌が応にも思い知らされる。

 だけど――できない。彼女と私が共生することはできない。

 だって偽物と本物と言う決定的な違いがあっても、同じ存在が同じ世界にいられないでしょう?

 

《あなたは――》

 

 闇の中に閉じ込められたあなた達を救い出すために、生まれた身代わり人形なのに、

 あなた達にもう一度光に触れさせるための身代わり人形でさえも、

 ただ出会ったというだけで私たちさえも救おうとするの?

 

《私は――》

 

 私は、もう十分だった。

 どんなに姿を似せたとしても、私は大衆に求められていない偽物のイーリスはずなのに

 

 満点の紫の光の海で、私を応援するために騎士を応援するための旗(ペンライト)が青に光る光景を幻視してしまった。

 

《私は――ぁあっ!》

「!」

 

 感情だけだったが、スチリウムは装填されてなかったが、いきなりの攻撃にイーリスは驚いたように後ろに下がってその刃を鞘で逸らす。

 客席から、わぁっと声が聞こえたが知ったことではない。私じゃない私(イーリス)がようやく本心を見せた私にむかってにやりと笑った。

 そのようやく自分の思い通りになったような、自分の願いが叶ったようなその笑顔に乗せられるのは癪だったが、私はイーリスに向かって切っ先を向ける。

 

《私は「強欲のイーリス」! でも――あなた(本物)じゃない。私はあなたの身代わり人形じゃない! 私たちアイドールが本物のアンティーカ騎士団でないのなら、あなた達を討って、私たちが「アンティーカ騎士団」になってやる……!》

 

 やっと言えた。

 私は偽物であっても、私たちの存在は認められたい。そのためには本物のアンティーカ騎士団を倒さなくてはならない。そうしなければ、他のアイドールも私も廃棄処分される。

 本来は本物のために戦って処分されるはずの自分が強欲に生きるためには、本物を殺すしかない――!

 

「ようやく、あなたの本心が分かった」

 

 私の攻撃を彼女はいとも簡単に回避した。後ろに下がった隙を見てスチリウムを再装填。

 

「でもね、私はあなたよりも欲張りだから『あなたのために死んであげる』ことはしない」

 

 イーリスは左腕の鞘に番えた刀の柄を掴む。が、抜かない。

 抜刀術だ。先ほど私が願ったように、こちらの攻撃にカウンターで迎撃するのだろう。

 しかし今回は違う。私はイーリスを――私じゃない私を倒すつもりで剣を振りかざす。

 引き金を引く。撃鉄が落ち、チャンバー内の水の入ったガラス瓶が砕け生石灰と反応し発熱、別のアンプルに入った気化エタノールが爆発し渦流大剣が加速する――!

 

《私の明日のために――!》

 

 相手を叩き潰す。目の前の相手(イーリス)と代用品(わたし)は並んで歩くことが出来ないから。

 私の独りよがりの結論は――けれど、振り下ろした大剣ともに切断された。

 

《――え》

 

 耳に残るは爆発音。あの炸裂スチリウムの音と臭い。

 今更ながら、なぜイーリスの母がアイドールだけでなく義手やスチリウム兵器にまで関わっていたのかを思い知らされた。

 イーリスの義手に仕込まれたスチリウムによって加速された刀が、抜刀の勢いのまま私の大剣の機関部ごと基部を切断した。剣身と排気パイプが、がしゃんと音を立てて地面に落下する音が聞こえる。

 

《ぁ――》

 

 突撃の勢いのまま、私はイーリスの体に突っ込んでしまった。半ば抱きしめられる形で、殺そうとしたもう1人の自分に受け入れられて、とてもみっともない。

 

《……ごめんなさい》

「謝るのは私たちだよ。関与していないとはいえ、アンティーカ騎士団の都合に巻き込む形であなた達が生まれ、そして殺してしまうところだった。……本当にごめん」

 

 返事をしようとした。だけど自分の喉は存在しない呼吸が乱れたようにして無意味な音を出そうとするばかり。

 そういえばアイドールが唾液を出せないからそれっぽいものを博士が憤怒に作らせていたことを思い出す。きっと涙も同様なのだろう。

 なんで泣こうとしているのかは分からない。ただイーリスに、偽物の自分が認められたことがとても嬉しかった。

 

*

 

 城壁の頂上にある櫓は見張り台ではなく、王族が民衆に対して演説するときに度々使用される。壁の前には今回の決闘の結果を今か今かと待つ民衆たちが詰めかけている。

 

「……さて、どこまで言うべきか」

 

 王子が壇上に立って時間稼ぎの演説している間にアンティーカ騎士団は偽物含め10人が舞台袖と言うべき場所に集まって相談していた。

 悩みどころは掘ればいくらでも。アイドール達を受け入れるというのは想定内だったが、イーリスの出生を国の重鎮たちの前で言ってしまうのはさすがに考えてなかった。

 

「イーリス……その場の流れで言って良いようなことじゃなかったでしょ」

「はい……」

 

 リーラの小言にイーリスが恐縮する。同じ顔の人が詰められている状況に耐えられなくなったのか、強欲が割り込む。

 

《あー……その、大丈夫――っていうかもう遅いっていうか……。もうイーリスがハーフだというのは迷光騎士団経由で王にはバレてるんだけど……》

「あー……そうだもんね、イーリスのお母さんがそっちにいて迷光騎士団と手を組んでるからぁ……」

 

 ついに頭を抱えてしまったリーラ。イーリスの出生の秘密が今後どのように国に住む民衆たちに影響を与えるのか分からないのだ。彼女の懸念は、自身が吸血鬼だと迫害された過去を考えると当然ともいえる。

 

「大丈夫です。きっと、街のみんなも受け入れてくれますよ!」

「お気楽なのはいいよね……ほら、人形さんたちも我らが団長も眉間を抑えてる」

 

 美形であるディスティールと彼女を模った憤怒が沈黙している様子ははっきり言って画となる。その様子を少し心配そうに見つめ、気に掛けるフィロと誘惑もそうだ。

 反面、百面相に表情を変わるクロシェと献身。それにリーラと同じく渋い表情をする背信。絡繰り人形だというのに、どうしてこんなに色彩豊かに表情を再現できるのだろうか。

 

《やっぱり私たちを処分してしまった方が……》

 

 灰色のツインテールを揺らしながら誘惑が言うが、強欲が彼女を宥めるように言った。

 

《民衆は分かりやすい物語を求める。なら半人半吸血鬼のイーリスが、2つの種族の技術を集めて出来た私たちを受け入れるなんて分かりやすいんじゃない?》

「……吸血鬼との共生によって起こりうる反発を、別の話題で有耶無耶にしようとしているようにも思えるがな」

 

 ディスティールの現実的な言葉に全員が失笑した。

 

(それでも)

 

 ……たとえどんなに反発されようと、どんなに弾圧されようと、どんなに石を投げられようとも――生まれてしまったものは簡単には消えない。

 アンティーカ騎士団を救うという名目で生まれてしまった技術は、また別の亜人を産み、新たな武器が開発され、吸血鬼の新しい生き方を拓いた。

 それが忌むべきものか称えるべきものかは分からないけれど、生まれてしまったからにはもう後戻りできない。私たちはそれを無かったことにして生きることは出来ない。

 

 だから――全部意味があったことにしよう。

 

 全部受け入れられるかどうかは分からないけど、全部を見捨てることなんてもう出来ない。

 

(だって私は――みんなと一緒に笑いあって生きる楽しさを知ってしまったから)

 

「じゃあ――行こう」

《……うん》

 

 

 




ようやくここまでいけた……

もうちょっと続きます


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