超かぐや姫×デジモン 作:ビクトリーグレイモンはカッコいいよね
あの後、夜泣き対策の大義名分を失った俺はアグモンとともに自分の部屋に戻って就寝した。
で、翌朝。
「うぉっ、寝っむ……」
「リツカー、大丈夫?」
「なんとか~」
変な時間に起きて騒いだのがいけなかったのか、眠いのに中々寝付けないという状態になった俺は普通に寝不足状態だった。いや普段から寝不足気味ではあるんだけどさ、それに環をかけてっていうか。
さっさと身支度や登校の準備を整え、とっとと簡単な朝飯をアグモンの分も作る。
食べながら、
「アグモン。お前が
「う~んとね。最近、こっちに来ちゃうデジモンが多いんだ。気付いてた?」
それはまあ。他のやつらから増えてるって話は聞いてたけど……。
「どれぐらい増えてるんだ?」
「たしか月に5、6体くらい。大抵は直ぐに戻ってきてるみたいだけど」
「………俺たち側だとひと月に1体来るか来ないかぐらいの感覚だったんだけどな」
アグモンが把握してるだけでも結構増えてるのか。これは調べたほうがいい、よな。
「分かった。とりあえず学校で健にも話してみるよ」
「タケルとコテモン、元気?ミヒメたちは?」
「相変わらず元気だよ」
食い終わった食器を流しへ。さっさと洗ってしまう。
カバンを持って、アグモンと一緒に外へ出る。
階段を使って二階に上がると、
「────ぁだやだ待って、待ってよ!おかしいって、宇宙人だよ?こんな変なの置いて出掛けないでしょ普通はさぁっ!?かぐやちゃんより学校が大事なの?」
おう、仕事ばっかの旦那を責める嫁さんみたいなセリフが聞こえてきたな。
「命よりは大事じゃないけど、かぐやよりは大事。家で大人しくしてて」
おう、完全なマジレスも聞こえてきたな。
ガチャリ。扉が開いてマジレスの主、制服姿の酒寄が出てきた。
「よーっす。おはよう酒寄、かぐや」
「おはようカグヤ、イロハ」
「お!おっはよー!アグモン、立花!」
「おはよう立花……それに、アグモンも」
酒寄がちょっと言い淀んだのは、たぶんアレだな。『やっぱそっちも夢じゃなかったかー』的なことだな。
………つうか、かぐやがまたでかくなってる。もう俺らと年齢変わんないくらいだぞ。
「そうだアグモンと立花からも言ってよー!かぐやとずっと一緒にいるべきだって!」
「ガッコーは大事だよ?」
「うらぎられた!」
「アグモン、かぐやのこと頼むなー。かぐや、アグモンと留守番よろしく」
「絶対家から出ないでよ。それじゃ、行ってきます」
そう言って学校へ向かうのだった。
俺今日バイト無いし早めに帰ってくるから。それまで我慢しててな。
▼
その日、都立武蔵川高校に激震走る───!!
「あ、酒寄さんだ。おはよー……え、白雪?」
「さ、酒寄先輩!おはようごさいま……白雪先輩、何故っ!?」
「酒寄さんこの間はありがとう。……アレ、白雪?なんで?」
品行方正、才色兼備、文武両道の超優等生、酒寄彩葉が学校の変な意味での有名人、白雪立花と一緒に登校してきたからだ。
噂は稲妻となって学校中を駆け巡った………尾ヒレを大量に増やして。
「で、違うんだな?白雪が酒寄を催眠術したとか遂に告ったとか、逆にストレスでおかしくなった酒寄が白雪を襲ったとか、冗談めかして色々憶測と妄想とが錯綜してるけども」
「「事実無根です」」
「お前ら二人を子供用品店で見たって話も出てるけど……」
「「連休中、親戚の子を預かってただけです」」
登校した途端、職員室に呼び出されたと思ったらこれだよ。
なんとなくで一緒に登校とかするもんじゃねぇな。
みんな恋愛とかその手の話好きすぎない???
▼
九割九分九厘冗談として流されている噂と好奇心からくる質問を投げてくるクラスメイトたちをのらりくらりかわして、放課後。
「健~、ちょっと時間良いか?」
「高嶺の花を射止めたともっぱらの噂の男が何の用だ?」
「ちげぇよ、からかうなよ……」
「からかってるわけでもないんだが……まぁいい。俺も話がある。場所を変えよう」
「?」
教室を出て、廊下を通り、階段を上る。
屋上に繋がる施錠された引戸の前の階段に座って話すことに。
「昨日、アグモンが来たぞ。デジモンがこっちに来まくってるってよ」
「……そうか。向こうでそれ以外に異変は?」
「何もないみたいでさ。だから異変が起こってるならこっちなんじゃないか?」
「成る、程……それで肝心のアグモンは?一緒じゃないのか?」
「留守番」
「連れてきてないのか……」
「こっちにも事情ってもんがあんだよ」
一応、デジヴァイスは持ち歩いてるぞ。
……そういや、コイツにもかぐやのこと、話しといたほうがいい、のか?
いやでも宇宙人とか信じないだろうしな……。
「双子にはお前から連絡しておいてくれ」
「了~解。これから部活だろ?頑張ってな」
「お前もバイトだろ。そっちこそ」
「へいへい、じゃあまた明日」
とりあえず、今日は解散した。
▼
「何してんの?」
「あ、立花じゃん!やっほー!」
「やっほーリツカ」
やっほーじゃねぇよ、留守番はどうした。何で校門のとこで猫と戯れてんだ、かぐや。
その服は……酒寄のを借りたのか。
「かわいいな~。こういうの、かぐやも家に欲しいな~」
「ぼくがいるじゃん」
「アグモンはかわいい系じゃなくてカッコいい系じゃん!」
「エヘヘ~、リツカ。ぼくカッコいいってさ」
嬉しそうだなアグモン。お前にはかぐやの子守りを頼んだはずなんだけど。
一人きりにはしてないから子守りの役目を果たしてはいる、のか……?
「あ、彩葉だ」
酒寄?何処だよ?
……あー、アレか。あのずいぶん遠くの三人組。相変わらず仲良いな。
しかしかぐやお前よく気付いたな……って、おいバカ飛び出すな!
車が来てるっ!!
「危ねっ!」
「うおぉっ、ビビった~……」
「カグヤ、大丈夫?」
間一髪、俺が止めたことで轢かれずに済んだ。
軽自動車は停まることなく走り去っていく。
ビビった~、じゃねぇ!
「かぐやあっ!!」
「は、はいっ」
「道路に飛び出し禁止!左右の確認大事!わかったか!?」
「うん……」
「……次からはちゃんと注意するんだぞ、わかったな?」
「はい……」
思わず語気を荒げる俺に、固まりながらも返事するかぐや。
シュンとしてる……ちゃんと反省してるみたいだな。
ていうか、
「お前、交通ルールもわからん状態でどうやってここに来たんだ?」
「え、アグモン」
「ぼくが肩車みたいにして運んだよ~」
そうか、ありがとうなアグモン。お陰でかぐやが車に轢かれずに済んだよ。
交通ルールも教えてくれてたらもっと良かった。
「ちゃんと反省してるようだし、いい。わかればいいんだ、わかれば。ホラ帰るぞ。酒寄は友達と遊んでくるみたいだから邪魔しないように───」
───かぐやが居ねぇ。アグモンも。
どこ行った、いや考えなくてもわかる。酒寄の所か!
ホントに反省してんのかアイツは!?
▼
友達二人からのお礼のパンケーキの一部を宇宙人に強奪された。
「よっ、彩葉!」
「よっ、イロハ」
下手人+αは悪びれることもなく手を挙げて挨拶してきやがる。
………何故居る?
そして何故私のパンケーキを食う??
アグモンに至っては人目について良いのか???
「えー、可愛い。誰この子。そして何これ?」
「彩葉の服着てる。彩葉の友達?それでこっちは……デジモン?」
「ええー、あーっ、こ、この子たちは、その、なんていうか……」
どうする。どうやって誤魔化せばいい?
てかそもそも宇宙人と
「ぼくアグモン。最新のペットロボだよ」
「へー、かがくのちからってすげー」
ナイスアグモン!
「これなに?何て食べ物?」
「パンケーキ好き?これも食べる?」
甘やかさないで芦花!!
「これがパンケーキ?彩葉のとは雲泥の差だねっ!」
うっさいわっ!
ええい、ふざけたこと抜かす宇宙人は無視だ。一刻も早く誤魔化さなくては!
「ねぇ、紹介してよ、彩葉。こんな可愛い友達独り占めはズルいよ?」
「だから友達っていうか、そのあの……」
口籠りながら『早よ帰れ』とかぐやに視線を送るが気付きやしない。
それどころか、
「月から来たの!」
「ジ!築地から来たんだよねー、かぐや!」
オイ貴様何を口走っている……!?
なんとか誤魔化したけどだいぶ苦しいぞこれ!?
「築地!美味しいお寿司屋さん教えて~?」
いけた!流石は真実、
「かぐやちゃんって言うんだ。可愛いね」
芦花もいけたっ!流石
しかしもう限界だ。これ以上ボロが出ると誤魔化しきれない。
パンケーキの残りを口に突っ込む。咀嚼もほとんどせず、ほぼ丸呑みだ。
「ごめん。急用思い出した!埋め合わせはまた今度!ごちそうさま!」
そう二人に告げて私は立ち上がり、かぐやの手を掴むと風となって店から脱出するのだった。
「カグヤ、イロハ、待って~?」
ごめんアグモン!
決して忘れてたわけじゃないから!
かぐやと一緒に回収する余裕がなかっただけだから!
▼
街の人
俺が酒寄たちと合流したとき、何故か酒寄は泣いていた。
「い、いったい何が……?」
俺、かぐやを叱るつもりだったんだけど?
なんで泣いてんの酒寄。めっちゃプルプル震えてんじゃん。
「カグヤがイロハ泣かしたー」
「ちょ、アグモン!ち、違うから!かぐやちゃんちょっとネット通販でスマコン買っただけで───」
「───『だけで』じゃないでしょうがっ!」
あ、復活した。
「アンタ言うに事欠いてアンタぁっ!」
「あわわわっ!で、でもほらっ。なんか銀行?のデータ書き換えればウォレットの数字増やせ───」
「絶対やるな!」
「ダメに決まってるでしょ!」
交通ルールとかそれ以前に倫理観含めて地球の社会を教えなきゃダメだコイツ!!
▼
アパートに帰ると酒寄の部屋の扉は施錠すらされていなかった。
鍵するのを忘れてた、というか単純に鍵が酒寄の持ち歩く1本しかないから出来なかったのだろう。
二人が入って行くのを見て俺もアグモンと自分の部屋に戻ろうとすると、かぐやから待ったがかかった。
「立花も入って入って~」
「アンタの家じゃないんですけど……?」
誘われるまま酒寄の部家に入ると、すぐに食欲をそそる良い匂いが鼻をくすぐってきた。
いつものちゃぶ台の上にはここ数年見てない豪華な料理の皿が並んでいた。
「どうしたんだコレ?」
「まさか……作ったの?かぐやが?」
「そだよ~~。ぶいっ」
「ぼくも手伝ったよ~」
ビシッ、とピースサインをキメるかぐやとそれに合わせるアグモン。
とうもろこしのポタージュに温泉卵もついたサラダ、それにトマト煮込みハンバーグ……どれもこれも非常に旨そうだ。
同時に『幾らくらい掛かったんだろう?』とも。
「これも……私のウォレット、から……?」
「そだよ~~……ん?いや違うや。これはアグモンから」
は?アグモン?金持ってたか?
「イロハのお金で買い物してたみたいだからご飯代はリツカのカード使ったよ~」
「……マジか。まぁそれくらいは」
出してもいい……つうかスマコン代も半分は出そうと思ってたし。
久しぶりの豪勢な食事を堪能させて貰った。
その後、スマホで利用明細を確認すると結構な額が飛んでいた。
そうだよな、ポタージュだもんな。ミキサーとかハンドブレンダーとか俺も酒寄も持ってないもんな……。
買ったんだよな俺の金で……美味かったけど地味に痛い出費だ……。
▼
しっかり施錠させて酒寄の部家から出る。
そのままアパートの敷地の外へ。時刻は午後8時を過ぎたところ。
「ごめんねリツカ。カード勝手に使って」
「いいよ。そもそも怒ってない」
それに、
「これから働いて返してもらうし、な」
デジヴァイスを取り出すとすぐに操作、作動。
神器から広がる力が一瞬で周囲を、半径50メートルほどを包み、そのまま
景色が切り替わる。
普通の住宅街だったのがいつの間にか周囲の建物は苔むし、蔦が覆い、緑化していた。
それに何より俺以外は
これがデジヴァイスの機能のひとつ。
疑似的な空間を展開して、選ばれし子どもたちやデジモンを一時的に現実から隔離出来るのだ。
何故今そんな機能を使ったのかと聞かれればそれは勿論、デジモンが居たからだ。
それもこちらを、というか酒寄か、かぐやのどちらかを獲物と定めた危険なデジモンが。
「ガぁぉぉおおおオオオオ───!!」
赤と白の毛並みと鋭い牙の生え揃った大きな
ファングモンが姿を現した。同時に俺たちを脅すように咆哮する。
酒寄もかぐやも気付いていなかったようだが、俺とアグモンはファングモンの獲物を見定めるような独特の視線に気付いていた。
「対話は……無理そうだな」
「うん、ファングモンは獲物を諦めない。倒すしかないよ」
「そうか、なら───」
遠慮は無しだ。
「ガァァアッ!」
ファングモンが疾駆する。
風のような素早さ、数秒もせずに俺をその顎で噛み砕くだろう。
だけど俺は慌てないし、恐れもしない。
「『ベビーフレイム』!」
巨狼を止めたのはアグモンが吐き出す火の球。それは動き回る相手の目に吸い込まれるように命中した。
堪らず、バランスを崩して倒れるファングモン。
しかし油断していたところに
だから───
「アグモン、進化だ!」
「わかった!アグモン進化───」
───この隙に、俺の心を、
電脳の神器が力を増幅し、目には見えない
アグモンの身体がひととき解けて光の繭、あるいは卵へと変わる。
「ぐ、る、グゥ………、ガルゥっ『ブラストコフィン』!」
痛みから立ち直ったファングモンが俺へと吐き出したのは氷の息吹。極低温の奔流は俺の生命を停止させるのに十二分過ぎるほどの威力だろう。
しかし俺には当たらない、届かない。だって、
「───『グレイモン』!」
光の卵の中から飛び出した巨影が俺の前へ割って入り、迫る奔流を受け止め、更には腕を大きく振るって散らしてしまう。
皮膚が硬化した固い甲殻に頭部を覆われた恐竜型デジモン、グレイモン。アグモンの進化した姿だ。
「グルルルゥ………ガァッ!」
「グオオオォォッ!」
グレイモンとファングモンが咆哮し合い、正面から激突。
頭突き勝負はグレイモンに軍配が上がった。が、顎を大きく開いたファングモンが怯むことなく噛み付いてくる。
腕で抑えるように止めるグレイモン。凄まじい咬筋力、きっと長くは保たない。
「ぶちかませ!」
炎の息吹を吐き出すグレイモン。噛み付き、顎を掴まれたままのファングモンは避けられない。
熱がファングモンの胴を焼き、痛みに顎の力が緩む。その隙を見逃さずグレイモンが巨狼を上空へ放り投げた。
───決着だ。
「決めろグレイモン!」
「───『メガフレイム』!!」
グレイモンが炎の息吹を口内に溜め、収束───そうして放たれた超高熱の火球が空中で身動きのとれないファングモンに命中、爆発。
跡形もなく消滅させた。
ファングモンが何故現実世界に来たのかはわからない。
酒寄とかぐや、どちらを喰おうとしてのかは知らない。
だけど俺やアグモンや他の仲間たちがいる限り、彼らが、人を喰おうするデジモンたちが