超かぐや姫×デジモン 作:ビクトリーグレイモンはカッコいいよね
「……で? なんなの?」
「俺に勉強を教えてください!」
「いやそれはもう聞いたから」
「ストレートに勉強教えて欲しいだけだが……?」
流石にそのまま話し続けるには注目されすぎててちょっとハズイ、ということで場所を変えることになった。
学校からも程近いファミレスの4~6人がけくらいテーブル席。
男女比1:3。
対面には
……対面綺麗所が揃い過ぎてる。明日俺学校の男子にボコられかねないな。
「白雪くんさぁ、そもそもそんなに彩葉と仲良かったっけ?」
「学校で二人が話してるのあんま見たことないんだけどぉ?」
仲良いっていうか何て言うか。
確認のため目配せすると酒寄は観念したように頷いた。
許可出たな。
「俺、アパート、酒寄と一緒」
「……………え、何、ストーカー?」
「ぶっ」
「ちがわい!!」
なんてこと言うんだ綾紬。
先に住んでたの俺だから! 酒寄が後から入居してきたの!
吹き出してんじゃねぇぞ酒寄ぃ!
「って…ああもう、違くて。聞きたいのはそういことじゃないんだよ」
ん? じゃあ何だ?
「なんで彩葉なの?」
「…というと?」
「だからさぁ」
……この感じもしやあれか?
「なんで彩葉が白雪くんに勉強教えないといけないの?」
……………。
「ちょっと芦花そんな言い方!」
「頼まれたら断れないでしょ~? 彩葉はさぁ」
咎めるように語気を強める酒寄を諌山が宥めた。
それに構わず綾紬は続ける。
「別にご近所ってだけで特別仲良いわけでもないんでしょ? ただでさえ彩葉は苦労してるんだし、迷惑かけないであげて欲しいんだけど」
……やっぱそうか。
酒寄が一人暮らしの上に生活費も学費も自分で賄ってるってのはウチの学校では有名な話だ。
大変だもんな。
それに友達に着こうとする悪い虫だと思われてるっぽいか?
友達を守りたい、と。
綾紬も諌山もいいやつだな。酒寄は友達に恵まれている。
ちょっと違うか。
酒寄が頼られたら断れない、困ってる人を見捨てられないようないいやつだから。
それを良いように利用するヤツを寄り付かせまいとして周りにいいやつが集まるんだろうな。
だからって、俺は退かないけど。
「……まぁ最初はさ。俺も男連中頼ろうと思ったよ」
でもな。
『え?勉強?ギリ平均点以下の俺が何教えるって?教わる側だろ???』
『何が分からないのかが分からんから無理』
『部活一筋。剣道一筋』
『部活一筋。卓球一筋』
なんで俺の友達は揃いも揃って同レベルのバカばっかりなんだよ…! 似た者同士か? 類は友を呼ぶなのか!?
いや成績良いヤツも居るけどさぁ!
致命的に教えることに向いてねぇのよ!
頼りねぇし頼れねぇし頼る意味もねぇのよ!!
最後二人に関してはこんな進学校に来る必要あったか!?
「もう頼れるの酒寄しか居なくてぇ…マジ勉強キツくてぇ…」
流石は進学校、授業は超ハイペースだしテストは超ムズい。
春に一週間くらい休んだのもあって全然追い付けてない。
このままだとありがちな落第からのやる気消滅からの留年&退学コースに直行です。
進学校に居るってのに進学どころか退学の危機。超情けねぇ。
別に成績上位になりたいとは言わないけどせめて平均、赤点を余裕を持って回避できるくらいにはなりたい。
「頼んます…!ヒマ過ぎて死にそうなときだけとかでも良いから…!」
「……」
「……」
「……」
沈黙が痛い。
どうしよう俺先生から見捨てられてるクサくて質問しにいってもロクに対応して貰えないし。
頼れるの酒寄ぐらいなんだ。断られたら後がない。
ダメかな? ダメかぁ。え、ダメぇ? うえぇ、マジでどうしよう。
そんな風に冷や汗を流しつつ拝み倒すこと1分経ったか経たないか。
はぁ、というため息が聞こえてきた。
酒寄だ。
「……ええよ。時間があるときに、たまになら、ね」
─────────────────────────
『え、マジでぇ!? サンキュー酒寄!』
『よっしゃァ言質取ったり、後でやっぱ止めたは無しだぜ!』
『…アレそいや今何時…やっべバイト!!』
『酒寄! 綾紬! 諌山! また明日学校でな!』
そう言って明るい髪色の同級生は足早に去っていく。
店から出た瞬間、早足は全力ダッシュに変わった。結構速い。
すぐに見えなくなった。
ファミレスからの帰り道、三人並んで歩く。
話すのは先ほどまでのこと。
「あ~、なんか疲れたぁ……」
「よしよし、がんばったねぇ」
ガックリと肩を落とす芦花の背中を真実が擦る。
高校に入ってから出来た友人たちは、男子それも少し不良気味(染髪疑惑あり)の白雪くんと二人きりの状況を心配して着いてきてくれたのだ。
その気遣いがありがたく、同時にこそばゆい。
────この世で頼れるんは自分一人や
耳の奥、脳に直接響く声を努めて無視する。
せっかく友達といっしょなのだ。嫌な気分になりたくないし、させたくもない。
「…二人とも、心配し過ぎだよ」
「でもさぁ…」
「あの白雪くんだよ? 居るだけで周囲のIQ下げると話題の」
そんなこと言われてるの???
「大丈夫だって。……悪いひとじゃないから」
彼、白雪立花とはアパートが同じだから交流がある。
多少は人となりを知っている。
いわゆる不良とは違う、はずだ。
あれはゴールデンウィーク直後の五月中旬。
『あれ? お婆ちゃんどしたのその荷物。買い物の帰り?』
『重そうだねぇ…俺、暇だから持ちますよ。家はどこ?』
『ああ、あの赤い屋根の? じゃ行きましょうか』
『お、酒寄じゃん。これからバイト? がんばってなー』
『……こんなベタな人助けの機会があるとはなぁ……』
ある日には。
『酒寄ー、田舎のジジババから野菜大量に送られてきたから貰ってくんない? お裾分けお裾分け』
『は? 要らない? いや困るよ。俺一人じゃ消費しきれねぇもんあの量!』
『頼むよ助けると思って受け取ってくれよでかい段ボールで来てんだよ!』
また、ある日には。
『酒寄ー、豚汁作りすぎたから貰って?』
『酒寄ー、煮物作りすぎたから貰って?』
『酒寄ー、カレー作りすぎ…え何? 要らない? 頻繁に持ってきすぎ? 冷凍しろ? ハハ、ばっかお前そんなんやってるに決まってるだろ』
『こういうのは大量調理のが旨いんだよ。つうか去年一昨年とこのアパート住んでた学生二人がしょっちゅうタカりに来てて一人前の適正量がもう分からん』
『頼むよ助けると思って受け取ってくれよ冷凍庫パンパンだし腐らすだけなんだよ!』
とまぁこんな感じで。
飯貰ってばっかりだな私…。
「だからホラ、警戒する必要ないかなって」
頻繁にお裾分け貰ってるし。たまに勉強教えるくらいなら借りを返すと思えばなんてことない。
私の復習にもなるしね。
「彩葉がいいならいいけどさぁ」
「無理しないでよ?」
───無理は怠け者の言い訳や。私は私に出来たことしかいうてない
大丈夫、大丈夫。
学校の勉強は大変だし、はじめたばかりのアルバイトは未だ緊張するし、一人暮らしの慣れない家事は苦労の連続だ。
でも幼い弟妹を養って京大に入った当時の母はもっと大変だったはず。
だから大丈夫。
心配してくれる友達が二人もいて、隣人のお裾分けで食費もそんなにかかってない。
だから大丈夫。
「はいはい分かってますって」
「その返事はあやしいなぁ…?」
「嘘だったら後が怖いよぉ…?」
信用無いなぁ。
「それじゃ、私もバイトだから。また明日ね」
「うんまた明日ー」
「バイト、ファイト~」
軽く手を振りあって二人と別れた。
さてと、労働労働。
苦学生もとい苦高校生の酒寄彩葉に完全に暇な平日なんて(あんまり)ないのだ!
芦花「白雪くん、彩葉と同じアパートってことはさぁ」
真実「……え、もしかして彼も一人暮らし?」
「「……複雑な家庭のひと、多くない……???」」