超かぐや姫×デジモン 作:ビクトリーグレイモンはカッコいいよね
うぉぉぉオオオオっ!!!!
バイトじゃぁぁぁぁぁぁぁあ!!!
夏!夏休み!バイト入れ放題!!
バイト!バイト!!酒寄と飯喰う。バイトォ!!!
宿題も忘れずにやる!そんでバイトォっ!
バ先の焼き鳥屋は納涼会シーズン真っ盛り!!
大忙し!
ビール!串5種盛り!レモンサワーにウーロンハイ!!
え、未成年?アルコールは?飲んでない?
飲んでない、それなら
ウチはソフトドリンクも完備だいっ!!
そんなこんなあって、今。
「疲、れたぁ……」
現在地、
酒寄の部屋。現在時刻、12:50。
怒涛のフル5連勤が終わり、今日は(珍しく!)午前中に仕込み作業だけだった俺は酒寄愛用のちゃぶ台に突っ伏していた。
なお今までフローリングに直置きだったちゃぶ台だが「あんまり傷付けすぎると金取られるんじゃなかった?」という俺の一言により、円形のラグマットが追加されていたりする。
「おつかれさま~、ホレ
「やった~……よっ、と」
力無く応え、気合いを入れて身体を起こす。
定期的に勉強会をしていた俺たちだったが、いつの間にか特に予定の無い日は一緒に飯を喰うのが当たり前になっていた。
もちろん作るのは交代制で持ち回りで、今回は酒寄の番。
最初は女子の手料理にテンションが爆上がりしたものだが慣れとは恐ろしいもので今はもう普通になってしまった。
ああ、明確な嘘だ。未だに手料理が結構嬉しい。
「はい、今回のメニューは酒寄家特製粉と水のパンケーキを改造したガレットです。中身はハムとチーズに玉子ね。脇にサラダも付けました」
「わぁ」
そば粉とか絶対入ってねぇのになんで灰色になるんだろうな
俺の部屋にも酒寄の部屋にもナイフなんて洒落た食器は存在しない。
お箸で見切り品と俺の祖父母からのお裾分けで構築された昼飯に格闘すること数分。
「バカな、ちゃんと美味しかっただと……?」
「おいどういう意味よコラ」
俺の舌の下限が拡張されたのか。
それとも酒寄の貧乏飯の腕が上がったのか。
後者であって欲しい、切実に。
「ごちそうさまでした」
「お粗末様でした」
喰い終わった後の食器を洗うのは作って貰った側。
さっさと食器を纏めてシンクへ。
「で、海だっけ?」
「そ。真実と芦花と三人で。来週の水曜ね」
「いってらっさい。……まぁ俺も明後日からしばらく海の家で泊まり込みのバイトだから、会うかもな」
「そうなの?」
「なんか店長の知り合いがやってるとこで人手足りないんだって」
「海の家のバイトって人気高そうなイメージだけど」
「元々は別のとこで店やってて、そこのバイトをスライドさせる予定だったけどなんか色々あって無理になったらしい」
▼
『焼きそばのサカイ・海の家出張店!今日も元気に営業中!』なのだが。
全然客来ねぇ……。
バイトはじめてから4日経つけどたぶん計三十人いってねぇぞ、大丈夫かこの店?
ちゃんとバイト代出るよね?
「………ぐぉぉ…………ぐ、すぅ………」
音に気を引かれ目線を向ける。
ビールケースとベニヤ板の天板で作られたテーブル席の一角に空き瓶が数本立っている。その長椅子部分で横になり、イビキかいて眠る海パンにアロハシャツを着た男がいた。
この海の家の店長である堺さんがビールかっ食らって寝てやがるのだ。
なんぼなんでもやる気無さすぎ。
昨日まではたまに奥さんが様子見に来てくれてたけど今日は来れないって言ってたからか、だらけきってるな。
ていうかなんで俺以外にバイト一人もいねぇのよ。
おかげで呼び込みはおろか休憩にもろくに行けやしない。
おや?
「白雪くんやっほー」
「おつかれ~バイト戦士」
「ホントに居たよ……」
上から諌山、綾紬、酒寄、である。
なんだ?バイトの俺を労いに来てくれたのか?
「いらっしゃーせー、見ての通りの閑古鳥だから注文何でも言えー」
「おごり?」
「んなわけねぇだろ」
諌山はザ女の子って感じのチェックのオフショルに水色のスカート状の水着。
「友達割りは?」
「……少しなら」
綾紬はどこぞのお嬢様かって思うような白のセパレート水着でその上に薄手のボレロを羽織っている。
「他に人は?」
「俺、そこで寝てる店長、たまに店長の奥さん、以上」
「…………………どうやって回してるの?」
「閑古鳥鳴いてるから回ってんの」
酒寄は明るいグリーンのセパレート水着、なんでか頭にスポーツサングラスを引っかけている。
三者三様、それぞれ自分の魅力を引き出す素敵な水着でたいへん良く似合っている。同時にたいへん目に毒だ。
目のやり場に困るとは、この事か。
「とりあえず焼きそば三つ、作っていい?」
「ゴチになりま~す」
「奢らないし奢れないです~」
金ねぇからバイトしてんだよ。
熱々の鉄板に肉投入、しばらくしたら野菜も投入の麺投入。
……案外っつうか結構図々しいタイプなのな諌山……彼氏にもこんな感じなのか?
でも嫌なヤツって印象が一切無いのは本人の雰囲気がやわらかいのと、それをやっても大丈夫って人との距離感が絶妙だからだろうか。
何バカな事言ってんだ、ってツッコミやすい感じだ。
素でやってるのか計算してるのか、たぶん半々かな。
なんて考えてると良い感じに焼けてきたのでソースを投入。
軽く煮詰める、というか焦がすようにしてから全体を和えるのがポイントだ。
手早くパックに詰めて渡す。ついでにペットボトルの烏龍茶も。
「はい、全部で1500円な。お茶はサービス」
「ふじゅ~Payで」
「なんとビックリ電子決済各種対応してま~す」
「今どき珍しくはないでしょ……」
諌山にQRコード読み込んで貰って、画面確認して、支払完了。
三人はテーブル席に座って食べ始めた。
「いただきまーす。───うまっ!」
「あ、ホントおいしい」
「なんでこのレベルが普段の食事で出ないの???」
「特注の焼きそば用の麺なんだと。ソースの配合とかも企業秘密だそうだ」
………店長が作ると俺よかうまいのに、なんで流行らねぇんだろうなこの店。
「ねぇねぇ」
「うん?」
「SNSにあげていい?」
流石に俺じゃ判断出来ねぇな。店長に確認……起きる気配もありゃしねぇ。
まあ、
「たぶん大丈夫だぞ。一応、店名とかは伏せてな」
「了解了解~」
翌日、何故か特定された『焼きそばのサカイ海の家出張店』は突然の大繁盛。
そういや貴女登録者数10万人近いグルメ系のインフルエンサーでしたね、まみまみさん……。
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多忙を極めた海の家でのバイト、その帰り道。
俺は一組の家族とすれ違った。
小さな二、三歳くらいの女の子とそのお父さん。
そしてお父さんよりも年上らしいお母さん。
素敵な家族だ。そう思った。