超かぐや姫×デジモン 作:ビクトリーグレイモンはカッコいいよね
なんか冗長気味なのでもっと巻いて、さっさと超かぐや姫本編の時間に進もうと思います。
12月半ば。
非常に珍しいことに積雪が確認された。
ずいぶん積もった、約30センチくらい。
田舎ならともかく都会なら十分すぎるほどの大雪だ。
警報も出ていて電車や高速道路なんかはもう止まっているらしい。そしてこの大雪は後一週間ぐらい続く可能性があるのだとか。
流通も止まってるし、学校も休校。つくづく大自然の前に人間は無力である。
ところでこの状態が続くと非常に困ることがある。
バイトが潰れて収入が減るのだ。
「ぅぉぉぉあ……!い、いったいどうすれば……!?」
「…………サラ金って高校生にも金貸してくれんのかな?」
「未成年はむりぃ……」
「詳しいな酒寄」
「しらべたぁ……」
「そっかぁ……」
雪や突然の休みに、はしゃぐでもなく揃って金銭問題に頭を抱える限界貧乏高校生なんて俺たちくらいのものだろう。
お互いバ先は飲食業、そもそもの仕入れがなければ営業なんてできねぇのであった。
忘年会だのお歳暮だの
そういったことで出費が重なりお財布が軽くなるのはまだ我慢出来るがそもそもの収入が減って軽くなるのは普通に嫌、てか無理。
「えーっと週35時間働いてるとして、×時給だから………わぁ、5万近くマイナスかぁ」
「数字にしないでよぉ……ヘコむから……お金無いのよ……貧乏なのよ……グスッ」
遠い目で天井を見上げる俺。突っ伏して項垂れる酒寄。
啜り泣くような音は幻聴だと信じたい。
もともと勉強会として集まったがこんな状況では手に付かない。
今月、来月と地獄の極貧生活がほぼ確定した。
▼
年は明けて新年。
1月下旬。
「酒寄は居るかー!!!???」
放課後、ドバターンと勢いよく教室の扉を開けた俺は叫んだ。
クラスメイトからの返答。
「うるせぇ!いねぇ!!」
「職員室行ったよ~」
「なんで探してんの?」
「ありがとう!」
感謝を伝えて、ドバターンと来たときと同じく勢いよく扉を閉める。
走る。全力疾走だ。
「おい白雪ィ!廊下は走るな!」
「スンマセン先生!」
競歩に変えた。全力早歩きだ。
階段を降りて一階、職員室へ。ちょうど酒寄は出てきたところだった。
「失礼しましたー………ん?」
「酒寄ぃっ!」
「うぉっ!?……え、何?どうしたの?」
「こ、これを見てくれ………!」
仰け反る酒寄に構わずスマホの画面を見せる。
『B賞すき焼き用牛肉(国産黒毛和牛約500g) 当選おめでとうございます!』
年末に送っていたアパート近くの商店街の懸賞、その当選メールだった。
D賞E賞のトレペやティッシュでも全然当たりと思って出した懸賞がまさか肉に化けるとは。
「というわけで酒寄先生、今日はすき焼きです!」
「でかした……!!」
牛肉(それも国産黒毛和牛!)なんて一人暮らしはじめてから食ってない、というかもう自分には縁のないものだと思っていた。
それは酒寄も同様だろう。
でも違った。あったんだ。
俺たち限界貧乏'sにも、か細くとも、薄くとも、牛肉くんとの間に縁、いや、確かな
神は見ている───普段の俺たちの
これは神の慈悲だ!恵みの雨だ!!
「酒寄、俺、神サマ信じる!」
「何言ってんの?」
妄言を口走る俺にツッコミ入れながらもニヤニヤが止まらない様子の酒寄。
イェーイ!と俺たちは笑顔でハイタッチして、
「おーい、二人とも?テンションあがるのは結構だけど廊下と職員室では静かに、な?」
「「すいませんでした……」」
揃って先生に叱られるのだった。
なおこの後、春菊入れようとする俺と阻止したい酒寄の間でひと悶着あったが仲裁に入った諌山の『水菜に代えたら?』の一言で停戦を迎える。
関東と関西で調理、というか食い方が違ってまた開戦。
結局、最初は関西風で肉を食べて後から関東風にシフトするという折衷案に。
すき焼き、たいへん美味しかったです。
▼
2月14日。バレンタインデーである。
「はいこれ」
酒寄がチョコをくれた。
コンビニで30円くらいで売ってる四角いチョコ×3。
「私、芦花、真実からね」
「あの、これ、三人分あわせて総額100円ぐらいでは……?」
「何?慈悲チョコ要らないの?それとも大事なのは気持ちじゃなくて値段?」
「慈悲チョコやめて?せめて義理チョコにして?そっちのがまだ傷は少ないから」
「……なんの違いが……?」
つうかお前知ってんだぞ。
諌山の家でチョコ作って友チョコ交換会したの。その時テキトーに俺の分も作ってくれたら良かったのでは?
忘れてた?
………そっかぁ…………。
▼
3月14日。ホワイトデー。
「はい、3倍返し」
「おお……わざわざありがとう」
100均の駄菓子詰め合わせだけどな。
綾紬と諌山にも渡しに行かなきゃだ。
▼
そして、4月。新学期。
無事に2年生へ進級した俺は、いや俺たちはまた同じクラスになった。
「くっそ……担任
「何がイヤなの?優しいし、授業も解りやすいし、相談にも乗ってくれる。良い先生じゃん」
「先生の名字と俺の名前の漢字が完全に同じなこと」
「うわくだらな」
新一年生を迎える入学式の帰り道、そんな会話をして俺たちは別れた。
酒寄はカフェにアルバイトへ。
俺はこれから、
「お、やっと来たか」
「久しぶり、立花くん」
兄貴と義姉さんとの面会だ
▼
面会場所は喫茶店だった。
写真で見るサイズと実物のサイズが全然違うでお馴染みの大手チェーン店。
先に入って待っていたのは二十代半ばの兄と義姉。
そして幼児、姪っ子だ。たしかまだ2歳にはなってなかったはず。
義姉の膝の上で抱かれ、こちらをじっと見つめておとなしくしている。
並んで座る夫婦の向かい側の席へ腰を降ろす。
「久しぶり、兄貴。周さんも、真昼も元気そうで」
「うん、久しぶり」
「立花くんも元気そうで良かったよ。……アイスコーヒーで良かった?」
「スイマセン、ありがとうございます」
白雪優太。兄貴。何処か軽薄で頼りない印象を周囲に与えるひと。
まだ大学を出たばかりの頃に結婚して、今では立派に妻子を養っている。
白雪周。義姉さん。清楚な雰囲気で、なんで兄貴と結婚したかわからんレベルの美人さん。
兄貴が高校の頃からの付き合いで、一児の母で、パートをしながら兄貴を献身的に支えてくれてる。
白雪真昼。姪。クッッッソ可愛い。天使。泣くと悪魔。
「どうなんだ。最近」
「どうって?」
「そりゃお前……学校とか、勉強とか?あとは、そう、彼女出来た?とか」
「優太くん、お父さんみたいだね」
「茶化すなよ……」
「勉強は……まぁ難しいけど、頑張ってる。彼女はいないってか作ってる暇ないよ。バイトもしてるし」
そんな話をしているとアイスコーヒーが来た。店員さんに礼を言ってテーブルに置いてもらう。
一口、二口とコーヒーを飲む。久しぶりに飲んだけど結構旨いもんだな……。
さて、
「で?本題は?一緒には住まないよ」
「…………お前なぁ」
「結婚三年目なんてまだまだ新婚みたいなもんだろ。そんなところに行って邪魔になりたくない」
「わたし、立花くんのこと邪魔になんて思ってないよ?この子も立花くん大好きだし。ねー?」
「あうー?」
呆れたような顔の兄貴、フォローしつつ真昼に笑い掛ける義姉さん、不思議そうに首を傾げる真昼。
どんなに説得されてもダメなものはダメだしイヤなものはイヤだ。
学費も出して貰ってるのに、これ以上迷惑になりたくない。
「お前が心配なんだよ。俺も周も。もちろん父さんだって」
「それは……ホントごめん。でも、」
「何だよ?」
「……なんとか、普通に、生活は出来てるから」
「ちゃんと1日三食、朝昼晩と食べてるの?外食ばっかりしてない?」
「周、お母さんみたいだな」
「正真正銘、真昼のお母さんだよ?」
「そうだけどさ……」
いちいちイチャつくの止めてくんねぇかなぁ………。
まぁたぶん、この人達は十年経とうが二十年経とうがずっとこんな感じか。
「大丈夫ですよ。じいちゃんとばあちゃんからたまに野菜貰ってるし、朝飯も抜いてない。ちゃんと自炊してます」
頻繁に酒寄と飯食ってるのは言わなくていいな、うん。
紹介しろとか、挨拶させろとか、付き合ってるわけでもないのにそんなこと言われても困るし。
酒寄もイヤがるだろ、たぶん。
「はぁ……いいや。今日はもう言わない」
「もう諦めてよ……」
「バーカ。最低限お前が就職するまでは言い続けるよ俺は」
「ええ~………」
「そういえば進路ってどうすんの?」
「大学は行くって約束だし、やりたいこともないから一応進学で出してるよ」
「立花くん、やりたい仕事とか無いの?」
無いんですよ義姉さん。だから困ってるんです。
胸を張れる立派な仕事って何だ?
警察とかお医者さん?……なんか違う気がする。
極論、フリーターだろうが自営業だろうがなんでもいいけど、働いてるだけでもう立派では?
「入ってから探すやつもいるからな、それはいいや。大学は?もう決めたのか?」
「………まだ。何も決めてない」
「……ま、時間はあるんだ。じっくり考えな」
先生かよ。…………ありがたいんだけどさ。