Project SEKAI Meets Gen Hoshino 作:超気まぐれ星人
「ん〜……!着いたぁ……」
かつて俺の日常を彩っていた生まれの地、シブヤに帰ってきた。
あの交差点も、あの掲示板も、あの銅像だって何も変わってない。
あ、俺は海斗。
見ての通り、今ちょうどシブヤに帰ってきたところ。
親の転勤とか色んな理由が絡んでシブヤを去ってから丸5年。
一回だけ修学旅行でシブヤに行った時はあったけど、その時は人が少なかった時期。
だからこそ、こんなに人が多いシブヤに戻ってくるのは5年ぶりだった。
本当はこのまま昔懐かしい場所へ散策したいけど、その思いを叶えるにはこの荷物が邪魔すぎる。
だからこそ俺はこの荷物を家へと預けることにした。
(えっと……ここをこっちに行けばいいのか……?)
マップアプリを片手に俺は周囲をふらつき始める。
何を隠そう俺は重度の方向音痴。
昔っからそうで、目的地に向かうにはマップが欠かせない。
まぁ、マップがあっても道を間違えることはあるけど……。
でもその先で思わぬ出会いがあるからこそ、マップなしに散歩をするのが密かな夢だったりする。
そんなこんなで道に迷いながらも、両親が用意してくれたアパートにたどり着いた。
色んなことを乗り越えて手に入れた一人暮らしだからこそ、許してくれた両親に感謝しよう。
そんな思いを抱きながら俺はアパートに荷物を詰めていく。
それからしばらくして荷物が一通りまとまり、俺はアコギを持って外に出る。
時間は15時を半分過ぎたあたりで、学校終わりの学生が何人か見受けれる。
そんな学校終わりの学生たちに追い抜かされながら俺がたどり着いたのはスクランブル交差点。
テレビ番組で誰もが何百回はみたであろうあの場所の中で、昔の俺が好きだった場所がある。
それはまさに、著名な像のそばにあるベンチ。
タバコを吹かす仕事中のサラリーマンや像目当ての観光客の中で1人、大好きな星野源さんの楽曲をアコギで弾きながら周りを眺めるのが昔っから好きだった。
その場所に佇むベンチに腰掛け、ここ数年を共にしているアコギを取り出して膝の上に置く。
別に誰かに見て欲しいわけじゃないし、誰かに聞いて欲しいわけでもない。
ただ1人街の喧騒の中でアコギを弾く、それが俺の毎日の楽しみだった。
みんなが嫌うものが好きでも
それでもいいのよ
みんなが好きなものが好きでも
それでもいいのよ
共感はいらない
一つだけ大好きなものがあれば それだけで
日々は動き 君が生まれる
暗い道でも 進む進む
誰かそこで必ず聴いているさ
君の笑い声を
意識しないうちにもう手は動いていて、綺麗なメロディを奏でていた。
弾いてるのは、星野源さんの楽曲の中でも指折りに大好きな楽曲でもある『日常』。
メロディもさることながら、歌詞が色んな人々に刺さる内容で好きなのだ。
思えばシブヤを去る前には、よくこの曲を公園のベンチで聴かせていた記憶が蘇る。
聴かせていたのは、今でも鮮明に覚えている4人の幼馴染。
みんなが俺にそれぞれの形で懐いてくれて、特に俺がアコギを弾くとなればものすごい速さで集まってくれたんだっけ。
そんな思い出に瞼を閉じていた俺が、ゆっくりと次に目を開ければ……
「……」
「……志歩……」
そんな幼馴染4人のうちの1人、日野森志歩が立ち尽くしていた……。
信じたくなかった。
あの人の顔なんて、もう2度見たくもなかったのに。
憂鬱だった学校が終わって足早に帰るつもりだったのに、途中で私の足は止まってしまった……
なぜならその先に、幼少期を共に過ごした
私たちの心を弄びながら、決心がついた頃にいなくなってしまった……狡猾でずるい人……。
「ーーーーーーー?」
海斗が心配そうに声をかけてくれるけど、そんな私の頭の中に思い浮かぶのは2年前の出来事……
届きそうで届かないような距離感にいたのに、声をかけれなかった私。
そして、そんな私のことなどつゆ知らず友人らしき誰かに笑みを見せる海斗。
「……っ」
何を迷っているの、ただおかえりって言えばいいじゃん……
そうすれば海斗もきっと、あの時みたいに頭を撫でてくれるはずでしょ……?
「……許さないから」
「えっ?あっ、おいっ!」
本心から言いたいわけではなかった6文字を吐き捨てて、私は足早にその場から去ってしまう。
背後から海斗が心配そうに声をかけてくれるのを無視して、私は海斗との距離を遠ざけていく。
「っ……!」
無心に走り続けていた私の頬に、何かが滴り落ちるのを感じてふと立ち止まった。
……それは止まることを知らない、私の目から溢れた涙だった……
……さて、ようやく本格的にスタートしました新シリーズです。
プロセカに復帰した記念で書いていきます。
星野源さんに脳を焼かれ彼を目指そうとする高校生、海斗。
そしてそんな海斗の周りにどんな人が登場して、どんな接し方をするのでしょうか。
今回登場した楽曲:アルバム「エピソード」(2011年)より『日常』