西暦2308年――プトレマイオス周辺宙域
エクシアのモニターに、《TRANS-AM》の文字が表示されていた。
スメラギから使用許可が下りる。
『刹那、ロックオン、アレルヤ、ティエリア。TRANS-AMの使用を許可する』
「了解」
刹那がシステムを起動した瞬間、エクシアから放出されるGN粒子が爆発的に増大した。機体表面を赤い光が走り、続いてデュナメス、キュリオス、ヴァーチェも同じように鮮烈な赤へ染まっていく。
アーミアはアストレアのコックピットから、その光景を静かに見ていた。
TRANS-AMそのものは珍しくない。二三一四年のELS戦でも実際に目にしているし、その後の時代では擬似太陽炉搭載機にも普及していった。
だが、西暦二三〇八年では違う。
この時代において、オリジナルGNドライヴに秘められていた力が初めて解放された瞬間だった。
「……始まりましたね」
『これがTRANS-AMか』
レイナスの声が通信に入る。
『説明だけ聞いても今ひとつ実感がなかったけどな。実物を見ると話が早い』
「何がです?」
『速い。それと、思ったより派手だ』
アーミアが少し笑った。
「先生でもそんな感想なんですね」
『初見の機体にまで気の利いた感想を求めないでくれ』
◆
刹那が操縦桿を倒した。
次の瞬間、身体がシートへ押し付けられる。
「……っ!」
正面のGN-Xがビームライフルを向けた。だが照準が合うより先に、エクシアは射線から外れている。
赤い軌跡だけを残し、次の瞬間には敵機の側面。
GNソードが振るわれ、ライフルが切断された。
続く一機がビームサーベルを構える。
刹那が踏み込む。
すれ違いざまに腕部を斬り飛ばし、そのまま三機目へ向かう。
「速い……」
単純に最高速度が上がっただけではない。機体の反応そのものが鋭くなり、これまで一つずつ繋いでいた操作が、ほとんど切れ目なく次の動作へ移っていく。
ただし、その性能を刹那自身が完全に扱い切れているわけではない。
『刹那、前に出すぎないで!』
スメラギの声を受け、刹那はすぐに進路を変えた。
「了解」
敵を全滅させる必要はない。
目的は包囲網を崩し、プトレマイオスを離脱させることだった。
◆
デュナメスも大きく変わっていた。
「こりゃまた……」
ロックオンが照準を合わせる。
GN-Xが回避運動へ入るが、デュナメスの照準はこれまで以上の速度で相手を追い、回避先へ先回りする。
「そこだ!」
一機目のライフルを撃ち抜く。
二機目は推進器。
続けて三機目の肩部。
敵部隊の進路が次々と崩れていく。
「性能が上がるってのは聞いてたが、ここまでとはな」
ロックオンは表示されたGN粒子残量を見る。
減少速度も明らかに速い。
「……その代わり、長くは使えねえってわけか」
◆
キュリオスでは、アレルヤが発動直後の加速に息を呑んでいた。
「うわっ……!」
それでも機体は、今まで以上に自分の意思へ素直に応えてくる。
「これなら!」
変形。
赤い軌跡がGN-X部隊の側面を一気に抜けた。
敵が向きを変えた時には、キュリオスはすでに反対側へ回り込んでいる。
隊列の端へ射撃。
一機、二機。
撃破を狙う必要はない。
相手を回避させ、陣形を崩す。
それだけでプトレマイオスの進路が開いていった。
◆
ヴァーチェ。
ティエリアはTRANS-AM発動後の数値を確認していた。
「粒子放出量……通常時とは比較にならない」
前方には、プトレマイオスの進路を塞ぐGN-X部隊。
GNバズーカを構える。
「ならば――退け!」
砲撃。
赤いGN粒子を伴った一撃が宙域を走る。
直撃を避けるため、GN-X部隊が大きく左右へ散開した。
中央に道が開く。
『スメラギ・李・ノリエガ。前方進路を確保した』
『ラッセ!』
「了解!」
プトレマイオスが一気に加速した。
◆
停止したままのスローネ三機の周囲には、アストレアとレイナスのGN-Xが残っていた。
ネーナはドライのコックピットから、赤く染まった四機を見ている。
『何なの、あれ……』
ミハエルも驚きを隠さない。
『急に別物じゃねえか』
ヨハンだけは黙っていた。
TRANS-AMも気になる。
だが、それ以上に引っかかっていることがあった。
ヴェーダとのリンクが切断された瞬間、自分たちのスローネ三機は完全に停止した。一方でソレスタルビーイング側の機体も一度は止まりながら、短時間で独立システムへ切り替えて復帰している。
あれは偶然ではない。
明らかに、事前の準備があった。
ヨハンはその事実を忘れなかった。
◆
『敵前方部隊、後退します!』
フェルトの報告を受け、スメラギが戦況を確認する。
TRANS-AMを使用した四機によって、交代しながら圧力をかけ続けていたGN-X部隊の隊列は大きく崩れていた。
「全機、追撃禁止。プトレマイオス周辺へ戻って!」
四機が反転する。
敵部隊は追ってこない。
プトレマイオスもそのまま空いた進路を抜けた。
やがてTRANS-AMが終了し、四機を包んでいた赤い光が消える。
刹那がすぐに違和感を覚えた。
「……反応が落ちた」
『こっちもだ』
ロックオンが返す。
アレルヤも粒子残量を確認した。
『GN粒子がかなり減ってる』
ティエリアがデータを見る。
『大量のGN粒子を一時的に放出した反動だ。再充填が進むまでは通常時より性能が低下する』
「その通りです」
アーミアが答える。
レイナスの声が続いた。
『まあ、あれだけ先に性能を使ったんだ。後で帳尻を合わせるくらいは仕方ないか』
「先生、やっぱりそこ気にするんですね」
『何もなしで済む方が怖いよ。こういう力は、大抵どこかに条件が付いてる』
レイナスは赤い光を失った四機を見る。
『それでも、あれだけ働いてくれるなら十分だろ』
◆
GN-X部隊は、それ以上追撃してこなかった。
敵の総数はいまだ不明であり、こちらが戦力そのものを大きく削ったとは言い難い。それでも包囲網を突破し、プトレマイオスを離脱させるという目的は達成できた。
停止していたスローネ三機も無事に収容された。
艦が敵部隊から十分な距離を取ると、今度は内部が慌ただしくなる。各ガンダムの状態確認に加え、ヴェーダとのリンクを失ったスローネ三機を、この先も使えるようにしなければならない。
イアンはすぐにアインの制御系を調べ始めた。
「やっぱりだな。機体そのものに大きな故障はない。ヴェーダとの接続を前提にしすぎてる」
隣にいたヨハンが聞く。
「復旧できますか?」
「動かすだけならな。ただ、それじゃまた同じ目に遭う」
イアンはアイン、ツヴァイ、ドライを順に見上げた。
「こっちのガンダムと同じように、ヴェーダなしでも動ける制御系へ作り替える。これからも一緒に戦うなら、そっちの方がいい」
ヨハンは少し考えた後、頷いた。
「お願いします」
「兄貴、勝手に決めんのかよ」
ミハエルが言う。
「動かない機体を抱えたまま別行動を続けたいのか?」
「……それは嫌だけどよ」
「なら決まりだ」
イアンが端末を操作しながら言った。
「話がまとまったなら、手が空いてる奴は手伝え。三機まとめて面倒見るんだからな」
少し離れた場所でその会話を聞いていたレイナスが、整備用端末から顔を上げる。
「俺にもできる仕事があるなら回してくれ。中身まで任せられると保証はできないけどな」
「なら機材運べ。人手はいくらあっても足りん」
「了解」
アーミアが横から見る。
「先生、普通に手伝うんですね」
レイナスは少し眉を上げた。
「俺が座ってても整備は終わらないだろ。できる仕事があるならやるよ」
「そういうところは真面目ですよね」
「……『そういうところは』まで付ける必要あったか?」
◆
翌日――プトレマイオス・ブリーフィングルーム
包囲戦から一晩が経った。
それ以前にも、トリニティとの共同戦闘や《アニマ》訓練を挟みながら何日も経過している。三人との距離は、最初に接触した頃より確実に近くなっていた。
そして今回の戦闘で、さらに状況が変わった。
スローネ三機の独立制御化はイアンを中心に進められ、最低限の再起動試験まで終わっている。完全な調整にはまだ時間が必要だが、ヴェーダとの接続を失っただけで三機とも沈黙する状態からは脱しつつあった。
ブリーフィングルームには、ヨハン、ミハエル、ネーナも座っている。
スメラギが三人を見る。
「スローネの改修はこちらで続けるわ。その上で、今後の行動について決めたい」
ミハエルが聞く。
「まだ別々に動くのか?」
「私はそのつもりはない」
スメラギははっきり答えた。
「今後はプトレマイオスを拠点にしてもらう。作戦もこちらと共同。ただし、戦闘中は私の指示に従ってもらうわ。独断行動は認めない」
ネーナがヨハンを見る。
ミハエルも同じだった。
ヨハンは少し考えた後、頷いた。
「了承します」
「兄貴?」
「これまでとは状況が違う。GN-Xの数も、ヴェーダを失った後の機体運用も、我々だけで対処するより共同で動いた方が合理的だ」
ミハエルは完全には納得していない顔だったが、反対はしなかった。
ネーナはアーミアを見る。
「じゃあ、これからここにいていいの?」
「ええ」
スメラギが答える。
「アーミアとも一緒?」
アーミアが少し笑った。
「今までよりは一緒にいる時間が増えると思いますよ」
「やった」
ネーナが素直に喜ぶ。
そのやり取りが落ち着いたところで、ヨハンが再び口を開いた。
「その前に、一つ確認させてください」
スメラギが見る。
「何?」
「ヴェーダとのリンクが切断された時、我々のスローネは完全に停止しました。あなた方の機体も一度は止まりましたが、短時間で独立システムへ切り替えて復帰している」
ヨハンの口調は責めるものではない。
単純に、理由を求めている。
「戦闘中に思いついて用意できるものではありません。以前から、ヴェーダとの接続を失う可能性を想定していたということですよね?」
「そうよ」
スメラギは否定しなかった。
「なぜです?」
部屋が静かになる。
これまでは三人には話していなかった。
だが、今後は同じ艦を拠点にして戦う。
アーミアはスメラギと目を合わせた。
スメラギが小さく頷く。
「私から話します」
ネーナがアーミアを見る。
「アーミアが?」
「はい」
アーミアは三人へ向き直った。
「まず、私はこの時代の人間ではありません」
ミハエルが眉を寄せる。
「……何?」
「西暦二三六四年から来ました。今から五十六年後です」
数秒の沈黙。
最初に反応したのはネーナだった。
「未来?」
「はい」
「五十六年後?」
「そうです」
ミハエルが椅子へ深く座り直す。
「話が一気に飛びすぎだろ」
「そう思うのが普通です」
アーミアは自分の端末を机へ置いた。
「これは二三六四年から持ってきた私物です。私の時代の記録も残っています。スメラギさんたちには、すでに必要な範囲を見てもらっています」
ティエリアが補足する。
「現在のヴェーダに存在する情報だけでは説明できない内容が含まれている」
スメラギも続けた。
「ヴェーダの掌握とリンク切断も、アーミアが知っていた歴史の中で起きていたことよ。だから私たちは事前に対策を進めた」
ヨハンは机上の端末を見る。
予測されていたヴェーダ切断。
その後に現れたTRANS-AM。
これまでのソレスタルビーイングの動き。
すぐに全てを受け入れるには大きすぎる話だったが、無関係な作り話として切り捨てるにも、現実と合いすぎている。
「全てを即座に信じられるとは言えません」
ヨハンは率直に答えた。
「ですが、説明としては理解できます」
アーミアが頷く。
「それで構いません」
ネーナは別の部分が気になったらしい。
「じゃあ、アーミアって本当は何歳なの?」
「六十七歳です」
「……六十七!?」
ネーナが声を上げた。
ミハエルもヨハンも、今度は隠さず驚いた。
「絶対見えない!」
「外見は十七歳くらいからほとんど変わってませんから」
ミハエルがアーミアを見る。
「五十六年後から来たって話より、そっちの方が意味分かんねえぞ」
「私の場合は、イノベイターになったこととELSとの共生がありますから」
ヨハンがすぐに反応する。
「イノベイター?」
「人類がGN粒子の影響を受けて進化した存在です」
三人とも知らない言葉だった。
アーミアは説明を続ける。
「脳の情報伝達が量子的なものへ変化して、脳量子波による感知や通信が可能になります。身体能力も高くなって、老化も大きく遅くなることが分かっています」
ミハエルが眉を寄せる。
「人間が進化する?」
「はい」
ヨハンが聞く。
「あなた自身が、そのイノベイターだと?」
「そうです」
アーミアは一度目を閉じた。
脳量子波。
意識を少しだけ強める。
再び目を開いた時。
灰色がかった瞳は。
鮮やかな金色へ変わっていた。
ネーナが身を乗り出す。
「目の色変わった!」
「イノベイターが強い脳量子波を使う時に出る特徴です」
ミハエルも目を見開いていた。
ヨハンは驚きながらも、アーミアの瞳を観察している。
数秒後。
アーミアが力を抜く。
金色だった瞳が、元の灰色へ戻った。
ヨハンが確認する。
「その変化が、老化が遅い理由の一つ?」
「そう考えています。ただ、私の場合はそれだけではありません」
アーミアは自分の右手を持ち上げた。
「もう一つがELSです」
ヨハンが聞く。
「ELS?」
「地球外生命体です。私は将来、ELSと接触して右手を融合されます。今もこの右手にはELSがいます」
ネーナがその手をじっと見る。
どこから見ても普通の人間の右手だった。
「これ?」
「普段は人間の手に擬態してます」
「触っていい?」
「大丈夫ですよ」
ネーナが手を伸ばし、アーミアの右手へ触れる。
見た目だけではない。
温度も感触も、人間の手と変わらない。
「普通だ……」
「今はそうしてますから」
「じゃあ、本当は?」
アーミアが少し笑う。
「見ます?」
「見たい」
即答だった。
アーミアが自分の右手へ意識を向ける。
肌の色が、指先からゆっくりと変わり始めた。
手の甲。
掌。
手首。
人間の皮膚を再現していた擬態が解け、その下から滑らかな銀色の表面が現れる。
金属のようにも見える。
だが、指は人間の手と変わらない滑らかさで動いていた。
ネーナが目を見開く。
「うわ……」
ミハエルも思わず身を乗り出した。
「マジかよ」
ヨハンも、先ほどまで以上に強い関心を向けている。
アーミアは銀色になった右手を開いた。
「これが、私と融合しているELSです」
ネーナが慎重に聞く。
「こっちも触っていい?」
「構いません」
銀色の手の甲へ、ネーナの指が触れる。
「……硬くない」
「生き物ですから。私の身体の一部でもあります」
しばらく見せた後、アーミアは再び擬態させる。
銀色の表面が人間の肌へ変わり、数秒後には元の右手へ戻った。
ネーナはその手をしばらく見つめていた。
「すご……」
ミハエルが額へ手を当てる。
「五十六年後ってどうなってんだよ……」
レイナスが横から口を挟んだ。
「その質問は範囲が広すぎるな。五十六年分を一度に聞いたら、会議が何日あっても足りない」
ミハエルがレイナスを見る。
「お前は普通に信じてるんだな」
「俺はこういう話に慣れてるんだよ」
「何でだよ」
レイナスは一拍置いた。
「そこから先は俺の事情になる。今始めると話が増えるから、今日はアーミアの方を先に片付けよう」
ヨハンが話を戻す。
「あなたが未来の歴史を知っているなら、我々のことも知っていたんですか?」
アーミアの表情が少し変わった。
「はい」
ネーナが聞く。
「私たちの未来も?」
「私のいた世界で起きたことなら」
「どうなったの?」
アーミアは少し間を置いた。
「私の知っている歴史では、三人ともこの先で亡くなっています」
三人から言葉が消えた。
ネーナはアーミアを見る。
ミハエルも、今度はすぐには返さない。
ヨハンが静かに聞いた。
「この世界でも同じことが起きると?」
「いいえ」
アーミアは迷わず答える。
「すでに違っています。皆さんが今ここにいて、私たちと一緒に戦っている時点で、私の知っている歴史と同じではありません」
「なら、なぜ最初から我々に話さなかったんです?」
「未来を知っているという理由だけで、今の皆さんを決めつけたくなかったからです」
アーミアはネーナを見る。
「特にネーナには、最初に会った時、民間人を自分たちの都合で攻撃しないでほしいとお願いしましたよね」
ネーナが頷く。
「うん」
「あの時は理由まで話しませんでした。でも、私の知っている歴史で、あなたが民間人を巻き込む攻撃をしたことが理由です」
ネーナの表情が少し曇る。
アーミアは続けた。
「ただ、その後のことも覚えていますよね。GN-Xに包囲された時、民間区域へ射線が通るから撃たなかったこと」
「……うん」
「あの時にも言いましたけど、私はあの判断の方を大事にしています」
アーミアは穏やかにネーナを見る。
「あの時のネーナは、私が記録で知っているネーナとは違う選択をしました。だから、まだ起きてもいない未来の出来事を理由に、今のあなたを責めるつもりはありません」
ネーナはしばらく黙っていた。
「だから最初から、私を倒そうとはしなかったんだ」
「何もしていない人を、未来の記録だけで敵にする理由はありません」
「……そっか」
ネーナが小さく頷いた。
ヨハンが静かに息を吐く。
「事情は理解しました」
スメラギが三人を見る。
「これからは必要な情報については、あなたたちにも共有する。ただし、何でも無制限に開示するわけじゃないわ」
ヨハンが聞く。
「理由を聞いても?」
「未来の記録は予言ではないからです」
アーミアが答える。
「すでに変わっている出来事もあります。情報を知ること自体が次の選択を変えることもある。だから、必要な情報を必要な時に使う。それが今の方針です」
ヨハンは少し考えた後、頷いた。
「了解しました」
これで、トリニティ三人は単なる共同戦力ではなく、プトレマイオスを拠点に行動する仲間として正式に加わることになった。
機体整備も、作戦情報も、ヴェーダを失った後の新しい運用も、これからは同じ場所で共有していく。
アーミアが知る歴史についても同じだった。
全てを渡すわけではない。
だが、三人だけを何も知らないまま戦場へ送り出すことも、もうしない。
◆
ブリーフィングが終わり、皆が席を立ち始めた。
それでもネーナだけは、まだアーミアの横に残っていた。
「アーミア」
「はい?」
「本当に六十七歳なんだよね?」
アーミアが少し呆れた顔をする。
「まだそこ気になります?」
「だって、どう見ても十七くらいじゃん」
「そう言われても六十七です」
ネーナが何かを言おうとして口を開く。
その少し前に、レイナスが横から声をかけた。
「ネーナ。その先は一回考えてから言った方がいい」
「まだ何も言ってないよ?」
「だから止めてるんだよ」
アーミアがレイナスを見る。
「先生、何を言おうとしたか分かるんですか?」
レイナスは少しだけ苦笑した。
「大体な。長く生きてると、踏まなくていい地雷くらいは見えるようになる」
ネーナが笑う。
「じゃあ言わない」
「それが賢い」
アーミアだけは、まだ少し納得していない顔をしていた。