機動戦士ガンダムOOA   作:ミスト12523

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第31話 決戦の足音

 

西暦2308年――プトレマイオス・格納庫

「よし。これで三機とも終わりだ」

イアンが端末を閉じた。

目の前には、並んで固定された三機のガンダムスローネ。

アイン。

ツヴァイ。

ドライ。

ヴェーダとのリンクを失ったことで一度は完全に停止した三機だったが、制御系は大きく手を加えられていた。

外部からの支援がなくても起動し、戦闘を継続できる。

完全にヴェーダを必要としないわけではないが、少なくとも接続を切断された瞬間に沈黙することはなくなった。

ヨハンがアインのコックピットから降りてくる。

「動作確認、問題ありません」

続いてミハエル。

「ツヴァイもいいぜ。むしろ前より反応よくなってねえか?」

「気のせいだ」

イアンが即答する。

「余計なもんを整理したから、多少軽くなってるところはあるがな」

「それを反応よくなったって言うんじゃねえの?」

「調子に乗って壊すなって言ってるんだ」

「分かってるって」

その横では、ドライから降りてきたネーナが真っ先にアーミアを探していた。

見つける。

すぐに歩いてくる。

「アーミア」

「どうでした?」

「大丈夫。ちゃんと動いた」

「それならよかったです」

「あとね、前より操作しやすい気がする」

少し離れた場所からイアンの声が飛ぶ。

「お前もか!」

ネーナが笑う。

「イアンのおじさん、腕いいんだね」

「だから、おじさんを付けるな!」

アーミアが小さくため息をつく。

「ネーナ」

「なに?」

「イアンさん」

「はいはい。イアンさん」

「はいは一回です」

「はーい」

アーミアが何か言おうとして止まった。

レイナスが整備台の横で、その様子を見ている。

「完全に扱い方を覚えられてるな」

アーミアが振り返る。

「何がです?」

「いや、こっちの話」

「先生、今何か言いましたよね?」

「気のせいじゃないか?」

「絶対違います」

レイナスは答えず、GN-Xの装甲へ視線を戻した。

アーミアも追及しようとしたが、その前にネーナが袖を引く。

「ねえ、終わったらご飯行こう」

「さっき軽食食べてませんでした?」

「動作確認したからお腹空いた」

「ほとんど座ってただけでしょう」

「頭使った」

「便利ですね、その理屈」

「アーミアも行こうよ」

「まだ用事があります」

「待つ」

即答だった。

アーミアが見る。

「長くなるかもしれませんよ?」

「じゃあここにいる」

「ヨハンさんたちと行けばいいでしょう?」

「アーミアと行きたい」

そこまで言われると。

断る理由もなかった。

「……分かりました。終わったら行きましょう」

「うん」

嬉しそうに笑うネーナ。

その背後。

ミハエルが何とも言えない顔をしていた。

「兄貴」

「何だ」

「ネーナ、最近あいつにべったりじゃねえか?」

ヨハンも二人を見る。

「悪いことではない」

「いや、別に悪いとは言ってねえけどよ」

ミハエルは頭を掻く。

「何かこう……取られた感じすんな」

「妹離れする機会だと思えばいい」

「兄貴まで何言ってんだよ」

     ◆

同時刻――プトレマイオス・ブリッジ

「また増えてる……」

フェルトが表示されたデータを見る。

スメラギが隣へ立った。

「GN-X?」

「はい。確認できた配備情報だけでも、以前よりさらに多いです」

正確な総数は分からない。

そもそも。

もう数えること自体に意味がなくなり始めていた。

アーミアが知っていた歴史。

そして、今この世界で確認されている戦力。

明らかに一致しない。

リヒティが別の情報を開く。

「各国軍の部隊再編も早いです。前回の戦闘であれだけ損失出したのに、もう次の部隊が動いてますよ」

「予備戦力を持っていたのか、それとも新規配備なのか……」

スメラギは腕を組んだ。

どちらにしても。

一つだけ確かなことがある。

敵も変化している。

こちらだけが未来情報を使って有利になる。

そんな都合のいい話ではなかった。

「アーミアを呼んで」

「了解」

     ◆

数分後。

ブリーフィングルームには主要メンバーが集まっていた。

スメラギが中央の画面へGN-Xの配置を表示する。

「確認できている範囲だけでも、前回の戦力を補充するには十分すぎる数よ」

アーミアが画面を見る。

「やっぱり増えていますね」

「あなたの知っている歴史では?」

「ここまでの規模ではありません」

即答だった。

「ただし、これが全部なのかも分かりません」

ティエリアが尋ねる。

「未来の記録にも存在しない?」

「少なくとも私が確認した資料では、現在のような展開ではありませんでした」

スメラギが頷く。

「つまり、もう過去の数字を基準にはできない」

「はい」

アーミアはそれを当然のように受け止めていた。

以前なら。

歴史から外れることに、もっと強く迷っていたかもしれない。

今は違う。

変化したなら。

変化した現在を見ればいい。

レイナスが画面を眺めながら言う。

「こっちが増えた分、向こうも増えた。そう考えれば単純ではあるな」

ロックオンが横を見る。

「こっちが増えた?」

「トリニティが三人とも残ってる。《アニマ》もある。刹那は《オーバーライズ》まで使える。こないだはTRANS-AMまで出てきた」

「並べると結構めちゃくちゃだな」

「向こうから見れば同じ感想だろ」

レイナスは肩をすくめる。

「相手だけ予定通りに動いてくれると思わない方がいい」

スメラギが画面を切り替えた。

「もう一つあるわ」

映し出されたのは。

アレハンドロ・コーナー。

その隣。

リボンズ・アルマーク。

「ヴェーダを掌握した以上、この二人が次に動く可能性は高い」

ヨハンが尋ねる。

「位置は?」

「掴めていないわ」

ティエリアが言葉を継ぐ。

「ヴェーダ側から追跡することもできない。現状、こちらの権限は大幅に制限されている」

「なら、待つしかないのか?」

ミハエルが聞く。

スメラギは首を横に振った。

「いいえ」

視線が集まる。

「こちらから動く」

     ◆

「まず大前提として、前と同じ戦い方はしない」

スメラギが話を続ける。

「国連軍のGN-Xを正面から全部相手にする必要はない。敵の目的はソレスタルビーイングの排除。そしてこちらの目的は、戦争に勝つことではなく計画を立て直すこと」

ティエリアがわずかに眉を寄せた。

「ヴェーダを奪われたままでも?」

「だから取り返すのよ」

部屋が静かになる。

スメラギはアーミアを見る。

「あなたの知っている歴史では、最終的にアレハンドロとリボンズのところまで辿り着くのよね?」

「はい。ただし、今は既に状況が違います」

「場所まで同じとは限らない」

「その通りです」

「なら場所は探す。歴史に任せるつもりはないわ」

アーミアが小さく頷く。

「それがいいと思います」

その時。

刹那が口を開いた。

「リボンズは俺が戦う」

スメラギが見る。

「理由は?」

「俺がそうしたい」

それだけだった。

だが。

アーミアは知っている。

自分のいた歴史でも。

最後には。

刹那とリボンズが戦った。

ただし。

その結末までは同じにする必要はない。

レイナスが刹那を見る。

「今から相手を予約しとくのか?」

刹那は答えない。

「まあいいけどな。先に見つけないと始まらないぞ」

「見つける」

「そうか」

レイナスはそれ以上言わなかった。

     ◆

会議が終わった後。

アーミアは訓練区画へ向かった。

その後ろ。

当然のようにネーナがいる。

「ネーナ」

「なに?」

「今日は訓練ですよ」

「見てる」

「暇でしょう?」

「平気」

「本当に最近ずっとついてきますね」

ネーナが少し考える。

「嫌?」

「嫌とは言ってません」

「じゃあいいじゃん」

「そういう問題なんでしょうか……」

アーミアが扉を開ける。

中では。

既に刹那たちが《アニマ》の訓練を始めていた。

ロックオンは両腕。

アレルヤは四肢。

ティエリアは全身。

以前より明らかに扱える範囲が広がっている。

ラッセも別の場所で身体強化を試していた。

フェルト。

クリスティナ。

スメラギも、戦闘要員ほどではないにせよ、自力で発現し維持するところまでは安定し始めている。

ネーナが目を丸くする。

「みんな光ってる」

「最近かなり進みましたから」

「私もできる?」

アーミアが止まった。

「やりたいんですか?」

「うん」

「簡単ではないですよ」

「でもアーミアが教えてくれるんでしょ?」

その言い方に。

アーミアは少しだけ困った。

「……最初からできるとは限りませんよ」

「いい」

「途中で飽きても知りませんからね」

「飽きない」

即答だった。

少し離れたところで聞いていたレイナスが口を挟む。

「また生徒が増えたな」

アーミアが見る。

「先生も手伝ってください」

「俺が?」

「はい」

「前に俺は教えるのが下手って言ってなかったか?」

「下手ですけど、人手は欲しいです」

「ずいぶん遠慮がなくなったな……」

ネーナが笑う。

「先生、教えるの下手なの?」

「アーミア評価ではな」

「じゃあアーミアに教えてもらう」

「そうしろ。その方が平和だ」

アーミアが少し呆れながらも。

ネーナの前へ立つ。

「じゃあ最初は、何かを出そうとしなくていいです」

「うん」

「自分の中にあるものを感じるところから」

ネーナが目を閉じる。

すぐ隣では。

刹那が全身へ《アニマ》を巡らせていた。

まだ金色の瞳は現れていない。

だが。

アーミアには分かる。

前より。

少しずつ。

何かが近づいている。

《アニマ》。

脳量子波。

そして。

まだこの時代には存在しなかったはずの変化。

未来と同じではない。

だからこそ。

ここから先は。

誰にも分からない。

     ◆

同時刻――月・ヴェーダ周辺施設

リボンズ・アルマークは、目の前の情報を眺めていた。

ガンダム。

トリニティ。

そして。

GN-Xを使用するレイナス。

想定よりも。

ソレスタルビーイングは残っている。

いや。

むしろ。

変化している。

「興味深いね」

背後。

アレハンドロが振り返る。

「何がだ?」

「彼らですよ」

リボンズは微笑む。

「ヴェーダを失えば、もっと混乱すると思っていました」

「それでも結果は変わらない」

アレハンドロは自信を崩さない。

「世界は既に私たちの手で統合へ進んでいる。ソレスタルビーイングの役割は終わった」

「そうかもしれません」

穏やかな返答。

だが。

リボンズの視線は別の情報へ向いていた。

刹那・F・セイエイ。

以前から。

わずかに感じている変化。

そして。

アーミア・リー。

彼女が何者なのか。

まだ分からない。

ただ。

本来なら起きないはずの変化が。

彼女の周囲から広がっている。

「もう少し見てみたいところですが」

リボンズは表示された戦力情報を閉じた。

「そろそろ、次へ進むべきでしょうね」

アレハンドロが笑う。

「ああ」

 

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