ポケットモンスター ―君と目指す頂― 作:あああああ
翌朝。
ハナダジムのプールには、再び澄んだ水が満たされていた。
ロケット団の巨大吸引装置によって荒らされた設備は完全に元通りとはいかなかったものの、ジム戦に必要な部分の応急修理は終わっている。水上にはいくつもの足場が配置され、その両端にサトシとカスミが向かい合っていた。
昨日の勝負は途中で中断された。
バタフリーはヒトデマンに敗れ、その後に始まったピジョンとスターミーの戦いへロケット団が乱入したため、結局勝敗はついていない。
だから今日は、途中から再開するのではなく――最初からやり直す。
「本当に最初からでいいのね?」
カスミが確認する。
「ああ。昨日とはみんなの状態も違うし、やるなら最初からだ」
「後悔しても知らないわよ。昨日はあたしが一体先に倒してたんだから」
「だからだよ」
サトシは笑った。
「昨日の負けも含めて、もう一回挑戦する」
「……言うじゃない」
カスミも口元を上げた。
フィールド脇ではタケシが腕を組み、その近くにサクラ、アヤメ、ボタンの三人が並んでいる。
そしてサトシの足元にはピカチュウ。
「ピカチュウ」
「ピカ?」
「今日も戦わない?」
尋ねると、ピカチュウはカスミを見た後、迷わず首を横に振った。
「ピカ」
カスミとは戦いたくない。
その気持ちは昨日から変わっていない。
サトシも無理に戦わせるつもりはなかった。
「分かった。じゃあ応援よろしくな」
「ピカ!」
ピカチュウが元気よく答え、フィールドの外へ下がる。
「相変わらずなのね」
カスミが苦笑する。
「でも、ピカチュウ抜きでも勝つつもりなんでしょ?」
「もちろん」
「だったら――」
カスミがモンスターボールを構えた。
「今度こそ最後までやるわよ!」
「ああ!」
サクラが二人の間へ立つ。
「使用ポケモンは二体! 両方のポケモンが戦闘不能になった方の負け!」
片腕が上がる。
「それでは――ハナダジム、ジム戦開始!」
「ヒトデマン、お願い!」
「ヘアッ!」
カスミの一体目は、昨日と同じヒトデマン。
サトシも迷わない。
「バタフリー、君に決めた!」
「フリィー!」
バタフリーがプールの上へ舞い上がった。
昨日敗れた相手。
それでも怯える様子はない。
むしろ、やる気に満ちている。
サトシには、その強い戦意が自然と伝わってきた。
細かな言葉ではない。
けれど――今度こそ勝ちたい。
それだけなら十分だった。
「行くぞ、バタフリー」
「フリィ!」
◇
「ヒトデマン、水の中へ!」
「ヘアッ!」
開始直後、ヒトデマンがプールへ飛び込んだ。
昨日と同じ戦い方だ。
水中を自由に動くヒトデマンに対して、バタフリーは空。
普通に追いかけても攻撃は届かない。
だが、サトシも昨日と同じではない。
水面を見つめながら、意識の端では水中を移動する生命の気配を追っていた。
右から中央へ。
そこから少し深く潜る。
位置は分かる。
しかし、ヒトデマンがどこを向いているのか、次にどんな技を使うのかまでは分からない。
だから波導だけには頼らない。
「バタフリー、いとをはく!」
「フリィ!」
白い糸が飛ぶ。
だが、狙ったのはヒトデマンではなかった。
水上の足場。
そこから別の足場へ。
さらに水面すれすれへ。
バタフリーが飛び回りながら、細い糸を張り巡らせていく。
「何してるの?」
カスミが眉をひそめる。
「昨日の負けを無駄にしないだけだよ」
ヒトデマンの気配が上がってくる。
同時に――一本の糸が震えた。
「バタフリー、右!」
「フリッ!」
水面が弾ける。
ヒトデマンが飛び出した。
「たいあたり!」
「ヘアッ!」
「上だ!」
バタフリーが羽ばたき、ヒトデマンの突進を紙一重でかわす。
「かぜおこし!」
「フリィィ!」
至近距離から風を浴びせる。
「ヘアッ!」
ヒトデマンが吹き飛ばされ、そのまま水へ落ちた。
「なるほどね」
カスミが理解する。
「水中にいるヒトデマンを直接狙うんじゃなくて、出てくる瞬間を狙うつもりね」
「そういうこと!」
波導で大まかな位置を追う。
目で水面を見る。
張った糸の振動をバタフリーが捉える。
どれか一つではない。
全部使う。
「だったら――ヒトデマン、糸に触れないように!」
「ヘアッ!」
水中の気配が大きく迂回する。
今度は糸の少ない場所へ。
サトシには位置が分かる。
しかし、出てくる瞬間までは読めない。
だから待つ。
「……来る」
気配が浅くなる。
だがサトシが声を出すより早く、水面が弾けた。
「バタフリー!」
「フリッ!」
ヒトデマンの身体が掠める。
完全には避けきれない。
「今よ! もう一度!」
ヒトデマンが着水すると、すぐに方向を変える。
速い。
サトシが大まかな位置を掴んでいても、バタフリー自身が対応できなければ意味がない。
「焦るな!」
バタフリーへ意識を向ける。
上へ。
距離を取る。
単純な動きの像。
それだけを送る。
「フリ!」
バタフリーがすぐに高度を上げた。
直後、その下をヒトデマンが通過する。
「今だ!」
「フリィ!」
バタフリーが反転。
「かぜおこし!」
風が直撃した。
ヒトデマンの身体が空中で大きく揺れる。
「たいあたり!」
バタフリーが急降下する。
ドンッ!
二匹が激突した。
「ヘアッ!」
ヒトデマンが足場へ落ちる。
バタフリーも反動で大きく揺れたが、空中で踏みとどまった。
「ヒトデマン!」
「ヘア……!」
まだ立つ。
昨日バタフリーを倒した相手だ。
簡単には終わらない。
「バタフリー、まだ行けるな?」
「フリィ!」
答えと共に伝わってくる強い戦意。
サトシは笑った。
「決めよう!」
カスミも腕を振る。
「ヒトデマン、たいあたり!」
水中へ。
ヒトデマンの気配が一直線に近づいてくる。
「まだだ……」
サトシは動かない。
水面が僅かに盛り上がる。
糸が震えた。
「今!」
ヒトデマンが飛び出す。
「上へ!」
バタフリーが急上昇。
ヒトデマンの突進が空を切る。
「後ろだ!」
「フリィィ!」
バタフリーが急降下した。
「たいあたり!」
背後から直撃。
ヒトデマンが足場へ叩きつけられた。
今度こそ動かない。
サクラが確認する。
「ヒトデマン、戦闘不能!」
片腕が上がった。
「バタフリーの勝ち!」
「よし!」
「ピッカ!」
サトシとピカチュウが同時に喜ぶ。
バタフリーも嬉しそうに旋回した。
「フリィー!」
「昨日の借り、返したな!」
「フリ!」
一晩で急激に強くなったわけではない。
昨日の敗北から学び、自分たちが持っているものを組み合わせた。
その結果の勝利だった。
カスミはヒトデマンを戻す。
「ありがとう、ヒトデマン。よく頑張ったわ」
そして二個目のボールを構えた。
「でも、まだ終わってないわよ!」
「分かってる!」
「スターミー!」
「ヘアッ!」
スターミーが足場へ降り立った。
サトシはバタフリーを見る。
ヒトデマンとの戦いでかなり消耗している。
それでも――。
「フリ!」
まだ戦いたい。
その意志ははっきり伝わってくる。
「分かった。もう少し頼む!」
◇
「スターミー、水の中へ!」
開始と同時にスターミーが潜る。
速い。
ヒトデマン以上の速度で気配が水中を走る。
「バタフリー、さっきと同じだ!」
「フリ!」
残っている糸を利用する。
しかし。
「スターミー、壊して!」
スターミーが水中から飛び出した。
身体を回転させ、張られていた糸を次々と切っていく。
「やっぱり対策してきたか!」
「一回見せてもらったんだから当然よ!」
再び水中へ。
スターミーの気配が高速で移動する。
左。
いや――急に反転した。
「バタフリー、後ろ!」
「フリッ!?」
間に合わない。
飛び出したスターミーが直撃する。
「フリィッ!」
バタフリーが吹き飛ぶ。
「バタフリー!」
大きく揺れながらも、なんとか羽ばたく。
まだ戦える。
けれど、限界は近い。
サトシにはそれも伝わっていた。
無理をさせるつもりはない。
「あと一回だけ行くぞ!」
「フリ!」
「かぜおこし!」
強い風。
水面が激しく揺れる。
スターミーが飛び出した。
「そこ!」
バタフリーが風を向ける。
だがスターミーは身体を傾けて抜けた。
「今よ!」
「ヘアッ!」
一気に距離が縮まる。
激突。
「フリィッ!」
バタフリーが足場へ落ちた。
サトシはすぐに分かった。
もう立てない。
サクラの判定を待つまでもなく、バタフリーへ駆け寄る。
「もう十分だ」
「フリ……」
「ヒトデマンに勝ったんだ。よく頑張った」
優しくボールへ戻す。
「ゆっくり休んでくれ」
サクラが正式に判定する。
「バタフリー、戦闘不能! スターミーの勝ち!」
これで一対一。
サトシは次のボールを握った。
「最後は頼んだ!」
ボールを投げる。
「ピジョン、君に決めた!」
「ピジョォォン!」
翼を広げ、ピジョンがプールの上空へ舞い上がった。
昨日、決着をつけられなかった相手。
スターミー。
カスミも表情を引き締める。
「昨日の続きね」
「今度は邪魔されないといいけどな」
「縁起でもないこと言わないで!」
◇
「スターミー、水の中へ!」
「ピジョン、高度を取れ!」
水と空。
互いが自分の得意な領域へ移る。
スターミーの気配が水中を走る。
サトシはそれを追いながら、水面も見る。
右。
中央。
急に深くなる。
「来るぞ」
ピジョンの意識がこちらへ向く。
サトシから送るのは、右へかわすという単純な像だけ。
「ピジョ」
水面が弾けた。
スターミーが飛び出す。
ピジョンはすでに動いていた。
「かぜおこし!」
「ピジョォ!」
風がスターミーを捉える。
だがスターミーはそのまま水中へ戻った。
カスミが眉を上げる。
「昨日より反応が早い……」
「こっちだって同じ相手に何度もやられないよ!」
もっとも、波導があるから攻撃が全部分かるわけではない。
サトシが感じられるのは存在と大まかな位置。
スターミーが突然方向を変える。
「……速い!」
右から左。
そこから一気に上昇。
「ピジョン、下!」
水面が弾ける。
「ヘアッ!」
スターミーが飛び出した。
「ピジョッ!」
ピジョンが身体を捻る。
それでも一部がぶつかった。
姿勢が崩れる。
「今よ!」
スターミーが追撃する。
「自分で避けろ、ピジョン!」
「ピジョ!」
サトシが細かく指示しなくても、ピジョンは翼を畳んで急降下。
スターミーの突進をかわす。
野生で培ってきた判断力。
それもピジョンの強さだ。
サトシは何もかも波導で操るつもりはない。
自分が感じたものを伝える。
ピジョンが見たものも信じる。
互いの判断を重ねる。
「ピジョン!」
「ピジョ!」
サトシが水面を見る。
このままではスターミーの得意な戦いが続く。
なら――水中そのものを使いにくくする。
「たつまき!」
「ピジョォォォン!」
ピジョンが大きく羽ばたいた。
風が渦を巻く。
「水面へ!」
竜巻がプールへ突き刺さった。
水が巻き上げられる。
波がぶつかり合い、水中にも複雑な流れが生まれる。
「スターミー!」
カスミが声を上げる。
気配が揺れた。
スターミーそのものを見失ったわけではない。
だが先ほどまでの滑らかな移動ではなくなっている。
「今だ!」
スターミーが水面へ出た。
「でんこうせっか!」
「ピジョォ!」
ピジョンが一気に加速する。
「避けて!」
スターミーが動く。
しかし水流に乱され、僅かに遅れた。
ドンッ!
直撃。
「続けて、つばさでうつ!」
翼が振り抜かれる。
スターミーが足場へ叩きつけられた。
「スターミー!」
中央の赤いコアが激しく点滅する。
それでも。
「ヘアッ!」
立ち上がる。
「まだやれるのか……!」
サトシの声が弾む。
強い。
だから面白い。
カスミも笑った。
「当然でしょ! あたしのスターミーよ!」
「だったら最後まで行こうぜ!」
「望むところ!」
スターミーが再び水へ飛び込む。
ピジョンも翼を広げる。
どちらもかなり消耗している。
次のぶつかり合いで決まる。
サトシは水中の気配を追う。
だが、それだけではない。
水面。
波。
カスミの視線。
そしてピジョン自身が向けてくる意識。
――正面から行ける。
そんな単純で強い意思が伝わってきた。
サトシの口元が上がる。
「同じこと考えてたよ」
「ピジョ!」
カスミが腕を振った。
「スターミー、行くわよ!」
水面が爆ぜる。
スターミーが正面から飛び出した。
「ピジョン!」
サトシは叫ぶ。
同時に、前へ突き抜ける短いイメージを送る。
返ってきたのは迷いのない戦意。
「でんこうせっか!」
「ピジョォォォン!」
ピジョンが加速した。
白い軌跡。
スターミーとの距離が一気に縮まる。
「そのまま――」
サトシの声。
ピジョンはすでに翼を開き始めていた。
指示を聞いてから動いたのではない。
サトシの意図とピジョン自身の判断が重なった。
「『つばさでうつ』!」
「ピジョォォォン!」
高速移動の勢いを乗せた翼が振り抜かれる。
激突。
スターミーが大きく弾き飛ばされた。
ピジョンも反動で高度を失う。
「ピジョン!」
「ピジョ……!」
翼を開く。
落下寸前で持ち直した。
一方。
スターミーは水上の足場へ落ちたまま動かない。
静寂が流れる。
サクラがスターミーを確認する。
そして――腕を上げた。
「スターミー、戦闘不能!」
カスミが目を見開く。
「よって勝者――マサラタウンのサトシ!」
「よっしゃあ!」
サトシが拳を突き上げる。
「ピッカァァ!」
ピカチュウが駆け寄り、そのまま飛びついてきた。
「うわっ!」
サトシは笑いながら受け止める。
頭上ではピジョンが大きく旋回した。
「ピジョォォン!」
「やったな、ピジョン!」
「ピジョ!」
腕へ降りてきたピジョンの身体を支える。
疲れている。
翼も重い。
それでも、そこから伝わってくるのは大きな達成感だった。
「最後の一撃、最高だった」
「ピジョ!」
サトシはその頭を撫でた。
◇
「……負けちゃった」
カスミはスターミーのところへ歩いていった。
「ありがとう、スターミー。よく頑張ったわ」
ボールへ戻す。
悔しいはずだ。
それでも顔を上げたカスミは、いつものように笑っていた。
「やるじゃない、サトシ」
「カスミも強かったよ」
「当然!」
「そこは謙遜しないんだ」
「何よ!」
「ははっ」
タケシも二人へ近づいてくる。
「いい勝負だった。昨日の戦いも含めて、お互い相手の戦い方をかなり見てたな」
「まあね」
カスミが答える。
すると三姉妹もやってきた。
「カスミ、結構頑張ったじゃない」
「最後は負けちゃったけどね」
「でもいい試合だったわ」
「余計な一言が多いのよ!」
カスミが怒鳴る。
サトシとピカチュウが笑った。
「笑うな!」
「ピカピカ!」
「ピカチュウも!」
しばらくして、カスミがサクラから何かを受け取った。
昨日も目にしたもの。
青く輝く――ブルーバッジ。
今度はカスミ自身がサトシの前へ立った。
「サトシ」
「ああ」
「昨日は受け取らなかったけど……」
カスミが手を差し出す。
その手のひらにブルーバッジがある。
「今度は文句ないでしょ?」
サトシは笑った。
「ああ」
ブルーバッジを受け取る。
昨日差し出されたものと、物としては同じだ。
けれどサトシにとって、その意味はまるで違う。
バタフリーが昨日の敗北を乗り越えた。
ピジョンがスターミーと正面から戦い抜いた。
自分も二匹と一緒に考え、戦った。
そしてカスミとヒトデマン、スターミーに勝った。
「俺たちが勝ち取ったバッジだからな」
「ピカ!」
「ピジョ!」
サトシはバッジケースを開いた。
すでに収められているニビジムのグレーバッジ。
その隣へ――。
カチッ。
ブルーバッジを収める。
二個目。
セキエイ大会まで、あと六個。
サトシはケースを掲げた。
「ブルーバッジ、ゲットだぜ!」
「ピッカァ!」
◇
バトルを終えたピジョンとバタフリーをポケモンセンターで診てもらい、十分に休ませてから、サトシたちはハナダシティを出発した。
カスミも当然のように一緒に歩いている。
「カスミ」
「何?」
「てっきりジムに残るのかと思ってた」
「なんでよ!」
「だってジムリーダーだっただろ?」
「あたしはもっといろんな場所を旅して、いろんな水ポケモンに会いたいの。それに――」
カスミが横目でサトシを見る。
「一回勝ったくらいで調子に乗られたら困るしね」
「別に乗ってないって」
「どうだか」
「ピカピカ」
肩の上でピカチュウが笑う。
「ピカチュウまで!」
「ピカ!」
その様子を見ながら、タケシが地図を開いた。
「次はクチバシティ方面へ向かおう。この道を南へ進めばいい」
「よし!」
三人とポケモンたちは再び歩き出した。
しばらく進んだところで、小さな休憩所が見えてくる。
何人かのトレーナーが集まり、何やら盛り上がっていた。
「また勝ったらしいぞ」
「本当に?」
「ああ。もう百連勝も近いんじゃないか?」
その言葉を聞いた瞬間。
サトシの足が止まった。
肩の上のピカチュウの耳もぴくりと動く。
「……百連勝?」
「ピカ?」
サトシは話していたトレーナーへ近づいた。
「すみません。それ、誰の話ですか?」
「ああ、この先にいるトレーナーだよ。ずっと特訓しながら旅人と勝負してるんだ」
「使ってるポケモンは?」
「サンドだよ」
その言葉に、サトシの目が輝いた。
「名前は?」
「アキラ」
カスミがその横顔を見る。
嫌な予感しかしない。
「サトシ」
「ん?」
「あんた今、絶対戦いたいって思ったでしょ」
「もちろん!」
即答。
「少しくらい迷いなさいよ!」
「強いトレーナーがいるんだろ? だったら戦ってみたいじゃん!」
「さっきジム戦したばっかりでしょうが!」
「それとこれとは別!」
「ピカ!」
ピカチュウまで拳を握る。
「ほら、ピカチュウもやる気だし」
「似た者同士ね、本当に……」
カスミが額を押さえた。
タケシは苦笑しながらも、止めるつもりはないようだった。
「まあ、いいんじゃないか。ジムリーダー以外の強いトレーナーと戦うのも経験になる」
「タケシまで!」
「決まり!」
サトシは教えてもらった道の先を見る。
百連勝を目指して戦い続けるトレーナー、アキラ。
その相棒はサンド。
ジム戦とは違う。
バッジも懸かっていない。
それでも、強い相手がいると聞けば戦ってみたい。
その気持ちは、前世から何も変わっていなかった。
「行こうぜ、ピカチュウ!」
「ピカ!」
サトシが駆け出す。
「ちょっと、待ちなさいよ!」
その後をカスミが追い、タケシも笑いながら歩き出した。
グレーバッジ。
ブルーバッジ。
二つのバッジを手にしたサトシの旅は、まだ始まったばかり。
そしてこの先には、また新しいトレーナーとの出会いが待っていた。