ポケットモンスター ―君と目指す頂― 作:あああああ
ヤマブキジムでの敗北から、一夜が明けた。
「ピカ!」
「よし。問題なさそうだな」
ポケモンセンターの前で、サトシは肩へ飛び乗ってきたピカチュウを受け止めた。
昨日のユンゲラー戦では、強力なサイコキネシスを何度も受けている。幸い大きな怪我はなく、十分な治療と休息を取ったことで、今朝にはいつもの元気を取り戻していた。
「無茶はするなよ」
「ピカピカ!」
返事だけは立派だ。
サトシが笑って頭を撫でると、ピカチュウも気持ちよさそうに目を細めた。
「それで、本当に行くの?」
背後から聞こえた声に振り返る。
カスミが露骨に嫌そうな顔をしていた。
「行く」
「……シオンタウンに?」
「うん」
「……ポケモンタワーに?」
「その予定」
「やっぱり行かない!」
「昨日から何回目だ、それ」
タケシが呆れたように言う。
「だって幽霊が出るのよ!?」
「ゴーストポケモンだろ」
「分かってても怖いものは怖いの!」
サトシは苦笑しながら歩き始めた。
目的は決まっている。
ナツメのユンゲラー。
昨日の戦いで、ピカチュウはかなり食らいついた。
攻撃も何度か通した。
サイコキネシスも一度は振りほどいた。
それでも最後は押し切られた。
次に挑むなら、同じ戦い方を繰り返すだけでは足りない。
そしてシオンタウンには――ゴーストタイプのポケモンがいる。
それをサトシは知っていた。
ただし。
(捕まえるかどうかは、会ってからだな)
ナツメに勝つためだけに捕まえるつもりはない。
一緒に旅をしたいと思える相手と出会えたなら。
そして向こうも自分を選んでくれるなら。
そのときは――。
「ピカ?」
「なんでもない。行こう」
「ピカ!」
三人はシオンタウンへ向けて歩き出した。
◇
夕方。
シオンタウンへ到着したカスミの第一声は、
「帰らない?」
だった。
「着いたばっかりだぞ」
「だって!」
カスミが指差す。
町の向こう。
夕暮れの空へ突き刺さるように、一際高い建物が立っていた。
ポケモンタワー。
遠くからでも、ほかの建物とは明らかに雰囲気が違う。
「……あそこよね」
「あそこだな」
「絶対出るわよ」
「何が?」
「言わせないで!」
タケシが腕を組む。
「今日はもう暗くなる。一度ポケモンセンターで休んで、明日の朝――」
「行こう」
「今!?」
カスミの声が裏返った。
サトシは空を見る。
確かに日が沈みかけている。
だが、ゴーストポケモンならむしろこれから活動する可能性が高い。
それに――。
「夜の方が会いやすそうだろ?」
「そういう問題じゃない!」
「ピカピカ」
「ピカチュウまで!」
結局。
三人は夜を待ってからポケモンタワーへ向かうことになった。
◇
ぎぃぃ……。
古びた扉が開く。
「……」
「……」
「……」
サトシが一歩入る。
ピカチュウも肩の上から暗い塔内を見回した。
「ピカ……」
「暗いな」
その後ろ。
カスミはタケシの服を掴んでいた。
「カスミ、歩きにくいんだが」
「別に怖いわけじゃないから!」
「まだ何も言ってないぞ」
「分かってるわよ!」
サトシはリュックからライトを取り出した。
光が廊下を照らす。
古い床。
壁。
階段。
特に変わったものは――。
ころころころ。
何かが転がった。
「きゃああああっ!」
カスミがタケシへ飛びつく。
「うおっ!?」
サトシがライトを向ける。
床を転がっていたのは、小さな石だった。
「石だぞ」
「分かってるわよ!」
「今絶対分かってなかっただろ」
「うるさい!」
「ピカピカ」
ピカチュウが笑う。
その瞬間。
すうっ。
背後を何かが通り過ぎた。
サトシが振り返る。
何もいない。
「……」
「どうした?」
「今、何かいた」
「ちょっと!」
「ピカ……」
ピカチュウも耳を動かしている。
今度は確かにいる。
一つ。
二つ。
いや。
(複数いるな)
サトシはすぐに波導へ頼らず、目と耳で周囲を探った。
天井。
柱。
暗がり。
くすくす。
どこからか笑い声がした。
「今笑った!」
「聞こえたな」
「帰ろう!」
カスミが扉へ向かう。
だが。
ばたん!
「きゃあっ!」
扉が勝手に閉まった。
「開かない!」
「落ち着けって」
サトシが近づこうとした瞬間。
ぽん。
頭に何かが乗った。
「ん?」
触る。
柔らかい。
それを掴んで目の前へ持ってくる。
真っ白な手。
「……手?」
「きゃああああああっ!」
カスミの悲鳴。
次の瞬間。
手が煙のように消えた。
そして天井から。
「ゴース!」
「ゴースト!」
「ゲーンガー!」
三匹が姿を現した。
ゴース。
ゴースト。
ゲンガー。
三匹とも腹を抱えるように笑っている。
「やっぱりお前たちか」
サトシが笑った。
「ピカ!」
ピカチュウは少し怒っている。
「ピカチュウ、怒るなって。遊んでるだけだ」
「ピカ?」
三匹が止まる。
ゴーストがサトシの目の前まで降りてきた。
「ゴースト?」
「驚かなくて悪かったな」
「ゴース……」
ゴーストが不満そうに頬を膨らませる。
次の瞬間。
サトシの真後ろに巨大な骸骨が現れた。
「おお」
「きゃあああああっ!」
「うわっ!」
カスミとタケシが飛び退く。
サトシは振り返って骸骨を見る。
「結構よくできてるな」
「ピカピカ」
「ゴ、ゴースト……」
今度はゴーストの方が困った顔になった。
ゲンガーとゴースが大笑いする。
「ゲンゲン!」
「ゴース!」
「ゴースト!」
「怒るなって」
サトシまで笑った。
前世の記憶通りだ。
この三匹は、人間を傷つけようとしているわけではない。
ただ。
遊びたいだけ。
「なあ」
サトシがゴーストたちを見る。
「俺たちと遊ぶ?」
三匹が止まる。
「ゴース?」
「ゴースト?」
「ゲン?」
「せっかく来たんだし」
サトシが笑う。
「ただ驚かされるだけじゃ面白くないからな」
「ピカ!」
ピカチュウも地面へ降りる。
数秒の沈黙。
そして。
「ゲーンガー!」
ゲンガーが笑った。
その瞬間。
床が消えた。
「え?」
「きゃああああああっ!」
三人が落ちる。
――ように見えた。
「うわっ!」
サトシが着地する。
「……あれ?」
落ちた距離はほとんどない。
床そのものが幻だったらしい。
目の前で三匹が大笑いしている。
「やったな!」
「ピカ!」
そこからは、もう勝負だった。
壁から無数の手。
空中を飛ぶ椅子。
突然現れる巨大な顔。
サトシとピカチュウは逃げ、追いかけ、時には逆に三匹を驚かせる。
カスミは悲鳴を上げ続け、タケシは途中から諦めたように笑っていた。
「なんで楽しんでるのよ!」
「面白いから!」
「ピカピカ!」
「信じられない!」
塔の中に、久しぶりなのかもしれない笑い声が響いた。
◇
どれくらい遊んだだろう。
「はぁ……」
サトシが壁へ寄りかかる。
「疲れた」
「ピカァ……」
ピカチュウも隣に座る。
ゴース、ゴースト、ゲンガーはまだ元気そうだった。
「体力あるな、お前ら」
「ゲンゲン!」
そのとき。
みしっ。
頭上から嫌な音がした。
サトシが顔を上げる。
天井に吊られた大きなシャンデリア。
留め具が外れていた。
「サトシ!」
タケシが叫ぶ。
落ちる。
「ピカチュウ!」
サトシが反射的にピカチュウへ手を伸ばした。
どんっ!
視界が暗転した。
◇
「……あれ?」
サトシは目を開けた。
身体が軽い。
妙に軽い。
隣を見る。
「ピカ?」
ピカチュウがいる。
ただし。
下にも。
「……」
倒れている自分。
その横にピカチュウ。
「なるほど」
サトシは自分の半透明の手を見る。
「こうなるのか」
「ピカ!?」
ピカチュウは大混乱だった。
「大丈夫。多分戻れる」
「ピ、ピカ……?」
そこへ。
「ゴースト!」
さっきのゴーストが飛んでくる。
サトシの腕を掴んだ。
「お、おい!」
そのまま上へ。
「うわっ!」
身体が浮く。
「ピカ!」
ピカチュウも別のゴースに引っ張られる。
塔の中を飛ぶ。
壁を抜ける。
天井を抜ける。
「すげえ……!」
気づけばサトシは笑っていた。
身体がない。
重さもない。
そのまま夜空へ。
シオンタウンが眼下に広がる。
「ピカァ!」
最初は慌てていたピカチュウも、いつしか楽しそうに声を上げていた。
ゴーストたちも笑っている。
空を飛び。
雲へ入り。
塔の周囲を回る。
やがてサトシは、一匹のゴーストが少し離れた場所からこちらを見ていることに気づいた。
「ん?」
さっきまで遊んでいた三匹とは違う。
別のゴースト。
「ゴースト……」
柱の陰に半分隠れている。
「お前もいたのか」
「ゴース……」
近づこうとすると、すっと離れる。
けれど逃げない。
サトシを見ている。
「一緒に遊ぶ?」
「……ゴースト」
少し迷ってから近づいてきた。
そのままピカチュウの周りを一周。
「ピカ?」
「ゴースト」
「ピカピカ」
二匹が顔を見合わせる。
やがてゴーストが笑った。
「ゴースト!」
その瞬間。
背後からゲンガーがサトシを思いきり押した。
「うわっ!?」
地面へ急降下。
「ゲンゲンゲン!」
「やったな!」
再び追いかけっこが始まった。
そこへ、さっきの別個体のゴーストも加わった。
◇
気づけば。
サトシは自分の身体へ戻っていた。
「……っ!」
目を開ける。
「サトシ!」
「大丈夫か!」
カスミとタケシが覗き込んでいる。
「……大丈夫」
起き上がる。
隣。
「ピカ……!」
ピカチュウも目を覚ました。
「ピカチュウ!」
抱き上げる。
「大丈夫か?」
「ピカ!」
二人とも無事。
ゴーストたちがシャンデリアを途中で支えていたらしく、直撃はしていなかった。
「まったく……」
カスミが涙目で怒る。
「心配したんだから!」
「ごめん」
素直に謝る。
「でも、ちょっと面白かった」
「サトシ!」
「ピカピカ」
「ピカチュウまで!」
そのとき。
「ゴースト」
サトシが振り返る。
さっきの別個体。
他の三匹から少し離れた場所にいる。
「お前……」
「ゴースト」
近づいてくる。
ピカチュウの前へ。
「ピカ?」
「ゴースト!」
突然、舌を伸ばした。
べろん。
「ピカ!?」
「ははは!」
「ピカピカピカ!」
怒ったピカチュウが追いかける。
ゴーストが笑いながら逃げる。
「仲良くなったみたいだな」
タケシが笑った。
「どこがよ」
カスミは呆れている。
サトシは二匹を見る。
このゴースト。
さっき空を飛んでいたときも、こちらへ興味を示していた。
「なあ、ゴースト」
「ゴース?」
サトシが呼ぶと止まった。
「俺、ゴーストタイプを探しにここへ来たんだ」
ゴーストがこちらを見る。
「強い相手に負けた。次は勝ちたい」
一度言葉を切る。
「でも、勝つためだけにお前を連れていくつもりはない」
ゴーストが目を細める。
「俺はいろんな場所へ行く。いろんなポケモンと戦う。もっと強くなる」
ピカチュウがサトシの横へ戻る。
「ピカ」
「お前も一緒に来ない?」
「ゴースト……」
ゴーストが振り返る。
奥には、ゴース、ゴースト、ゲンガー。
三匹がいる。
特に先ほどからサトシたちと遊んでいたゴーストが前へ出る。
「ゴースト!」
別個体のゴーストを見る。
何かを話しているらしい。
サトシに言葉は分からない。
けれど。
背中を押しているように見えた。
ゲンガーも大きく笑う。
「ゲーンガー!」
ゴースも続く。
「ゴース!」
別個体のゴーストがサトシを見る。
その目に迷いはなかった。
「ゴースト!」
「……来たいんだな」
ゴーストが頷く。
「だったら」
サトシはモンスターボールへ手を伸ばしかけ――止めた。
「その前に一回、バトルしよう」
「ゴースト?」
「一緒に旅するなら、お互いどんな戦い方をするか知りたい」
「ピカ!」
ピカチュウが前へ出る。
ゴーストは一瞬きょとんとした。
そして。
にやり。
「ゴースト!」
◇
塔の広い部屋。
サトシとピカチュウ。
向かいにはゴースト。
周囲では三匹のゴーストポケモンが観戦している。
「行くぞ、ピカチュウ!」
「ピカ!」
ゴーストが消えた。
「ピカ?」
静かになる。
右。
左。
見えない。
サトシは周囲を見る。
ここですぐ波導を広げれば、見つけられる可能性は高い。
だが。
「ピカチュウ、音を聞け!」
「ピカ!」
まずは自分たちの感覚で探す。
耳が動く。
ひゅっ。
「上!」
ゴーストが天井から現れた。
「ゴースト!」
黒い影が放たれる。
「横!」
ピカチュウがかわす。
「『エレキボール』!」
「ピカ!」
電気球。
ゴーストは笑う。
すうっ。
壁へ消えた。
「やっぱり厄介だな」
サトシが笑う。
「ピカ!」
ピカチュウも楽しそうだった。
次。
背後。
「ピカ!」
ピカチュウ自身が気づいた。
振り向く。
だがゴーストはまた消える。
「焦らなくていい!」
「ピカ!」
サトシは観察する。
姿を消す。
壁を抜ける。
死角から出る。
速い。
そして何より自由だ。
型に嵌まっていない。
(面白いな)
ナツメ戦のためだけではない。
このゴーストと一緒に戦ったら、もっといろいろなことができる。
「ゴースト!」
再び現れる。
「今!」
「ピカ!」
『でんこうせっか』。
一気に距離を詰める。
ゴーストが消える。
「止まれ!」
急停止。
サトシは目を閉じた。
ここだけ。
波導を薄く広げる。
塔の中にいる生命の気配。
カスミ。
タケシ。
ゴーストたち。
その中で、ピカチュウへ近づく一つの気配。
「後ろ!」
「ピカ!」
振り向く。
ゴーストが姿を現した。
「『エレキボール』!」
「ピカチュウ!」
至近距離。
どんっ!
「ゴースト!」
ゴーストが弾かれる。
だが倒れない。
すぐに笑う。
「まだやるか?」
「ゴースト!」
「いいな」
サトシも笑う。
「ピカチュウ、『10まんボルト』!」
「ピカ――チュウッ!」
強烈な電撃。
ゴーストは横へ逃げる。
「追え!」
ピカチュウが走る。
ゴーストが壁へ。
消える。
「止まって周りを見ろ!」
「ピカ!」
今度は波導を使わない。
ピカチュウが耳を澄ます。
一秒。
二秒。
「ピカ!」
自分で振り向いた。
ゴーストが現れる。
「『エレキボール』!」
「ピカチュウ!」
ゴーストも黒い影を放つ。
二つの技がぶつかる。
爆発。
煙。
「ピカチュウ、『でんこうせっか』!」
「ピカ!」
煙へ飛び込む。
ゴーストが姿を現した。
ピカチュウがその横を高速で駆け抜ける。
「ピカ!」
ゴーストの意識がピカチュウを追う。
その瞬間。
「今だ! 『10まんボルト』!」
「ピカ――チュウッ!」
振り返りざま。
電撃が直撃する。
「ゴーストォッ!」
ゴーストが吹き飛ぶ。
床へ落ちる直前、ふわりと浮いた。
「ゴー……スト……」
まだ意識はある。
サトシはボールを握った。
でも。
投げない。
「どうする?」
ゴーストが顔を上げる。
「まだ戦うなら続ける」
「ピカ!」
「それとも――俺たちと来る?」
ゴーストはサトシを見る。
ピカチュウを見る。
後ろにいる仲間たちを見る。
少しだけ寂しそうに。
けれど。
最後には笑った。
「ゴースト!」
自分からサトシへ飛んでくる。
そして。
手に持っていたモンスターボールへ額を触れさせた。
赤い光。
ゴーストがボールへ吸い込まれる。
一度。
二度。
三度。
かちっ。
静かになる。
サトシはボールを見る。
そして持ち上げた。
「ゴースト、ゲットだぜ!」
「ピッピカチュウ!」
ゲンガーたちが歓声を上げる。
「ゲーンガー!」
「ゴース!」
「ゴースト!」
すぐにサトシはボールを開いた。
「出てこい、ゴースト!」
赤い光。
「ゴースト!」
現れたゴーストがサトシの周囲を一周する。
「これからよろしくな」
「ゴースト!」
「ピカ!」
ゴーストがピカチュウへ近づく。
「ピカ?」
にやり。
「ゴースト」
べろん。
「ピカァッ!」
「またやった!」
サトシが笑う。
ピカチュウがゴーストを追い回す。
「元気な仲間が増えたな」
タケシも笑う。
「私は嫌な予感しかしないんだけど……」
カスミが一歩下がった。
ぬっ。
その背後。
もう一匹のゴーストが顔を出す。
「ゴースト~」
「……」
カスミがゆっくり振り向く。
「ゴースト!」
「きゃあああああああっ!」
塔中に悲鳴が響いた。
ゴーストたちは大笑い。
サトシも堪えきれず笑った。
◇
翌朝。
ポケモンタワーの外。
朝日に照らされた塔を、サトシは見上げていた。
隣にはピカチュウ。
そして、新たに仲間になったゴースト。
「ゴースト!」
ゴーストは朝でも特に気にした様子はなく、サトシの周囲を漂っている。
これで旅をしているポケモンは六匹。
ピカチュウ。
ピジョット。
フシギダネ。
ヒトカゲ。
ゼニガメ。
そして――ゴースト。
「これでナツメに勝てる!」
カスミが言う。
だがサトシは首を振った。
「いや」
「え?」
「ゴーストが仲間になっただけで、勝ったことにはならない」
昨日まで、このゴーストと一緒に戦ったことはなかった。
技も。
癖も。
得意な距離も。
まだ知らないことばかりだ。
「少し練習してから戻る」
「ピカ!」
「ゴースト!」
ゴーストもやる気らしい。
すると。
「ゴースト」
別の声。
振り返る。
昨日からいた三匹。
ゴース。
ゲンガー。
そして、もう一匹のゴースト。
サトシの仲間になった個体とは別の――あの陽気なゴーストだ。
「どうした?」
「ゴースト!」
ゴーストがサトシたちの方へ飛んでくる。
「もしかして……ついてくるのか?」
「ゴースト!」
満面の笑み。
サトシはその顔を見て。
思い出した。
(そうだったな)
このゴーストには。
これから果たす役目がある。
サトシのゴーストが隣へ並ぶ。
「ゴースト!」
「ゴースト!」
二匹が顔を見合わせる。
一匹は、新しい世界を見るためにサトシの仲間になった。
もう一匹は、まだモンスターボールには入っていない。
けれど今は同じ方向へ向かおうとしている。
目的地は――ヤマブキシティ。
サトシは遠くを見た。
脳裏に浮かぶのは、ユンゲラーの強力なサイコキネシス。
あの壁を。
今度こそ越える。
「行こう」
「ピカ!」
「ゴースト!」
「ゴースト!」
新しい仲間と。
不思議な同行者を加えて。
サトシたちは再び、ヤマブキジムへ向かって歩き始めた。