ポケットモンスター ―君と目指す頂―   作:あああああ

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第50話 ゴーストVSエスパー!

シオンタウンを出て、ヤマブキシティへ戻る途中。

 

サトシたちは街道から少し外れた開けた場所で足を止めていた。

 

「ゴースト、『シャドーボール』!」

 

「ゴースト!」

 

ゴーストの前に黒紫色の球が生まれ、勢いよく飛んでいく。

 

「ピカチュウ、避けろ!」

 

「ピカ!」

 

ピカチュウが横へ跳ぶ。

 

シャドーボールが背後の岩へぶつかり、乾いた音を立てた。

 

「そのまま『でんこうせっか』!」

 

「ピカ!」

 

一気に距離を詰める。

 

しかし、ゴーストは笑った。

 

「ゴースト!」

 

すうっ。

 

身体が地面へ沈む。

 

「ピカ!?」

 

ピカチュウが急停止した。

 

「後ろ!」

 

地面から飛び出したゴーストが腕を振りかぶる。

 

「ゴースト!」

 

拳に影の力が集まる。

 

『シャドーパンチ』。

 

「『アイアンテール』!」

 

「ピカ!」

 

銀色に輝く尻尾と、影を纏った拳がぶつかる。

 

ばしんっ!

 

互いに弾かれた。

 

「そこまで!」

 

サトシが手を上げる。

 

ピカチュウが着地し、ゴーストも空中で止まった。

 

「ピカ!」

 

「ゴースト!」

 

どちらもまだまだ戦えそうだ。

 

サトシは笑う。

 

「だいぶ分かってきた」

 

昨日仲間になったばかりのゴースト。

 

一緒に過ごした時間は短い。

 

だからこそ、まずサトシが知る必要があった。

 

どんな動きを好むのか。

 

どんな距離が得意なのか。

 

そして、どんな技を使えるのか。

 

昨日から確認したゴーストの技は四つ。

 

『ナイトヘッド』。

 

『あくのはどう』。

 

『シャドーボール』。

 

『シャドーパンチ』。

 

遠距離だけではない。

 

姿を消して接近し、『シャドーパンチ』。

 

距離を取れば『シャドーボール』や『あくのはどう』。

 

さらに『ナイトヘッド』による変則的な攻撃もある。

 

何より。

 

「お前、相手を惑わせるの好きだろ」

 

「ゴースト!」

 

即答だった。

 

「やっぱり」

 

「ピカピカ」

 

ピカチュウも苦笑している。

 

「だったら、それを伸ばそう」

 

サトシはゴーストを見る。

 

「正面から力比べする必要はない。姿を消して、相手の意識をずらして、狙う場所を変える」

 

「ゴースト」

 

「でも、指示を待ってるだけじゃ駄目だ。自分で行けると思ったら行っていい」

 

ゴーストの目が輝く。

 

「ゴースト!」

 

「俺もお前の動きを覚える」

 

サトシが拳を差し出す。

 

「これからよろしくな」

 

ゴーストが拳を出す。

 

すかっ。

 

サトシの拳が身体を突き抜けた。

 

「……」

 

「ゴースト」

 

にやり。

 

「わざとだろ」

 

「ゴースト!」

 

ゴーストが笑いながら逃げていく。

 

「待て!」

 

「ピカピカ!」

 

少し離れた場所で見ていたカスミがため息をついた。

 

「似た者同士なんじゃない?」

 

「相性はよさそうだな」

 

タケシが笑う。

 

そのとき。

 

「ゴースト~」

 

カスミの真後ろから声。

 

「……え?」

 

ゆっくり振り返る。

 

そこにはもう一匹。

 

ポケモンタワーからついてきた、サトシのゴーストとは別の個体。

 

「ゴースト!」

 

「きゃあああああっ!」

 

「またやってる……」

 

サトシは笑った。

 

原作のゴースト。

 

こちらはサトシのポケモンではない。

 

自由に遊びながら、気が向いたからついてきているだけだ。

 

だが。

 

サトシは知っている。

 

このゴーストとの出会いが、ナツメにとって大きな意味を持つことを。

 

(まあ、その時が来れば分かるか)

 

今は。

 

自分の戦いに集中する。

 

「行こう」

 

サトシはヤマブキシティの方角を見た。

 

「今度こそ勝つぞ」

 

「ピカ!」

 

「ゴースト!」

 

◇

 

ヤマブキジム。

 

二度目に足を踏み入れても、その静けさは変わらなかった。

 

長い廊下を進む。

 

やがて。

 

前回と同じ部屋へ辿り着く。

 

中央にはナツメ。

 

傍らにはユンゲラー。

 

ナツメがゆっくり目を開けた。

 

「また来たのね」

 

「ああ」

 

サトシが前へ出る。

 

「もう一度、ジム戦をお願いします」

 

ナツメの視線が動く。

 

ピカチュウ。

 

そして。

 

サトシの隣に浮かぶゴースト。

 

「ゴーストタイプ……」

 

「ゴースト!」

 

「それがあなたの答え?」

 

「答えの一つです」

 

サトシは首を横に振った。

 

「ゴーストを連れてくれば勝てる、なんて思ってません」

 

ナツメの目が僅かに細くなる。

 

「昨日仲間になったばかりです。だから、まだ俺たちの連携だって完成してない」

 

「なら、なぜ来たの?」

 

「完成してからじゃないと戦えないなら、いつまで経っても強くなれないから」

 

「ピカ!」

 

「ゴースト!」

 

ナツメはしばらくサトシを見ていた。

 

「……いいわ」

 

立ち上がる。

 

「ユンゲラー」

 

「ユンゲラー!」

 

前へ。

 

サトシもゴーストを見る。

 

「行けるな?」

 

「ゴースト!」

 

フィールドへ飛び出す。

 

「ゴースト、君に決めた!」

 

◇

 

先に動いたのはナツメだった。

 

「サイコキネシス」

 

ユンゲラーの目が光る。

 

「上!」

 

「ゴースト!」

 

ゴーストが急上昇。

 

直後。

 

先ほどまで浮いていた場所を見えない力が押し潰した。

 

「『シャドーボール』!」

 

「ゴースト!」

 

黒紫色の球。

 

一直線にユンゲラーへ向かう。

 

「サイコキネシス」

 

シャドーボールが空中で止まった。

 

「押し返して」

 

ユンゲラーがスプーンを動かす。

 

シャドーボールの向きが反転した。

 

「ゴースト、消えろ!」

 

「ゴースト!」

 

すうっ。

 

壁へ。

 

シャドーボールが空を切る。

 

そのまま壁へ吸い込まれるようにゴーストの姿が消えた。

 

「……」

 

ユンゲラーが周囲を見回す。

 

「後ろ!」

 

壁からゴーストが飛び出す。

 

「『シャドーパンチ』!」

 

「ゴースト!」

 

影を纏った拳。

 

「ユン!」

 

どんっ!

 

ユンゲラーの背中へ直撃した。

 

「入った!」

 

カスミが声を上げる。

 

「そのまま離れろ!」

 

ゴーストが壁へ逃げる。

 

だが。

 

「逃がさない」

 

ナツメの声。

 

ユンゲラーが振り返る。

 

「サイコキネシス」

 

壁の周囲まで見えない力が広がった。

 

「ゴースト!?」

 

壁からゴーストが弾き出される。

 

「やっぱり対応してきたか!」

 

第48話でもそうだった。

 

ナツメは相手の戦い方を見る。

 

そして対応する。

 

一度通じたからといって、同じ手が何度も使える相手ではない。

 

「ゴースト、止まるな!」

 

「ゴースト!」

 

空中を飛ぶ。

 

右。

 

左。

 

ユンゲラーの狙いを絞らせない。

 

「サイコキネシス」

 

「急降下!」

 

かわす。

 

「『ナイトヘッド』!」

 

「ゴースト!」

 

ゴーストの目が怪しく輝く。

 

禍々しい光がユンゲラーへ向かう。

 

「ユン!」

 

直撃。

 

ユンゲラーが後退する。

 

「もう一発――」

 

「サイコキネシス」

 

今度は速い。

 

「ゴース!?」

 

ゴーストの身体が空中で止まった。

 

「捕まった!」

 

カスミが身を乗り出す。

 

「ゴースト、抜けろ!」

 

「ゴースト……!」

 

身体を捻る。

 

だが動かない。

 

ナツメが手を動かす。

 

「投げて」

 

「ユンゲラー!」

 

ゴーストが壁へ飛ばされた。

 

どんっ!

 

「ゴースト!」

 

壁へぶつかる。

 

「大丈夫か!?」

 

「ゴー……スト!」

 

まだやれる。

 

むしろ。

 

笑っている。

 

「そうこなくちゃな」

 

サトシも笑った。

 

「行くぞ!」

 

「ゴースト!」

 

再び飛ぶ。

 

ユンゲラーが構える。

 

正面。

 

「『シャドーボール』!」

 

黒紫色の球。

 

「サイコキネシス」

 

止める。

 

そこまでは同じ。

 

だが。

 

「ゴースト!」

 

サトシが何も言う前に、ゴースト自身が地面へ沈んだ。

 

ナツメの視線が僅かに動く。

 

サトシもすぐ意図を読む。

 

「そのまま行け!」

 

ゴーストが床の中を進む。

 

ユンゲラーが周囲を警戒する。

 

右。

 

左。

 

後ろ。

 

「出る場所を――」

 

ナツメが言いかけた瞬間。

 

「今だ!」

 

真正面。

 

ユンゲラーの足元。

 

「ゴースト!」

 

ゴーストが飛び出した。

 

「『シャドーパンチ』!」

 

「ゴースト!」

 

どんっ!

 

顎下から一撃。

 

「ユンゲラッ!」

 

ユンゲラーの身体が浮く。

 

「続けろ! 『シャドーボール』!」

 

至近距離。

 

黒紫色の球が形成される。

 

「ゴースト!」

 

どんっ!

 

ユンゲラーが吹き飛んだ。

 

「ユン……!」

 

床を滑る。

 

「すごい!」

 

カスミが叫ぶ。

 

タケシはフィールドを見つめる。

 

「サトシが全部指示してるんじゃない」

 

「あのゴースト自身が考えて動いてる……」

 

「それにサトシが合わせてるんだ」

 

昨日仲間になったばかり。

 

完璧な連携なんてない。

 

だからこそ。

 

互いに合わせる。

 

ゴーストが考える。

 

サトシが読む。

 

サトシが作った隙を、ゴーストが利用する。

 

それが今の二人の戦い方だった。

 

「ユンゲラー」

 

ナツメの声が低くなる。

 

ユンゲラーが立ち上がった。

 

「本気で」

 

空気が変わる。

 

サトシの表情も引き締まった。

 

「来るぞ」

 

「ゴースト……!」

 

「サイコキネシス!」

 

今までとは違う。

 

ユンゲラーを中心に、強烈な念力が一気に広がった。

 

「上!」

 

ゴーストが飛ぶ。

 

追ってくる。

 

「壁!」

 

すり抜ける。

 

だが壁そのものが軋む。

 

「ゴースト!」

 

弾き出される。

 

「右へ!」

 

避ける。

 

さらに念力。

 

逃げ場がない。

 

「ゴースト!」

 

ついに捕まった。

 

「くっ!」

 

ゴーストの身体が宙へ固定される。

 

「ユンゲラー!」

 

さらに圧力が強くなる。

 

「ゴース……!」

 

苦しそうに顔を歪める。

 

サトシはユンゲラーを見る。

 

強い。

 

やはり強い。

 

昨日のピカチュウが押し切られた力。

 

だが。

 

昨日見た。

 

サイコキネシスは絶対ではない。

 

ピカチュウは『10まんボルト』の出力で一瞬だけ拘束を緩ませた。

 

なら。

 

「ゴースト!」

 

「ゴ……?」

 

「捕まったままでいい!」

 

カスミが驚く。

 

「何言ってるの!?」

 

だがゴーストはサトシを見る。

 

そして。

 

にやり。

 

「ゴースト!」

 

通じた。

 

「正面! 『あくのはどう』!」

 

「ゴォォースト!」

 

拘束されたまま。

 

ゴーストの身体から黒い波動が一気に放たれた。

 

「ユン!?」

 

至近距離ではない。

 

それでも、ユンゲラーはサイコキネシスの維持に集中している。

 

黒い波動が直撃した。

 

「ユンゲラァッ!」

 

ユンゲラーの身体が大きく揺れる。

 

サイコキネシスが乱れた。

 

「今だ、抜けろ!」

 

「ゴースト!」

 

拘束から飛び出す。

 

「行け!」

 

ゴーストが一直線に迫る。

 

「サイコキネシス!」

 

ユンゲラーが狙う。

 

「消えろ!」

 

すうっ。

 

ゴーストが床へ。

 

「下よ!」

 

ナツメが読む。

 

ユンゲラーが床へ念力を放つ。

 

しかし。

 

出ない。

 

「……?」

 

一秒。

 

二秒。

 

「まだだ!」

 

サトシは動かない。

 

ナツメが周囲を見る。

 

ユンゲラーも警戒する。

 

そして。

 

天井。

 

「ゴースト!」

 

いつの間にか床から壁を通り、天井まで移動していた。

 

「上!」

 

遅い。

 

「『シャドーボール』!」

 

黒紫色の球が落ちる。

 

「ユン!」

 

直撃。

 

爆発。

 

煙が広がる。

 

「終わってない!」

 

ゴーストが煙へ飛び込む。

 

「『シャドーパンチ』!」

 

「ゴーストォ!」

 

煙の中。

 

鈍い音。

 

ユンゲラーが外へ弾き出された。

 

だが。

 

「ユン……ゲラー!」

 

まだ倒れない。

 

膝をつきながらもスプーンを構える。

 

ゴーストも息を切らしている。

 

「ゴース……!」

 

両者限界が近い。

 

「ユンゲラー、サイコキネシス!」

 

「ゴースト、『あくのはどう』!」

 

同時。

 

念力と黒い波動。

 

ぶつかる。

 

空気が震える。

 

「ゴーストォォォ!」

 

「ユンゲラァァ!」

 

押し合う。

 

互角。

 

「行けぇぇっ!」

 

「ゴーストォォォ!」

 

黒い波動が広がった。

 

サイコキネシスを押し返す。

 

「ユン!?」

 

そのまま。

 

直撃。

 

どんっ!

 

ユンゲラーが吹き飛んだ。

 

床へ落ちる。

 

「ユン……」

 

スプーンを握った腕が落ちた。

 

動かない。

 

静寂。

 

ナツメがユンゲラーを見る。

 

「……」

 

やがて。

 

「ユンゲラー、戦闘不能」

 

その言葉が静かに響いた。

 

サトシは一瞬動かなかった。

 

そして。

 

拳を握る。

 

「よしっ!」

 

「ゴースト!」

 

ゴーストが飛びついてくる。

 

「うわっ!」

 

その身体を受け止めようとして、腕がすり抜ける。

 

「ゴースト!」

 

「だからそれやめろって!」

 

「ピカピカ!」

 

ピカチュウがサトシへ飛びつく。

 

「ピカチュウ!」

 

「勝ったぞ!」

 

「ピッカ!」

 

カスミとタケシも駆け寄る。

 

「やったじゃない!」

 

「見事だったぞ、サトシ」

 

「ああ!」

 

サトシはナツメを見る。

 

「ありがとうございました」

 

ナツメはユンゲラーを戻す。

 

そしてサトシへ向き直った。

 

前回と違う。

 

ほんの僅かに。

 

その目に感情が見えた。

 

「あなたの勝ち」

 

ナツメがバッジを手に取ろうとした。

 

そのとき。

 

「ゴースト~」

 

声が響いた。

 

「あ」

 

サトシが顔を上げる。

 

天井から。

 

もう一匹のゴースト。

 

ポケモンタワーからついてきた、あのゴーストだった。

 

「今までどこにいたのよ!」

 

カスミが叫ぶ。

 

「ゴースト!」

 

ゴーストは気にしない。

 

ナツメの前へ飛んでいく。

 

「……?」

 

ナツメが見つめる。

 

ゴーストが突然。

 

顔を変えた。

 

「……」

 

全員が止まる。

 

変な顔。

 

次に身体を伸ばす。

 

縮む。

 

逆さまになる。

 

舌を出す。

 

「ゴースト!」

 

サトシは思わず吹き出した。

 

「ははっ!」

 

「何してるのよ、あいつ……」

 

カスミも呆れている。

 

ゴーストは止まらない。

 

ユンゲラーのスプーンを真似する。

 

ナツメの人形の真似。

 

最後には自分の舌を踏んだような格好で転がった。

 

「ゴーストォ~!」

 

「……」

 

ナツメが見ている。

 

無表情。

 

ゴーストが起き上がる。

 

もう一回。

 

転ぶ。

 

「……ふっ」

 

小さな音。

 

サトシがナツメを見る。

 

「ふふ……」

 

ナツメの口元が緩んでいた。

 

「ふふふっ……!」

 

笑っている。

 

初めて見る、普通の少女の笑顔。

 

ゴーストも嬉しそうに笑う。

 

「ゴースト!」

 

サトシの隣にいたゴーストも、仲間の様子を見て笑った。

 

「ゴースト!」

 

その瞬間。

 

張り詰めていたジムの空気が。

 

少しだけ。

 

柔らかくなった。

 

◇

 

「これを」

 

ナツメが差し出した。

 

金色のバッジ。

 

サトシは受け取る。

 

「ありがとう」

 

手のひらに載せる。

 

四つ目。

 

「ゴールドバッジ、ゲットだぜ!」

 

「ピッピカチュウ!」

 

「ゴースト!」

 

ピカチュウとゴーストが声を上げた。

 

カスミとタケシも笑っている。

 

そして。

 

サトシはもう一匹のゴーストを見る。

 

「お前はどうする?」

 

「ゴースト?」

 

「俺たちは旅を続ける」

 

サトシはナツメを見る。

 

ナツメもゴーストを見ている。

 

「でも、お前は――」

 

最後まで言う必要はなかった。

 

ゴーストがナツメの隣へ移動する。

 

「ゴースト!」

 

ナツメが少し驚く。

 

「私といるの?」

 

「ゴースト!」

 

満面の笑み。

 

サトシも笑った。

 

「そっか」

 

原作のゴースト。

 

ポケモンタワーで出会い。

 

勝手についてきて。

 

そして。

 

ここを選んだ。

 

「じゃあ、またな」

 

「ゴースト!」

 

ゴーストが大きく手を振る。

 

サトシのゴーストも前へ出た。

 

「ゴースト」

 

「ゴースト!」

 

二匹が拳を合わせる。

 

今度はすり抜けない。

 

それぞれが選んだ場所。

 

一匹はナツメの隣へ。

 

もう一匹は――。

 

「ゴースト!」

 

サトシの頭へ乗った。

 

「お前はそこなのか?」

 

「ゴースト!」

 

「ピカ!」

 

ピカチュウが不満そうに頭上を見る。

 

ゴーストが舌を伸ばす。

 

「ピカ?」

 

「やめ――」

 

べろん。

 

「ピカァァッ!」

 

「ははは!」

 

サトシが笑う。

 

「もうすっかり馴染んだわね」

 

カスミが苦笑した。

 

そしてカスミがゴーストへ近づく。

 

「でも、あんたもあっちに残るとか言わないでしょうね?」

 

「ゴースト?」

 

「せっかく仲間になったんだから――」

 

すうっ。

 

ゴーストが消えた。

 

「え?」

 

「カスミ」

 

サトシが笑いを堪える。

 

「後ろ」

 

「……まさか」

 

ゆっくり振り向く。

 

「ゴースト!」

 

「きゃああああああっ!」

 

ヤマブキジムに大きな悲鳴が響く。

 

ナツメが。

 

また小さく笑った。

 

◇

 

ジムを出る。

 

夕方のヤマブキシティ。

 

サトシは四つのバッジが入ったケースを開いた。

 

グレーバッジ。

 

ブルーバッジ。

 

オレンジバッジ。

 

そして。

 

ゴールドバッジ。

 

「四つ目か」

 

「ピカ」

 

「まだ半分だな」

 

「ピカチュウ!」

 

隣ではゴーストが浮かんでいる。

 

「ゴースト!」

 

昨日までいなかった仲間。

 

初めてのジム戦。

 

そして初勝利。

 

もちろん。

 

これで完成ではない。

 

今日の戦いでも危ない場面はいくつもあった。

 

ナツメがさらに戦い続けていれば、どうなっていたか分からない。

 

もっと連携を磨ける。

 

もっと技も磨ける。

 

そしていつか。

 

このゴーストがどんな姿へ成長するのか。

 

サトシはそれも楽しみだった。

 

「行こう」

 

「ピカ!」

 

「ゴースト!」

 

「次の街へ!」

 

三人とポケモンたちは、再び歩き出した。

 

四つ目のバッジと。

 

新しい仲間を加えて。

 

サトシのカントーの旅は、まだまだ続いていく。

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