次の授業で、先生は黒板にタイプの表を貼った。
「この表、見たことある人?」
ほとんどの子が手を挙げた。タクヤも手を挙げる。ポケモンにタイプがあることは、みんな知っていた。
「タクヤのビリリダマは、でんきタイプだね。ミホのポッポは、何タイプだったかな」
「ノーマルと、ひこうタイプ」とミホが答えた。
「そう。ポケモンによっては、タイプを二つ持っていることもあります」
「今日は、知っていることを少し整理しよう。ポケモンだけじゃなくて、技にもタイプがあります」
先生は、表の端に「ノーマル」と書いた。
「たいあたりはノーマルタイプの技です。でんきタイプのビリリダマが使っても、たいあたりはノーマルタイプのままだよ」
「ビリリダマがやっても?」
「そう。使うポケモンのタイプと、技のタイプは別なんだ」
先生は表の「みず」と「じめん」を指した。
「でんきの技は、みずタイプにはよく効きます。でも、じめんタイプには効きません。こういう相性を知っておくのは、バトルで技を使うときにも大事だよ」
「でも、みんなバトルするの?」
前の席の子が聞いた。
「バトルをしない人もいるよ」
「じゃあ、なんで学校で練習するの?」
「みんなをトレーナーや選手にするためじゃないよ。ポケモンは技を使うし、野生のポケモンに会うこともある。ポケモン同士が争うこともあるから、力や技のこと、安全な使い方や止め方を知っておくんだ。相手がいるときの決まりもね。必要なとき、ポケモンと一緒に安全に動けるようにするためだよ」
先生は、表の横に書かれたポケモンの絵を指した。
「それに、この表や図鑑に書いてあるのは、その種類について分かっていることです。目の前にいる一匹のことが、全部書いてあるわけじゃない。同じ種類でも、得意なことや苦手なこと、好きなもの、動き方や速さはそれぞれ違います。一緒にいるポケモンのことは、よく見て知っていこう」
タクヤはノートに「ビリリダマはでんきタイプ」と書いた。その下に、少し考えてから「まっすぐは速い」と書き足す。
まっすぐやったら、速い。
でも、コラッタが横へ動いたら、すぐには曲がれへんかった。
相性がよくても、技が当たらんかったらどうなるんやろ。
どのくらい速いんやろ。
どのくらいやったら曲がれるんやろ。
*
放課後、タクヤはビリリダマと家の近くの公園へ寄った。人のいない広場の端に、小さな木が立っている。
「ビリリダマ、あそこまで行ってみて」
ビリリダマはタクヤを見てから、木のほうへ転がり出した。勢いを増して進んでいく。
「こっち!」
タクヤが横を指さした。
ビリリダマはすぐには向きを変えられず、木のそばを通り過ぎてから、大きく弧を描いて戻ってきた。
「そっか。速いと、すぐには曲がられへんのやな」
ビリリダマはタクヤの前で止まる。タクヤは、さっきより近くの地面を指した。
「今度は、ここまでな。こっちって言うたら、曲がってみて」
ビリリダマが、さっきより短く転がる。タクヤが「こっち」と呼ぶと、少し大きく回ってから、指したほうへやってきた。
「今の、ちょっと曲がれたな」
タクヤは笑って、また目印にする場所を探した。ビリリダマも、タクヤのそばでころころ向きを変える。
「もう一回やろ」
今度は少し離れたところを目印にした。タクヤが「こっち」と呼ぶまでを少し早めたり、遅くしたりする。ビリリダマは目印を通り過ぎたり、さっきより小さく曲がったりした。戻ってくるたびに、タクヤは次の目印を探す。ビリリダマも、止まるとまた自分から木のほうへ転がっていった。
もう一回。
今度は、もう少し近く。
もう一回。今度は、呼ぶのを少し遅く。
タクヤは笑い、ビリリダマもころころと行ったり来たりしていた。
*
「今、何時か分かる?」
声をかけられて、タクヤは顔を上げた。公園の中は暗くなっていて、街灯がついている。ジュンサーさんが、少し離れたところに立っていた。
「……あ」
「暗くなってるよ。おうちは近く?」
「うん。あっち」
「じゃあ、おうちまで一緒に行こうか」
ジュンサーさんと歩いて、タクヤは家に帰った。玄関を開けると、お母ちゃんが待っていた。ビリリダマも、タクヤの後ろからころころ入ってくる。
「どこ行ってたん!」
「ごめん」
「暗なる前に帰ってきなさいって言うてるやろ!」
「うん。ごめん」
「何してたん?」
「ビリリダマと遊んでた」
「遊んでたら時間見んでええんか!」
「……ごめん」
タクヤはうつむいた。ビリリダマは、いつものようにすぐそばにいた。