次の練習の日、先生はタクヤとビリリダマを、チコリータのそばにいた男の子と組ませた。
「今日は前と違うポケモンともやってみよう。いろんな相手と練習してみようね」
チコリータは男の子の横で、葉っぱを揺らしている。ビリリダマはタクヤの足元にいた。
「今日は、たいあたりとつるのムチだけ使います。先生の合図で始めて、止めたらすぐ止まること。人のいるほうへ技を出さないようにね」
先生は二匹の立つ位置を確かめた。チコリータは、ビリリダマから少し離れたところにいる。
先生が手を上げた。
「はじめ」
「ビリリダマ、たいあたり!」
ビリリダマが転がり出す。チコリータはその動きを見ていた。チコリータはまだ遠い。男の子が声をかける。
「チコリータ、つるのムチ!」
チコリータの前から蔓が伸びた。
「え、そこ届くん?」
タクヤは思わず声を上げた。
「よけて!」
ビリリダマは、すぐには動かなかった。タクヤにはもう蔓が届きそうに見える。蔓が迫ってから、ビリリダマが横へ転がった。
蔓の先が、さっきまでビリリダマのいたところを打つ。
「今ので間に合うん?」
ビリリダマは転がり続けた。チコリータが向きを変え、また蔓を伸ばす。タクヤは、今度は早めに声を出した。
「よけて!」
ビリリダマが先に進み方を変えた。チコリータのそばの男の子が、その動きを見て指を向ける。
「チコリータ、そっち!」
蔓が向きを変え、ビリリダマの進む側へ追ってくる。ビリリダマは速度を落としながら大きく回り込んだ。蔓の先は、後ろをかすめて地面を打った。
止まらずに動くビリリダマへ、チコリータがさらに蔓を伸ばす。
タクヤは「よけて」と言いかけ、声を止めた。
蔓が近づく。ビリリダマは少し速度をゆるめた。蔓がその横を抜け、後ろを通っていく。
タクヤは、その動きを見ていた。
チコリータは葉を揺らし、また蔓を伸ばした。一本がビリリダマの前から迫る。ビリリダマはその蔓を避けるように向きをずらした。
タクヤのいる位置からは、チコリータの向こう側でもう一本の蔓が動くのが見えた。
「もう一本来るで!」
ビリリダマは少し速度をゆるめ、それから大きく弧を描いた。蔓はその前を通って、地面に落ちた。
「そこまで!」
先生の声で、チコリータは蔓を引き戻した。ビリリダマはすぐには止まらず、少し先まで進んでから速度を落とした。
「ビリリダマ、止まって」
タクヤが声をかけると、ビリリダマはもう少し転がって、タクヤの近くで止まった。
男の子がチコリータのところへ行く。タクヤも、ビリリダマのそばまで歩いた。
*
帰り道、ビリリダマはタクヤの少し前を転がっていた。
「ビリリダマのほうが、よけるんうまいよな」
ビリリダマは少しだけ速度を落とした。
「俺が『よけて』って言わんでも分かってた?」
ビリリダマは「ビリ」と鳴いた。タクヤは、その声を聞きながら歩いた。
「でも、この前コラッタに当たったときは、見えへんかった?」
ビリリダマがゆっくりとタクヤのほうを向く。
「……見えてへんかった?」
ビリリダマは、また前を向いて転がり出した。
「ふうん」
タクヤも歩き出した。ビリリダマは、少し先をころころ進んでいった。