うちのマルマイン   作:山田貴大

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言わなくても

 宿題を終えると、タクヤはビリリダマといつもの公園へ行った。小さな木の前で、ビリリダマが止まる。

 

「木のとこまで行って、こっちって言うたら戻ってきてな」

 

 ビリリダマは木へ向かって転がり出した。タクヤが「こっち」と呼ぶと、木の手前で向きを変えて戻ってくる。

 

「今の、ちょっと大きかったな。もう一回」

 

 次は少し早めに声をかけた。ビリリダマはさっきより手前で曲がる。戻ってくるたびに、タクヤは呼ぶタイミングを変えた。

 

 何度目か、ビリリダマが木へ向かって転がっていくあいだ、タクヤはこの前のチコリータとの練習を思い返していた。

 

 (つるが来る向き、もっと早く分かったらよけやすいんかな。)

 

 木の手前まで来たビリリダマは、少しずつ速度をゆるめ、小さく向きを変えた。今までで一番うまく曲がって、タクヤのところへ戻ってきた。

 

「あれ?」

 

 タクヤは戻ってきた道を目でたどった。

 

「今の、いちばんうまく曲がったんちゃう?」

 

 ビリリダマはタクヤの前で止まった。タクヤは、そこで「こっち」と言うのを忘れていたことに気づいた。

 

「あ。俺、言うの忘れとった」

 

 もう一度ビリリダマが木のほうを向く。

 

「なあ、次は木にぶつからんように、もうちょっと小さく曲がってみてくれる?」

 

 タクヤはそれだけ言って、細かく呼ぶのをやめた。ビリリダマは木へ向かって進み、近づくと少しずつ速度を落とす。さっきより、ほんの少し小さく曲がって戻ってきた。

 

「今の、ちょっと小さかったな」

 

 タクヤは笑った。ビリリダマは、また木のほうへ転がっていく。

 

 遊んでいるうちに、空が暗くなり、公園の街灯がついた。

 

「もう一回だけな」

 

 タクヤが言うと、ビリリダマは家のほうへ少し動いて、そこで止まった。

 

 タクヤは空を見上げた。

 

「ほな、帰ろか」

 

 ビリリダマはタクヤの横に並んだ。二人で公園を出て、家へ向かった。

 

     *

 

 次のバトル練習でも、タクヤとビリリダマの相手は、あの子とチコリータだった。

 

 先生の合図で練習が始まる。チコリータのつるが伸びてきた。タクヤは声をかけず、ビリリダマの動きを見た。

 

 ビリリダマは、つるが届く前に横へ転がった。つるの先が地面を打つ。

 

 次は、チコリータのつるが少し違う角度から伸びた。ビリリダマは速度を落として、大きく弧を描く。つるの先が近くをかすめた。

 

 あの子がチコリータに声をかけた。チコリータは、今度はビリリダマの進む先へつるを伸ばす。一本をかわしたビリリダマの前に、もう一本のつるが伸びてきた。

 

 タクヤのいる位置からは、そのつるがビリリダマの進む先にあるのが見えた。

 

「もう一本来るで!」

 

 ビリリダマはタクヤの声を受けて進む向きを変え、つるをかわした。そのまま大きく弧を描き、チコリータのほうへ向かっていく。つるの先が地面に落ちた。

 

     *

 

 そのあとも、チコリータのつるが何度か伸びた。ビリリダマはすれすれを抜けたり、大きく回ったりする。チコリータも、ビリリダマの動きに合わせてつるを伸ばす向きを変えた。

 

 先生の「そこまで」という声で、みんなが動きを止めた。

 

 タクヤはビリリダマのそばへ行った。

 

「さっき、何も言わんでもよけとったな」

 

 ビリリダマは、タクヤの足元でころんと止まった。

 

「もう一本は、俺からは見えとった。言うたら、よけられたな」

 

 ビリリダマはタクヤを向き、それからチコリータのほうへころころ向きを変えた。

 

「お前も、勝ちたかったんかな」

 

 ビリリダマが「ビリ」と鳴いた。

 

「次もやろな」

 

 タクヤが言うと、ビリリダマはタクヤの横へ寄った。

 

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