それからしばらくして、学校でポケモンとバトルするのも、すっかり日常になっていた。ケンタのコラッタは速くて、タクヤとビリリダマはいつも苦戦する。ミホのポッポには、でんきショックがよく効く。勝つ日もあれば、負ける日もある。そんな日々を過ごすうちに、タクヤの九歳の誕生日が近づいていた。
帰宅したタクヤがランドセルを置くと、ビリリダマが足元に転がってきた。
お母ちゃんが台所から顔を出した。
「タクヤ、もうすぐ誕生日やな。今年も誕生日会する?」
「する! ケンタとミホも呼びたい!」
「明日、学校で聞いておいで」
「今から行ってくる!」
「ちょっと待ち! 暗くなる前に帰ってきいや!」
タクヤは玄関へ向かい、靴を履いた。
「ビリリダマも一緒に行こ」
ビリリダマはタクヤの後を追って外へ転がった。
*
まずはケンタの家へ向かった。
ケンタが玄関に出てくると、タクヤは誕生日のことを話した。
「もうすぐ誕生日やねん。ケンタも来てくれる?」
「行く! 誕生日、楽しみだな」
ケンタはすぐに答えた。家の奥から、ケンタのお父さんも顔を出す。
「そうかぁ、タクヤくんももうすぐ九歳か。ケンタも同い年だもんな。二人とも、もうすぐトレーナーになれるんだなあ」
ケンタのお父さんが笑うと、ケンタは胸を張った。
「僕はトレーナーになるよ。それで、チャンピオンになるんだ」
「また言うてる」
「本気だってば!」
「知ってるって」
「ほんとだからね!」
タクヤは笑った。
「じゃあ、またな」
「うん。誕生日にね!」
ケンタに手を振って、タクヤとビリリダマはミホの家へ向かった。
ミホも、誕生日に来てくれることになった。
「ありがとう。楽しみにしてるね」
ミホのお母さんが、ミホのそばに立った。
「ミホはトレーナーになりたいって言うんだけどね。親としては、近くにいてくれたら安心だし、いい人がそばにいてくれたらいいなって思うのよ」
それから、お母さんはタクヤを見て、笑った。
「タクヤくん、ミホいらない?」
「お母さん!」
「あら、タクヤくんならいいと思うんだけど」
「もう!」
「何の話や?」
「タクヤくんは気にしなくていいの!」
「そうなん?」
「そうなの!」
ミホのお母さんが笑った。
「ほな、また誕生日にな」
「うん。またね」
ミホとお母さんに手を振り、タクヤはビリリダマと帰った。
*
夕飯のとき、タクヤはケンタとミホの話をした。
「ケンタもミホも、トレーナーになりたいんやって」
「そうか。タクヤはどうなんや?」
「分からへん」
「そっか。まあ、旅に出たくなったら出てもええぞ」
「ほんま?」
「ただし、ミカンさんに勝ってからな」
「無理やろ!」
お父ちゃんが笑った。タクヤも、つられて少し笑った。
「お父ちゃんも、タクヤには近くにおってほしいん?」
お母ちゃんが笑いながら聞いた。
「いや、そんなことはないで。旅に出るなら、それくらい強うなってからや」
「ふうん、そういうことにしとこか」
お父ちゃんは苦笑いした。
タクヤには、何がおかしいのかよく分からなかった。ミカンさんに勝つなんて、まだまだ無理そうやのに。
*
夕飯のあと、お風呂を済ませたタクヤは、ビリリダマと一緒に部屋へ戻った。
布団に入ったタクヤは、ビリリダマに声をかけた。
「ミカンさん強いよな」
ビリリダマが布団のそばで止まった。
「勝てると思う?」
「ビリ!」
「ほんまかいな」
「ミカンさんとやったら、どないなるんやろな」
「ビリ!」
「……やる気やなあ、お前」