園で遊んでいると、ケンタとミホがポケモンの話をしていた。
「昨日、うちの庭にいるコラッタにポケモンフーズをあげたら食べたよ」
「うちに来るポッポにパンくずをあげたら食べたよ。毎朝来るんだ」
二人は、それぞれのポケモンが何を食べたかを話している。
タクヤは、聞きながらこの前見たビリリダマを思い出した。赤と白で、丸くて、目があった。けれど、口は見えなかった。
ポッポはパンくずを食べる。コラッタはポケモンフーズを食べる。
(じゃあ、ビリリダマは何を食べるんやろ。)
お迎えのあと、家でおやつを食べているとき、タクヤはお母ちゃんに聞いた。
「なあ、お母ちゃん。ビリリダマって何食べるん?」
「ビリリダマが?」
「うん。園でな、ケンタがコラッタにポケモンフーズあげたって言うててん。ミホのとこにはポッポが来て、パンくずを食べるんやって」
「そうなんや」
「ビリリダマは?」
お母ちゃんは、少し考えてから答えた。
「何を食べるかは、お母ちゃんも知らんなあ。ビリリダマは電気をためることがあるって聞いたことはあるけど」
「電気がごはんなん?」
「どうやろなあ。お母ちゃんにも分からへんわ」
「この前見たビリリダマ、目はあったけど口は見えへんかった。口がないみたいやのに、どうやって食べるん?」
「見えへんかっただけかもしれへんなあ。ほんまに口がないかどうか、お母ちゃんにも分からへんわ」
お母ちゃんは、タクヤの顔を見てから言った。
「気になるのは分かるけど、この前、物置の近くで倒れてたやろ。ビリリダマを見つけても近づいたらあかんで。自分で行かんと、園なら先生に知らせるんやで」
「うん。見つけても近づかへん。先生に言う」
タクヤは、園庭の端にいたビリリダマをもう一度思い浮かべた。目はあった。でも、口は見えなかった。
(口が見えへんのに、どうやって食べるんやろ。電気がごはんなんやろか。)
タクヤには、まだ分からなかった。
*
夕方、お父ちゃんがタクヤのおもちゃの車の電池を取り替えた。新しい電池を入れてふたを閉めると、車はまた床を走った。外した電池が、机の端に置かれている。
「電池に電気が入っとるん?」
「そうやで。電池の中の電気で、おもちゃが動くんや」
タクヤは、机の端に置かれた電池を見た。
「これ、もらってええ?」
「ええよ。もう電気は少ししか残ってへんと思うけどな。口に入れたらあかんで」
「わかった」
タクヤは、ビリリダマは電気をためることがあると、お母ちゃんが言っていたのを思い出した。電池には、まだ少し電気が残っているらしい。
(これ、ビリリダマのごはんになるんちゃう?)
次の日、タクヤはもらった電池を一つ、ズボンのポケットに入れて園へ行った。
外遊びの時間、タクヤは先生の見えるところで、ほかの子たちと遊んでいた。ポケットの中で、電池が足に当たる。
物置のそばへ行ったらあかん。ビリリダマに近づいたらあかん。
(ほんなら、ここから投げたらええ。)
タクヤは、物置から離れた遊び場から、物置の方へ電池を投げた。電池は地面に当たって一度跳ね、物置の近くまで転がって止まった。タクヤはその場を離れ、ほかの子たちの遊びに加わった。
*
子どもたちが部屋へ戻ったあと、先生は園庭の端を見回っていた。物置の近くに、電池が一つ落ちている。
「どうしてこんなところに電池が?」
先生は近くにいた先生に声をかけ、電池を拾い上げた。子どもが手に取ったり、口に入れたりしたら危ない。先生はそれを持って部屋へ戻した。
「この辺り、前にビリリダマがいた場所の近くでもありますね」
「そうだったね。念のため、周りも見ておこう」
二人の先生は園庭の端を確かめた。ビリリダマの姿は見えず、ほかに危ないものも落ちていなかった。
*
午後の外遊びで、タクヤはまた先生の見えるところで遊んでいた。園庭の端を通ったとき、電池を投げた物置の方に目がいった。
電池は、なかった。
(……食べたんかな。)