うちのマルマイン   作:山田貴大

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今日は逃げへんな

 園の物置の近くに、ビリリダマがいる日もあれば、いない日もあった。見つけると、タクヤは先生に知らせた。先生と一緒に、離れたところから見る。いない日は、ケンタやミホと遊んだ。ポケモンの話をする日もあれば、鬼ごっこをする日もあった。

 

     *

 

 何日かたった午後、タクヤは遊具の近くでケンタたちと遊んでいた。ふと物置の方を見ると、赤と白の丸い姿があった。前に見たときより、物置から少し離れたところにいる。

 

「先生、ビリリダマおる」

 

 先生も物置の方を見て、近くで遊んでいた子どもたちに声をかけた。

 

「みんな、部屋に戻ろうね。先生と一緒に」

 

 タクヤは返事をして、ほかの子たちと先生のあとについて歩き出した。

 

 そのとき、ビリリダマの丸い体が少し向きを変えた。目のある赤い面が、部屋へ戻る子どもたちの方を向いている。

 

(今日は逃げへんな。)

 

 タクヤは先生のそばで戸口をくぐった。振り返ると、ビリリダマは園庭の端に、まだいた。

 

     *

 

 ビリリダマは、物置の近くにいる日もあれば、いない日もあった。来ても、前のようにすぐ逃げてしまうことは少なくなり、物置から離れた園庭の端にいることもあった。

 

 タクヤは見つければ先生に知らせた。先生と一緒に離れたところから少し見たあとは、またケンタやミホのところへ戻った。ビリリダマがいない日も、いる日も、鬼ごっこをしたり遊具で遊んだりした。

 

     *

 

 ある日の外遊びの時間、タクヤはケンタとミホと鬼ごっこをしていた。園庭の端には、物置から少し離れてビリリダマがいた。

 

「先生、ビリリダマおる」

 

 先生も物置の方を見て、うなずいた。

 

「教えてくれてありがとう。みんな、こっちの遊具のほうで遊ぼうね」

 

 タクヤたちは、先生のいる遊具の近くへ移った。先生はそばにいた。

 

 タクヤが鬼になり、ケンタを追って走った。少しして物置の方を見ると、ビリリダマの体が少し向きを変え、目がタクヤのいる方を向いていた。今度はミホを追って反対へ走ると、ビリリダマの体も少し遅れて向きを変え、目がそちらを向いた。

 

 タクヤはミホにタッチした。次はミホが鬼になり、ケンタとタクヤを追いかけた。タクヤは遊びながら、何度かビリリダマを見た。そのたび、目がタクヤのいる方を向いているように見えた。

 

 やがて先生が、外遊びの終わりを告げた。

 

「みんな、お部屋に戻ろうね」

 

 タクヤは先生のあとについて歩き出した。少し遅れて、ビリリダマも園庭の端を転がって動いた。

 

 先生が、後ろの子どもたちを待って立ち止まった。タクヤも止まった。ビリリダマも、少し先で止まった。

 

 先生が歩き出すと、タクヤもまた歩いた。ビリリダマは、同じ方向へ少し転がった。

 

 タクヤは先生と一緒に部屋へ入った。戸口から振り返ると、ビリリダマは園庭の端を少し部屋の方へ進んでいた。タクヤたちからは、まだ離れている。ビリリダマの目が、こちらを向いていた。

 

(ついてきてるんかな。)

 

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