転生生活で大事なこと…なんだそれは?   作:綺羅 夢居

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プロローグ

プロローグ

 

 

 目が覚めたら、身体が縮んでいた。

 

 などとどこかで聞いたことのあるような台詞はおいておくとして、俺が朝起きると目に映ったのは知らない天井だった。

 

 ……これもネタじゃねえか

 

 というわけで目が覚めると知らない部屋のベッドで寝かされており、その上、自分の身体が縮んでしまってたのだ。

 

 とりあえず身体を起こしてみると体中に痛みが走る。怪我とかではなく、筋肉痛のような痛みだ。

 

「つうか、マジでどうなってんだよ?」

 

 色々とこれまでのことを思い返してみるが、特に何かあった記憶がない。しいて言えば、昨日、友人たちと飲みすぎた程度だろうか?

 

 確か全員企業から内定貰ったからって、むちゃくちゃ酒を飲んだんだっけ。その後、自分の借りてるマンションまで歩いて帰って、そっから記憶がねえわ……

 

 夢かと思ったが、身体の痛みからすると現実だし、夢のようなあいまいな思考ではなく、意識もはっきりしていた。

 

「幼児化って、何かのネタかよ」

 

 自分の手を握ったり開いたりしてみる。大人のような筋肉質な腕とは違い、ぷにぷにで柔らかく、手のひらも明らかに幼い。

 

「ちょっと待てよ」

 

 俺は急いで自分の股間に手をやる。そこにはちゃんと男の象徴たるものが存在した。

 

「よかった〜、これで女になりましたとかだったら発狂するわ」

 

 自分にかけられていたシーツを剥がし、姿を確認する。着せられていた服は入院患者が着ているような患者服と呼ばれるものに似ていた。

 

「状況がわからん」

 

 そう思い立った俺は、ベッドの周りを確認してナースコール的なものがないかを探してみる。しかし、何も見当たらない。

 

 見つからないものは仕方ないと思い、部屋の周りを見渡してみるが、自分のいたベッド以外何もなく、そのベッドもよく見れば機械的なものであった。

 

「なんか斬新なベッドだな」

 

 筋肉痛っぽい痛みをこらえてベッドから降りると、そのベッドを確認してみる。なんというか機械的な台にしか見えなかった。

 

 裸足のためか地面も冷たい。その足でベッドを軽く蹴ってみるが、感触は本当に金属の板を蹴っているような感じだ。

 

「窓すらないとか検査室? それとも隔離されちゃってんの?」

 

 答える人が誰もいないとわかっているが、声を出さないと恐怖に押しつぶされそうだ。

 これは別に不思議なことではないだろう。いきなり、どっかの部屋に寝かされていて、身体が縮んでいて、そして誰もいない。これで平常心を保てるなら、ソイツは明らかに異常者だ。

 

「人を見つけないとどうにもなんないな」

 

 人を探すために部屋に一つだけある扉に近づいてみる。しかし、何の反応もない。

 

 とりあえず、扉をたたいてみるがそれでも反応がない。継ぎ目に指を引っ掛けてみるが開かない。

 

 閉じ込められてる? などと思ったが、よくよく見てみると、扉の横に何かしらの機械があるのが見える。

 

「インターホン的なものか、扉のロックか」

 

 まあ人と会えるならどちらでもいいけど、なんて考えつつその機械に近づく。

 よくわからないがパネルに触れてみると、いくつもの選択肢らしきものが出た。

 

「何語だよコレ?」

 

 字が全く読めないので、とりあえずその中の一つにタッチしてみる。……まさか、トラップとかないよね?

 

 そんな心配は杞憂だったようで、扉はすんなりと開いてくれた。すげーな、セキュリティーとかどうなってんだよ。

 

 とりあえず、扉が開いたので部屋を出てみる。廊下があるだけで人の気配がしなかった。

 

 コレは本格的にやばいか?

 

 人の気配がしないことに焦りを覚える。話し声でも聞こえれば少しは安心できただろうが、それすらないので不安と焦り、恐怖を感じ、少しずつ精神的に追い込まれていく。

 

 痛みを無視して、他の部屋に入ろうとするが、他の部屋はロックがかかっているのか、機械を操作しても動く気配がない。

 

 廊下を進んでいくうちに、自分が奥へと進んでいるように感じてくる。引き返そうかと思ったが、もと来た道を戻るほどの余裕もないので、そのまま奥へと進んだ。

 

 奥へと進むと扉が見える。今までの部屋の扉とは違い、なんというか物々しい扉だ。

 

 扉に近づくと、扉は音を立てて開く。まるで自分が来るのを待っていたかのように。

 

 部屋の中に入ると明かりが灯り、近くにあったモニターが起動する。そこには数字のようなものとデータをインストールするときのメーターのようなものが見える。

 

 メーターはモニターが起動してから着実に進んでいる。

 

 メーターの意味がわからないので部屋の中を探してみると、トランクケースのようなものがあった。ケースはいくつかあり、とりあえず、その内一つに触ってみる。

 

「かなり重いな」

 

 ケースは子供が運ぶにはかなりの重量があった。ケースを少し広いところに移動させ、色々と触ってみる。するとうまい具合に手が触れたのかケースが開いた。そこにはノートパソコンらしきものと銃らしきものがある。

 

 ノートパソコンは自分が知っているものとほぼ同形状でモニターとキーボードが存在した。キーボードは日本製なのかひらがなや半角/全角の文字が見える。

 

 銃はというと、近代的な銃ではなく、機械的、未来的なデザインで一見すればおもちゃのようにも見える。

 手に持ってみると、ズシリという重さを感じ、子供の腕力では持ち運ぶのに苦労しそうだった。

 

 トランクケースの中を見てみると数字が書かれている。

 

 №099

 

 今までの部屋の字は読めなかったのにこのトランクの字が自分が読める字であることを疑問に思いながらも、この数字の意味を考える。

 といっても文字通りの意味しかないだろうけど。

 

「99番目のケースってことか」

 

 ということはコレの前に98個のケースがあったはずだ。

 近くにあったもう一つのケースを開けようとするが開かない。それは他にもあったケースも同様だった。

 

 仕方ないので他のケースを開けるのを諦めて、自分の開けたケースを閉じる。そしてケースを運ぼうとするとあることに気がついた。

 

 自分の持っているケースが軽いのだ。先ほど入っていた銃やノートパソコンの重量を考えても明らかに軽い。

 

「どうしてだ? さっきまでは確かに重かったはずなのに」

 

 他のケースを確かめてみるが、最初、ケースを開けたときと同じように重かった。もう一度ケースを開き、中にあったノートパソコンや銃に触れてみる。すると、ノートパソコンはともかく、銃のほうは先ほど持ったときと比べてもかなり軽かった。

 

「あれか持ち主を選びますってか」

 

 ファンタジーなこの状況に軽口をたたくが、この状況に内心ビビッていた。

 

 モニターの前に移動すると、インストール的なものが終わっていたようで、画面に次へボタンが表示される。

 

「オイッ」

 

 今まで読める字ではなかったのが、いきなり読める字に変わっていることに思わず突っ込むが当然ながら誰の反応もない。

 

 次へボタンを押すと、画面に文字が表示される。そこにはこう書かれていた。

 

 転送先リリカルなのは 場所海鳴市 転送まで残り5秒

 

「は?」

 

 画面の文字が瞬時に理解できず、思わず、間抜けな声をあげてしまう。しかし、刻一刻とカウントは進み、俺の身体に光がまとわりつく。

 

 そして、俺はケースを抱えると光に包まれた。

 

 

 

 

「えっ?」

 

 少女の目の前に謎の光が現れる。光が止むとそこには一人の少年が倒れていた。

 

「男、の子、だよね……」

 

 少女は恐る恐る少年に近づく。少年の近くにはトランクケースも落ちていたが、少女はそちらを気にすることはない。

 少女は少年の近くで地面に膝をつけるが、少年は全く起きる気配がなかった。

 

「誰か、呼んでこないと」

 

 少女は人を呼ぶために携帯を取り出すと連絡を取る。

 

 こうして少年と少女は出会うこととなった。


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