転生生活で大事なこと…なんだそれは?   作:綺羅 夢居

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ブログにて最新話66話目を更新しました。

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33話目 今後

「それで和也はどうするつもりなんだ?」

 

 俺は今、和也と話しをしていた。話の内容はA’sをどうするかというものだ。ノーパソのモニターに和也が映り込んでいる。

 

『こっちはまだリンディさん達には言ってない。デリケートな問題だからな。俺個人としては早期解決が一番良いんだけど…』

 

「まぁ、管理局員としては当然だよな」

 

 和也はA’sをできるだけ早く片付けたいらしい。まぁ、少なくとも方法はどうにかする方法がわかっているため、できないことはない。和也がリンディさんに言ってないのは彼女の夫の敵が関わってくるからだろう。

 闇の書、正式名称は夜天の書であるが、リンディの夫、クロノの父親は過去の闇の書事件で亡くなっている。彼女たちが私情を持ち込むとは思えないが、それでも簡単に話せる内容でもなかった。

 

『早期解決をしたいとはいえ、色々問題もあるからな』

 

「リインフォース、それとグレアムか」

 

 この事件に関して言えばかなり色々な問題が絡み合っている。まず第一にリインフォースのことだ。夜天の書の管制人格である彼女は今代の夜天の書の主である八神はやてによって名付けられ、闇の書の闇の部分を切り離し、その昨日を停止させることに成功した。しかし、プログラムの破損の修正が不可能であり、そのままでは闇の書として復活してしまうため、自ら消滅する道を選んだ。

 

『リインフォースに関しては色々思いつく。助けることもおそらく不可能じゃない』

 

「そうだね。助けることは不可能じゃない」

 

 リインフォースを助ける方法、少なくとも俺たちにはその方法が存在する。ノーパソの存在だ。現在は不可能であるが彼女が復活した後であれば、消滅するまでの間にプログラムを書き換えることも不可能ではない。最悪、守護騎士プログラムと管制人格のプログラムを移せばいいのでどうにかなる。そのためのデータは既に揃っていた。

 

『後はグレアム提督か…ホント、面倒だな』

 

「あったことがあるのか?」

 

『昔、何度かな』

 

 和也の声には本当に面倒だという感情が混ざっている。和也がグレアム提督に会ったことは別に不思議なことでも何でもない。リンディさんに保護されていて、クロノとも交友があるのだ、別におかしなことではない。

 

『闇の書に対して思うところがあるのは理解できるが、こればっかしは邪魔にしか思えないな』

 

 和也は溜息を吐きながら言葉を漏らす。ギル・グレアム、地球の出身であり、過去の闇の書事件で自分の部下であるクライド・ハラオウンごと闇の書を破壊した。原作においては独自調査によって身寄りのない八神はやての生活の援助を行いながら、彼女を永久凍結させようとしていた人物だ。

 

「猫姉妹が妨害に入ってきたら邪魔どころじゃすまないんだが」

 

 グレアムの使い魔であるリーゼロッテ、リーゼアリア。クロノの師である彼女達であるが原作では仮面を被って、なのは達を妨害している。その強さは現在間違いなくトップクラスであり、正直、俺は勝てるかどうかわからない。グレアムは八神はやてを永久凍結させることに少し罪悪感を感じていたが、彼女達はグレアムとは違い躊躇いがないほど闇の書を憎んでいる。

 

「というかヴォルケンをどうにかできるのか?」

 

『言うなよ。問題が山積み過ぎて、頭が痛くなる』

 

 俺の言葉に和也は頭を抱える。一番手っ取り早いのはヴォルケンもグレアムも説得してしまうことだ。ただ、説得に応じてもらえるとは思えない。ヴォルケン達はそもそも俺達の話しを聞かないだろうし、グレアム達は闇の書に対する憎しみがある。

 

「そういえばデュランダルも作られてるのか?」

 

『ああ、闇の書を封印するための切り札として結構な予算を組んで作ってるらしい』

 

 和也はそう言ってデータを見せてくれる。そこには氷結の杖、デュランダルのスペックとそれにかかった費用などが書かれていた。

 

「予算のわりにって感じだよな」

 

『拓斗もそう思うか?』

 

 見せてもらったデュランダルの性能であるが、確かに高性能であるがインテリジェントデバイス数本分の制作費を掛けるだけのものには思えない。最大出力や組み込んであるシステムのお陰で普通のインテリジェントデバイスよりは遥かに高性能に見えるが、闇の書封印ということを考えるとかなり微妙な出来だ。

 

『そもそも凍結封印自体それほど意味のあるものじゃないんだけど』

 

「言ってやるなよ」

 

 和也の言葉に俺は突っ込むが正直同感である。破壊ではなく封印。闇の書自体が残ってしまう以上、封印を解く人間が現れるかもしれないし、被害者達が封印程度で満足できるかも疑問だ。自分達で破壊しようと行動する可能性も否定できない。

 

『あと付け加えるなら、報告義務違反か』

 

 管理局員として一番問題なのはこれであろう。闇の書というかなり危険なロストロギアの報告義務違反。これはいかなる事情があっても管理局員として許されることではなかった。

 

「まぁ、その辺はそっちのことだから任せるよ」

 

『そういう拓斗はどうするつもりだ?』

 

 和也に丸投げしようとするが、和也は俺の意見を聞いてくる。

 

「俺としては後の展開に差支えがない程度の介入かな?」

 

 正直、俺個人としてはその後にあるマテリアル事件などに差支えがなければどうでもいい。確かに原作を知っている人間としてはリインフォースのことを助けたいと思うが、ことはそれほど単純なものではなかったりする。

 まず、俺個人の問題としてGODが起きないこと、それが一番問題だったりする。現在、情報を集めている上で一番重要なのは未来がどうなっているかである。GODでは未来からヴィヴィオとアインハルトの二人が来るので彼女たちに接触すれば、少しでも未来のことがわかるかもしれない。

 そしてもう一つ、それは闇の書自体のことだ。過去に闇の書によって被害を受けた人やその身内はまだ存在している。これは勝手な推測であるが、原作ではリインフォースが消滅したため、被害者達の悪感情はある程度そこに流れることになったはずだ。ただ、リインフォースが残ってしまうとその悪感情がそのまま彼女達に向かわないとも限らない。

 それを和也に話してみたところ、

 

『う〜ん、マテリアル事件に関してはそもそも起こるかどうかわからないけど、リインフォースの生存はあまり関係ないと思うな。アレは闇の書の奥深くにあるものだから、多分影響はほとんどないはずだ。

 被害者に関してはどうしても悪感情は残るだろうな。こればかりはどうすることも出来ない。まぁ、そんなことはとりあえず助けてから考えろよ』

 

「そりゃそうだ」

 

 和也の言葉に俺は笑う。そうまだ何も始まってはいない。後のことはそのときに考えればいいのだ。そう考えると気が楽になる。

 

『とりあえずヴォルケン達の説得をしておきたいな』

 

「まぁ、やりやすくなるしな」

 

『それだけじゃない、魔力蒐集だけなら怪我人も出ないんだぞ』

 

 和也の言うとおり魔力収集だけなら怪我人が出ることはない。もしヴォルケン達が襲ってきた場合怪我人も出るし、他の次元世界の魔法生物の場合、生態系に影響が出たりする。怪我人が出ないことは素直に喜ばしいことであるし、人手不足の管理局にとっては武装隊員の怪我による離脱は痛いし、その保障でお金がかかってしまうのも問題だ。怪我をした本人だって、任務失敗ということで経歴に傷がつく。

 そう考えるとヴォルケン達を何とか説得して、魔力蒐集のために人を集め、この世界に被害を出さないために無人世界に行って、闇の書を完成、暴走体をぶちのめした後、リインフォースの修復というプランが一番良いだろう。

 

『というわけで拓斗、八神はやてに会いに行け』

 

 今後のプランについて話しをしていると、和也が唐突にそんなことを言ってくる。

 

「無茶苦茶唐突だな」

 

『仕方ないだろ、そっちにいて今後の展開を知ってるのはお前だけなんだ。それに一番自由に動けるのもお前だろ?』

 

 和也の言うとおりであるが、それを他人から指示されてやるのは少し面倒に感じる。

 

「猫姉妹の監視とかどうするんだ? 後ヴォルケンとか?」

 

 問題はここであった。魔導師である俺が八神はやてに接触すれば間違いなく気づかれる。正直、襲い掛かってこられたらどうすることも出来ない。

 

『そこはほら、お前に任せる。とりあえずは交友関係を結ぶか、最低でも闇の書を見てきたら、こっちも言い分が立つ』

 

 管理局の人間としては理由が欲しいのだろう。だからといって俺を使うなよと思わないでもないが、事情を知った上で動けるのが俺だけであるため、これは仕方ない。

 

『こっちはこっちで色々と動いてみる。と言ってもそれほどすることはないけどな』

 

「最悪だな」

 

『まぁ、俺のポケットマネーから報酬は支払うよ』

 

 和也が苦笑いを浮かべながらそう言ってくる。和也としてもタダで働かせるのは申し訳ないと思っているらしい。

 

「報酬といえば、ジュエルシードの報酬、こっちに届いたよ」

 

『あれか、結構苦労したんだぜ。現場にいた人間として書類も作らなきゃならなかったし、リンディさんなんか各方面に手を回して、かなり苦労したとか言ってたし』

 

「あくまで正当な報酬ですってね」

 

 俺は忍が言っていたことをそのまま和也に言う。

 

『今度のはあまり無理な要求はしないでくれよ。支払うのは俺のポケットマネーからなんだから』

 

「とりあえず仕事の内容次第ってことで」

 

 報酬はありがたくいただくが、あまり無理なものを要求するつもりはない。

 

『っと、すまないお客さんだ』

 

「じゃあ、また今度」

 

『いや、ちょっと待ってくれ』

 

 和也に客が来たようなので通話を切ろうとするが和也に止められる。するとノーパソのモニターにもう一つウィンドウが開き、そこに金色の髪の女の子とオレンジ色の髪の女性が映し出される。

 

「フェイトとアルフ?」

 

『うん、久しぶり』

 

『久しぶりだね、タクト』

 

「ああ、久しぶり二人とも」

 

 二人の名前を呟くと、二人から挨拶されたのでそれに返す。

 

「ビデオメールはしているけど、こうやって話すことあの時以来だな」

 

『うん、そうだね』

 

 フェイトとはビデオメールでよくやり取りをしている。というのも公判中であるため、普通に連絡を取り合うのが難しいためだ。

 

「というかこれって大丈夫なのか?」

 

『大丈夫、大丈夫、プライベート端末なのはお前も知ってるだろ?』

 

 和也が軽く言ってくるのに少し頭を抱える。まぁ確かにコレに関しては管理局内で記録に残るわけではないため大丈夫なのだが、管理局員がこんなに軽く不正をしてもいいんだろうか?

 

「そういえば嘱託試験合格したんだって? おめでとう」

 

『うん、ありがとう。クロノには負けちゃったけど、なんとか合格できたよ』

 

 フェイトが嬉しそうな表情を浮かべる。

 

「そっか、じゃあ近いうちにこっちに来れるな」

 

『うん、まだ詳しい日程は決まってないけど、皆に会えるのは嬉しいな』

 

 フェイトは本当に嬉しそうな表情を浮かべる。昔の無表情で感情を見せなかったときとは違う、本当に素直な笑顔を見せる。

 

『? どうしたの?』

 

 フェイトが首を傾げながら聞いてくる。どうやら俺がフェイトの顔をジッと見ていたのが気になったらしい。

 

「いや、よく笑うようになったなって」

 

『うん、色々なことがあったけど。皆、いい人だし、良くしてもらってるから』

 

 フェイトのいる環境は悪いものではないようだ。まぁ、その辺りは安心しているが、問題は彼女の母親のことであった。

 プレシア・テスタロッサは現在、管理局の特別病院で入院しているらしい。アースラがミッドに戻った後、目を覚ました彼女は暴れようとしたもののその体調からか、そのまま倒れ入院した。診断結果によるとプレシアの病はもう手遅れなほど進行しており、現在は集中治療室で治療を受けているが、それほど長くは持たないらしい。取り調べは一応行われたが、彼女が拒否したため、時の庭園に残っていたデータやフェイトの証言、リニスの日記などから調書が作られ、彼女の公判が行われている。

 フェイトもそれを知っており、プレシアに会いに行くことはあるようだが、プレシアの病室に入ってもやはり拒絶されるようだ。それでも母さんだからと彼女が寂しそうに笑っていたのは記憶に新しい。

 もちろん、プレシアのことはなのは達も知っているが、ビデオメールではフェイトはなのは達に弱い所を見せたりしない。

 

「そう、良かった。じゃあ、フェイトがこっちに来るのを楽しみに待ってるよ、皆でいろんなところを案内してあげるから楽しみにしてくれ」

 

『うん、またビデオメール送るから、なのは達にもよろしくって』

 

「ああ、伝えておくよ」

 

 そう言ってお互いに通話を切ると、俺はテーブルの上においてあるコーヒーを飲む。

 

「なのはが喜びそうだな」

 

 フェイトの報告に物凄く嬉しそうな表所を浮かべるなのはの顔を思い浮かべながら、今後について考える。

 

「まぁ、とりあえずは頑張りますかね」

 

 とりあえずは八神はやてと仲良くなるためのプランを考えるのであった。

 

 

 

閑話

 

「そういえばフェイト、俺に何のようだったんだ?」

 

 フェイトと拓斗の通話が終わった後、俺はフェイトに質問する。まぁ、フェイトが俺の部屋を尋ねる理由なんてそれほどないわけだが…。

 

「うん、この時間なら拓斗とお話してるかなって、ついでに和也と模擬戦したくて」

 

 フェイトは拓斗と会話するのがひそかな楽しみであるらしい。そうなったのはいつごろからだろうか? 始めは自分の母親を攻撃したり、なのはと仲の良い拓斗に少し嫉妬していたようだが、ミッドについてプレシアが入院したあたりから変わっていった。

 プレシアの病状を聞いた後、公判が進み、拓斗の行動によってプレシアが助かっていることを自覚したからだろう。

 要するにアレだ、不良とかが良いことをしていると良い人に見えたりするアレのような効果があったらしい。そして、たまたま俺と拓斗が通話している最中にフェイトが入ってきて、そこからは一直線だ。まだ恋愛感情というには幼すぎるものであるが、フェイトにとって拓斗の位置づけはなのはと同じくかなり高い位置にあるらしい。

 そういう俺は彼女のお兄さん的なポジションに収まっており、クロノと共にフェイトに様々なことを教えたりしている。

 それはさておき

 

 ——クロノはエイミィと良い仲ですし、フェイトは拓斗ですか…

 

「はぁ」

 

「どうしたの和也?」

 

 思わず溜息をついてしまった俺にフェイトが首を傾げながら聞いてくる。

 

「何でもないよ」

 

 とりあえずフェイトに心配を掛けないように返しておくが、心の中は正常ではなかった。

 

 ——月村家に居候してて、なのは達と仲が良くて、その上フェイトもですか、どれだけ恵まれてんだよアイツはっ

 

 思わず心の中で拓斗を罵ってしまう。正直、俺も若くして執務官になった身なのでモテないわけではない。いや、むしろかなりモテる。しかし、やはり原作キャラの女の子に好かれるのは特別な意味を持つ。

 だから少し八つ当たりもこめて、八神はやてと仲良くなれという無茶ぶり任務を出した。ヴォルケン達に攻撃される危険性もあるし、猫姉妹に襲われる可能性もあるのでそこそこ危険なものだ。しかし、俺はここであることに気がついた。

 

 ——これってアイツのフラグ立てるの手伝っただけじゃね?

 

 でも、まぁ良く考えてみれば、PT事件のときに大して関わってなかったフェイトにフラグが立つぐらいだ。いずれ、どこかで立つだろう。

 

 ——まぁ、俺は俺で幸せですけどね

 

 デバイスに届いたメールを確認する。そして、その中の一通を確認するとメールを開き内容を見る。

 

「フェイト、悪いけど模擬戦はまた今度な」

 

「うん、わかった」

 

 フェイトにそう言うと俺はノーパソを閉じ、机の上にあった書類を片付ける。今日の分の仕事は既に終わった。

 

 ——さてと、デートに行きましょうかね

 

 相手はこの前、ラブレターをくれた一つ年下の執務官志望の女の子だ。


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