「むっ!? なんだ貴様はッ!?」
突然現れた青い服のおねーさんにロード・ディアーチェと呼ばれた私に良く似た子は問いかける。いきなり、現れたおねーさんを良く見てみると
「ピンクのおねーさんと同じ武器や……」
その手にはさっき私と戦ったおねーさんと同じ武器を持っとった。多分二人は何らかの関係があるんやろう。
「黒羽のお嬢さんと銀髪の方、ピンクで不肖の妹がご迷惑をおかけしました」
そう言って青のおねーさんは私に謝ってくる。なるほど、どうやら二人は姉妹らしい。それにしては正確が違いすぎるし、なんかやっとる事は正反対っぽいけど……。
――あかんな、情報があらへん……。
突然現れた闇統べる王――ロード・ディアーチェのこと、あの子が私と似ている理由、そしてこのおねーさん達の目的、そのどれも情報がない。
「この場は私がなんとかしますので、皆さんは下がってください!」
「ちょ、アミタ! 手を出さないでってば! だいたいあなた、ウィルスはッ!?」
青いおねーさんはそう言って私らを下がらせようとするのにピンクのおねーさんが抵抗する。この姉妹、どうやら目的が違うっぽい。
「あんなものは気合で!!」
「えええっ!?」
青いおねーさんの言葉にピンクのおねーさんは驚く。まぁ、確かに気合でウィルスをどーにかしたゆーたら驚くのも無理ないけど……。
「この胸に情熱のエンジンが熱く燃える限りッ! ウィルスごとき気合でなんとかしてみせます!!」
「そりゃ、馬鹿はカゼをひかないとは言うけどッ!?」
おねーさん達は目の前でコントを繰り広げている。そんな二人の話に割って入るわけにもいかず、二人の話を聞きながら情報を集めていく。
「さぁ参りますよ! エルトリアのギアーズ、アミティエ・フローリアン! この世界の運命は、私が護りますッ!」
「なんだか知らんが、かかって来いッ!!」
青のおねーさんの宣言によって、おねーさんとロード・ディアーチェの戦いが始まる。その間に私はおねーさん達の言っている事を整理する。
青のおねーさんの名前はアミティエ・フローリアン。これは自分で名乗っとったから間違いあらへん。エルトリアとギアーズは多分おねーさんが所属する団体とか組織の名前なんやろう。このおねーさん…アミタさんはこの世界の運命を護るとかゆーてたから、その言葉を信じるなら、なんか危ないことが今起ころうとしてる筈や…。
ピンクのおねーさんは名前はわからんけどシステムU―Dというものを欲しがってた。私のところに来たということは多分、闇の書に関係のあるものやったんやろう。
そして闇統べる王ロード・ディアーチェ。私と良く似た容姿を持つこの子は突然現れた。ピンクのおねーさんはこの子が目的みたいな反応しとったからシステムU-Dに関係あるみたいやな。名前からしてこの子は闇の書と関係あったとしてもおかしなことやない。
「バ、バカなぁーーーっ! なんなのだ貴様は? どういう事だッ?」
「ぜぇ、はぁ……ぜぇ………ね、ねっけつ……びくとりぃ……」
情報を整理している間に二人の戦いは終わったようだ。激昂しているロード・ディアーチェに対してアミタさんは息を切らしながらも頑張って余裕を見せようとしている。
「って、ウィルスの効果、思いっきり出てるじゃない! ギリギリじゃない!」
アミタさんの様子にピンクのおねーさんが突っ込む。どうやらウィルスは気合じゃどーにもならんかったみたいや。……当たり前やけど。
「まぁ、先に無力化してもろーて、お話聞かせて貰おうか?」
「そうですね、我が主」
状況はよくわからへんけど情報を得るためにお話しを聞かせてもらいたい。さっきの戦いやピンクのおねーさんとの戦いでこの場にいる人達の戦闘能力はかなり高い事はわかったから、こっちも万全な状態やないと抵抗されたらこっちがヤバイ。
「いや、待って待って、倒されると困るの!」
「おとなしくしなさい、キリエ!」
ロード・ディアーチェを無力化しようとする私たちをピンクのおねーさんが止め、そのピンクのおねーさんの行動をアミタさんが武器を向けて牽制する。いや、私達は倒そうとしているわけやないんやけど…。
「いくよ、リインフォース! ユニゾン……ッ」
「なにィ!? ま、待てッ貴様ら! こんな苦境の我を相手にまさか攻撃を仕掛けるつもりかッ!?」
私がリインフォースとユニゾンしようとするとロード・ディアーチェは必死で抵抗…というか説得をしてくる。
「まぁ、抵抗せーへんのやったら何もせんけど」
「抵抗するのであれば無力化させてもらう」
私とリインフォースが彼女に対して抵抗の意思の確認をする。抵抗する意思があるのであれば攻撃もやむなしという事になる。
「待てぇーーーいっ!」
「きゃあああっ」
とりあえずリインフォースをユニゾンしようとしたその時、私たちの間に割って入る声と共に私たちは攻撃される。不意打ちに近いそれをなんとか防御してもう一度ロード・ディアーチェを見るとそこにはさらに二人が追加されていた。そして、その追加された二人の顔に私は驚く。
「フェイトちゃん? なのはちゃん?」
現れた二人はフェイトちゃんとなのはちゃんに良く似ていた。フェイトちゃんに似ている方はフェイトちゃんとは違い蒼色っぽい髪の毛で表情が豊かに見える。なのはちゃんに似ている方は髪の色もなのはちゃんにそっくりやけど、バリアジャケットが本人とは違って黒い。
「あーーはっはっはッ!」
「ロード・ディアーチェ。この姿でお目にかかるのは、お初になります」
笑い声を上げているフェイトちゃんのそっくりさんとは違い、なのはちゃんのそっくりさんは冷静にロード・ディアーチェに挨拶する。なんというかロード・ディアーチェも込みで私達とは性格が違いすぎる。
「貴様…!! 『理(シュテル)』と『力(レヴィ)』か!」
ロード・ディアーチェが二人の名前を呼ぶ。
「構築体(マテリアル)が三基揃うのは初めてだな」
ロード・ディアーチェがそう言ってこちらを向く。そう重要なのは新たに二人も増えたということ。流石にこの数やと私とリインフォースだけでは厳しい。
ヒュン、ザシュッ
「「あっ!?」」
どうやってこの状況を乗り切るか考えているその時だった。突如ピンクのおねーさんが拘束移動してきてリインフォースを斬りつける。とっさにそれに反応するがリインフォースに攻撃が当たってしまった。
「キリエ、あなた…」
「リインフォース、大丈夫?」
「はい…我が主……」
アミタさんはいきなり斬りかかってきたピンクのおねーさん…キリエさんを睨みつける。私はリインフォースを心配するが、リインフォースは無事だと答えてくれる。
「ごめんなさいねー。ちょっと斬らせてもらっちゃった」
「ちょっとって」
全く反省すらしてないキリエさんに私は苛立ちを覚える。しかし、キリエさんはそんな私などお構い無しにロード・ディアーチェに話しかける。
「あのね、王様? ちょっとだけ私のお話聞いてみない?」
「聞かぬ。失せよ。下郎と話す口は持たぬのだ」
お話しを使用とするキリエさんをばっさりと切り捨てるロード・ディアーチェ。もし、アミタさんを見方にしてもこの状況だと4対3。しかもアミタさんはウィルスによって本調子じゃないみたいだし、私だってキリエさんとの戦闘ダメージがある。状況は圧倒的にこちらが不利なので動こうにも動けない。
警戒している間にもキリエさんと構築体(マテリアル)達の話は進んでいく。どうやらシステムU-Dとやらが今回の事件に大きく関係しているらしいということは確認できた。
「場所を移しましょう」
「アミタもばいばーい」
なのはちゃん似の子がそう言うとキリエさんとマテリアル達はこの場から離れていく。それを追って、アミタさんも追いかけていった。
「どうしますか? 我が主?」
「う~ん、まずは皆に連絡やろうな、それから合流も…」
私はリインフォースにそう言うと皆に連絡を繋げた。
「これもハズレか…」
俺は目の前に現れたシグナムを見て、思わず愚痴る。それと同時にシグナムを魔力弾で撃ち抜いた。
あっさりと打ち抜かれたシグナムは光となり消えていく。このシグナムは本物ではなく偽者であった。
先ほどアミタと戦ってから俺はずっとヴィヴィオとアインハルトを探していた。しかし、探索魔法に掛かるのは闇の書の欠片によって生み出されるなのは達や守護騎士達の偽者ばかりだった。
蒐集したときの得たデータによって作られたなのは達の偽者、もちろん本物よりもかなり劣っているため倒すのは難しくないのだが、見た目は本人達にそっくりのため攻撃するのにも躊躇いが生じる。
とはいえ、本人達なら防げる程度まで加減はしているので偽者と本物の区別はそれほど難しくはない。まぁ、本物には遭遇していないわけだが…。
「さっきの反応、アミタとはやてのところだったから、多分マテリアル達だと思うけど」
俺は先ほどあった大きな反応を思い出す。始めはヴィヴィオ達かと思い移動しようと思ったが、はやての魔力と先ほど会ったアミタの魔力であったため、マテリアル達とキリエだろうとあたりをつけ、結局向かわなかった。
「なのは達と合流した方が早いか?」
ゲームだとなのはがアインハルトに、ユーノがヴィヴィオに接触していた筈だ。とはいえ、一番初めにアミタに接触したのが俺なわけだからもう原作知識が当てになるような状況ではない。
――マジでどうするかな…
確かヴィヴィオ達は未来の情報を開示しようとはしなかった筈だがこれはどうにかできる。相手はまだ子どもだし、欲しいのは俺が未来もいるかという情報だけなので、もしかしたら向こうの反応だけでわかるかもしれない。
とはいえ、接触しないと意味がないのでできれば早く二人には会いたいのだが、今はこうやって反応があるところを一つ一つ捜索していくしかない。
「皆に二人の容姿の情報を渡して探してもらうってのもな~」
二人の容姿を皆に渡して探してもらうか、会ったら足止めをお願いしてすぐに現場に急行するという手もないわけではないのだが、後で追及されると困るのはこちらだ。
「やっぱり自力で探すしかないか……」
俺は溜息を吐きながらももう一度二人の捜索を始める。するとその時だった。
「反応アリっと、でもこれは……」
新たに反応があったので目の前にウィンドウを表示するが、先ほどまでと少し反応が違う。欠片たちであったなら魔力反応の方が強いが今回のは違った。どちらかというとアミタが現れたときの反応に近い。
「今度こそ、アタリかな?」
俺は今回の反応こそがヴィヴィオ達である事を願いながら反応があった場所へと急いだ。
目を開くと木々に囲まれた場所にいた。
「ふぇ、ここ、どこ?」
私はいきなり知らない場所に自分がいたことに戸惑う。さっきからわからないことだらけだ。目を覚ましたら知らない部屋にいて、誰かいないか捜し歩いて、やっと人のいそうな部屋を見つけても誰もいなくて、そしたらいきなり光に包まれて今度もまた知らない場所に一人きり。
周りを見てみると木々の間に歩道やベンチなどが見える。私はこの状況に戸惑いながらも誰かいないか探し始める。歩き始めようとしたとき、自分の近くにトランクケースが落ちている事に気づいた。
「これ…あそこにあった……」
このトランクケースはさっきまで自分がいた部屋にあったものと同じだ。近寄って持ち上げてみるとそれほど重さを感じない。こういうのはケースだけでもそこそこの重さがあるはずなのにそれすらあまり感じなかった。
重さを感じないケースを不思議に思いつつも持ち上げ歩き始める。上へ行く道と下へ行く道があったが、ここが山であることを考えると下へ行ったほうが人のいる可能性は高いと思う。
「あ、光?」
一人ぼっちで誰もいないことを寂しく思いつつ歩いて開けた場所に出る。そこからは下の景色が見えていて、明らかに人工的な光が私の目に映った。
その光に人がいることを確信して安心するもお腹がなる。そういえば何も食べてない。
一旦空腹に気がつくと、物凄く身体が疲れている事に気づいた。さっきからずっと歩きっぱなしだ。おまけに重さをあまり感じないとはいえトランクケースも持っている。
「うっ、ぐすっ」
空腹と疲労、そして歩きつづけた事による足の痛みに思わず涙が出てくる。誰もいない寂しさもそれに拍車をかけ、ぼろぼろと大粒の涙が零れた。
「確かこの辺りなんだけど…」
「っ!?」
私が泣いていると人の声が聞こえてくる。久しぶりに聞く人の声に私は一生懸命、その人を探す。そして、その人は現れた。
「はいっ!?」
その人は私のことを見た瞬間、驚いたように声を上げるが関係ない。現れた人は私より少し年上に見える男の子だった。
「良かった、ようやく会えた」
人に会えたことが嬉しくて私はその人に抱き着いてまた泣いてしまう。その人は私の行動に戸惑いながらも私の頭をなでて慰めてくれた。
――あったかい……
久しぶりに感じる人の体温に私は安心しているとその人が私に声を掛けてくる。
「君の名前、教えてくれるかな?」
「私の名前は…」
ようやく人に会えた安心感に今までの疲労が身体を襲い、意識を失いそうになるがその前に私は彼に自分の名前を伝える事ができた。
アリシア・テスタロッサ……と。