ワーウルフになったら毎日が大変! 略して「ワー大変!」 作:べあうるふ
さて、トモキの自由研究を阻止する作戦なんて全然思いつかないまま、いつも通り学校に着いたわけ……なんだけどヤバいことに、1時間目は急遽、今回の自由研究のテーマ発表に変更されたんだ!
聞いてねーよ! いきなり授業変更するなよ!!
「えっと……僕は狩野タケルくんと2人で、謎の生物の調査をしようと思います」
トモキのその発表に、クラスの連中がどよめいた。
「え、久世……そりゃちょっと危険じゃないのか?」
案の定、担任の司馬からの物言い。当たり前だよな、大人じゃない俺たちが野生動物観察するようなもの、しかも相手は……うん、危険なオオカミなんだし。
「安全対策も怠りませんし、万が一野犬が出現した場合は十分に距離をとって調べます。それに狩野君は運動神経いいですし」
いや運動神経だけじゃどーにもならねーだろうが。
「狩野、お前はどうなんだ?」
「え、あの……いざとなったら抱えてダッシュで逃げます」
教室は一気に大爆笑に包まれた。もうそれ以外話すことなんてなかったから。
放課後、俺とトモキは職員室に呼ばれていろいろ話すこととなった。
度を過ぎた好奇心は大ケガにもつながるぞって。
それでもトモキの意志は固かった。だからこそ親友の俺もそれに応えなければな……って。
「危険だと思ったらすぐに警察でもなんでも助けを呼ぶんだぞ」
つまり先生も折れてくれたってわけで。自己責任ということで誓約書まで書かされちゃったけど。
「2人で平気かな?」
ちょっと俺の方が弱気になっちゃった感じがする。
「タケルと2人ならね、信じてる」
ああああ、余計に過信されてるし、
さてさて、トモキはPCで学校周辺のマップを開き、俺にペンで野犬……すなわち俺の目撃スポットを書いて教えてくれた。
けど全部俺が深夜にうろついてたトコであって、真新しさなんか全然……って、あれ?
一箇所だけど、全然別の場所で目撃情報があったんだ。
しかもデータを見てみると「白い大型犬」とある。俺の毛の色とは違うよなこいつ?
つまり、別のワーウルフがいるとか!?
トモキは土曜日の夜に捜索をするとのこと。発見された時間を調べるとやっぱり俺たち子供が寝る頃だし、その時間に近所の公園で待ち合わせということに決定した。
ああああああヤバいヤバいヤバい! 週末の夜は高確率で俺もワーウルフ化しちゃうんだ!
どうしよう……お腹ゴロゴロいってきた。
うん……そうだ、今日の夕飯。こんな事態に直面しても俺はやらなきゃいけないんだ。
今日のチラシを見つつ、俺はスーパーへと早足で向かった。この前みたいに直前でひき肉売り切れなんてことがないようにね。
ここんとこ肉ばかりだったから魚にしたいけど、いかんせん高いしな……やっぱり懐具合を考えると、出来合いの焼き鳥パックでも買って、焼き鳥丼とかいいかな、なんて。
ーおいー
焼き鳥を買った直後だった。耳……いや、頭の中で声が響いたんだ。もちろんそんなの生まれて初めて。
ートロいやつだな。お前の右斜め前だー
言われたとおりに右を。
犬だ。おばあさんをリードして歩いているかのような、真っ白もふもふの毛並みで、目と鼻だけが黒い。パッと見るとサモエドだっけか、それに似てる。
ー俺の家はすぐソコだ、ババアに気づかれないように来いー
真っ白な犬は、また視線を正面に移すとそのままちゃっちゃと爪の音を響かせて歩いてった。
えっと、つまり尾行してこいってこと……?
まあ仕方ないか、それに俺もあの犬のことが気になるしね。
⭐︎⭐︎⭐︎
そこは小さな一軒家。周りの家々と比べても明らかに年数過ぎている。
表札には池田と書いてある。もちろん知らない人の家だ。
「バッカじゃねーのかお前?」
突然背後から例の声がしてビビった。振り向くとそこには鎖に繋がれたあいつがいたんだ。けどバカっていきなりなんだよ!
「お前も狼だろ?なんで鼻を効かさねえんだ?」
真っ白な犬は俺の買い物エコバッグに鼻を突っ込むと、買ってきたばかりの焼き鳥数本加えて突然バクバク食いやがった。
「この前お前を助けてやった分な。これでも足りねーくらいだけど」
「えっ……?」その言葉に焼き鳥のことで怒ることもつい忘れちゃった。
「もしかして、この前のコンビニ強盗の……?」
「そう、あの時警察の注意を逸らしたのがオレ様ってわけよ」
そうだったんだ! まさかこんな近所に住んでたなんて。
けど……いまオオカミって言わなかった?
「そうだ。俺だって狼だ。ワケあって今はこの家で飼われてるけどな」
顔に迫ってよく見ると、確かにそんな感じするかも。鼻先とか目つきとか犬科よりシャープだもんな。
それだけじゃない、さっきは遠くから見てたから分からなかったけど、左目のところに縦に大きく傷が入ってて、目の色が薄くなってる。
「ああ、こっちの目はほとんど見えねえんだ」
なんか気に触ることだったのかな。ぷいっと背中向けちゃった。
「お前はどこの群れから来たんだ?」
「え、ムレ?」なんだそれ、初めて聞く言葉。
「決まってンだろ? あの姿になれる奴は群れから弾かれるのが運命だ。教えろ……向こうの山の紅組か? それとも欠け耳の……」
もしかしてムレって、群れのことか!?
「俺はずっと人間だよ、オオカミの群れなんて見たことも聞いたこともないし」
背中を向けていたあいつが突然、ハア?って疑問まみれの目で俺に近づいてきた。
そして……
ふんふんふんふんすんすんすんすんふん!
俺の身体中の匂いを嗅ぎまくったんだ。そう、犬が初対面でよくやるあの行為。もうスンスンされまくり、鼻濡れてるから余計気持ち悪いし。おまけに俺の足元嗅いで突然イヤな顔したし、普通そこまで嗅ぐか?
「なんでだ……こんなことってあんのかよ?」そんな独り言で、あいつは自分を落ち着かせるためなのかな、頭をブンブン振っていた。つーかなんなんだよ今度は!
「オレ様と同じ匂いがしねえ……だと?」さて、トモキの自由研究を阻止する作戦なんて全然思いつかないまま、いつも通り学校に着いたわけ……なんだけどヤバいことに、1時間目は急遽、今回の自由研究のテーマ発表に変更されたんだ!
聞いてねーよ! いきなり授業変更するなよ!!
「えっと……僕は狩野タケルくんと2人で、謎の生物の調査をしようと思います」
トモキのその発表に、クラスの連中がどよめいた。
「え、久世……そりゃちょっと危険じゃないのか?」
案の定、担任の司馬からの物言い。当たり前だよな、大人じゃない俺たちが野生動物観察するようなもの、しかも相手は……うん、危険なオオカミなんだし。
「安全対策も怠りませんし、万が一野犬が出現した場合は十分に距離をとって調べます。それに狩野君は運動神経いいですし」
いや運動神経だけじゃどーにもならねーだろうが。
「狩野、お前はどうなんだ?」
「え、あの……いざとなったら抱えてダッシュで逃げます」
教室は一気に大爆笑に包まれた。もうそれ以外話すことなんてなかったから。
放課後、俺とトモキは職員室に呼ばれていろいろ話すこととなった。
度を過ぎた好奇心は大ケガにもつながるぞって。
それでもトモキの意志は固かった。だからこそ親友の俺もそれに応えなければな……って。
「危険だと思ったらすぐに警察でもなんでも助けを呼ぶんだぞ」
つまり先生も折れてくれたってわけで。自己責任ということで誓約書まで書かされちゃったけど。
「2人で平気かな?」
ちょっと俺の方が弱気になっちゃった感じがする。
「タケルと2人ならね、信じてる」
ああああ、余計に過信されてるし、
さてさて、トモキはPCで学校周辺のマップを開き、俺にペンで野犬……すなわち俺の目撃スポットを書いて教えてくれた。
けど全部俺が深夜にうろついてたトコであって、真新しさなんか全然……って、あれ?
一箇所だけど、全然別の場所で目撃情報があったんだ。
しかもデータを見てみると「白い大型犬」とある。俺の毛の色とは違うよなこいつ?
つまり、別のワーウルフがいるとか!?
トモキは土曜日の夜に捜索をするとのこと。発見された時間を調べるとやっぱり俺たち子供が寝る頃だし、その時間に近所の公園で待ち合わせということに決定した。
ああああああヤバいヤバいヤバい! 週末の夜は高確率で俺もワーウルフ化しちゃうんだ!
どうしよう……お腹ゴロゴロいってきた。
うん……そうだ、今日の夕飯。こんな事態に直面しても俺はやらなきゃいけないんだ。
今日のチラシを見つつ、俺はスーパーへと早足で向かった。この前みたいに直前でひき肉売り切れなんてことがないようにね。
ここんとこ肉ばかりだったから魚にしたいけど、いかんせん高いしな……やっぱり懐具合を考えると、出来合いの焼き鳥パックでも買って、焼き鳥丼とかいいかな、なんて。
ーおいー
焼き鳥を買った直後だった。耳……いや、頭の中で声が響いたんだ。もちろんそんなの生まれて初めて。
ートロいやつだな。お前の右斜め前だー
言われたとおりに右を。
犬だ。おばあさんをリードして歩いているかのような、真っ白もふもふの毛並みで、目と鼻だけが黒い。パッと見るとサモエドだっけか、それに似てる。
ー俺の家はすぐソコだ、ババアに気づかれないように来いー
真っ白な犬は、また視線を正面に移すとそのままちゃっちゃと爪の音を響かせて歩いてった。
えっと、つまり尾行してこいってこと……?
まあ仕方ないか、それに俺もあの犬のことが気になるしね。
⭐︎⭐︎⭐︎
そこは小さな一軒家。周りの家々と比べても明らかに年数過ぎている。
表札には池田と書いてある。もちろん知らない人の家だ。
「バッカじゃねーのかお前?」
突然背後から例の声がしてビビった。振り向くとそこには鎖に繋がれたあいつがいたんだ。けどバカっていきなりなんだよ!
「お前も狼だろ?なんで鼻を効かさねえんだ?」
真っ白な犬は俺の買い物エコバッグに鼻を突っ込むと、買ってきたばかりの焼き鳥数本加えて突然バクバク食いやがった。
「この前お前を助けてやった分な。これでも足りねーくらいだけど」
「えっ……?」その言葉に焼き鳥のことで怒ることもつい忘れちゃった。
「もしかして、この前のコンビニ強盗の……?」
「そう、あの時警察の注意を逸らしたのがオレ様ってわけよ」
そうだったんだ! まさかこんな近所に住んでたなんて。
けど……いまオオカミって言わなかった?
「そうだ。俺だって狼だ。ワケあって今はこの家で飼われてるけどな」
顔に迫ってよく見ると、確かにそんな感じするかも。鼻先とか目つきとか犬科よりシャープだもんな。
それだけじゃない、さっきは遠くから見てたから分からなかったけど、左目のところに縦に大きく傷が入ってて、目の色が薄くなってる。
「ああ、こっちの目はほとんど見えねえんだ」
なんか気に触ることだったのかな。ぷいっと背中向けちゃった。
「お前はどこの群れから来たんだ?」
「え、ムレ?」なんだそれ、初めて聞く言葉。
「決まってンだろ? あの姿になれる奴は群れから弾かれるのが運命だ。教えろ……向こうの山の紅組か? それとも欠け耳の……」
もしかしてムレって、群れのことか!?
「俺はずっと人間だよ、オオカミの群れなんて見たことも聞いたこともないし」
背中を向けていたあいつが突然、ハア?って疑問まみれの目で俺に近づいてきた。
そして……
ふんふんふんふんすんすんすんすんふん!
俺の身体中の匂いを嗅ぎまくったんだ。そう、犬が初対面でよくやるあの行為。もうスンスンされまくり、鼻濡れてるから余計気持ち悪いし。おまけに俺の足元嗅いで突然イヤな顔したし、普通そこまで嗅ぐか?
「なんでだ……こんなことってあんのかよ?」そんな独り言で、あいつは自分を落ち着かせるためなのかな、頭をブンブン振っていた。つーかなんなんだよ今度は!
「オレ様と同じ匂いがしねえ……だと?」
匂いがしないってどういうこと? 俺はこいつに聞いてみた。
「ちょっとぐらいでも……ほんの少しくらいは故郷の匂いがするはずだ。それなのにお前は人間そのものの匂いしかしねえ」
いやそりゃそうだろうが、俺はずっと人間なんだし。
「あと俺にだって名前はあるぞ、ここのババアがつけてくれたジンってカッコいいのがな」
「俺はタケル。よろしくなジン」
その言葉にまた驚いてた。ほんとに人間みてえな名前だなって。悪かったな。けど人間でもジンって名前いるぞ。
もうちょっと話を聞きたかったんだけど、食われた焼き鳥また買わなきゃならないしでとりあえずまた今度ねってことにした。
家は分かったし、それに……
仲間がいると知って、ちょっと心強かったから。
……くっそ、ジンのやつ、よりによっていちばん高いぼんじりとつくねだけ食べやがったし!
⭐︎⭐︎⭐︎
「大丈夫、スマホで全てできちゃうから」
待ち合わせ場所に、トモキは塾帰りでそのまま来たみたいだ。リュックの中には勉強道具がいっぱい。その中からタブレットPCを取り出して、ペンで何かを書いていた。
「いちばんやりたいのはね、撮影なんだ。もしかしたら野犬じゃなくて未知の生物の可能性もあるから」
UMAだったっけ、ネッシーとか雪男みたいな実際に発見されていない怪物みたいなの。まあ俺もある意味UMAなんだろうな。ワーウルフなんだし。
「それに、絶滅したオオカミの可能性も捨てがたいよね」いやその考察はやめてくれ……
「うん、だから僕らはあくまで観察だけに留めたい。間違っても餌付けとか接触、捕獲なんて考えちゃダメだからね。それは大人の仕事」
さて、トモキの持つGPSに従って俺たちが来た場所は……
学校の裏にある、鬱蒼とした林だった。
え、俺こんな場所来たことなんてないぞ? なんでまたこんな所に?
スマホのライトと月明かりだけが照らし出す、草木の茂った、はっきり言って薄気味悪い所だ。
「最新の目撃情報だと、ここに現れたんだって」
トモキは意気揚々としながら俺たちに解説してくれてるけど、俺……車とか狭い場所がダメなのは前に教えた通りなんだけど、幽霊とかお化けの類も全然ダメなんだ。
え、じゃあなんで真夜中にあんだけはしゃぎ回れたのかって?
そう、つまりはワーウルフになる時って気分も高揚するから、深夜でも全然怖さって感じないんだ。
だから今はとにかくムリ。怖いもの知らずのトモキがうらやましいくらいだ。
数分ばかり進んだかな。トモキが前にある丘を指し示した。
「あそこで遠吠えをする獣を見たって人が何人もいたんだ。絶好のポイントかもね」
いやいやいやいや! 俺こんな場所で吠えてねーから! ビルのてっぺんでやらかしたことはあるけどね、吠えるとすごく気持ちよかったから、もう。
まあとにかく持参してきたレジャーシートを敷き、俺たちは観察体制に入った。
光度を落としたスマホの時刻を確認。今は夜9時だ……ちょっと、眠い。
おまけにここ寒いから、その……トイレも近くなってきたし。
俺はトモキに断って、ちょっと離れた場所で用を済ませることにした。とはいえ怖い、一人で歩いてると余計に。
大丈夫だ、やばくなったら大声を上げれば誰かしらそばにいる……と俺はズボンのチャックを下ろそ……
「おい」
「!!!!!」ビビった、背後から突然声がした! つーかちょっと漏れそうになった!
恐る恐る振り向くと、そこにはジンが。
「首輪のことか? あんなモン簡単に外せる」
いやそれより、なんでここにきたのさ?
「決まってるだろ、お前の姿をいま一度見ておきたかったんだ」
なるほどな、そういやこいつは俺が神社の廃屋へ逃げ込んだところしか見てなかったもんね。
それに……とジンは続けた。
「お前の友達が探してる獣、俺も気になるんだ」
月夜に照らされて、ジンの右目が金色に輝いていた。
「もしも俺たちと同じオオカミだったらな……と思うと」
可能性は限りなく低いにしても、その姿は見ておきたいんだって。
あ、そうそう。
どうやって俺たちの後をつけてきたのかな?
「そりゃあ決まってんだろ、お前のその頼りねえ匂いさ」
気のせいか、ジンがドヤ顔で俺に言ってるように見えた。つーか頼りない匂いっていったいなんなのさ。
「あと……タケル。お前すげえ足が臭くねえか?」
え。匂いってそこまでいうか!?
「お前まだガキだろ? ババアと一緒に散歩してていろんな人間に会ってきたが、お前みたいに足の臭いガキは誰ひとりとして存在しなかった。だからこそ逆に気になるんだ」
「いや気にしなくてもいいから!」
「きちんと風呂してるのか? 着替えてるのか? 正直に話せ!」
「やめてええええ!」
……って、あれ?
パンツのチャックを戻そうとした俺の爪が、鋭く伸びていた。
それだけじゃない、風が木々を抜ける音、虫の音。
全てがくっきりと耳に入ってきた。解像度ってやつ? 研ぎ澄まされてきたってやつ?
それに暗闇でもジンの姿が、俺が通ってきた真っ暗な道もだんだんはっきりと目に見えてきたんだ。
ヤバい……今度は俺の方がヤバくなってきた!
こんな時にワーウルフ化なんてやめてくれよ!