ワーウルフになったら毎日が大変! 略して「ワー大変!」 作:べあうるふ
……サムライのやつ、すっげえうまそうに俺の作った夕食を食べてくれた。
「ごめんなさい……この数日、水しか口にしてなかったので」
お金持ってないのかよ? と聞くと……案の定、一円も持ってないとのこと。マジかよオイ。お前ホームレスかよ!
「ほーむれす……?」
唖然とした。知らないのかよ!
いやそうじゃなくて……
ちょっと話は戻るんだけど。
⭐︎⭐︎⭐︎
「抜けないのかよ……刀」
思わず俺は吹き出しちゃった。だってこいつにぶった斬られるもんだとばかり思ってたらこれなんだもん。
「ということは、お前は変化じゃないの……か」
突然あいつは、ぺたんとその場で座り込んじゃったんだ。
と同時に俺の身体もまた動けるように。どーなってんだ?
「ならば、なぜお前はそんな姿をしてるんだ?」
そうだった、俺まだワーウルフだったんだ! 慌てて周囲を見回したけど……うん、誰もいない。
「お、俺にも分からないんだ。2ヶ月くらい前から満月の夜になると身体が熱くなって、この姿に」
ぐぅぅう……
今度は腹の虫が鳴り出した。けど俺じゃない。目の前にいる日本刀背負った侍だ。あいつの腹がすげえ音出してたんだ。
まったく、仕方ないなあ……
だから、ついそいつに言っちゃったんだ。「ウチでご飯食べる?」って。
「え、いやそんな、僕は」なんて言うものの、また腹がぐぅぅうとさっきよりデカい音鳴らしたし。
ということで、周りに誰もいないのを確認して……と。
……
…
「名前は明日香コタロー。先日11才になったばかり……です」
俺と同い年だなんてやっぱり驚き。
「みない顔だけど、どこの学校?」
あいつは黙って首を左右に振った。ってオイ学校行ってないのかよ!?
「必要なことは師匠に教わったので」
つまり詳しく聞いてみると、コタローはここから遠く離れた山の中で、師匠と呼ぶお爺さんと2人で暮らしてるんだとか。
親はいるのって聞こうかなと思ったけど、なんか……こいつも2人暮らしって聞いて、すごく胸が痛くなったんだ。
絶対にこいつにもそれなりの事情あるよなって察知しちゃって。だからあえて聞くのはやめた。
でもって、その師匠とやらに読み書きとか教えてくれたんだって。
そして、剣の修行も。
……すげえ、やっぱりサムライだったんだ!
「師匠からは変化退治の修行ということで、家を出たんです」
なんかいきなり敬語使いはじめた、なんなんだこいつ。
「命を助けてくれたお礼と、無礼を働いてしまいましたから……」
どうもそのヘンゲを倒すことがコタローの修行の目的みたい。でもってワーウルフの俺のことを間違えたんだって。
「で、ヘンゲって一体なんなのさ」
「……人とケモノの間にある存在です」
コタローは、隣に立てかけてあったあの日本刀を手に取った。
「鵼斬りといいます。でも普段は抜くことすらできません」
そうしてまたぐっと鞘から出そうとしたけど……うん、まるで接着剤で貼り付けられたみたいにびくともしなかった。
「然るべき相手が現れる時、はじめて抜くことができるんです」
「今まで抜けたことあるの?」
「何回か……」
ちょっと背筋に冷や汗が流れた。……サムライのやつ、すっげえうまそうに俺の作った夕食を食べてくれた。
「ごめんなさい……この数日、水しか口にしてなかったので」
お金持ってないのかよ? と聞くと……案の定、一円も持ってないとのこと。マジかよオイ。お前ホームレスかよ!
「ほーむれす……?」
唖然とした。知らないのかよ!
いやそうじゃなくて……
ちょっと話は戻るんだけど。
⭐︎⭐︎⭐︎
「抜けないのかよ……刀」
思わず俺は吹き出しちゃった。だってこいつにぶった斬られるもんだとばかり思ってたらこれなんだもん。
「ということは、お前は変化じゃないの……か」
突然あいつは、ぺたんとその場で座り込んじゃったんだ。
と同時に俺の身体もまた動けるように。どーなってんだ?
「ならば、なぜお前はそんな姿をしてるんだ?」
そうだった、俺まだワーウルフだったんだ! 慌てて周囲を見回したけど……うん、誰もいない。
「お、俺にも分からないんだ。2ヶ月くらい前から満月の夜になると身体が熱くなって、この姿に」
ぐぅぅう……
今度は腹の虫が鳴り出した。けど俺じゃない。目の前にいる日本刀背負った侍だ。あいつの腹がすげえ音出してたんだ。
まったく、仕方ないなあ……
だから、ついそいつに言っちゃったんだ。「ウチでご飯食べる?」って。
「え、いやそんな、僕は」なんて言うものの、また腹がぐぅぅうとさっきよりデカい音鳴らしたし。
ということで、周りに誰もいないのを確認して……と。
……
…
「名前は明日香コタロー。先日11才になったばかり……です」
俺と同い年だなんてやっぱり驚き。
「みない顔だけど、どこの学校?」
あいつは黙って首を左右に振った。ってオイ学校行ってないのかよ!?
「必要なことは師匠に教わったので」
つまり詳しく聞いてみると、コタローはここから遠く離れた山の中で、師匠と呼ぶお爺さんと2人で暮らしてるんだとか。
親はいるのって聞こうかなと思ったけど、なんか……こいつも2人暮らしって聞いて、すごく胸が痛くなったんだ。
絶対にこいつにもそれなりの事情あるよなって察知しちゃって。だからあえて聞くのはやめた。
でもって、その師匠とやらに読み書きとか教えてくれたんだって。
そして、剣の修行も。
……すげえ、やっぱりサムライだったんだ!
「師匠からは変化退治の修行ということで、家を出たんです」
なんかいきなり敬語使いはじめた、なんなんだこいつ。
「命を助けてくれたお礼と、無礼を働いてしまいましたから……」
どうもそのヘンゲを倒すことがコタローの修行の目的みたい。でもってワーウルフの俺のことを間違えたんだって。
「で、ヘンゲって一体なんなのさ」
「……人とケモノの間にある存在です」
コタローは、隣に立てかけてあったあの日本刀を手に取った。
「鵼斬りといいます。でも普段は抜くことすらできません」
そうしてまたぐっと鞘から出そうとしたけど……うん、まるで接着剤で貼り付けられたみたいにびくともしなかった。
「然るべき相手が現れる時、はじめて抜くことができるんです」
「今まで抜けたことあるの?」
「何回か……」
ちょっと背筋に冷や汗が流れた。
しかしこいつ、見ればみるほど時代錯誤な格好してるんだよな。よく見ると上着はけっこう汚れてるし、袴の裾はどっかのアニメかゲームのキャラかってくらいボロボロにすり切れてる。
マジでホームレスに見えちゃうんだよね。
「コタローは泊まる場所あるの?」
速攻で「いいえ」と返された。当たり前か、俺以上に金持ってなさそうだし。
そんなこと話してると突然スマホのメール着信メロディがピロンと。
ーごめん、会議長引きすぎちゃって、今夜は会社に泊まりになるー
……うっすら分かっていた。時計を見ると9時過ぎてて、いつもこの時間超えると姉貴は泊まりコースなんだよな。
けど姉貴の分はコタローが美味しそうに食べてくれたし。
「なあ、よかったら今夜うちに泊まらねえか?」
言った直後に自己嫌悪。何考えてるんだ俺、バカか俺!? ドラマとかマンガと勘違いしてねえか?
いくら俺と同い年ったってこいつ時代錯誤のサムライの格好したホームレスそのものだぞ! 寝てる最中に財布持ってかれたらどーすんだ?
……あ、いや。俺んち金なんて全然持ってない。つーかそもそもカネになるものすらこの家には置いてねーし。
だいいちテレビだって置いてないもん。
「え、そこまでは、僕は……」やっぱりそうだよな、あいつめっちゃ困惑してるし。
「お金ないですし、それに何も返せるものを持ち合わせてません」
「別に構わねーよ、一晩くらい」
もちろん明日の朝ごはんも俺が作るよ。そう考えるとなんだか楽しくなってきちゃった。
今まで俺の家には誰も泊めたことなんてない。見ての通り他の友達とは違うからね。姉貴と2人暮らしでおまけに家事の一才は俺が引き受けてるんだ。みーんな遠慮しちゃうのがオチ。
それに、コタローのことちょっと放っておけない気持ちもあるし。
「そういえば……」と、またあいつは聞いてきた。
「狼男なのに自分の家があるって、ちょっと疑問なんですが」
やっべええええええええええええええ!
慌てて俺の手を見た、鼻先を触ってみた、しっぽをこねくり回した。
そうだ、まだ俺は変身したまんまじゃねーか! つーかどーやったら戻れるんだよ!
俺からもどうにか全てを説明した。
いつしかこんな体質になっちまったこと。元はちゃんとした人間で、コタローと同じ年齢で背格好で。ンでもって名前は……
「狩野タケル。狩りの野原でカノウって読むんだ。もちろん呼び捨てでいいから」
「狩野タケル……とってもかっこいい名前ですね」
その言葉にちょっと照れちゃった。
「じゃあ、またご縁があれば……ご飯美味しかったです」
と言ってコタローは立ち上がった時だった。
「痛っ……!」と突然しゃがみ込んじゃったんだ!
ずっと左足のとこ押さえたまま。え、画鋲かなんか落ちてた?
「えっと……いや、大丈夫、ですから!」
そんなこと言ってるけど、思いっきり我慢してるのは分かる。だっておでこに汗が浮かんできてるし!
「足の裏に血マメが出来ていたんです……ずっと我慢して歩いてたら、潰れちゃって」
無理やり座らせて押さえてる足を見たんだけど……
ちょ、足の裏すっげえ真っ黒! まさかコタロー……ずっと裸足で歩いてきたの……?
ええいこの際そんなことはどーだっていい! バイ菌入ったらどうすんだよ!
とにかく先に手当てだ、まず足の裏をきれいに風呂場へ!
しかし今の俺はワーウルフのままなんだけど、手の指が長くなったわ爪が長いわで細かい作業がやりづれーのなんのって。おかげでコタローの手当てなんて出来なかった。全部自前で包帯巻いてたし。
ってなわけで時代錯誤な侍なコタローを今晩泊まらすことになったんだけど……
⭐︎⭐︎⭐︎
「だからさあ、すっげ汚れてるんだしその服。今から洗濯して干せばどうにか間に合うから!」
「いくらタケルのお願いといっても、それだけはお断りします」
頑固だ。つまりこの服は一張羅だってことで、絶対洗いたくないんだって頑なに断られた。
なんでも剣士としての精神が失われてしまうとかで……そっちの方が意味不明だ。
あ、でも……
まさかとは思うが、どこぞのマンガみたいに実は女の子だったり……ってことでもなさそう。まあそれに関しては安心かな。
俺も疲れてきたし、まずは布団敷いて寝ることが先決だ。
姉貴の布団には触れさせたくないし、かといって来客用のなんで持ってない。つまりは俺の布団でどうにか肩並べて一夜を明かすってことに。
おまけに俺は変身がいまだに解けない。以前話した通り、ワーウルフ状態だと体格もデカくなってるんだよね、一回り……いや二回りくらいか?
「布団で寝られるなんて……何ヵ月ぶりかな」
そんなコタローの笑顔が、俺にはとても嬉しく感じられたんだ。
そして……おやすみの言葉もそこそこに、俺も疲れが溜まっていたからか一気に眠りにつけた。
朝飯はなに作ろうか……ぐう。
⭐︎⭐︎⭐︎
……どのくらい眠ってたんだろう。カーテンから眩しい光が漏れているから朝だってことはすぐ分かる。
だけど……
コタローがいない! ずっと隣で寝てたはずのコタローが!
布団から飛び起きるともう一個驚きが。
俺の身体は元の人間へと戻っていたんだ。そりゃ確かに筋肉痛はしたけど、以前ほどじゃない。学校でマラソン大会した翌日くらいの痛みかな。イマイチ分からんけど。
でもってコタローはといえば。
「おはようございます! 台所汚れてたんで綺麗にしましたから」なんてあいつは笑顔で俺に言ってくれた。
けど早起きだなコタロー。やっぱりそういう生活が身体に染み付いてるのかな?
「それなんですけど……」と、あいつは戸惑った顔で、まだ布団の上にいる俺の元へと来た。
なんなんだ一体。つーか人間の俺に驚いたとかかな。
「僕たち、確か隣同士、肩を並べて寝ていたはずなのに、目を開けたらいきなり僕の顔の前にタケルの足の裏があったんです……」
確か姉貴にも言われてたんだよな。俺の寝相って最悪だって……
けど問題はそこじゃなかったんだ。
「そ、その……タケルの足がすごく臭くって、それで目が覚めちゃって」
やっべええええええええええ!!!
俺は申し訳なくなって、その場でコタローに土下座してた。