ワーウルフになったら毎日が大変! 略して「ワー大変!」   作:べあうるふ

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「ええ、すいませんまた熱が出ちゃって……はい」

 

姉貴が先生にめっちゃ謝ってる。仕方ないよな、今まで皆勤賞連発していた俺が、あの事件を境にいきなり休みがちになっちゃったんだから。

 

「はい、ンじゃいつも通り今日の勉強する部分は誰かに持って来させるって」

 

ごめん姉貴と一言。俺は……うーん。先生に嘘ついた手前、さすがに外出するわけにはいかねーし。

 

どうする? 今日の昼と夜の飯。

 

「いいよ、たまにはコンビニで」

 

「いやだから外に出れねーんだって!」

 

 

 

もう……な。とりあえず冷蔵庫にご飯あるからチャーハンでも作ろっかな。

 

姉貴はこれから出勤。どーせ俺一人だけだし。冷蔵庫にウインナーと卵あるし、具材なんか必要最低限でいいか。

 

てなことで全然体調は普通なんで、仕方なくゲーム機スイッチオン。

 

 

 

ああ……すっげーお尻がウザってえ。ばっさばっさと右へ左へ落ち着かなくって。

 

「どうする、この際だからばっさり切り落としちゃう?」

 

「やめてくれよな、これから先もう生えて来なくなっちゃったら、俺いったいどーすりゃいいんだよ」

 

「んー、無くてもどうにかならない?」

 

 

 

無理だっつーの!

 

 

 

そんな俺の感情に合わせて、思いっきり「尻尾」が縦にぶん! と振り下ろされた。質量もデカい。その風圧で窓ガラスまで揺れた。

 

そう。この前は耳。

 

そして今日は尻尾だ。尻尾が生えちゃったまま元に戻らねーんだ!

 

⭐︎⭐︎⭐︎

 

異変を感じたのは明け方。お尻がすっげー痛くて、最初岩の上にでも寝てるんじゃないかと思った。けど寝返り打ったり横になると不思議とおさまって。

 

でもって、手を伸ばすとでっかい抱き枕が目の前に落ちてて。なんか落ち着く匂いともふもふの触り心地。もう最高だった。

 

 

 

……いや、最高じゃなくて。これ俺のしっぽなんだよ! 俺の尻から生えてるモノなんだよ!

 

けど睡魔と気持ちよさには勝つことができなくってそのまま2時間が経過。

 

トイレ入る時、ドアに思いっきりしっぽを挟んで叫びそうになっちゃったのが、ことの始まり。

 

つーかこんな巨大なの隠すこと自体不可能!

 

ズボンとパンツにしっぽの穴を開けるわけにもいかないんで、今、俺は実質半ケツ状態なわけで、腰がすっげえスースーする。

 

そしてこのしっぽ、俺の意思に反して勝手に動く時があるんだ。

 

飯食ってる時にはブンブンと、まるで扇風機みたいにせわしなく動き回るし、それ以外の時はだらーんと下がったまま。つまりはこれが、俺の本来の感情ってやつなのかな?

 

 

 

とにかく今は、この巨大なしっぽが俺の尻からぶら下がってる限り外へも出ることができなくって。それで大弱りしてるんだ。

 

今日は風邪って嘘ついて1日休むことはできたけど、明日以降は……どうしよ?

 

 

 

さて、と。昼飯のチャーハン食べ終わって、特になにするわけでもなく部屋をゴロゴロ転がってると、やっぱり……というか、遥か下からぺたぺたと足音がしてくるのが聞こえた。コタローだなってすぐにわかる。

 

浴室でいちばん大きなバスタオルを大急ぎで腰に巻いて部屋を出ると、相変わらず薄汚れた格好のあいつが。

 

⭐︎⭐︎⭐︎

 

俺が焼いたホットケーキにハチミツと生クリームをたっぷり。

 

コタローはマイ箸で器用に切って食べてくれた。瞬間、目がヤバいことになってた。なんていうのかな……眼前に広がる素敵な花畑を目にしたみたいな、感動と驚きを一緒くたにして、トドメに呆けちゃったみたいな。

 

「なんて……いう料理なんですかこれ。ふわふわで甘くて、口の中でとろけるような……」

 

「ホットケーキっていうんだ。けど俺的にはパンケーキが近いかな?」

 

「こんな料理をタケルは作れるんですね、すごい!」

 

料理とはまた違うんだけどね。でも感激してくれて俺も嬉しかった。今度はプリンかな。自家製のやつな。

 

 

 

いやそんなことより学校のことをだな。例のコアラの件。

 

体育館と図書室は閉鎖。それは仕方なかったかもね。

 

けど、問題はそこじゃなかったんだ。

 

コタローがあのあと見に行ってくれたんだけど、流石に閉鎖された体育館には規制ロープが張り巡らされていて覗くことすら無理だったそうだ。

 

察するに俺とコタローが倒したコアラの調査ってところかな。

 

あああもう、このケツから生えてるしっぽが! めっちゃ! うっとうしい!!!

 

 

 

 

 

「そういえば、お尻から生えてるそれは?」

 

正直に答えたさ。つまりはしっぽを見せてやった。

 

「え……えええええええ!?」

 

コタロー、今度はすっげえ目がキラキラしてきたし!

 

「えっと、その……つまりしっぽだけ出てきちゃったという?」

 

正座したコタローのひざの上。握った拳が小刻みに震えていた。

 

ヤバい、もしかしてこいつ……!

 

「タ、タケル……あの」

 

まさか、もふもふ好き……?

 

「さ、さわってもいいですか?」

 

ほらよ、と俺は背中を向けてしっぽをコタローへと投げ出した。

 

「これが……オオカミの、いや……タケルのしっぽなんですね」

 

さわさわとしっぽの毛を撫でつける。く、くすぐったいけどガマン!

 

俺もちょっとサービスで、コタローの顔を逆にしっぽで撫でつけ返してやった……ってオイ! 顔をうずめるな! そのまま匂い嗅ぐンじゃねえ! なんかくすぐったくて変な気分だし!!!

 

「タケルのしっぽ……太陽の匂いがします」

 

いやいやそんな匂いするわけねーじゃん! つーか干した布団の匂いじゃねーのか普通は?

 

「こんなにしっぽの毛って柔らかかったんですね」と今度はぎゅっと握ってきたし! ちょっと痛いけどガマン!

 

 

 

「タケルがうらやましいです。こんな素敵な、生きてる抱き枕と一緒に眠れるだなんて」

 

「そっか? 普通に邪魔だぞ。仰向けに寝れないし、おまけに半ケツだから腰が寒いしで」

 

「よかった……タケルにしっぽが生えてて」

 

つーかやりやがった。ついに俺のしっぽを抱きしめてごろんと横になっちゃった。

 

「もういいだろ、放せよ」

 

だけど、背中にいるコタローからは返事がなかった。もしや……

 

ちらりと横目でのぞくと、やっぱりしっぽを抱いたまま、眠っちゃってた。

 

どーすんだこれ。毛を握ったまま離してくれないから俺も身動き取れないんだよな……

 

仕方ない。起きるまで待ちますか。

 

 

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