ミリしら魔法少女アニメ系の男モブに転生したと思ったら、やばい魔導書と契約してTS魔法少女に変身できてしまった 作:春海TMT
転生したと思ったら、また現代日本だった。
俺は
今日も授業を終え、帰宅部として帰宅に
時代背景は前世とほぼ同じで、スマホにブルートゥースイヤホンまであって助かる。
でも、ほぼ同じ、と言うことは違うこともあるわけで。
「
それが今、スマホで流し聞いている魔災速報アプリ。
この世界には魔法が存在し、認知されていることだ。
しかも魔災と呼ばれる厄ネタ付き。
異常現象や異次元からやってくる未知の敵性生命体オルケプスに脅かされている。
「御籠市の魔災レベルは2までとされ、穏やかな月と予想されています――」
だからこそ、魔法管理局という公的機関から防災アプリが出ている。
事前に予測が出され、魔法執行官達が日々対処に当たってくれている。
幸い俺はまだ魔災に巻き込まれたことはない。
足を止め、今度はニュースアプリの動画を流し聞く。
「魔法管理局が新たな象徴として推し進めている魔法少女計画についての一報です。正式採用についてはまだ議論の余地がありますが、前向きに検討が進められています――」
俺が転生した世界はミリしら魔法少女系なのかもしれない。
どんなジャンルかは不明だけど。
なら、俺は名も無き……顔だけはわりと良い、男モブだ。
表舞台には登場しない、出番なしの存在。
でも、この世界では一人一人に名前があるし、生きている。
実際、影倉と言う家名に相応しい影魔法が扱える。
影魔法と言っても、自分の影に物をちょっと入れられる程度だ。
操ったりはできないので、魔災に備えて非常食を収納する食料庫としか使っていない。
別に魔法を使わなくたって生きていけるし、運動と変わらず使えば疲れるし。
なら、文明の利器に頼る方が楽だ。
「また魔法少女を支える機動応援課の募集も同時に行われる予定です」
魔法執行官や新設される機動応援課になれるのも、それこそ魔法少女になれるのだって名門エリートや天才だ。
だから、転生しても俺にとって魔法は縁遠い話。
俺は普通のモブとして、ちょっと違う日常を過ごしていくだけ。
でもまあ、魔法を使わなくてもちょっとした特技はある。
暗闇でも夜目がきく。
影の中の物を判別できるように自然と身についた遺伝だろう。
だから、歩道の端っこに落ちている犬……いや、狼のキーホルダーも見つけられる。
誰かの落とし物だろうな。
まあ、俺はわざわざ拾って交番に届け出るほど、いい人じゃない。
転生しようがその程度の人間でごめんなさい。
「今度新しいのを買ってあげるから、もう諦めよう?」
少し離れた先の歩道で、 近所の
「だ、だって……まこちゃん、絶滅種だもん……。一人にしちゃ可哀想だよ」
「それは現実のニホンオオカミのお話で……気持ちは分かるけど、ね」
困り顔のお母さんは目線合わせて、半べその娘さんに言い聞かせている。
ニホンオオカミのキーホルダー……って、もしかしてこれか?
歩道の隅に落ちていたキーホルダーを拾い上げ、狼神さん親子の元に向かう。
名字しか知らない関係だけど。
「あの……すみません」
丁寧な口調で、驚かせないように声をかける。
「はい!? ごめんなさい! えーっと、確か影倉さんのところのお子さんよね。騒がしかったわよね?」
「いえ、もしかして探し物ってこれですか?」
それでも驚かせてしまったけど、落ち着いて話してキーホルダーを見せる。
「まこちゃん!」
女の子はキーホルダーを見た瞬間、泣き止んで食いついた。
腰を落として、目線を合わせてあげる。
小学四、五年生くらいかな。
「見つかってよかったね。もうなくさないようにね」
「うん! もうなくさない! ありがとう……えっと、お兄ちゃん!」
「どういたしまして」
女の子にキーホルダーを渡すと、明るい笑顔がはじける。
大事に握りしめ、なでなでしてあげてるくらいだ。
「本当にありがとうございます。なにかお礼ができればいいんですが――」
「いえ、感謝の言葉だけで十分です。それじゃあ、僕はこれで」
お母さんに軽く
つい僕と言ってしまうくらい気恥ずかしくなってしまった。
「お兄ちゃん、ありがとう!」
最後にまた女の子にお礼を言われ、小さく手を振って応える。
ほっこりした気分で狼神さん親子と別れ、先ほどのニュースをもう一度聞く。
「また魔法少女を支える機動応援課の募集も同時に行われる予定です」
そうだな……ちょっとだけ違う日常を過ごすってのも、つまらないな。
さすがに魔法少女にはなれないけど、モブからネームドモブくらいにはレベルアップしてもいいよな。
機動応援課って裏方職を目指してみるか。
そういうわけで即行動。
すぐ近くの自宅に帰り、荷物を置いて、ジャージに着替え、また家を出る。
ただ全身に魔力を巡らせ、ランニングを始める。
強化魔法の類いは一切使わない。
筋力と魔力を同時に鍛える。
考えなしに出たがトレーニング場所は……公園でいいか。
学校のジャージだし、不審者には間違われないはず。
幸い公園には一人の女の子が浮かない顔でベンチに座っているだけ。
狼神さんの娘さんと同い年くらいで心配ではあるけど、赤の他人。
話しかけたら事案だし、怖がらせないように公園の隅に陣取る。
とりあえずオーソドックスな筋トレから始めるか。
腕立て、腹筋、背筋、スクワット……となぜか、公園にいた女の子が近づいてきた。
「……おにーちゃん、恥ずかしくない?」
「え? いや、その、そう言われるとまあ……そうかも?」
衝動のままに出たから、冷静になると納得しかけてしまう。
公園でトレーニングはおかしいのか?
「やっぱり人と違うのって恥ずかしいのかな?」
女の子はうつむいて、俺とは違う疑問を口に出した。
地面に座り、女の子が抱きしめている物を眺める。
「鮫のぬいぐるみ?」
「うん。水族館でパパに買ってもらったの」
「そっか。鮫が好きなんだ?」
「うん。でも、学校で見せたら、鮫は人を襲う悪い奴だって。映画も血が出るから良い子は見ちゃだめなのにって。男子が言うんだ」
「それはまた……」
反応に困る。
男子特有の気になる女の子に対してのからかい、なのかもしれないけど。
ぬいぐるみはともかく、鮫映画と言えばB級スプラッタ系の定番だ。
愛好家も多いけど、確かに小学生が見るには刺激が強すぎる面もある。
他人様の子供に偉そうなことを言えるほどじゃないんだけど。
「自分の好きがあるように、相手にも色んな好きがあるのは分かるよね?」
「うん」
「苦手なことも同じ。男子のみんなも言い方はよくなかったのかもしれないけど、誰だって苦手なものってあるよね?」
「うん。注射は……まだ、ちょっと苦手」
「そっか。男子のみんなもきっと怖いんじゃないかな。実際、鮫って人を襲うこともあるよね?」
「うん。バクバク食べるから怖い。でも、それがクールなのに」
「お、おお……そっか。じゃあ、自分の好きを押しつけるんじゃなくて、相手の気持ちを考えながら、うまく分かってもらえるように頑張ってみる……かな。みんなを困らせないようにしながらね」
「うん。やってみる」
女の子もどうにか納得してくれたけど、もの凄い抽象的なアドバイスで申し訳ない。
「おにーちゃんはなんで運動してるの?」
「俺?」
素直に言ってもいいけど、女の子を元気づけるのに一芝居うってみるか。
立ち上がって、仰々しく手を広げる。
「いずれ来たる魔災、それも特大の終末に備えて、世界を救うために己を鍛えてるんだ」
最後に影から非常食の缶詰を取り出し、かっこいいポーズを決めて見せてあげる。
鮫映画好きな女の子には効果抜群で、目をキラキラと輝かせてくれた。
「凄い! ししょー! シャドウシャークみたい!」
「あ、どうも」
映画の鮫さんは影魔法も習得しているのか、さすが多芸でいらっしゃる。
「マリンも頑張ってみる!」
「頑張ってね。それと知らない人に声をかけちゃダメだよ」
「うん! ししょー以外の知らない人には声かけない! あ、もう帰らなきゃ! ばいばーい! ししょー!」
謎のししょー呼びする女の子を見送る。
……不審者と思われて通報されたら嫌だし、今後のトレーニングは家でするか。
慣れないトレーニングに、女の子の相談に乗って喉が渇いたな。
帰る前に自販機でスポドリを買って、ごくごく飲む。
「あの、影倉さん……ですよね?」
声をかけられ、視線を下に。
「君は確か……
狼神さんの娘さん、鮫好きな子に続いて、同い年くらいの女の子に話しかけられる。
ただ二人よりは面識がある。
俺の両親はカゲクラサービスと言う掃除屋を経営していて、魔法執行官の名門である天地家とも
と言っても、天地家の新年会の際に連れてってもらい、挨拶をした程度だ。
名前は……なんだっけ。
「はい。お久しぶりです。あの……もし、決められた運命だったとしたら、受け入れますか?」
「え?」
急にまた相談を吹っかけられる。
しかもさらに難易度が高そうな人生相談だ。
深刻そうな顔を見るに、下手なことは言えない。
自分に置き換えてみれば、転生したってことはなにかしらの運命に導かれた可能性もあるけど。
「受け入れるにしても、好きなことをやって、色々やって、わがまましてからでも遅くないんじゃないかな? 俺は中学生だし、君だって小学生だろ? きっかけなんて人それぞれだし。案外、
実際、俺もさっき気分が変わって、目的が更新されたくらいだ。
「……そうですよね。私、小学生ですもんね。わがまま言ったっていいですよね」
どうにか及第点の答えだったようで、ホッとする。
しかし、まだ浮かない顔だ。
「なにか……飲む?」
「え? 悪いですよ」
「君の運命が良いものになるように願掛けってことで、一つ」
「そういうことでしたら……メガ甘コーヒー牛乳、でお願いします」
了解、とオーダーのメガ甘コーヒー牛乳を購入する。
大の甘党だなあ。
「はい、どうぞ。頑張ってね」
「ありがとうございます、お兄さん。私、頑張ってみます」
渡されたメガ甘コーヒー牛乳の缶を握り、女の子は丁寧に頭を下げる。
「うん。応援してるよ」
「はい。では、失礼します」
女の子はもう一度頭を下げてから、帰っていった。
今日はやけに年下の女の子に話しかけられる日だったな。
まあ、そういう日もあるか。
残っていたスポドリを飲み干し、缶をゴミ箱に捨てる。
三人の女の子に偉そうなことを言った以上、手は抜けない。
目指せ、ネームドモブ!