ミリしら魔法少女アニメ系の男モブに転生したと思ったら、やばい魔導書と契約してTS魔法少女に変身できてしまった 作:春海とまと
「どうだ、クロウ・クルワッハ・オニキス。地獄の業火で焼き、昇天するほどの極上の味に仕上がったバーベキューは?」
「ああ……うまいよ」
串に刺さった牛肉や魚介、野菜をモグモグする。
まだ反転結界に取り残され、逃げ遅れた人がいるかもしれない。
機嫌を損ね、戦いの
今は茶番に付き合う――ふりをする。
ひょっとしたら茶番はフェアリーテイル・マジカルストライカーでは、お約束の定番タイムかもしれないし。
茶番の間にみんな無事に反転結界の外に逃げ出せました的な。
このタイミングでぶっ殺すのも、なんか魔法少女的に良くない気がするし。
魔法少女をサポートする機動応援課に所属していた時でも、こんな前例はなかったというか、あったら困る。
ともかく魔法少女のお約束が分からない、ミリしら知識の俺は慎重に動かざるおえない。
「いいのかよ、相棒。のんきに飯食ってる場合か?」
耳元でクー太郎の声が聞こえるのも、魔法少女に変身した影響だ。
アポカリプス・グリモワールを身に
「まあ、戦いの前に腹ごしらえと思うよ」
あと食べ物に罪はない。
罪はないのだ……うまい。
「ああ、思う存分戦うための儀式だ。俺自身がファイヤースターター――火種になることで、火加減も自由自在、最高の焼き加減でバーべーキューを提供できる。なによりもオルケプス状態なら熱々のまま食えて最高だぜ」
「味、分かるのか?」
「ああ、最高だ!」
鉄串だけは溶かさずにバーベキューを食べてるのを見るに、炎のコントロールは完璧なのだろう。
しかし、この喋る
妙なこだわりポイントがあるのはクー太郎と似ている。
FMSの敵役――終末厄災布教会はそういう集団なのだろうか。
「お待たせ、オニキス!」
屋上に魔法少女に変身したシンク、マリン、カグヤが到着してしまった。
「みんな避難完了……したんだけど……なにしてるの?」
真紅の狼耳を真っ直ぐに伸ばしてシンクが聞いてきた。
「これは、戦略的遅延行為というか」
「……そうなんだ」
「おう! やっと来たか、フェアマジ共! もうバーベキューパーティーは始まってるぜ! さあ、食え! 最後のキャンプ飯だ!」
一方、薪原は熱気に満ちた声でバーベキューが乗った皿を掲げる。
「ごめん。魔法少女的にこれは通過儀礼なのかな、と思って付き合ってみたんだけど。違うよな、ごめん」
モグモグしている邪竜系魔法少女のどこに説得力があるというのか。
また危機管理力のない、ずぼらなダメお姉さん認識が強まってしまった。
「えっと……今までは喋るオルケプスはいなかったし。魔法少女マニュアルにも書いてないし。とにかくそこの燃えるマッチ棒オルケプス。今すぐオニキスを解放して」
シンクが薪原を指さした。
そうだな。
バーベキューは十分に堪能したし、魔法少女の本分を全うしなくては。
「フェンリル・スカーレット。そう、冷めたことを言うな。俺が全国を渡り歩き、厳選した最高ランクの牛フィレ肉だ。食ってみろ」
「……じゃあ、ちょっとだけ。小腹が空いた分だけ」
シンクが俺の隣に並んで、牛フィレ肉が刺さったバーベキューをモグモグし、尻尾がブンブンと揺れる。
「オニキスだけじゃなく、スカーレットまで!? こうなったらマリンの【タイダルフェス】で頭を冷やして――」
「リヴァイアサン・アクアマリン。バーベキューは肉だけじゃない。プリプリのエビ、ホタテのバター醤油、サザエの壺焼きもあるぞ」
「くっ、なんという卑怯な手を……身体が勝手に……!」
マリンもシーフードの圧力に屈し、シンクの隣でハフハフし、鮫の尻尾をビチビチと仲良く揺らす。
「皆さん! 卑劣極まりない敵の罠に引っかかってはダメですわ!」
「アザゼル・プラチナム。バーベキューコンロはなにも定番だけじゃない。スイーツだって作れる。焼きリンゴを載せたパンケーキはどうだい」
「そ、そんな甘いものに釣られる私ではありませんが、食べ物を粗末にしてはいけなのでいただきますわ!」
ついにカグヤまで陥落し、スイーツをパクパクし、堕天使の翼がバッサバッサと羽ばたく。
こいつ、絡め手も強いな。
「そうだ。三人には自己紹介がまだだったな。俺は終末厄災布教会の幹部が一人、終末の火災を
「薪原燎炎!?
カグヤが驚き、言った。
ピンポイントすぎる犯罪だけど、火気厳禁の場所でキャンプファイヤー、火遊びはダメだろ。
「ああ、そうだ。世の中、制限が多すぎる。だから一度、星を燃やしてキャンプファイヤーにし、全人類に魅せつける。そうすりゃどこでだって、キャンプファイヤーができる世界に生まれ変わるさ」
「……なにを言っているのか、さっぱり分からないんだけど」
「マリンも。キャンプファイヤーに脳を焼かれちゃった系?」
「ええ。そうでなければ凶悪無法迷惑キャンパーにはなりませんわ」
薪原の言い分に、三人も一切の共感を示さなかった。
それでも食べる手は止めない。
「残念だ。しかし、これで同じバーベキューコンロでバーベキューを食べ合った仲。
バーベキューパーティーが終わり、後始末をした薪原と対峙する。
果たして今の過程が必要だったのか分からないけど、ここからが本番だ。
「じゃあ、始めるか――フェアリーテイル・マジカルストライカー」
さっきまでの気のいいバーベキュー
「燃え尽きろ」
一瞬で視界全てが炎に染まった。
反転結界内に火の海が広がり、建物は焼け落ち、焦土と化した。
昨日の火災の比ではない、超火力だった。
「みんな、大丈夫?」
シンクが展開した氷の防壁を背にし、全員の状態を確認する。
「俺は問題ないよ。いきなり全方位攻撃とは恐れ入った」
「マリンはへーき。初見殺し系かなー」
「さすが終末厄災布教会の幹部が一人、スルト・バーンですわ。ネタっぽくても、火力は凶悪ですわ」
みんな火傷もなく、万全の状態のままだ。
「さすがフェアマジ。この程度じゃ燃え尽きないか」
薪原はただ立っているだけで炎をまき散らし、火災を引き起こしている。
これが終末厄災――世界を火で焼却する力ってわけか。
「オニキス。あたしたちの戦い方を見たことなかったよね?」
「そうだけど、どうして?」
「じゃあ、実演して見せるから。二人とも行こうか。マリン、お願い」
「がぶりょ! 炎タイプには水タイプをぶつけるんだよってね――【タイダルフェス】!」
マリンが手を掲げ、俺達の後方から膨大な水が押し寄せ、炎と激突し――爆ぜた。
炎が消し飛び、水蒸気が立ち上る中、薪原までの道ができあがる。
「あたしはフェンリル・スカーレット――
シンクがナイフを薪原の炎の身体に突き立てたると、真紅の氷が広がった。
そこにソードオフ・ショットガンを突きつけ、容赦なく引き金を引く。
蒼色の炎の散弾が貫き、薪原を守っている炎が削られ、本体である黒い胴体が露わになった。
「ハティーナイフでぶっ刺して凍らせて、スコールショットガンで燃やしてぶち抜く。ガンカタ系スタイル」
バイオレンス。
「マリンはリヴァイアサン・アクアマリン――
鮫型メカが黒い胴体に噛みつき、動きを止める。
マリンが物騒な音を立てるチェンーンソーで斬りつけ、さらに削っていった。
「ドローンシャーク『カルドンちゃん』で噛みつき足止めして、ウォーターチェンソーでぶった切る! デストロイハンタースタイル!」
バイオレンス。
「私はアザゼル・プラチナム――
カグヤがメガホンを召喚し、
「スルト・バーン! そこから一歩も動かないでくださいですわ! プラチナムからのお願いですわ!」
叫ぶと薪原の動きが止まった。
その間に弓を引き絞り、暴風と雷光の矢が放たれる。
無数の矢が突き刺さり、射貫いていく。
「行動を制限するお願いで無防備になったところに、雷と風のフォールダウンアローで蜂の巣にする。必殺仕事人スタイルですわ」
バイオレンス。
魔法少女の戦闘スタイルは高火力をぶっ放すバイオレンス系なのか。
しかし、ダメージを与えられているはずだけど、薪原は倒れていない。
「いいねえ! だが温いぜ、フェアマジ! これじゃあレアだ! ミディアムレアにもなれねえよ! 【バババババババーンイラプション!】」
薪原が咆吼した瞬間、地面に無数の噴火口が出現し、全域に溶岩や火山弾が降り注ぐ。
「さあ、場を熱く盛り上げろ! 【ムスペルズ!】」
さらに昨日の炎の巨人、人型オルケプス達が召喚される。
「さすが、終末厄災布教会の幹部が一人、スルト・バーン。そう簡単には倒せないか」
「ワンパンKOとはいかないね!」
「ええ。ですが、ここで負けるわけにはいきませんわ!」
シンク、マリン、カグヤも圧に屈せず、迎撃していく。
また全域に炎が広がり、
「次は俺の番だな――【キャンプファイヤー・レーヴァテイン!】」
全域に広がった炎を束ね、一つの剣と化した。
「焼き加減なんて関係ない、星さえ燃やし尽くす最高火力でいかせてもらうぜ!」
確かにあの武器なら反転結界を突破し、御籠市どころか星さえ燃やし尽くし、終末を引き起こせる。
「で、相棒。てめェは見てるだけか?」
「そうだな。俺もいくよ」
ちょうど薪原の魔法を見て、思いついたこともある。
今までできなかったことを試そうと、影に触れる。
「【
白黒で構成された反転結界内で、影とされる黒を全て引き寄せ――刀に圧縮する。
その過程で魔力を流し込み、飛ぶ。
「やっぱり一番踊りたい相手はお前だな、クロウ・クルワッハ・オニキス!」
「クロウ・クルワッハ・オニキス――
炎の剣と影の刀が激突し、斬り結び、踊る。
薪原の近くにいるだけで肌が焼かれそうな超高温。
大地はマグマで満ち溢れ、足の踏み場がない。
「【ババババババババババババババアアアアアアーーーーァァァンッ! イラプション!】」
「【
足下にできた特大の噴火口を影で塞ぎ、距離を取り、薪原の頭上にも影を広げる。
影を通して転送された特大の火山弾が薪原の頭に命中した。
「こいつぁ、効くな! だが、俺以上に火種はねえからな! むしろ燃料さ!」
「自滅は狙えないって分かったよ」
さらに燃え盛る薪原と距離をとったまま集中し、魔力を練り上げる。
「【
「は?」
一息で十五発の影の斬撃を放った。
【キャンプファイヤー・レーヴァテイン】ごと薪原の炎を消し飛ばし、斬り刻む。
「すっぱりいかれちまったな! だが、まだ俺は燃え尽きちゃいねえ! まだまだ踊り狂って終末まで踊り明かそうぜ!」
息も絶え絶え、風前の灯火、それでもまだ薪原――スルト・バーンは健在。
火種さえあれば、また燃え上がり復活する。
星を燃やし尽くす終末を迎えるまで何度でも。
「お断りだ。お前の物語はもう終わりだよ、スルト・バーン――【
「ぬおぉ!?」
影の斬撃を糸に変え、薪原を縛りあげて地面に縫い付ける。
俺はモブからネームドモブ、そして偶然にも表舞台に上がった存在、せいぜい追加戦士枠。
アポカリプス・グリモワールと同じ紋章のコアっぽい部分を露出させただけで十分。
シンク、マリン、カグヤの見せ場がなければ締まらないし、もったいない。
「始まりから終わりまで――みんなの夢と希望と明日を紡いで束ねて謳う! 終末厄災を討ち払う物語の結末に光あれ!」
ムスペルズを全て倒した三人が、それぞれの武器を重ねて一つにする。
「【フェアリーテイル・トリニティ・エンディングバスター!】」
赤、青、銀のまばゆい光がスルト・バーンを貫き、
「キャンプファイヤーをする時は火の後始末はしっかりするんだぜ! ババババババババーン!」
アポカリプススキンを引き剥がし、終わりを与えた。
「……ふぅ、燃え尽きちまったぜ。さあ、焼くなり焼くなり、とにかく焼くなりして好きにしろ」
人の姿に戻り、チリチリになった髪の薪原は大の字になって降伏宣言した。
「じゃあ、お言葉に甘えて」
シンクが容赦なく薪原の首から下を凍り付けにして拘束し、
「観念して大人しく寝ていてくださいですわ。プラチナムからお願いですわ」
カグヤがメガホンで薪原を強制的に眠らせ、
「カルドンちゃん、アポカリプス・グリモワールの回収よろ」
マリンのドローンシャークで、まだ原形を留めているアポカリプス・グリモワールを回収した。
フェアリーテイル・マジカルストライカーでは、この流れがお約束になるんだろう。
「なあ、相棒。あのアポカリプス・グリモワール、オレ様がご褒美に食っていいか?」
「待て。話がややこしくなるから我慢しろ」
ちょっと違う