ミリしら魔法少女アニメ系の男モブに転生したと思ったら、やばい魔導書と契約してTS魔法少女に変身できてしまった 作:春海とまと
「みんな、お疲れ様」
そちらは特にトラブルもなく、魔獣系オルケプスの討伐で完了した。
「お疲れ様。一時はどうなるかと思ったけど、どうにかなったね」
「終末厄災布教会の幹部の一人もKOしたし、オルケプス達も一掃したし。マリン達もお風呂に突撃しよー」
「ええ、あの熱気の中で随分汗をかいた上、連戦でしたもの。シャワーが浴びたいですわ」
俺達がいるのはFMS司令部に併設されたリフレッシュルーム。
魔法少女だけが利用でき、一時間ほど疲れを癒やすのが定番と三人が教えてくれた。
クー太郎との契約で女性に変身したままの俺同様、三人も外的変化は残っている。
その外的変化が解ける一時間をここで過ごすのだ。
フラメル司令が以前話していたアポカリプス・グリモワールをパク――研究して、作り上げたフェアリーテイル・グリモワール。
神話や伝説上の存在に、
クー太郎と契約している俺が言うのもなんだけど、アポカリプス・グリモワールをそのまま使うのは危険すぎる。
薪原が変身したスルト・バーンの火力は恐ろしく、一瞬で周囲を消し炭にできるレベルだった。
たまたま薪原の癖とバーベキューパーティーで中和されているだけで、もしも放火魔みたいな奴が使っていたらゾッとする。
もし魔災レベル4の現場に対応していた時に、
……ないとは思うけど、実際はフェアリーテイル・マジカルストライカーの世界がそういう流れだった可能性もあるよな。
なんにせよ、今回は無事に被害もなく討伐できた。
「そうだな。三人ともお風呂に入ってきなよ」
だから、シンク、マリン、カグヤにはしっかりお風呂に浸かって疲れを癒やしてほしい。
「お姉さんは入らないの?」
「俺は後でいいよ。ここって元々魔法少女――女性専用の部屋なんだろ? お風呂も一つだしね。俺のことは気にせずどうぞ。その間にリフレッシュルームを探検しておくからさ」
シンクの誘いをやんわりと断る。
しかし、なにかおかしなことを言ってしまったのか、三人は納得がいかない様子だ。
「一緒に入れば早くない?」
「え? いや、今は女性だけど、元は男性だし。まずいだろ? 倫理的にも世間的にも」
俺は三人に信頼されて、行動を共にすることが許されているだけ。
まだ厄ネタ疑惑は晴れたわけじゃない。
ただでさえ危機管理力のない、ずぼらなダメお姉さんなのだから、これ以上の失態は許されない。
「でも、お姉さんは自分の身体を見るよね?」
「お風呂に入って身体を洗うなら、そうなるな?」
「なら、少なくとも女性の身体は直接、自分の目で見るよね? しかも……凄く、綺麗で、っちな……身体」
シンクが狼耳を垂らし、顔を真っ赤にして呟いた。
最後の方は聞き取りづらかったけど、意図は理解できた。
これまた自分でも言うのもなんだけど、今の俺の身体は凄く……エッチだ。
男性の時の身長と同じ170くらいで胸もデカい、ウエストは引き締まって、お尻に太ももはほどよい肉付き。
顔立ちも男性の時の俺なんて
……もちろん、自分に欲情したわけではなく、客観的な視点から。
そう男性のボディビルダーの筋肉が美しいと思えるように、今の俺の姿も完成された究極の美なのだ。
「どちらにせよ、見るのは俺だけだし。そこは許してくれると助かるかな」
「その、責めたいわけじゃなくて……あたしは嫌じゃないから。今日一番頑張ってくれた人を一人にしておけないだけで」
「そーだよ。師匠がいなかったらスルト・バーンにもっと苦戦していただろうし」
「そうですわ。嫁様がお膳立てをしてくれたから、スムーズに倒せたのですわ」
三人がそう言ってくれるのはとても嬉しい。
同じように俺を気遣い、
「ありがとう。でも、俺は平気だから。ほら、早く入っておいで」
ここで押し問答をしている時間がもったいない。
しかし、三人も譲る気はないようで動かない。
「じゃあ、逆に聞くけど。あたし達がお姉さんの身体を見たり、触れたりするのは平気?」
シンク!? とマリンとカグヤまで驚いてしまった。
「え!? いやまあ……いいのかな?」
俺も思わずあいまいな返答をしてしまった。
男性の時だって海やプールに入る時は上半身裸になるし。
女子が友達と洗いっこするのは別におかしいことじゃない……のか?
少なくとも身体は女性なのだ。
彼女達が見たり触れたりするのは俺が許せば合法、なのか?
女性のお風呂事情なんて俺が知るわけもなく。
そもそも女性に変身した事例なんてあるわけもなく。
つまり、俺達だけで納得するラインを作るしかない。
三人は今、そのラインを探っているのだろう。
……俺のために。
「別にバスタオルすればいいし。お姉さんがあたし達を……うん、今は。大事にしてくれるのは分かったから。ただ今日のお礼をしたいだけ。それにお姉さん、腰まで届く長い髪を一人で洗える?」
「う。それは……」
確信の一打だった。
たまらず天井を見上げれば、髪の重さで後ろに引っ張られる感覚になる。
ここまで伸ばしたロングヘアーなんて俺の人生であるわけがない。
「だから、手伝ってあげる。洗う時に何もしないで座ったら、床についちゃいそうだし」
シンクが尻尾に指を絡ませ、ポツリ呟き続ける。
「もちろん、あたし達の……外的変化の部分、触っていいから」
「え?」
なんか今、とんでもないことを言ったような。
「だって、お姉さんが変身した姿に触れるんだから。あたし達も同等の対価を支払わないとダメだよね? お姉さんならあたしの狼耳と尻尾……好きなだけ触っていいよ」
シンクは間違いなくとんでもないことを言っている。
顔が真っ赤なのがその証拠だ。
「さすがにギザ歯はレベルが高すぎるしなあ。でも、師匠ならマリンの鮫尻尾ならいくらでも触って……いーよ?」
「え、ええ……そう、ですわね。嫁様なら私の細長い耳に、堕天使の翼を存分に堪能していいですわ」
マリンとカグヤまで顔を真っ赤にし、賛成した。
年下オーラ全開の三人が俺を取り囲み、圧倒される。
外的変化の部分に興味がない、と言えば嘘になる。
「俺の負けだよ。一緒に入ろうか」
途端に、三人の顔が明るくなり、嬉しそうに頷き合う。
今は女同士と思い、俺が理性を保てばすむ話だ。
鋼の意思で臨もう。
四人で脱衣所に入る。
着替えの置き場所や備品の説明を受けてから着替えを始める。
作業着を脱ぐ。
ずっと着ていたから
今後を考えると、男性の時でも余裕のある服装を選ぶべきかな――っと。
シャツを脱ぎ捨てると、とてつもない解放感に襲われた。
上半身裸になり……初めて女性になった自分の姿を見る。
これは、想像以上に凄い。
本当に凄い。
「……お姉さん。もしかしてずっとノーブラだった?」
少し離れた場所で着替えていたシンクに声をかけられる。
「まあ、そうだな?」
隠すべきか悩んだけど、ここまで凄いと誇らしげになって堂々と振るまえる。
監禁部屋の時のように確かめるような愚はおかさないけど。
テンションがあがっても、まだ理性は保たれている。
それでもごねていた自分はなんだったのかと思える清々しさだ。
「当然だけど、あたしより……」
「マジでマリンより……」
「おほほほ……私よりは小さいですわ!」
まあ、そういうわけで下だけバスタオルを巻いて、風呂場に突入する。
おとぎ荘と同じくらいの浴室で、四人で入っても余裕がある広さだ。
「じゃあ、最初にお姉さんの髪、洗うね」
「そうだな。お願いするよ」
素直に従い、椅子に座って目を閉じる。
シャワーで髪を洗ってから、ヒンヤリとしたシャンプーが付いた手に触れられる。
「うわ、サラサラ」
「すご。シャンプーなくても手ぐしで一方通行じゃん」
「ええ、まさに絹のような髪、ですわ」
髪を切りにいく時は、理容師さんに髪を洗ってもらっているけど。
なんか、それとは次元が違う気持ちよさだ。
目を閉じている分、感覚が研ぎ荒まれ、力が抜けるほどの心地よさ。
「じゃあ、マリン。リンス取ってくれる?」
「りょー。はい、みんなにリンス散布ー」
「任されたからにはキッチリと綺麗に仕上げて見せますわ」
至れり尽くせりに満足していまっているのだから、俺って奴は現金な人間だ。
「……お姉さん。次、身体洗って……あげるね?」
「うん……頼むよ」
シンクの言葉に
「うわ……お姉さんの……柔らかい」
「はあ……師匠のがこんな凶悪兵器だなんて……絶対殺すやつじゃん……」
「嫁様のは私より大きさは劣りますが、ハリや弾力は上ですわ……」
スポンジで全身が洗われ……すっかりボディソープまみれで……双丘から隙間まで……隅々までモニュモニュと……ん? あれ、身体洗われてる!?
「ごめん!? 身体は洗う約束だっけ!?」
我に返り、目を開いて三人に問いかける。
背後からなにやら不穏な気配、魔力の動きを感じる。
鏡越しでも分かるほどに。
恐る恐る、後ろを振り向く。
「ごめん。お姉さんの髪とか身体……洗ってたらなんか、ムラムラするんだ……」
「マリンも……なんか師匠の凶悪兵器を見ていると……ムラムラしちゃった……」
「お二人もですの……? 実は私も嫁様を見ているとムラムラが止まりませんわ……」
「え!? ムラムラ!? なんで!?」
どうして三人の方が理性が保てなくなって、ムラムラしてるんですか!?
「うーん……お兄さんがお姉さんだから?」
「えっと……師匠は師匠だし」
「ええ……婿様で嫁様ですもの」
答えになっていない。
三人は肉食獣のような雰囲気で、俺を見下ろしている。
いやしかし、フェンリルは狼だし、リヴァイアサンは鮫だし、アザゼルはなんか堕落系……?
とにかく捕食者側がよく似合うな――じゃなくて。
「三人とも落ち着いて。理性を保って……別に、俺の身体を洗うのはいいよ? でも、ムラムラはやめよう」
これもフェアリーテイル・グリモワールの影響なのか?
しかし、外的変化以外に影響はないと言っていたし。
少なくとも彼女達ではなく、俺側に問題があると言うことか。
とにかく今はこのピンチを――。
「そうだね。でも、今は女同士だし、別に平気じゃない?」
切り抜けられるんだろうか、お姉さんの俺は。