ミリしら魔法少女アニメ系の男モブに転生したと思ったら、やばい魔導書と契約してTS魔法少女に変身できてしまった   作:春海とまと

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第13話 ムラムラを洗い流そう!

「女同士でも俺は俺だから。よし分かった。なら……攻守交代だ」

「交代? どう言う意味?」

「三人が言ってただろ。代わりに外的変化の部分を触らせてくれるって。今度は俺が洗ってあげるよ」

 

 シンクの質問に、彼女自身が提案した内容を伝える。

 

「そうだったね。じゃあ、お姉さんにお願いしようかな」

 

「マリンも師匠にジャブジャブ洗ってほしーな」

 

「ええ。いつでも嫁様に触れられる心構えはできていますわ」

 

 三人は素直に了承してくれた。

 まだ俺の言葉を通じることに安堵(あんど)する。

 

「ありがとう。ちょっと待っててね」 

 

 さっとシャワーで身体を洗い流す。

 

 三人はまだシャワーすら浴びてないのに、謎の……ムラムラに襲われている。

 

 この身体か? この身体がムラムラさせるのか? まあ、うん、ムラムラしちゃいそうな体付きではあるけど。

 

「じゃあ、交代ってことで……」

 

 立ち上がった俺を三人がじっと見つめる。

 

 さすがにちょっと恥ずかしいな、と思わず胸を隠してしまう。

 それほどまでに蠱惑(こわく)で魔性(ましょう)の身体でムラムラしちゃうのか。

 

 自分ではムラムラするわけじゃないから不思議なものだ。

 

「三人とも座ってくれ」

 

 言われたとおりに座ってくれる三人の背後に回る。

 

 とにかく俺の身体を洗ってムラムラしちゃったのなら、責任をもって洗い流してしまえばいいだけ。

 

 気分転換をしながら落ち着いてもらう。

 俺は決して三人にムラムラしないからな。

 

 ムラムラ言い過ぎて、逆に冷静になってくるレベルだ。

 

「まずはシンクから……ところで狼耳や尻尾って、専用のシャンプーやソープとかで洗うのか?」

「違うよ。お姉さんと同じのでいいから。ほら、これ使って。髪も一緒で大丈夫だから」

 

 シンクからシャンプーを受け取り、シャワーから始め――綺麗な素肌が露わになった。

 

「あの、シンク? どうしてバスタオルを取ったんだ?」

「だって、洗う時邪魔になるし。大事な部分は隠しておくから」

「……そう。分かったよ」

 

 俺が見なければいいだけのことだし、洗うことに集中しよう。

 

 バスタオルの制限がなくなり、狼の尻尾が大きく揺れて俺の身体をくすぐってくる。

 

 シャンプーを手になじませ、モフモフな真紅の毛で覆われた狼耳に触れる。

 確かな熱が伝わり、ほどよい厚みがあり、モフモフな触り心地。

 

 集中するまでもなく、雑念が取り払われる。

 

「……これ本物、なんだよな?」

「普段は外的変化って言ってるけど、正式名称は魔力放出外的変化偽装(まりょくほうしゅつがいてきへんかぎそう)――って長い名前。フェアリーテイル・グリモワールの魔力負荷を身体にかけないために、魔力で具現化した放熱フィンみたいなもの? だって。フラメル司令が言ってた」

「なるほど、強力な洗剤を使って掃除する時に換気する、みたいな感じか。感覚もあるのか?」

「魔力を通して感覚が繋がってるからあるよ……だから、お姉さんに洗われて……とっても気持ちいい」

 

 シンクはとろけるような声で呟き、力を抜く。

 

 魔法少女にとって大事な部分、手際よく且つ丁寧に洗い、尻尾へ。

 

 こちらはさらに大きくモフモフで、専用ブラシで洗っていく。

 魔力で具現化していると言っても水の影響は受けるのか、毛はしぼんでしまっている。

 

 ……女の子に言うセリフじゃないけど、本物の狼を洗っている気分だ。

 いや、狼どころか犬も洗ったことなんてないけど。

 

 しかし、距離感がちょっと難しい。

 男性の時にはなかった双丘がシンクとの間にあるので、ぶつけないように注意がいる。 

 

 ……言うなればこれが俺の魔力放出外的変化偽装……ダブルバラストタンク……バカなことを考えている場合か。

 

 また危機管理力のない、ずぼらなダメお姉さんになってしまうぞ、俺。

 

「ありがとう、お姉さん。気持ちよかった。後は自分でできるから二人をお願い」

 

 尻尾まで洗い終わると、シンクは満足そうに言ってくれた。

 少し落ち着いた様子でホッとする。

 

「どういたしまして。そう言ってくれて嬉しいよ」

 

 掃除のスキルも少しは役に立ったかな。

 シンクから隣に移る。

 

「マリン、待たせたね」

「まちぼうけー。師匠ー、マリンの鮫尻尾もよろ!」

 

 マリンは既にマリンブルーの髪の毛を洗い終わり、可愛らしく両サイドでお団子にしてまとめていた。

 

 当然のようにバスタオルは取り払われている。

 

 まあ、外的変化の部分は洗う時に邪魔になるから仕方がない。

 

 それよりも早くーと言っているかのように、鮫尻尾がビチビチと揺れて誘っている。

 

「マリンも使うソープは同じもので平気?」

「うん。へーきだよ。師匠ならなんでもばっちこーい!」

 

 まるまるとした鮫尻尾。

 

 鮫肌と思ってシャワーをかけながら、ゆっくり触れてみる。

 体温はヒンヤリとしている。

 

 尻尾の先に向かってなぞるとツルツルで、逆に腰の付け根に向かうとザラザラとした感触で……おお、これは中々に。

 

「……師匠、生臭かったり、痛かったりする?」

 

 マリンが不安そうに聞いてきた。

 

「え? そんなことないよ。ツルツルでザラザラの新感覚で、癖になりそうでいつまでも撫でていたい感じかな?」

「えへへ……そっか。師匠ならいつでも手つぼマッサージを受けてあげるし」

「ありがとう。続きをするよ」

 

 思わず夢中になってしまった、反省だ。

 当然、鮫なんて洗ったことはないけど、尻尾の先に向かって優しく洗っていく。

 

「えへへ、きもちー」

 

 シンクの狼の尻尾と違って、洗いやすさは段違いだ。

 ヒレまでピカピカに磨いてあげて、スムーズに洗い終えた。

 

「……あ。もう終わっちゃった?」

「納得のいく仕上がりになったよ」

 

 しかし、マリンは納得がいかない様子だ。

 

「シンクは耳のついでに髪、尻尾もだし。マリンももう一つお願いしていい?」

「いいよ。公平にいこうか」

 

 俺もなんだか楽しくなってきたし、マリンのムラムラも落ち着いてきた。

 一つくらいお願いをきいたところで問題はない。

 

「じゃーあ。マリンの背中、ジャブジャブ洗ってもらえるかな?」

「お願い、承(うけたまわ)りました」

 

 マリンの外的変化の部分は尻尾と、ギザギザとした歯。

 マリンも言っていたけど、歯はレベルが高すぎるからな。

 

 スポンジで背中に優しく触れる。

 鮫肌と違ってこちらは柔肌だ、丁寧に洗ってあげないと。

 

「ふんふーん。師匠は掃除もジョーズだし、洗いジョーズだねー」

「えっと、鮫だけに?」

「そーだよ。だって、マリンの師匠だからねーむふふっー」

 

 マリンは鼻歌交じりにご機嫌だ。

 

 身長はカグヤが俺よりちょっと低め、その下にシンク、一番小柄なのがマリンだった。

 

 だから、マリンの小さな背中はすぐに洗え終えてしまう分、丁寧に洗ってあげる。

 

「背中も綺麗な仕上がりになったよ」

「うん! 師匠、ありがぶりんこー! あとはカグヤにしてあげて!」

 

 マリンも満足そうに言ってくれて、また隣に移る。

 

「ごめん、だいぶ待たせちゃったよな」

「残り物には福がある、果報は寝て待てといいますわ。私はノット烏(からす)の行水(ぎょうすい)ですのでご心配なくですわ」

 

 カグヤは最後でもはつらつとして言ってくれた。

 カグヤも銀髪を洗い終わっており、後ろでお団子にまとめている。

 

 もちろんバスタオルなんでとっくに取っ払われている。

 一番大きい分、目のやり場には注意する必要がある。

 

「私の羽翼(うよく)は大きいですから大変かと思いますが、よろしくお願いしますわ」

 

 黒い翼が広げられる。

 言葉どおり縦に横にも視界はカグヤで満たされる。

 

「カグヤも同じソープで大丈夫な感じ?」

「ええ、私は柔ではないのでゴシゴシ洗っていただいて平気ですわ」

 

 これまた堕天使なんて洗った経験があった方が問題だし、鳥さえ経験のない。

 

 羽毛はシンクの毛と同じくフワフワだけど撥水性(はっすいせい)らしく、シャワーのお湯を弾いている。

 

 その分ソープを泡立ててゴシゴシと洗う。

 

「おほほ……嫁様も私の羽毛の虜(とりこ)ですわね」

「羽毛に手を突っ込んでくすぐられているみたいだよ」

「嫁様なら私の特別羽毛で包み込んでスーハーしながらお休みしてもいいですわ」

「……ありがとう。機会があったらな」

 

 実際にスーハーやったら大問題だし、ここははぐらかしておく。

 泡だったソープを洗い流す頃には、カグヤのムラムラも収まりつつある。

 

「翼、洗い終わったよ。あとは」

「はい。私の耳も触れて洗っていいですわ」

 

 カグヤが横に細く尖った耳に手をそえて、アピールする。

 今まで洗ってきた外的変化と違って、人の名残ある部分で緊張する。

 

「二人と違って元の耳が変わってるのは俺と似た原理?」

「ええ。嫁様の変身と同じ原理だと思いますわ。ですから、触れられるとその、他より敏感……ですわ」

「分かるよ。じゃあ、軽くだけ触れてサッと洗っちゃおう」

「ぴゃ――!?」

 

 横に細く尖った耳に触れた瞬間、カグヤが声を上げて翼が勢いよく広がった。

 

「ごめん!? やっぱりデリケートだったよな!?」

「い、いえ。ちょっとだけ驚いただけですわ。遠慮せずに、堪能してくださいですわ」

「……じゃあ、遠慮なく」

 

 耳に水が入らないように、さっと洗う。

 

 硬いように見えてほどほどに柔らかい、新感覚。

 さっとのつもりが思わず堪能してしまうほどに。

 

「おほほほ……やはり堕天使は人を堕とすのが上手なようですわ」

 

 大きいカグヤの背が丸まり、翼に挟まれてさわさわ撫でられる。

 それでも耳には変わりないので洗う時間は短くすんだ。

 

 どうにかこうにか堕天使の抱擁(ほうよう)から逃れる。

 

「終わったよ。どうだったかな?」

「お見事でしたわ。嫁様、ありがとうございました。心身共に清められましたわ」

 

 清々しく言ってくれるからには、カグヤのムラムラも収まったのかな。

 

「良かったよ。三人とも終わったし、先にお風呂に入ってるね」

 

 流れに乗って、お風呂に避難する。

 

 引き留められることもなく……と言っても、後から三人が俺を取り囲んだ。

 背を向けた状態で。

 狼の尻尾、鮫の尻尾、堕天使の翼に三方向を取り囲まれる。

 

 まさかこんな状況が訪れるとは夢にも思わなかったな。

 

「三人ともムラムラはおさまった?」

 

「うん。なんか、困らせたみたいで、ごめん」

 

「お疲れの師匠の手を煩(わずら)わせちゃって、マリンも反省」

 

「ええ。湯冷めして風邪を引かれたら申し訳がたちませんわ」

 

 三人の気持ちを表すように、しゅんと元気がなさげな尻尾や翼。

 

 感覚があるということは、感情も伝播(でんぱ)しているということだ。

 肩まで浸かるのはいいことだけど、元気がないのはよろしくない。

 

「俺も外的変化の部分に興味がなかったわけじゃないし……三人を守ってくれている部分を洗わせてもらって光栄だよ」

 

 シンクがゆっくりとこちらに振り返って、照れくさそうに微笑んだ。

 

「そうだね。一時間経ったら消えちゃうけど、あたし達を守ってくれている部分だから、大事にしてあげたい」

 

 マリンやカグヤも同じように振り返る。

 

「鮫尻尾のメンテは大事にしてあげないとねー」

「ええ。神は細部に宿るものですわ」

「そうだな」

 

 俺のは代償だけど、このダブルバラストタンクは大事にしてあげるべきだ。

 

「今度、機会があれば俺が変身した時の外的変化の部分を触ってみる?」

 

 俺の場合、魔法少女の変身を解くと邪竜関係の外的変化は解けるし、髪も黒に戻る。

 これもクー太郎のこだわり、絶世の美少女要素には不要、ということだろう。

 

「え? それは……どう、だろ」

「師匠の好意は嬉しいけど……うーん」

「そうですわね……それはつまり、延長してしまうわけですもの」

 

 三人の反応はよろしくなかった。

 まあ、三人と違って硬そうだからなあ……双角も翼も尻尾も。

 

 ◆

 

 三人に先に脱衣所で着替えてもらい、最後に俺が出る。

 

 バスタオルで身体を拭いて、鏡を見る。

 自分じゃ到底できそうにない芸術的な編み込みだ。

 三人が編み込んでくれたから、ほどいて乾かすのがもったいないくらいに。

 

 そして、やはりいい……身体だ。

 ムラムラになってしまうのも分かるような。

 

 泣く泣く髪をほどいて乾かし、Tシャツを着てズボンをはく。

 ラフな格好は動きやすい。

 

 リフレッシュルームに戻ると、三人はコーヒー牛乳やフルーツ牛乳を準備していた。

 

「……お姉さん、まだノーブラ?」

 

 シンクの反応を見るだけでも分かるけど。

 

「そうだけど……やっぱり、まずい?」

「ノーブラお姉さんは一般常識的にまずいでしょ」

「確かにノーブラのお姉さんがいたら、男子は目のやり場に困るよな」

 

 俺だってそうだ。

 

「今度、エプロンのついでに下着も買いに行こうか。絶対に」

「そうだな。その時はよろしく頼むよ」

 

 やけに気合が入ったシンクに頷く。

 謎のムラムラ現象もやっと一段落し、みんなで仲良く牛乳瓶を傾けた。

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