ミリしら魔法少女アニメ系の男モブに転生したと思ったら、やばい魔導書と契約してTS魔法少女に変身できてしまった 作:春海とまと
謎のムラムラ現象が今後も発生しないとも限らないので、フラメル司令に連絡を取った。
リフレッシュルームのモニターで、みんな揃って質問をする。
「謎のムラムラ現象……そうだな、イツキ。今日一日、何があったのか簡潔に教えてくれるか?」
今日一日を振り返り、薪原と遭遇し、鳳先生の前で変身したところまで話していく。
「なるほどな、だいたい把握した」
そこでストップがかけられた。
「三人は……なんと言うか」
フラメル司令がシンク、マリン、カグヤを見た。
三人はなぜか首を振ってなにかしらのサインを送っている。
「……そうだな。三人はイツキが心配だったんだよな? 鳳先生の前で身バレ上等の変身をしたから、今後の生活に影響が出るんじゃないかと。そういうことにしておきたいんだよな?」
そういうことにしておきたい、とは?
三人は激しく首を縦に振って同意した。
「うん。お姉さんでお兄さんなのはとても混乱を招くから」
「これ以上の脳内に構築される複雑怪奇な人間関係はノーサンキューだし」
「ええ。属性過多の衝突事故は避けるべきですわ」
そんなに心配してくれたのか。
でも、あの状況ではあれが最善だと思ったし。
鳳先生は守秘義務契約をしなくても、言いふらすような人ではないと思う。
三人にとっては日常の象徴、頼れる学校の先生なのだから。
「敵の野郎もその先生もいい悲鳴だったぜ」
影からクー太郎が顔を出す。
すっかり居心地がいいのか、俺の影を住処にしてしまったらしい。
今まで出なかったのも濡れたくないし、三人に詰められるのを恐れたせいだろう。
すぐに逃げられるように影から出ようとしないのが、その証拠だ。
「さっきも影の中まで心地よい悲鳴が聞こえてきたからな。正に代償として相応しい、最高最悪の契約をさせてもらったぜ、イツキ」
「本当に、最高最悪の契約だよ」
それでも強気な言葉にあえて付き合ってやる。
忘れがちだけど、女性への変身――女体化はクー太郎との契約だ。
周囲の反応も代償行為として数えてくれるんだろう。
今は俺も平気で、わりと楽しんでいるけど。
公衆の面前で女性から男性に戻った時に、女性物の服なんて着ていたら社会的に死ぬからな。
水着とかもやばいだろうな。
「そしてムラムラ現象の一番の原因は、女体化したイツキのフェロモン大爆発だ」
急に会話のレベルが下がった気がする。
フラメル司令まで
「クロウ・クルワッハが考えた、オレ様の最高最悪の絶世の美少女様だ。当然……同性だろうと魅了する。それもイツキとの契約、代償行為の適用範囲内だろうからな」
俺と同じ考えだ。
「特にグリモワールの契約者同士、波長が合う。イツキを心配する気持ち、フェロモン大爆発。この二つが合わさり、おかしな解釈で出力された結果がムラムラ現象だ。決してグリモワールの負の面、悪影響が出たわけじゃない。おそらく好感……親密度が高い奴に限定して発生する」
しかし、凄くまともに分析してくれている。
三人も俺の素肌を見て、触れて、ムラムラしたと言っていたし。
外見は同性だからといって気を緩めすぎたかな。
「だいたいの理由は分かりましたが、根本的な解決方法はあるんですか?」
「根本的な解決方法とすれば、三人と仲良く遊んであげてくれ」
「仲良く遊ぶだけですか?」
「そうだ。実際、仲良くお風呂に入って解消できただろ?」
「結果的にはそうですね」
外的変化の部分を洗ってあげて、解消した感じだ。
「リフレッシュルームには色々遊び道具を用意してあるからな。これからも一緒に戦い、死線を
フラメル司令がモニター越しに頭を下げた。
必要なら嘘も騙しもいとわないと言っていたけど、三人には
「それはもちろん。僕でよければいくらでも付き合いますよ」
だから、俺も誠心誠意応えたい。
「ありがとう、イツキ。助かるよ。またムラムラ現象を引き起こす可能性がある……残念なお知らせをしないといけないからな」
フラメル司令が優しく微笑み、スマホをなぜか見せる。
そこには俺が変身した魔法少女の姿が取り上げたられていた。
「イツキ――というかクロウ・クルワッハ・オニキスだが。謎の魔法少女としてSNSでトレンド一位になってるぞ」
「え? 一位? 俺が?」
「ぶっちぎりの一位だ。まあ、身バレに繋がりそうなのは、こっちで処理しておくから心配いらない。イツキも大切なFMSの一員だからな」
俺とも真摯に向き合ってくれるのは助けるけど。
「というわけで明日の午前、またFMS司令部に来てくれ。宣材写真撮るから。詳しいことはまた追ってメールする。おじさんはSNS対策に注力するから、あとは若いのだけで仲良くな。通信終了」
あっさりとした感じの流れでモニターの通信が途切れた。
試しにスマホでSNSサイトを巡ってみる。
・謎の魔法少女、現る!?
・影より現れた漆黒、魔災レベル6の原因か!?
・フェアマジのお姉様枠ご登場!?
・魔法管理局の管轄外、在野の孤高邪竜系魔法少女では!?
様々な憶測が飛んでいる。
今日は変身を解かずの強行軍だったので、飛行途中などで目撃情報がちらほら出ているのは仕方がない。
「いいねえ、目立つならぶっちぎりじゃねーとな!」
クー太郎は大変満足そうだ。
FMS公式アカウントはないから、俺がやるべきことなんて存在しない。
こういう場合、下手に反応する方が良くないしな。
かえって炎上してしまうから、フラメル司令達に任せればいい。
「じゃあ……何して遊ぼうか?」
俺は今日頑張ってくれた三人を労ってあげよう。
幸い、お風呂の時のようなムラムラ現象の兆候はなさそうだけど。
「お姉さんが魔法少女に変身して、魔災現場に出た以上、遅かれ早かれこうなることは分かってたから」
「だね。師匠が目立ちすぎて認知されるはとーぜんだし。ファンが爆増するのは想定の範囲内だし」
「悪い虫がつかないように脇を固めて、細心の注意を払いますわ。私達が嫁様の
謎の使命感に燃え、眼光鋭く、やる気に満ちあふれているくらいだ。
「ありがとう。えっと、それで何して遊ぼうか?」
もう一度尋ねると、シンクが口を開いた。
「遊ぶ前に、お姉さん。明日、午後に洋服とか下着、買いに行こっか」
「明日? 明日の午後には変身が解けるし……ああ、そうだよな。宣材写真を撮るなら、魔法少女に変身する必要があるのか」
SNSの公式アカウントはないけど、FMS公式サイトは存在する。
可愛らしいポーズのアニメ調の画像一枚、一言コメント、単純なプロフィールだけしか記載されていないけど。
それはあくまで世間向け、内向け用の写真も必要だろうし。
「宣材写真だろうが、一回は一回だ。次は二日間女として過ごしてもらうぜ。契約だからな」
契約には厳しいクー太郎が言った。
二日延長したところで平気だと内心で思っていても。
「分かってるよ。最高最悪の契約を持ちかけたのは俺だしな。
長くなった髪をかき上げて、ため息を吐く。
代償行為として渋々納得するふりをする。
「ククク……それでいいぜ。つかの間の女時間を楽しむんだな」
クー太郎以外には俺が演技してるなんてバレバレだから、大きな問題はない。
「そうさせてもらうよ。じゃあ、明日の午後に買いに行こう。待ち合わせ場所はどうする?」
「……本当にお姉さんの宣材写真って必要かな?」
「え?」
シンクが問いに答えず、マリンとカグヤと不穏な様子で喋り始める。
「あたし達だけが推せればよくないかな?」
「師匠が裏サイトの女王になるのはマリンも避けたいし」
「私達はあくまで健全な魔法少女として活動しているのですから、嫁様とのお楽しみは私達だけのお楽しみとして……ですわ」
魔法少女が市民に受け入れられている世界とは言え、悩み事がないわけじゃない。
フラメル司令や阿部市長、魔法管理局の力があっても及ばない部分があるんだろう。
先輩として俺を心配してくれるのは嬉しい。
「俺は三人と一緒に並べるのが嬉しいよ」
だからこそ、俺が今ここにいる理由に必要ならなんだってやろう。
「はあ、本当にお姉さんは……そうだね。今度、四人の集合ポーズとか考えよっか」
「さんせーい! 必殺技も!」
「では、決め台詞もですわ!」
不穏な様子は消え、明るい笑顔で戻ってくれる。
正直、三人で完成されてる気がするし、俺は添えるだけでいいけれど。
断る理由もない、か。
「じゃあ、その話をしながら……何して遊ぼうか?」
三度目の正直で問いかけをする。
すると、シンクがトランプを持ってきて。
「ババ抜き」
「七並べ」
「神経衰弱」
そういうわけでトランプゲーム三連戦。
三人の外的変化の部分が解けるまで、仲良く遊び……俺の勝ち越しで終わった。
ブンブン、ビチビチ、バッサバッサと尻尾や翼で考えが分かりやすかったのは申し訳ない。
◆
翌日、魔災発生も0と魔法少女としては、つかの間の休日。
それでもこの世界では敵を倒すことだけが魔法少女の役目ではない。
「【オーバーライド】」
既に女性に変身しているので、いつもの禁断の扉が工程は省かれる。
「【アポカリプススキン――クロウ・クルワッハ】」
ページがめくられる度に長い髪が紫に染め上げられ、邪竜の双角、翼、尻尾が生え、漆黒のゴシックドレスに袖を通し、ネイルもバッチリに決めて、ヒールを鳴らす。
女性に変身していると言っても、そのままでは身バレに等しい。
「フェアリーテイル・マジカルストライカー――クロウ・クルワッハ・オニキスさん、入りまーす!」
なので、控え室で変身してからスタジオ入りした。