ミリしら魔法少女アニメ系の男モブに転生したと思ったら、やばい魔導書と契約してTS魔法少女に変身できてしまった 作:春海とまと
「いいですよ! オニキスさん! 暗黒笑顔をもっとください!」
カメラマンの女性がシャッターを切る度にポージングをかえる。
正直、
数枚撮るだけで終わると思ったら、もう数え切れないほどだ。
「クロウ・クルワッハ・オニキスさん……影のある美しさですねえ」
「光と闇のマリアージュ……ベル・フィーユ……」
「オニキス様が加わったことで、フェアマジはもっと輝く存在になるわ」
スタッフは全員女性、フラメル司令――今日は監督か。
彼女が厳選した人達だから、
しかし、まさか自分が魔法少女に変身して、宣材写真を撮るなんて夢にも思わなかった。
転生した時はただの男モブだと思っていたけど、随分遠くまで来てしまったな。
「では敵を踏みつけて
……まだまだ道半ば、むしろ半分も行ってないかもしれない。
「これにて終了でーす! クロウ・クルワッハ・オニキスさん、お疲れ様でした!」
ようやく撮影が終了し、一息つく。
「お疲れさん、オニキス」
「お疲れ様でした」
フラメル監督に挨拶をする。
白衣からセーターを肩に巻き、サングラスの監督スタイルに変身している。
「最高の宣材写真が撮れたよ。後でサンプルを見せるから期待しててくれ。じゃあ、何点か話があるから、控え室に行こうか」
控え室に一緒に帰り、変身を解く。
フラメル監督も司令に戻り、指を鳴らした。
「魔法少女としての報酬の話がまだだったからな」
手元にヒラヒラと落ちてきた書類に目を通す。
……
見たことがないくらい、0が多い。
「三人もイツキと同じ額にしたかったんだが、断られてな。魔法少女貯金としてプールしてある。いつか魔法少女を卒業して、彼女達がやりたいことをしたい時にできるようにな。イツキもやるか?」
俺は魔法少女を影から支える職をやりたかった。
既に叶えてしまったというか、明後日の方向に飛び越えてしまっている状況だ。
「そうですね。僕も彼女達と一緒でお願いします」
特に入り用なこともないし、なんなら俺の分まで彼女達の将来に回してくれてもいい。
「分かったよ。
実際、ありがたい話で出費額は少ない。
おとぎ荘で必要な物があればスマホ一つで手に入るし、設備も備品も揃っている。
ただ特別なイベントでもない限り、三人は自腹で買い物をしている。
魔法少女でお金の話をするのも世知辛いけど、つい気になってしまう。
特にお金のでどころとか。
「あの、俺達の給料って税金――」
「給料はな。でも、だいたいはおじさんのポケットマネーだ。おじさん、無駄に人生長生きだからな。色々手広くやってるお金持ちなんだよ。成金の錬金術師」
茶化しているけど、聞き流すことはしない。
集団から個人に変わっただけの話だから。
むしろ負担は増しているはずだ。
「フラメル司令。以前、今の世界の成り立ちから、魔法少女に頼る理由は聞きましたが。どうしてそこまでするんですか?」
美味しい話には裏があるって疑っているわけではない。
美味しいだけの話じゃないのは分かっているから。
……
集団で攻め込まれたら一度、世界が終末を迎えていてもおかしくない。
それを負けに等しい引き分けまで覆したこと自体快挙だと思う。
表とか裏というよりは、単純に理由をもっと知りたくなった。
「そりゃあ、今という青春を代償におじさん達の分まで戦ってくれるからさ。できることはなんだってしてあげたいと思うのは当然だろ」
これも以前話してくれた時と同じ答えだった。
「ただ……まあ」
普段は背が低く、童顔ながら常に余裕のある笑みを浮かべ、仕事ができる女性の印象を受けたけど。
「……罪滅ぼしもあるかな」
哀愁を感じさせる笑みで、含みのある言葉を吐き出した。
それよりさらに踏み込んだ言葉を、今の俺では引き出せそうにない。
「ありがとうございます。僕の質問に答えてくれて」
「それも当然だ。イツキには期待してるからな。おじさんよりも若いし、三人とも信頼してるし。なによりフェロモン大爆発だからな」
「……フェロモン大爆発はちょっと」
あんまり嬉しくない褒め方に
立場的には重要人物のお偉いさんだけど、幼女みたいな姿で、自称も含めて中身はおじさんっぽいのが……親しみやすい
「で、次はこいつだ」
フラメル司令が指を鳴らし、表紙に炎の紋章が描かれたアポカリプス・グリモワールが現れた。
「薪原からはクロウ・クルワッハと似た証言しかとれてない。言うなれば闇バイトみたいなもんだったよ」
「なるほど。じゃあ、あの場面、雇われバイト同士の男の対面だったんですか」
ううむ。
やっぱり魔法少女系世界にはありえない絵面になってしまったな。
「被害を最小限に抑えられたんだ、細かいことは気にするな。それよりもイツキ、というか、クロウ・クルワッハ。アポカリプス・グリモワールを食ってみるか?」
「食っていいのか!?」
影からクー太郎が飛び出し、羽ばたいた。
絶対、罠に簡単に引っかかるタイプだな。
「クー太郎、なんでそんなに食いつきがいいんだ?」
「オレ様のことが分かってねえな、イツキ! オレ様のエネルギー源は魔力だ! なら、魔力の塊であるアポカリプス・グリモワールは大好物に決まってるだろ!」
今にもアポカリプス・グリモワールに食いつきそうなクー太郎を掴んで抑える。
「共食いにならないか?」
「共食い? 何を弱気なことをぬかしやがる。世界は弱肉強食、食うか食われるかだぜ?」
「まあ、弱肉強食の
さんざんカビだの、風呂だの、三人にビビり散らかしている奴が言っても説得力がなあ……。
それに魔法少女系世界でなくても、気になるお約束がある。
「フラメル司令、本当に大丈夫ですか? 終末厄災布教会がこいつをあえて逃げ出させた上で、アポカリプス・グリモワールを食べさせながら鍛え、究極の原典にする。そんな感じの狙いはないんですか?」
楽しかったぜ、お前との相棒ごっこ、とか。
君に教えたラスボスを倒すための鍵集めは、実は真のラスボスである私が復活するための嘘だったのだよ、とか。
そういう黒幕の思惑に踊らされ、裏切られる系。
「ないとは思うが、あるかもしれない。だからこそ、今後を踏まえておじさんの目で確かめておきたい」
「……分かりました。クー太郎、食っていいぞ」
「そうこなくっちゃな! いただくぜ!」
クー太郎はチビドラゴンの口を大きく開けて、アポカリプス・グリモワールに噛みついた。
ガジガジ、ガリガリ、ガブガブ、食べていく。
「そういえば、グリモワールってなにが書かれているんですか? 普段は鍵がかけられていて読めないので」
「基本はアポカリプススキンやフェアリーテイルスキンを構築し、維持するための魔法陣と呪文だな」
「やっぱり普通の本とは違う魔導書なんですね」
人を怪物に、俺を女性に、少女を魔法少女に。
あらゆる姿に変身させる魔法。
グリモワールを作ったフラメル司令や敵の
「ふぃー食い足りねえが、今日はこれくらいにしておくか」
会話をしている間に、クー太郎がアポカリプス・グリモワールを綺麗に食べきった。
「どうだ、イツキ。なにか変化はあるか?」
「自分は特に変わった感じはないですね」
「そうか。じゃあ、クロウ・クルワッハの方はどうかな、と」
フラメル司令がクー太郎に手を掲げると、いくつもの魔法陣が展開された。
……おお、凄い。
こういう定番の魔法っていう演出は中々お目にかかれないから新鮮だ。
「な、なんだ……中身まで見透かされているようで気色悪いぜ……」
さっきまで威勢のよかったクー太郎が身震いした。
「構造そのものに変化はないようだな。そうだ、イツキ。スルト・バーンが使っていた魔法はどうだ?」
「魔法ですか?」
スルト・バーンとの戦いを思い出し、フラメル司令を真似て手を広げ、口ずさむ。
「バーンイラプション」
しかし、何も起こらなかった。
むしろここで火山が噴火したら大惨事なのでよかったけど。
「食べたグリモワールをコピーする能力……
「それはあるあるですね。僕自身は相変わらず影魔法しか使えませんし」
残念がる様子もなく、冷静に分析するフラメル司令に答える。
「もしかしたらレベルアップや条件付き、なんかで使用可能になるかもしれない。頭の片隅に入れておいてくれ」
「分かりました。覚えておきます」
確かに敵の魔法をコピーできたら、戦いの幅も広がるな。
そう、いつだってどこでだってバーベキューパーティーも開ける……薪原に毒されすぎか、俺は。
クー太郎がアポカリプス・グリモワールを食べた影響とは思いたくない。
「あとは……そうだ、はい。女性の時の身分証明書一式。分かりやすく影倉イツキで通してあるから。公共機関でも問題なく使えるぞ」
「ありがとうございます」
フラメル司令か身分証明書一式を受け取る。
この短期間でもう作成するとは恐ろしい。
「話は以上だ。腹減っただろ。昼飯はおじさんが
「うーん。じゃあ、ファミレスでお願いできますか?」
◆
フラメル司令にお昼ご飯を奢ってもらった後、おとぎ荘で家事の続きを終わらせる。
学校が終わる頃に合わせ、ショッピングモール前の待ち合わせ場所に向かった。
シャツにジーパンと、万が一男性に戻っても平気なコーデ。
まあ、追加で魔法少女に変身したから、二日延長の三日間は女性のままだ。
クー太郎は妙なところは律儀で、変身解除の時間を聞けば教えてくれる。
というわけで、ショッピングモールで一人待つ。
もちろんノーブラ、ではなくサラシ装備で。
大衆の場でノーブラはまずいと三人に厳しく言われたからだ。
まさかブラよりサラシを先に装備するとは……またしても夢にも思わない、二度目の人生だ。
とにもかくにも、これで世の青少年の性癖を歪ませる心配もなくなった……か?
冷静に考えると、一部の性癖に特化してない?
「お姉さん、お待たせ」
シンクの声に雑念が払われる。
「学校、お疲れ……あれ? マリンとカグヤは?」
制服姿のシンクが一人だけ立っていた。
「マリンはアクアリウム部、カグヤは実家の用。あたしが先に付き合うことになったから。二人は後で合流予定」
「アクアリウム部……またオシャレだな」
「今のあたし達は生き物を飼いにくいからね。学校なら他の子も見てくれるし。カグヤは……偉いとこのお嬢様だから」
「そうだな。俺も何度か
掃除する場所がもの凄く多くて、カゲクラサービスのみんなも大変そうだった。
「そういうわけでお姉さんとあたしだけ。早速買いに行こうか。まずは……下着一式から」