ミリしら魔法少女アニメ系の男モブに転生したと思ったら、やばい魔導書と契約してTS魔法少女に変身できてしまった 作:春海とまと
「ごめん。
「謝らないで。お母さんが言うには、元々家に帰らないでフィールドワークをしていた大学教授らしいから。死んだ理由も調査依頼をした人と山に入って、その人を助けようとして自分が足を滑らせて打ち所が悪く……って話だから」
父親のことを
「生きてても今と変わらないんじゃないかな。だって、お父さんの写真よりも、こっちの方が部屋にたくさん残ってたくらいだから」
シンクがスマホの画像を見せてくれる。
そこには色あせたモノクロの狼の写真が何枚も残っていた。
「絶滅種の研究をしてて、特にニホンオオカミが専門だったみたい」
「そうなんだ。もしかしてあのニホンオオカミのキーホルダー……まこちゃんって――」
シンクが俺の想像を否定するように、明るい笑顔を作って首を横に振った。
「あれは違うよ。あたしがガチャガチャで当てた物だから。まこちゃんは……あたしとお姉さんの大切な思い出」
そう言ってくれるけど、ある意味父親の形見、
俺が心配し、考え込んでいるように見えたのか。
言葉を選んでいる間に、シンクの方が
「心配しないで。写真がないわけじゃないから」
新しい画像には赤ちゃんのシンクを抱く困り顔のお父さんと、隣で微笑むお母さん。
シンクはどちらかと言えばお母さん似に見える。
お父さんは人が良さそうな風貌だ。
画像だけの印象なら家庭をかえりみない、愛情がない人には見えない。
だって、こんなにも幸せそうな家族写真だから。
「一人親だったけど、貯蓄だけは残してくれて生活に困ったことはないから。お母さんと二人でも楽しかったし、お姉さんもいたし」
「……そうだったんだな」
結局、相づちしか打てなかった。
近所でも事情なんて全く知らなかった。
もし知っていたらもっと遊んであげて……いや、あの時の俺は気づかなかっただろうな。
「それに今は魔法少女としてお給料も貰えてるし。夢がないように見えるけど、あたしにとってはこっちのが現実的でいいかな。マリンやカグヤ、サポートしてくれる人たちもいるし。お姉さんも一緒だし」
強がっているようにも聞こえるけど、本当に思ってくれていると受け止める。
「だから、変に気を使わないでいいよ。お姉さんなら聞きたいこと、なんでも教えてあげるから」
「ありがとう。その時は遠慮なく聞かせてもらうよ」
そう言われて、すぐになんでも聞ければいいんだろうけど。
まずは今の俺ができることを考えていくしかない。
こうして話をして聞いて、一緒に過ごして見つけていくしかないよな。
「なあ、イツキ。難しい話は終わったか? おかわりくれよ」
そして空気を読まないクー太郎が今は助かる。
「えらく派手に食ったな……お前」
クー太郎の口の周りはクロワッサンのパン屑だらけだった。
「クー太郎……帰ったら、風呂、入るか」
「はあ!? なんでだよ!? オレ様はカビもシミもねえ、クリーンなアポカリプス・グリモワールの原典だぜ!?」
「いいか、クロワッサンはバターやマーガリンをたくさん使っている。つまり、とても、油っこい」
「あ、油だと――!?」
驚くクー太郎の口元をウェットティッシュで
「お前がこのまま俺の影に入ろうもなら、俺の快適サラサラ影空間がギトギトになる恐れがある。お前はそれでいいのか?」
「クソ。クロワッサンか、風呂か、どうすりゃいいんだ……」
謎の二択に頭を悩ませるクー太郎を見て、シンクがおかしそうに吹き出した。
「再会して思ったけど、お姉さんって……お母さんみたい。いや、お父さん?」
「ママ?」
「いやいや俺は……ママ……じゃない、よ?」
俺とシンクの会話に割り込む、年端もいかない幼女が、一人。
ぽつんと寂しそうに一人で立っている。
まさかこれは間違いなく、迷子。
「ママ……どこ?」
そして一人ぼっちと悟り、今にも大声で泣き出しそうになる。
慌ててベンチから立ち上がり、クー太郎を掴む。
「ほ、ほらーチビドラゴンだよー?」
「おい! イツキ! オレ様にガキをあやす趣味はないぞ!」
「またクロワッサン食わしてやるから」
「……オレ様、クロワッサン、ガブリンコ」
本当にクー太郎がチョロくて助かる。
滅多にお目にかかれない、喋る黒いチビドラゴンに、幼女の涙も引っ込んだ。
「ク、クロワッサンちゃん?」
「そーだよ、クロワッサンちゃんだよ。触ってみる?」
「……うん」
「お、おい!? またオレ様を売るのか!?」
「ああ、まただ。悪いな」
またしても俺に裏切られ、幼女の手に渡るクー太郎。
それでも逃げ出さないのはよっぽどクロワッサンが食べたいからか。
食い意地が張ってやがる。
「フカフカ……」
幼女のメンタル維持には効果抜群だからよしとする。
「ママとはどこでお別れしちゃったのかな」
「わかんない……」
「そっか。ちょっとごめんね。抱っこしていい?」
「うん」
今はお姉さんで良かった。
幼女も問題なく抱っこできる。
身長も男性の時と変わりないから、周囲を見通せる。
「どう? ママは見えるかな?」
「ママ……いない」
「んー……そっか。シンク、一度管理事務所の所に行って、放送してもらおうか」
「分かった。場所はあたしが調べるから」
シンクに道案内を頼み、管理事務所に向かう。
「お名前、言えるかな?」
「……りーちゃん」
「そっか。りーちゃんか。可愛い名前だね」
俺と会話する間も、りーちゃんはクー太郎をフカフカしている。
おかげでスムーズに管理事務所につき、
「りーちゃん!」
「ママ!」
館内放送をしてもらい、すぐに親子は再会できた。
「ありがとうございます! なんてお礼を言えばいいのか!」
「いえ、何事もなく無事に再会できてよかったです」
「本当にありがとうございます!」
何度も頭を下げるお母さんに、俺も何度も手振りを交えてなだめる。
「りーちゃん。今度から……ママの側から離れちゃダメだよ。守れるかな?」
「……うん、守れる」
「偉いね、約束だよ」
その間にシンクがりーちゃんに優しい笑みで、指切りをしていた。
「ばいばーい! クロワッサンちゃん!」
ようやく落ち着いたお母さんとりーちゃんは手を繋いで、仲良く去っていく。
「りーちゃん、クロワッサンちゃんって。どっちのお姉さんの名前?」
「違うよ、チビトカゲのクロワッサンちゃん」
「チビトカゲ……? ふふ、そうなんだ」
そのチビトカゲを演じたクー太郎は、クロワッサンを食べる前よりげっそりしていた。
「はあ、とんだ災難だったぜ……。おい、イツキ。クロワッサン、三個は食わせろよ。じゃなきゃ割に合わねー仕事だぜ」
「分かったよ。今度な」
今回ばかりは一番の功労者だし、労ってあげないとな。
「……お姉さんは凄いね。小さい子もすぐに懐いてさ。魔法を使ってないのに、魔法をかけられたみたいに安らげる」
手を振って見送るシンクは昔を思い出すように呟いた。
俺達も管理事務所を後にし、歩きながら会話を続ける。
「ありがとう。たまたま波長が合う子だけだったかもしれないけどな」
「うん。それでもやっぱりお姉さんは凄いと思うよ」
やけに褒めてくるシンクについ照れてしまう。
「今も影魔法しか使えないから……いや、マリンには効果抜群だったな。そういえば、シンクはどんな魔法が使えるんだ? やっぱり炎や氷魔法?」
シンクは微笑み、また首を――横に振った。
「ううん。あたしは元々魔法が使えない体質だから」
またやってしまったと思ったけど、迷いのない真っ直ぐな瞳に助けられる。
俺を見つめ、耳元の髪をかきあげ、強きに続ける。
「だからこそ、魔法少女になれてよかったよ。あたしにだって誰かを助けることができるって――」
乾いた風が吹き込んできた――瞬間、周囲の人達が急に倒れだした。
「え? 大丈夫ですか!?」
近くにいた人の
酷い汗で息も荒い、熱も……いや、どんどん冷えてきてる?
脱水症状……貧血?
「みんな、同じ症状みたい。急にどうして……」
シンクが言うように周辺の人達は同じ容態に見える。
しかし、どうして俺とシンクだけ無事なのか。
「おい、
それはグリモワールの契約者だから。
魔法に対する耐性が高いから。
一番の理由は。
「みーつけた。出来損ないの、偽物ちゃん」
俺達にこの状況を見せつけたいから。
真っ赤なドレスを着た少女が、
室内にも関わらず少女に日傘を傾ける片メガネをかけた執事を引き連れて。
そして――先ほどの親子を人質にして。
「どーも。
「そして