ミリしら魔法少女アニメ系の男モブに転生したと思ったら、やばい魔導書と契約してTS魔法少女に変身できてしまった 作:春海TMT
月日は流れ、中学、
新卒採用は狭き門だったけど、どうにか第十班に滑り込めた。
転生した分の幸運を使い果たしたと言ってもいいくらいだ。
晴れてネームドモブにレベルアップしたと胸を張っていいだろう。
第十班は四人構成で、俺以外は元魔法執行官や警察官、企業戦士。
「さて、機動応援課第十班が結成されて一ヶ月になるね」
詰所で休憩中、熊みたいな風貌の
「皆の推しは決まったかな?」
全員が手を止め、甘熊班長と同じ態勢になる。
もちろん俺もだ。
甘熊班長が真剣な顔を緩ませ、先陣を切る。
「俺はフェンリル・スカーレットさんだなー。毎回、任務の後にメッセージカード付きの差し入れくれるし、いい子だよねー。熱いハートにクールな風貌がかっこかわいいよねー」
「私はリヴァイアサン・アクアマリンちゃん一推しですね。サブカル好きで、オタクに優しいギャルの時点でさいつよです。声もゆるっとした感じで癒やされ、わかりみポイントが高いです」
「自分はアザゼル・プラチナム様っすね! うっかりお嬢様ですわ口調が癖になるっす。天上天下唯我独尊キャラを出したいのに、二人に押し負けてていい人オーラが隠せてないのもグットっす」
続いた
エリート揃いと言っても、みんな魔法少女大好き人間なのだ。
そして三人の熱い視線が俺に向けられ、思案する。
現在の魔法少女はみんなが推した三人。
正式名称は『フェアリーテイル・マジカルストライカー』、頭文字をとって『FMS』と略称されている。
由来は『フェアリーテイル・グリモワール』という魔道書を使って変身することからきている。
神話上の存在と
と、研修の時に配られた広報用パンフレットに書かれていた。
既に一番危険な魔災の対処に当たり、最前線で戦っている。
子供から大人まで大人気で、『フェアマジ』の愛称で親しまれている。
ひょっとしたら、俺が転生した世界は『フェアリーテイル・マジカルストライカー』みたいなタイトルかもしれないな。
だから、俺が推すのは――。
「僕はみんな、ですかね」
仕事中の一人称は僕と使い分けている。
なんともありきたりでつまらない解答だった。
三人と比べて熱のない素っ気ない回答だったけど。
「影倉君は箱推しかー欲張りさんめー」
甘熊班長のふぬけた言葉にみんなが頷き、
「でも分かる! やっぱりみんなが一番! みんな推せる!」
激しく同意してくれる。
邪な心はなく、清く正しく、身命を捧ぐ同志だ。
魔災の現場は常に危険と隣り合わせだけど、みんないい人で、やりがいのある職場だ。
「緊急魔災警報発令!
雰囲気が一気に切り替わり、緊張が走る。
甘熊班長がまた真剣な顔に戻り、俺達を見回す。
「今までに例を見ない規模の魔災だね。皆、気を引き締めていこう」
◆
機動応援課が特殊装甲車両で向かったのは御籠市中央地区――一番危険な地域だ。
低レベルの魔災なら動きやすい軽装の耐魔作業着を装備するけど、今回は完全防護仕様の重装備。
それが今回の魔災の脅威度を示している。
魔災レベル5は前例がなく、今回が初めての事例らしい。
車内にも緊張が走り、装備の確認に余念がない。
「間もなく
第十班オペレーター担当の浅葱さんのアナウンスが聞こえ、停車する。
特殊装甲車両から降り、現場を確認する。
既に規制線が張られ、近隣の警察、消防、救急、魔法執行官も到着済み。
住民の避難誘導や救護、消火活動を行っている。
魔災予報にはない緊急事態とあり、現場は混乱していた。
規制線の奥には半透明のドームが広がり、表面は内部の景色が反転している。
反転結界と呼ばれ、内部は現実から切り離した仮想空間になっている。
現実世界に被害を出さない為の便利な魔法だ。
中にいたほとんどの人は反転結界外の安全地帯に転送されるのだけど。
「すみません! 娘を! 娘を見ませんでしたか!? さっきまで一緒にいたんです!」
警察官に訴えかける母親の声が聞こえてくる。
反転結界を起動させる際、どうしても空間に歪みやズレが生じてしまい、一部の人が取り残されてしまうらしい。
そういった取り残された人を見つけ、安全な場所に送り届けるのが機動応援課の主な仕事だ。
魔法執行官と状況確認を終えた甘熊班長が戻ってくる。
「既に『FMS』達は現着、魔災――オルケプスの討伐に向かっている。我々も現場を視認する」
「了解です」
捜索担当の俺と甘熊班長が先行する。
反転結界に踏み入いった瞬間、世界が逆さまになったような錯覚に襲われ、色彩が減った。
御籠市をコピーしたような白黒の世界。
その中にあって色づく赤い炎が燃え盛り、一面が火の海と化している。
そして、それさえ上回る光輝く存在が空にいる。
真紅、青海、白銀の魔法少女が
戦いを見届けることなく、また反転結界の外に出る。
「徒歩では無理だな。予定通り特殊装甲車両で移動しよう」
甘熊班長の指示に従い、特殊装甲車両に戻る。
「魔法少女達も頑張っている! 俺達も要救助者を助けに行くぞ!」
「了解っす! 飛ばしていくっす!」
甘熊班長の号令で運転担当の鴨井さんがアクセルを踏み、特殊装甲車両で反転結界内に突入する。
機動応援課は魔法執行官と違い、原則オルケプスとの戦闘は行わない。
要救助者の救助のみに注力する。
もちろん、降りかかる火の粉は払うが、優先度は低く設定されている。
救出方法は反転結界の境界線をまたいで外に出るか、内部に設置してある
俺達以外にも各方面から機動応援課の各班が反転結界に侵入している。
魔法少女が安心してオルケプスを倒せる為に、支援に徹する。
「ここから五百メートル先、商業施設内に要救助者の反応があります」
「了解っす! エンジンに火が付いたらやべーんで飛ばすっす!」
到着した商業施設も既に外壁は燃えており、いつ全焼してもおかしくないレベルだった。
「鴨居君と浅葱さんは出入り口に防護結界装置の設置を頼む。いつでも出せるように準備しておいてくれ。影倉君、行くぞ」
「了解です」
返事は最小限に、甘熊班長に続いて内部に突入する。
内部はまだ火の手が回っておらず、まだ視界は確保できる。
仮に煙が充満していても、俺なら見通せる目がある。
タブレットで要救助者の位置が割り出せる。
魔法のおかげで救助活動の成功率が格段に上がっているのは、この世界のいいところだと思う。
……そもそもの原因を考えれば、むしろマイナスなのかもしれないけど。
要救助者は反転結界内での避難方法に従い、商業施設内の避難シェルターにいた。
まだ幼い女の子が一人で膝を抱えて、泣いている。
「魔法少女の使い魔さん達が助けに来たよ! 偉いね、よく頑張った! もう大丈夫だ!」
「は、はい……」
「影倉君、装備をこの子に」
影の中から取り出していた防護マスクと防護服を床に広げる。
俺の影魔法もだいぶ拡張され、収納量が増加している。
悪視界を苦にしない目、さらに装備を背負わなくてもいい影魔法。
それらを考えると機動応援課は俺の天職なのかもしれない。
「ごめんね。息がしづらいけど、ちょっと我慢できるかな?」
「うん、我慢する」
女の子に丁寧に、それでいて迅速に装備を付けていく。
「いい子だね。もうちょっと頑張ろうか」
「やっぱり影倉君は年下ハンターだなあ。おっさんの俺とは反応が、トキメキ度が違う」
「茶化さないでください。ヘルメットで顔なんて見えないですよ」
「雰囲気だよ、雰囲気。オーラ、フェロモンとも言う」
まあ、これも女の子を怖がらせないための甘熊班長なりの和ませ方だ。
確かにおっさんっぽい言動で、女の子の反応が良くない気がするけど、気のせいだ。
「よし、終わったよ。さあ、お兄さん達と一緒に行こうか」
「うん」
女の子を抱き抱える。
タブレットによれば商業施設内を含めた周辺にはもう要救助者はいなかった。
まずはこの子を脱出地点まで送り届けて――。
「甘熊班長! さらにオルケプスとされる――!」
浅葱さんの叫びが聞こえた瞬間、特殊装甲車両が内部に転がり込んできた。