ミリしら魔法少女アニメ系の男モブに転生したと思ったら、やばい魔導書と契約してTS魔法少女に変身できてしまった 作:春海とまと
乾ききった世界から真紅の氷雪世界を経て、反転結界は白黒に戻っていく。
その中でまだ
途中、やっぱり手助けした方がいいんじゃないかと思ったけど。
……最後まで信じて、見守るだけってのも辛いものだな。
二人が戦っている間、周辺に気配はなく、監視の目も感じられなかった。
それはよかったかも知れない。
……シンクのお父さんの死が敵の首魁と関係し、今の
やはり俺の周囲だけが緩めにされがちで、本筋であるフェアマジの世界観はシリアスなものなんだろう。
だからこそ俺は下を向いている場合じゃない。
俺を見て微笑むシンクに、努めて笑顔で返して合流した。
「お疲れ様、スカーレット。かなり派手にやり合ったけど、怪我はない?」
「全部治したから平気だよ。オニキスこそ無傷でさすがだね」
陽乾を手早く拘束したシンクはいつものように涼しげな顔で話す。
疲労や困惑のそれは見受けられない。
しかし、狼の尻尾はだらんと垂れて、いつもより元気がなさげだ。
単純に魔力や体力を消耗しているせいもあるだろうけど。
「……干物女の話、聞こえてたよね?」
「ああ、聞こえてたよ」
下手に隠して信頼を失うのもよくないと思い、素直に答える。
「そっか。……マリンとプラチナム、もちろんフラメル司令にも話すよ。今回みたいに戦闘中に暴露されて余計な混乱は招きたくないから」
「スカーレット、大丈夫か? 一回休んでから話しても遅くないんじゃないか?」
「心配してくれてありがとう。でも、大丈夫だから。敵の
ただいつもより早口な気もする。
一刻でも早く、この話題を消化したいからなのか。
「……知りもしない奴らの言い訳に利用されても、お父さんだって迷惑だろうし」
シンクはお父さんのことを決して口にも出したくない、嫌っている風ではないように見える。
どう向き合えばいいか分からない、感じかな……。
「分かったよ。でも、悩みごとや困ったことがあったらなんでも相談に乗るよ。これでもちょっとは人生経験豊富なお姉さんだからな」
「ありがと。あたし一人じゃ危なかったけど、オニキスがいてくれたから勝てたし――あ、そうだった」
シンクが狼化した手や足に目をやると、煙が吹き出して人の姿に戻る。
なぜかまだ解けない狼耳をペタンとし、頬を赤らめた。
「変じゃなかった……よね?」
「もちろん、変じゃなかったよ。格好いい……いや、うん。女の子に言うべき言葉じゃないよな。可愛い……もなんか違う?」
「格好いいでも可愛いでも平気だから。そう言ってくれて良かった」
「というか、耳や尻尾と違って、そっちはすぐに解けるんだな」
「うん。これは単純な強化魔法だから。任意で解けるんだ」
シンクも気楽な会話で少しはリラックスできたみいだ。
でも、まだ足りない。
みんなに話をする前に、気分転換をさせてあげたい。
「あ、そうだ。せっかくだし、触ってみる? 双角とか翼とか尻尾とか」
ドヤ顔で自分を指さし、翼をバッサバッサと羽ばたかし、尻尾をブンブンと振ってアピールしてみる。
「え? さすがにそれは……悪いかなって」
反応、悪し。
お姉さんはまたしても選択を間違えてしまったのか。
「でも……そうだね。じゃあ、尻尾だけ」
シンクはそう言って自分の尻尾を……俺の尻尾と絡ませた。
邪竜の硬い鱗で覆われた尻尾に、フサフサの狼の尻尾が全体を撫でていく。
こ、これは未知の感覚でくすぐったいぞ。
「あたしの尻尾と違って硬いね」
「あ、ああ……鱗びっちりだからな。爆発しないけど」
「鱗は爆発しないでしょ?」
「いや、今回戦ったニーズヘッグ・ドレッドノートが
「そっか。オニキスじゃなかったら苦戦してたかな。ドデカメカドラゴンだったから」
もしも俺がいなかったら、まずはシンク一人で二人を……最初は陽乾だけだろうけど。
陽乾はピンチになったら、
今回よりもシンクがピンチになった上での敗北イベントか、マリンやカグヤが合流してから本番だったのかな。
さわさわ、くるくると。
ちょっと考えごとをしている間にも、シンクは俺の尻尾に自分の尻尾を絡め、巻きついていく。
「……あの、スカーレット。触ってみる? って聞いた俺がいうのもなんだけどさ。いきなり上級者向けでは?」
「そうかな。外的変化の部分だから、手で触れるより初心者向けじゃない? 今時の学生じゃ普通だから」
「普通の学生は狼や邪竜の尻尾は生えていないのでは?」
「それよりオニキス。いつまでも反転結界を閉じないままだと迷惑だから。後始末して現実世界に帰ろう」
俺の質問は聞き流され、シンクは帰還準備を始める。
まあ……これで少しは気が楽になってくれるのなら好きなだけ巻かれよう。
結局、シンクは変身を解くまで尻尾を離してくれなかった。