ミリしら魔法少女アニメ系の男モブに転生したと思ったら、やばい魔導書と契約してTS魔法少女に変身できてしまった   作:春海とまと

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第21話 手で触れるより初心者向けじゃない?

 乾ききった世界から真紅の氷雪世界を経て、反転結界は白黒に戻っていく。

 

 その中でまだ燦然(さんぜん)と輝く真紅の魔法少女を見つめる。

 途中、やっぱり手助けした方がいいんじゃないかと思ったけど。

 

 ……最後まで信じて、見守るだけってのも辛いものだな。

 

 二人が戦っている間、周辺に気配はなく、監視の目も感じられなかった。

 それはよかったかも知れない。

 

 ……シンクのお父さんの死が敵の首魁と関係し、今の御籠(みかご)市や魔法少女が認知される世界になるきっかけになったのかもしれないのだから。

 

 陽乾(ひかわ)の絶叫は空にいた俺にまで届いていた。

 やはり俺の周囲だけが緩めにされがちで、本筋であるフェアマジの世界観はシリアスなものなんだろう。

 

 だからこそ俺は下を向いている場合じゃない。

 俺を見て微笑むシンクに、努めて笑顔で返して合流した。

 

「お疲れ様、スカーレット。かなり派手にやり合ったけど、怪我はない?」

「全部治したから平気だよ。オニキスこそ無傷でさすがだね」

 

 陽乾を手早く拘束したシンクはいつものように涼しげな顔で話す。

 疲労や困惑のそれは見受けられない。

 

 しかし、狼の尻尾はだらんと垂れて、いつもより元気がなさげだ。

 単純に魔力や体力を消耗しているせいもあるだろうけど。

 

「……干物女の話、聞こえてたよね?」

「ああ、聞こえてたよ」

 

 下手に隠して信頼を失うのもよくないと思い、素直に答える。

 

「そっか。……マリンとプラチナム、もちろんフラメル司令にも話すよ。今回みたいに戦闘中に暴露されて余計な混乱は招きたくないから」

「スカーレット、大丈夫か? 一回休んでから話しても遅くないんじゃないか?」

「心配してくれてありがとう。でも、大丈夫だから。敵の戯(ざ)れ言かもしれないし。全部を真に受けたわけじゃないから」

 

 ただいつもより早口な気もする。

 一刻でも早く、この話題を消化したいからなのか。

 

「……知りもしない奴らの言い訳に利用されても、お父さんだって迷惑だろうし」

 

 シンクはお父さんのことを決して口にも出したくない、嫌っている風ではないように見える。

 どう向き合えばいいか分からない、感じかな……。

 

「分かったよ。でも、悩みごとや困ったことがあったらなんでも相談に乗るよ。これでもちょっとは人生経験豊富なお姉さんだからな」

「ありがと。あたし一人じゃ危なかったけど、オニキスがいてくれたから勝てたし――あ、そうだった」

 

 シンクが狼化した手や足に目をやると、煙が吹き出して人の姿に戻る。

 なぜかまだ解けない狼耳をペタンとし、頬を赤らめた。

 

「変じゃなかった……よね?」

「もちろん、変じゃなかったよ。格好いい……いや、うん。女の子に言うべき言葉じゃないよな。可愛い……もなんか違う?」

「格好いいでも可愛いでも平気だから。そう言ってくれて良かった」

「というか、耳や尻尾と違って、そっちはすぐに解けるんだな」

「うん。これは単純な強化魔法だから。任意で解けるんだ」

 

 シンクも気楽な会話で少しはリラックスできたみいだ。

 でも、まだ足りない。

 みんなに話をする前に、気分転換をさせてあげたい。

 

「あ、そうだ。せっかくだし、触ってみる? 双角とか翼とか尻尾とか」

 

 ドヤ顔で自分を指さし、翼をバッサバッサと羽ばたかし、尻尾をブンブンと振ってアピールしてみる。

 

「え? さすがにそれは……悪いかなって」

 

 反応、悪し。

 お姉さんはまたしても選択を間違えてしまったのか。

 

「でも……そうだね。じゃあ、尻尾だけ」

 

 シンクはそう言って自分の尻尾を……俺の尻尾と絡ませた。

 邪竜の硬い鱗で覆われた尻尾に、フサフサの狼の尻尾が全体を撫でていく。

 こ、これは未知の感覚でくすぐったいぞ。

 

「あたしの尻尾と違って硬いね」

「あ、ああ……鱗びっちりだからな。爆発しないけど」

「鱗は爆発しないでしょ?」

「いや、今回戦ったニーズヘッグ・ドレッドノートが耐爆衝撃装甲鱗(たいばくしょうげきそうこうりん)とか言うので、爆発しまくってたんだよ」

「そっか。オニキスじゃなかったら苦戦してたかな。ドデカメカドラゴンだったから」

 

 もしも俺がいなかったら、まずはシンク一人で二人を……最初は陽乾だけだろうけど。

 

 陽乾はピンチになったら、黒波(くろなみ)に助けろって余裕で命令しそうだし。

 

 今回よりもシンクがピンチになった上での敗北イベントか、マリンやカグヤが合流してから本番だったのかな。

 

 さわさわ、くるくると。

 ちょっと考えごとをしている間にも、シンクは俺の尻尾に自分の尻尾を絡め、巻きついていく。

 

「……あの、スカーレット。触ってみる? って聞いた俺がいうのもなんだけどさ。いきなり上級者向けでは?」

「そうかな。外的変化の部分だから、手で触れるより初心者向けじゃない? 今時の学生じゃ普通だから」

「普通の学生は狼や邪竜の尻尾は生えていないのでは?」

「それよりオニキス。いつまでも反転結界を閉じないままだと迷惑だから。後始末して現実世界に帰ろう」

 

 俺の質問は聞き流され、シンクは帰還準備を始める。

 まあ……これで少しは気が楽になってくれるのなら好きなだけ巻かれよう。

 結局、シンクは変身を解くまで尻尾を離してくれなかった。

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