ミリしら魔法少女アニメ系の男モブに転生したと思ったら、やばい魔導書と契約してTS魔法少女に変身できてしまった 作:春海とまと
カグヤやマリンとも合流し、リフレッシュルームでブリーフィングを行う。
まずは今回の戦闘、
黒波はさっと片づけられ。
「陽乾……聞いたことがありますわ」
カグヤが顎に手を当て続ける。
「かつては
「だから、どんな手を使ってでも成果を上げて、父親や家の汚名を晴らしたかったのかな」
彼女と戦ったシンクが考えを述べた。
「そうですわね。力があるからこそ、後継者にかかる期待、負担は大きく増しますわ。
ですが、とカグヤは陽乾に同情を見せながらも、
「それで悪に落ちていい道理はありませんわ」
否定の言葉で締めくくった。
「薪原の時といい、カグヤは情報通だな」
「おほほ、ありがとうございます。新鮮な情報は常に耳を入れておくべきですわ。天地家に連なる者の務めですわ」
カグヤも天地家という魔法執行官の名門のご令嬢。
様々な慣習や経験をしてきたからこそ、言葉に重みがある。
「なるほどお……魔法世界にも色々な事情があって大変なんだねえ」
腕を組んで頷くマリンに賛同する。
俺もぼんやりとした感想しか出てこない。
つい最近まで縁遠い世界だと思っていたからな。
今回の戦闘の情報共有を終え、例の話題に移る。
シンクが話を切り出し、リフレッシュルームの空気が一気に重くなった。
陽乾とのやり取り、
唇を真一文字に押さえ込む。
感情のままに吐き出したくなるのを必死に堪えたように見えた。
「……すまない」
普段の余裕を感じさせる雰囲気が消え、沈んだ声で謝られた。
「ある意味おじさん達の能力を信じたからこそ、まんまとバカ弟子――敵の手の平で踊らされたってわけか」
フラメル司令はまだ吐き出したかったように見えたけど、口元を抑えて飲み込んだ。
「フラメル司令はお父さんのことを知っていたんですか?」
シンクの質問に、フラメル司令は首を横に振った。
「面識はない。もちろんシンクの面接試験の時に調べたが、特に疑問点はなかったから気にしていなかったんだ。シンクがフェアリーテイル・グリモワールと適合できたのも、本当に奇蹟だと思っていたからな」
「そうですか。じゃあ、お父さんが助けようとした相手って言うのは――誰ですか?」
「そうだな……おじさんとして、君たちの命を預かる責任者として、質問には答えるべきだな」
核心に触れる質問に、フラメル司令も覚悟を決めて口を開く
「終末厄災布教会の
つまり、この世界におけるラスボスのような存在。
「元々他者に興味がない、変わった奴で錬金術――魔法の研究にだけ熱心だった。でも……そうか。そのこだわりがある意味、絶滅種を研究していた親父さんと波長があって、何かしらの化学変化が起こしたのかもな」
「そうなんでしょうか……」
「これから調べて、知っていくしか道はないな」
かつての弟子として知っているから話せるフラメル司令とは対照的に、シンクは自分の父親について語れる言葉が少なかった。
「でも、これだけは言える」
それを見たフラメル司令は沈んだ声から力強い声にかえて続ける。
「シンクの親父さんが何かしらの一因だったとしても。根本的な原因じゃない。お父さんの善意は決して悪じゃない。悪いのはバカ弟子だ」
「ありがとうございます」
淡々として冷たい声で発せられた、たった一言の感謝。
だけど、たくさんの思いが込められていたように感じられ、またフラメル司令が頭を下げた。
「だからこそ、すまない。おじさんたちの見通しの甘さが招いた結果だ。フェアリーテイル・グリモワールを用いた魔法少女計画も全て、君たちを――」
「それだけは謝らないでください」
今度はシンクが力強い声を発した。
「あたしたちは自分の意思でここにいるから。たとえ始まりが仕組まれていたとしても、終わりまでは決められたわけじゃないから」
「ええ! 私たちの意思までねじ曲げられたわけではありませんわ!」
「うん! マジで魔法少女しか勝たん! フェアマジだけに!」
シンクをカグヤとマリンが両脇から支え、笑い、励ましあう。
俺もそっと背後に立ち、考えを告げる。
「俺も全部が全部、敵のシナリオどおりだとは思いません。自分で考えてここに立って、みんなのサポートをして、一緒に戦うと決めましたから」
俺は本来存在しないイレギュラー、ジョーカーみたいなものだと思うから。
仮にロキ……トリックスターとも呼ばれるイタズラ好きで、好き放題する神様の手の平の上だったとしても、覆してみせる。
薪原の時も阿部市長の星詠みは緊急の報せ、今回は予報さえなかった。
突発的な遭遇戦だった。
魔災予報の星読みは先読みして行われる。
反転結界と切っても切れない関係でもある。
魔災の星読みがおかしくなったのは、反転結界を発動させた原因が敵ではなく、本来いないはずの俺だったからかもしれない。
今後もそういった遭遇戦が多く発生すると考えておいた方がいいだろう。
「クー太郎もそれを打破できる一つの鍵かもしれませんし」
もしくは俺の頭の上でふんぞり返るクー太郎が原因か。
「そうだぜ! ロキのヤローがどんな思惑だろうと、ぶち壊しちまえばいいだけの話だぜ! オレ様を暗いジメジメに閉じ込めたのはかわりねーからな!」
最後にまたシンクが締めくくる。
「だから今までどおり変わりません。あたしたちらしく笑って、楽しく日常を過ごして、真面目に魔法少女として、FMSの活動をしていくだけです」
フラメル司令が目を細める。
「おじさんには眩しいな。さすが今をときめく女子高生にTSお姉さんに、チビドラゴン」
「それは本当におじさんっぽいー」
「おじさんだからなあ」
マリンのツッコミにフラメル司令が、今日初めて照れ笑いを浮かべる。
幼女風の出で立ちでも、疲れた笑いだけは本当におじさんっぽかった。
「こっちはファウストや親父さんについて調べてみようと思うが、シンクも構わないか?」
「お願いします。あたしも自分なりに……調べてみようと思いますから」
「無理はしないようにな。ひとまずはこんなところか。みんな、このあとの予定はどうだ? 回らないスーシーを奢ってあげたい気分だが」
「お気遣いありがとうございます。でも、今日はみんなで家で食べたい気分なので、また今度でいいですか?」
「分かった。そういう気分の時もあるよな。おじさんのことは気にせず、仲良くな」
衝撃の事実に波乱はあれど、それでも魔法少女――FMSとしての結束は確固として強まった。
◆
リフレッシュルームとの通信を終了し、フラメルは椅子にもたれかかって天を仰ぎ、目を手で覆った。
「ふざけるなよ」
自分たちの後始末、代わりに戦ってくれる子供たちの前で、無様な悪態を吐くわけにいかない。
大人として自制していた思いが一人になって漏れ出た。
「ふざけるなよ、舐めやがって」
悪態はかつての弟子にむけたものであり、一番の対象は自分自身だった。
「これじゃあ、あわせる顔がないだろ」
亡き友と最期に交わした約束は必ず守らなければ。
二度目の終末厄災は必ず防ぐ。
そしていつか魔法少女達を揃って卒業させて、日常に帰してみせる。
「それが……おじさんにできる最後の錬金術だからな」
この身体になって頭脳以外の能力はかなり低下し、不自由をしいられているが関係ない。
フラメルは胸中に秘めた思いを燃料に、寝食を惜しんで仕事を再開する。