ミリしら魔法少女アニメ系の男モブに転生したと思ったら、やばい魔導書と契約してTS魔法少女に変身できてしまった 作:春海とまと
「そうだ、今日はおとぎ荘
シンクの提案をきっかけに、みんなでスーパーで買い出しをしてからおとぎ荘に帰った。
「これならみんなの好きな具材を入れられるかなって」
シンクが餃子パーティーを提案したのもそういう意図があって。
彼女自身、今日は家でみんなとご飯を食べたいと言っていたし、顔に出てなくても心の中では思うことがたくさんある。
大人びて見えても、魔法少女だとしても、まだ高校生で年頃の女の子に変わりない。
同年代だからこそシンクの気持ちを理解し、マリンもカグヤもノリノリで賛成してくれたわけで。
「カグヤさーチョコ入れすぎじゃね? ちゃんとカグヤ専用って書いてよ?」
「マリンこそタコにイカにエビにマグロって、一つに詰め込みすぎではありませんの」
「えー? 海鮮餃子は定番じゃん! 鮫のように強くなりたければ喰らえだし! シーフードの宝石箱にして欲張らねばマリンじゃあるまいよー!」
「まったく欲張りですわ。ですが、一理ありますわ。チョコにイチゴにマシュマロに、スイーツパラダイスですわ」
……大丈夫かな、まあ、大丈夫か。
現在、仲良くリビングのテーブルで餃子の
「二人とも自由で楽しそうだね。でも餃子はやっぱりお肉だから」
シンクも牛肉、豚肉、鶏肉、とオリジナル合い挽き肉の餡をねりねりしていく。
「お姉さんは自分の好きな具材を入れないの?」
「俺はバランスよく作っていこうかなって」
適度にみんなの具材を借り、チーズやキムチ、明太子に大葉などのアレンジを加えながら餡をねりねりして、餃子を量産していく。
「まあ、そばとかラーメンを餃子に入れないか」
シンクは俺の好物を言い当てて、勝手に納得した。
単純に麺類が好きな人は多いから当てやすいよな、きっとそうだ。
「そっかなー? ラーメンピザとかなかったっけ? 餃子でもいけるでしょ!」
「ええ。麺を丸めてギュッとして、スープやつゆと一緒に封じ込めれば、小籠包みたいに美味しくいけるのではありませんの?」
マリンとカグヤが餡をねりねりしながら提案してきた。
冗談で言っているわけではなく、ラーメンやそばを用意したら本気でねりねりしそうな雰囲気で。
「さすがにそれはチャレンジャー過ぎないかな……?」
下手をしたら餃子業界に怒られると思い、話題を変える。
「じゃあ、俺は野菜餃子でも作るかな」
みんなの顔が仲良く険しくなった。
野菜が本当に苦手なんだなあ。
それでも我慢してそれぞれ餡に混ぜているのは健康、体型に気を使ってるからだ。
「お姉さんもまだ二十歳前だけど、社会人系魔法少女だからね。健康管理は大事なんだよ。キャベツネギだく餃子とか」
キャベツや白菜、ネギにニラ、特製タレと混ぜ合わせてねりねり。
餃子も気軽に野菜が食べられる料理だからな。
「なあ、イツキ。クロワッサンはいれねーのか?」
「餃子にクロワッサンはさすがにチャレンジャーを通り越してるだろ……」
椅子で座って俺達の作業を眺めるクー太郎が急かしてきた。
それほどまでにクロワッサンに心奪われるとはな。
「今日はお徳用クロワッサンで我慢してくれ」
「しょーがねえな。クロワッサンが楽しみだぜ」
契約して数日でここまで打ち解けるとは思いもしなかった。
俺が知らなかった事実が山盛り状態で、むしろ厄ネタ疑惑は深まったけど。
「ところで師匠。クロウ・クルワッハはどうしてクロワッサン大好きマンになってるわけ?」
「ええ? 嫁様は今日一日でどんな厳格な調教をしたんですの?」
「月
話が通じない、悪い奴ではないのかもしれないな。
「閃いたぜ! 逆にクロワッサンにギョーザを挟むのはどうだ!? オレ様、天才じゃねーか!?」
……天才とバカは紙一重って言うしな。
そういうわけで仲良くわいわい、ねりねりと作って餃子が完成。
「焼きは三人に任せていいかな?」
フライパンではなく、テーブルにホットプレートを置いて焼いてもらう。
「任せてもらっていいよ」
「がぶりょー!」
「お任せあれですわ」
手早く片付けをすませ、三人に任せる。
ホットプレートを囲んで焼くのも一種のレクリエーションだ。
出来上がる工程を見てもらうのも料理の楽しみ方の一つ。
今時は料理を作るだけ動画も人気だからな。
俺もたまに見て、参考にするし。
「俺は中華スープとタレを何種類か作っておくよ。定番の醤油、味噌、酢、レモン風」
サッパリ風味の中華スープ……マリンが海藻苦手と言っていたけど、ヌメヌメが少ないワカメなら平気だよな。
鍋に火をかけ、具材の準備をしていく。
しばらくして餃子が焼ける音がキッチンにまで聞こえてきた。
「火力の調整は完璧、いい感じだね」
料理担当のシンクがいれば焦げる心配はないな。
「おおー……いいジュワジュワーで映えー。あ! スマホで撮ってーマリンのお腹もグウグウ鳴ってきたぞー」
「香ばしい匂いですわ。できあがりが今から楽しみですわ」
ガラス製のフタ越しに三人は餃子が焼ける様子を眺め、笑い、楽しげに語り合って。
「……ところでどれがどれの餃子か分かる?」
「え!? マリンもてきとーに並べたからなー……そだ! スマホの録画でって焼いたところからだった! えー……えー……えーっと? これがマリン宝石箱、こっちがシンク肉団子……こ、こっちがカグヤスイパラ……だったよーな? あれ、違ったっけ……?」
なにやらトラブルが発生したようだ。
シンクが気まずい顔になり、マリンもあわあわと餃子を指さしていく。
「おほほ……ご心配には及びませんわ。私にお任せあれですわ!」
カグヤだけが胸を張って、誇らしげに言った。
「さすがFMSの頭脳担当、助かるよ」
「うんうん! さすカグ! で、どれがどれでどれ!?」
「私のスペシャリテは全て覚えていますわ!」
「そっか。それは助かるから。良かった」
「一番事故率高そーな餃子だから、回避できるだけオッケーだし」
「お二方! 私のスイパラ餃子は地雷ではありませんわよ!?」
すぐに元気になって賑やかになる。
これが彼女たちの日常。
俺も賑やかな声に音を聞きながら、中華スープの仕上げに入ろう。
◆
ほかほかご飯に中華スープ、腹休めのレタスも添えて、いっぱいの餃子パーティー本番。
「たまには海鮮も美味しいね。中身の量に反してサッパリ気味」
「うんうん。シンク肉団子餃子も肉汁がブワーッと弾けてウマウマ」
「おほほ……どれも甲乙つけがたしですわ。シメのスイパラ餃子もお忘れなくですわ……ちょっと。だからなんでお二方、目をそらすんですの」
カグヤスイパラ餃子以外はどんな餃子か食べるまで分からない、ルーレット形式になってしまった。
「みんなが作った餃子も美味しくて、ご飯が進んじゃうな」
やはり魔法少女に変身すると、体力も魔力も消費してお腹が凄く減る。
どんどん餃子にご飯が減っていく。
「大葉入りの……肉餃子、お姉さんのかな。美味しい」
「チーズ明太子入りの師匠餃子もめっちゃウマー」
「ええ、甘口の味噌タレのおかげで私も辛さを気にせず食べられますわ」
俺のアレンジも好評で嬉しい限り、と思っていると。
「野菜の味がする餃子だね」
「野菜の味がする餃子じゃん」
「野菜の味がする餃子ですわ」
三人のテンションが急に下がり、またスンとした真顔に。
野菜を細かく刻んで混ぜたハンバーグを食べて、突然味覚センサーが覚醒した小さな子供みたいな反応をしなくても。
野菜マシマシ餃子は可もなく不可もなく、だからといって不味いわけではない、と言った感じの評価。
「率直な感想をありがとう」
……掃除も料理の道も長く、険しいなあ。
四人揃って中華スープを飲んで気分を落ち着ける。
「クロワッサンにスイパラ餃子は中々いけるぜ!」
こっちはこっちで楽しんでやがる。
というかクー太郎、お前、本当にやったのか……。
半分に切ったお徳用クロワッサンにスイパラ餃子を挟むと言う、恐ろしい見た目のサンド。
チビドラゴンといえど、さすが邪竜。
邪道もいとわない……まあ、スイパラ餃子ならまだセーフか?
「おほほ……嫁様をたぶらかす邪竜と思いましたが、中々どうして味覚だけは見所があるではありませんか」
カグヤには高評価だった。
「クロワッサンにスイパラ餃子は重すぎるんじゃ?」
「魔法生物だし、人と味覚が違うのかも? バズり目的ならワンチャンあるのかなあ……マリンはやらないけど」
シンクとマリンは胃もたれしそうな顔で見ていた。
ちょっとしたアクセントも挟みながら餃子パーティーは佳境を迎え、スイーツタイム。
「私が想像したとおりの甘々スイパラ餃子ですわ。カリカリ皮に、トロトロチョコにからんだフルーツやマシュマロが
カグヤだけは食べるペースが落ちず、お行儀よくパクパクと、幸せそうな顔でスイパラ餃子を食べていく。
「確かに想像よりも美味しいね。ただ食後のスイーツにしては重い気が」
「マリンも予想よりもおいしーと認めるし。でもこれは油&炭水化物だし。カロリーオーバーな気も……うぷっ」
「確かに……お姉さんには胃が重いかも」
カグヤの寸評どおり甘塩っぱい、一口焼きクレープな味わいで美味しい。
しかし、女性に変身したからって甘い物は別腹ってわけにはいかないようだ。
シンクもマリンも食べるペースが落ち気味だ。
「というわけで特製レモンソース&緑茶に紅茶の出番です」
それを見越して味変用の特製レモンソースを取り出した。
「あたしはお茶でいいから。ありがと、これでまだいけるようになったかな」
「さすが師匠! マリンも今は母なる海の塩を希望したかったところだし! マリンは紅茶もレモンティー!」
二人に希望の飲み物を用意してあげ、特製レモンソースをシェアして、どうにか食べ進める。
「おほほ、アレンジはお好きにどうぞ。私も好きにアレンジしますわ」
カグヤも対抗して……お、おお!?
……追いクリームにチョコソースだと!?
三人の健康を預かるお姉さんとしては、食べ過ぎ&カロリー過剰摂取で心配になるレベルだ。
「嫁様、私にも紅茶をお願いできますか?」
「わ、分かったよ。はい、どうぞ」
「ありがとうございます。いい香りに風味も爽やかバッチリですわ」
紅茶を優雅にグビグビ飲み、またスイパラ餃子をパクパク……と、止まる気配がないぞ。
見てるだけでお腹いっぱいになってしまう。
三人仲良く飲み物を飲んで、飲み込んだ。
「オレ様も今日はもういいかなあ……」
クロワッサンラブのクー太郎もお腹をポンポンと叩いてギブアップした。
「あら。皆さんもうごちそう様ですか? まだ残っていますのにもったいないですわ。あ! いい格言がありますわ! 摂取したカロリー分、運動すれば実質ノーカロリーですわ!」
カグヤがドヤ顔で力説した。
大甘党を越える超甘党っぷり。
今日がシンクを励ます意味もなければ、お姉さんドクターストップをかけたかもしれない。
カグヤが綺麗に食べきるところを眺め、ほのぼのとお茶を飲んでのんびり腹を休める。
おとぎ荘餃子パーティーは楽しく無事……うん、無事だな。
無事にお開きとなり満腹、英気を養った。
◆
「よーし! 今日は遅刻不参加組だし! いっぱい食べたし! マリンは配信前にトレーニングをがっつりやっちゃうよ! 目指せシャープでシャークボディー!」
「おほほ、
「カグヤと一緒だと、ばるんばるんベンチプレスに目を奪われがちだからなあ……。視覚吸引デバフがヤバくて集中できないんだよねー」
「マリン!? 同性でも立派なセクハラですわよ!」
「マリンもできることならばるんばるんベンチプレスしてみたいんだもーん。でも、ないものねだりなので、オクトパスのように粘り強くトレするだけだしー」
マリンが小走りで二階のトレーニングルームに逃げていき、カグヤが追いかけていく。
ばるんばるんベンチプレス……俺は見ない方がいいかな。
二人のために特製ドリンクを作ってから、家事の続きをしよう。
「お姉さん、あたしも手伝うから」
「シンク、平気? 疲れたのなら休んでいいよ」
今日は本当に色々あったから心配だ。
一人で考えたいことだってあるだろうし。
「平気だよ。それに一人だけ休んでる方が休まらないし」
「そっか。それなら二人と一緒にトレーニングルーム行ってきたら?」
「あたしはマリンほどシャーク消化器官が強くないし、カグヤほど大食い……
シンクは辛そうな顔でお腹をさすった。
「……それは凄く分かる」
三人よりちょっと年上なだけなのに、胃にダメージが。
あとで胃薬飲んでおこう。
……胃腸消化促進魔法とかあるのかな。
まあ、あっても使えないんだけど。
「それでお姉さん。今日は邪魔が入って服が買えなかったけど、また日を改めて買いに行こう。今度はみんなで」
「そうだな。今度はみんな揃って買いに行こうか」
「うん、休日にでも。だから……明日は」
シンクはなぜか照れくさそうに目をそらした。
「あたしの家、一緒に来てくれるかな? お母さんに……色々、話を聞きに行くから」
「もちろん。俺で良ければ付き合うよ」
二つ返事で答える。
シンクが自分の家族や過去について、知ろうとしているのなら断る理由はない。
敵のロキについてもだけど、なによりもお父さんについて。
一歩を踏み出そうとしているのなら、協力は惜しまない。